映画『悪と仮面のルール』の概要:この世に悪をもたらす存在として育てられた少年は、ある少女に恋をした。彼は成人すると自分の運命に抗うように整形手術で顔を変えた。全ては、たったひとり愛した女性を守るために。
映画『悪と仮面のルール』の作品情報
上映時間:138分
ジャンル:サスペンス
監督:中村哲平
キャスト:玉木宏、新木優子、吉沢亮、中村達也 etc
映画『悪と仮面のルール』の登場人物(キャスト)
- 久喜文宏 / 新谷弘一(玉木宏)
- 久喜家に生まれ、父の久喜捷三から“邪”として育てられる。14歳になる頃に、香織を使って地獄を見せると言われる。香織に危害が及ぶことを恐れ、捷三を殺害。成人後、香織を守るため、顔を整形。そのせいで実年齢は20代だが、見た目は30代になっている。莫大な資産を持っているが、その出どころや詳細は不明。父を殺した罪悪感に悩まされており、よく悪夢を見ている。
- 久喜香織(新木優子)
- 久喜家の養女。文宏を邪にするために養われた存在。捷三亡き後は、久喜家の屋敷から離れている。成人後はホステスの仕事をしている。あまり幸せな人生を送ってきていなかったが、文宏との幸福な思い出を胸に、前向きに生きている。
- 伊藤亮祐(吉沢亮)
- 久喜家から枝分かれした邪を受け継ぐ家系で、文宏とは親戚にあたる。テロ組織JLのメンバーだが、まだ誰も殺したりはしていない。幼少期につらい体験をしており、自殺を図ったこともあるが死にきれず、今ももがき苦しんでいる。
- 久喜幹彦(中村達也)
- 捷三の次男で、文宏の兄。現・久喜グループのトップ。一度は捷三に邪として育てられたが、途中で飽きられて捨てられている。だが、本人は今も邪として生きている。ビジネスでは成功しているが性格が破綻しており、非道な行いも平気でこなす。そのせいで常に憂鬱に苛まれ、そこから目覚めたいと思っている。
映画『悪と仮面のルール』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『悪と仮面のルール』のあらすじ【起】
莫大な富を持つ久喜家に生まれた文宏は、父の捷三から14歳になったら地獄を見せると言われた。久喜家は世界に悪を成す家系で、文宏はその悪を成す存在“邪”として選ばれたのだ。捷三は養女の香織を使って、文宏を邪に作り上げようと考えていた。
香織を好きになった文宏は彼女を捷三から救おうと考え、静岡の別荘の地下室に閉じ込めて殺害。捷三の死は自殺として処理され、幸福な日々が訪れるように思われた。
だが、文宏は次第に罪悪感に悩まされ始める。自分と一緒にいると香織が捷三を思い出してしまうのではないかと考えるようになり、香織を避けだす。その後、香織は医師の勧めで屋敷を離れていった。
成人した文宏は闇医者で顔を整形し、海外で死亡した新谷弘一という男として生まれ変わった。文宏は生前に捷三が雇っていた榊原という探偵に、現在の香織のことを調べてほしいと依頼する。
世間がJLというテロ組織による犯行で持ちきりの中、文宏は榊原から香織の近状を報告される。彼女はホステスとして働いており、常連客で詐欺師のヤジマから、捷三の遺産として相続した3000万円を狙われているそうだ。また、榊原以外にも香織を調べている者がいるという。
映画『悪と仮面のルール』のあらすじ【承】
文宏はヤジマに接触すると、おいしい話と覚せい剤を渡した。だが、中身はシアン化合物だった。麻薬中毒者だったヤジマは疑いもせずに車中で注射して死亡する。
榊原から、香織を調べているのは捷三の次男・幹彦だと知らされる。幹彦は海外との武器取引をしている会社の筆頭株主になっていた。文宏は更なる調査を依頼する。
文宏は、いつの間にかポケットに入れられていた電話で呼び出される。電話の相手に“久喜文宏”の名前や、来なければ香織に危害が及ぶと言われ、行くことにした。待っていたのは伊藤亮祐という青年だった。顔が変わっていたせいで文宏だと気づかない亮祐。彼は世間を騒がせているJLのメンバーで、金欲しさに連絡してきた。“文宏は自殺した”と告げるが、亮祐は新谷となった文宏に興味を示し、JLに入れと言ってきた。そして、また連絡すると言って去っていった。
文宏は会田という刑事から声をかけられる。実は“新谷弘一”には交際相手を殺した容疑がかけられていた。ヤジマの事件を調べていた会田は、そこから文宏に辿り着いたのだ。文宏を新谷だと思っている会田は厳しい言葉を並べる。文宏はなんとか誤魔化し、その場を乗り切った。
部屋に戻ってきた文宏を、幹彦の部下が待っていた。彼に案内された先で目の当たりにした幹彦の凶暴性に文宏は恐怖する。幹彦は顔を変えても文宏だと気がついていた。自分の憂鬱を晴らすため、薬漬けにして香織を連れてこいと命令してきた。
映画『悪と仮面のルール』のあらすじ【転】
亮祐に呼び出された文宏はJLのアジトへ。亮祐はテロを起こす理由を、生きることを侮辱したいのだと説明する。亮祐は過去にひどい暴力を受けており、生きることに対して憎悪しか持っていなかった。だが、それでも文宏は生きることを勧める。帰り際、仲間が作った手製の時限爆弾を預かってくれと頼まれた。
榊原から幹彦の調査資料を受け取った文宏は、香織が働く店に潜入していた榊原の部下を通じて香織と接触。文宏は“新谷”と言う名の客として香織と会ったが、しばし幸せな時間を過ごした。
幹彦の資料を読み込んだ文宏は、彼に会いに行った。幹彦は、お前はこの世界で最も大切なものである香織を破壊し、絶望を感じたいと思っているのだろうと言うが、文宏はそれを否定する。憂鬱が晴れない幹彦は文宏にナイフを持たせ、俺の首を切り落とせと強引に迫る。だが、文宏はそれも拒否した。
文宏は幹彦が過去に犯した殺人のことや、武器取引の不正などを持ち出し、幹彦を責めた。そして、預かっていた時限爆弾のスイッチを入れた。解除するのは簡単だが、文宏が“命を惜しみながら解除すればいい。今まで殺した人、殺そうとした人たちのことを考えながら”と言うと、幹彦は笑い、爆発するまでその場に居続け、死亡した。
映画『悪と仮面のルール』の結末・ラスト(ネタバレ)
香織への危害は落ち着いたと分かった文宏は、去る準備を始めた。亮祐に会いに行き、自分が文宏だと告白。亮祐に人を殺すのは止めたほうがいいと諭す。亮祐は少し考えを変え、前を向いて歩きだしていった。
新谷弘一の交際相手の墓参りにやってきた文宏は、そこで会田と出会う。会田は、各々の事件から香織に行きつき、文宏の存在に気がついていた。だが、新谷には何の繋がりもない。文宏の正体を知ってか知らずか、会田は多くを追求せずに見逃してくれた。
文宏がこの地を離れようとしている時、香織と遭遇した。車で香織を送っていくことにした文宏。夕陽を見て、綺麗と呟く香織の姿に、幼い頃に二人で過ごした日々を思い出す。香織の去り際、文宏は“僕は文宏の知り合いです”と切り出した。そして、彼はあなたのことを気にかけており、今は結婚して父となり、幸せに暮らしていると嘘をついた。香織は、再び会ってしまったら二人ともめちゃくちゃになってしまうと思い、連絡できなかったという。文宏との思い出が救いだったと語った香織は、彼にありがとうと伝えてほしいと言った。
文宏は、あなたが好きです。だから、もう会わないほうがいいと香織に告げた。車を降りた香織に、これからどうするのかと聞かれ、生きていきますと答えた文宏。そして、彼は車を走らせ、去っていった。
映画『悪と仮面のルール』の感想・評価・レビュー
中村文則が原作の映画化だが、会話劇が長く、舞台を見ているような印象を受ける。そのせいで映画としてのスピード感は全くと言っていいほどない。ナレーションや回想を多用しているのも、その原因だろう。また、なぜ今このタイミングで顔を変えてやってきたのかなどの説明は全くされないが、悪に対しての説明はこれでもかと台詞で語られるのも、観る人を選ぶと思う。2時間20分は長尺すぎるので、30分ほど短くできたなら更によくなったのではないだろうか。だが、ラストシーンの会話劇には胸を打つものがあった。あのシーンにたっぷりと時間を使ったのは正解だと思う。(MIHOシネマ編集部)
顔がいい人の悪役ってそれだけでたまらないですよね。この作品の玉木宏がまさにそうです。悪になるために造られた男。顔を変え、過去を捨てながら殺人を繰り返します。原作は中村文則の小説。彼の世界観を映像化するのは本当に難しいと感じました。この作品を見て、イマイチだと感じた人はぜひ原作を読んで欲しいです。原作を読んでからまたこの作品を観ると、感じ方が変わると思います。
悪ではありながら、ルールがあり、全ては愛する人を守るため。純愛映画と言っても良いほどの真っ直ぐな愛を見ました。(女性 30代)
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