映画『アメリカン・スナイパー』の概要:クリント・イーストウッドが監督を務めた伝記映画。実在の米軍スナイパー、クリス・カイルを主人公に彼の生涯を描く。主人公を演じるのは、ブラッドリー・クーパー。
映画『アメリカン・スナイパー』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:132分
- ジャンル:サスペンス
- 監督:クリント・イーストウッド
- キャスト:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン etc
映画『アメリカン・スナイパー』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『アメリカン・スナイパー』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『アメリカン・スナイパー』のあらすじを紹介します。
テキサス州で幼少期を過ごしたクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、父親から猟銃の使い方などを教わり、次第にアメリカに対しての愛国心を抱いていく。そして、米軍に志願したカイルは特殊部隊であるネイビーシールズに配属されることとなる。
米国の同時多発テロをきっかけに、イラク戦争が開戦し、カイルも戦地へ派遣されることとなる。戦地ではスナイパーとして活躍したカイルだったが、ある時、海兵隊の進路に不審な親子がいるのを見つける。母親が子どもに手榴弾を渡すのを確認したカイルは、子どもに照準を合わせ引き金を引く。
葛藤を繰り返しながら、数々の敵を殺害したカイルであったが、ある時、敵のスナイパーであるムスタファを殺害するための作戦が実行される。作戦の中で、仲間を次々と失いながらもカイルは最終的には殺害を実行する。
四度のイラク派遣を経験し、カイルの心はゆっくりと蝕まれていくが、無事に生きてアメリカへ戻る。医師のカウンセリングを繰り返しながら、すこしずつ普通の生活を取り戻そうとしていたカイルであったが、ある時共に出かけた退役軍人にカイルは殺害されてしまう。
映画『アメリカン・スナイパー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『アメリカン・スナイパー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
次第にゆっくりと蝕まれていく日常
本作で描こうとしているものは、スナイパーとして活躍した1人のアメリカ人兵士の勇敢な戦う姿ではない。実際に、本作がアメリカ国内で公開された際は、戦争を肯定しうる可能性のある作品として論争が巻き起こったのも事実であるが、本作で描こうとしているものは、単なる1人の子供の父親に過ぎない男が戦争を通じてゆっくりと本来の自分というものを失っていくと言う恐怖を描いたものである。
カイルはイラク戦争中、4度にわたってアメリカとイラクを行ったり来たりしているが、 本作ではカイルの精神が徐々に蝕まれていく様子を巧みな演出で描いている。 戦争に行く前までは何も思わなかった日常のある音に対して、戦争を経験してからは銃撃戦を思い出して過剰な反応をするようになるというのは言ってみればベタな演出であるが、それ以上に巧みなのは、客観的に見ればおかしな行動に対してもカイル本人はそれに気づいていないという演出がなされているということである。例えばラスト、カイルはふざけて銃を妻に向けるが、 その際にカイルはハンマーを実際に起こしてしまうのだ。ハンマーを起こした状態で人に銃を向けると言う事は、もちろん引き金を何らかのミスで引き金を引いてしまえば発砲してしまうということである。
異例とも言える強烈な表現
ハリウッドの映画において、子供を大人が殺害するというシーンを含むのは異例と言える。本作では、戦争と言うものが持つ容赦ない不条理性を描くために効果的に用いられている。このように、戦争を通じて1人の男が壊れていく様を描いていると言う時点でもちろんこの映画は戦争を賛美するものではないし、実際に監督自身もイラク戦争は失敗だったと言う主張をしている。
待つ家族の辛さを初めて知りました。戦争をすれば、参加した人間は勿論、その家族までも強い不安感に襲われます。そして、クリス・カイルは戦地へ出向いた時の緊張感と、帰国した際の平和な日常とのギャップに苦しめられていました。また、彼の最期が余りに衝撃的で事情を飲み込めず、涙が溢れました。クリス・カイルは優秀な狙撃手としてヒーロー扱いされていましたが、私の目には戦争の被害者のように見えます。戦争は人を、人の人生を壊すものだと思います。(女性 30代)
実在する人をモデルに今も問題視されている退役軍人たちのPTSDをテーマに描かれている今作。クリント・イーストウッドは天才だなと改めて感じさせてもらいました。彼の作る作品には良くも悪くも人間らしさや哀愁が漂っていて自然と主人公に感情移入してしまうのです。ブラッドリー・クーパーが演じたクリス・カイルも身体は戦地から帰ってきましたが、心は戦場に置いてきてしまっていてそんな彼を見守る家族の表情を見ていると苦しくてたまりませんでした。彼自身も心の痛みや苦しみに悩まされていたのでしょう。
光が見えてきたと思われた矢先のラストは悔しさや虚しさの入り混じるなんとも複雑な展開でしたが、これがリアルなのだと思い知らされました。(女性 30代)
戦争に行くことの恐怖、死ぬこと、殺すこと。老若男女問わず人間だ。そこへ向かうクリスも見送るタヤも不安しかない。いくら国にとっての敵であっても人を殺めてしまうのは気持ちいいことではない。だから戦場では味方にも自分にも厳しく、決してふざけない。仕事に誇りを持って行動するクリスはプライベートと違って凛々しく見える。
しかし、家族との時間が次第に無くなっていき2人目が産まれたことでタヤにも余裕がなくなりつつあるが、第一部隊から「伝説」と称されてきた男なだけあってクライマックスは宿敵を倒し、ピンチからも脱出することができたのは手に汗握る緊張感だった。(男性 20代)
実在した凄腕スナイパーの生涯を描いた作品。
この作品では、米軍として活躍する彼の姿だけではなく、徐々にボロボロになっていく心、退役後も抱える大きな苦悩、そして、戦争へと向かう者を待つ家族の姿が描かれている。物語が進むにつれ変わっていく姿がとてもリアルで、気付いたら感情移入してしまっている。そして、苦悩と戦いながらも必死に生きる彼に待ち受けるなんとも衝撃的なラスト。いかに戦争が苦しく悲しいものなのか、考えさせられる作品である。(女性 20代)
クリント・イーストウッド監督らしい1本。
何かを過剰に叫ぶことなく淡々と何があったかが描かれる。舞台の多くは戦地だが、戦争そのものを許容するでも反戦を謳うでもない。1人の兵士が戦地で受けた影響によってどう変わっていくか、その兵士の周囲の人達がどんな影響を受けるか、そんな人間達の姿が描かれている。だから戦地から遠い観客にも、ある人間の姿として共感しやすい部分があるのだろう。
伝記映画故、ラストの厳しさも現実なのだろう。これを「仕方ない」としてしまえるのかが問われるのかもしれない。(男性 40代)
米軍史上最多の160人を狙撃した伝説のスナイパー、クリス・カイルの生涯を描いた本作品。
30歳のごく普通の優しい父親が、戦場に出るたびに人間味を失っていく様子は、見ていて辛くて息が詰まる。
戦争と家族の間で大きな責任と使命を抱えながら生きていた彼は、私たちには計り知れない苦しみと葛藤があっただろう。
しかし160人を殺害した彼は、果たして正義のヒーローだったのか?
戦争の残酷さと、残された家族の苦しみがリアルに描かれた作品である。(女性 20代)
映画『アメリカン・スナイパー』 まとめ
本作を見た人ならば多くの人が気付くであろうこととして、ラストのエンドロールが挙げられる。通常エンドロールにおいては何かしらの音楽が流されるものであるが、本作においては何の音楽もお顔も使われず無音のままである。まるで、この映画を見たものにこの映画が伝えようとしているメッセージを考えさせようとしているようである。
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