映画『嘘八百』の概要:古美術商を営む則夫は、ある屋敷で千利休の幻の茶碗を発見する。嘘をついて破格の値段で手に入れて喜ぶが、それは贋物だった。それを作った男・佐輔と出会った則夫は、彼の腕を使って壮大な騙し合いを考え始める。
映画『嘘八百』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:コメディ
監督:武正晴
キャスト:中井貴一、佐々木蔵之介、友近、森川葵 etc
映画『嘘八百』の登場人物(キャスト)
- 則夫(中井貴一)
- 古美術商“獺”の店主。若い時に贋物を掴まされ、その鑑定に失敗して、鑑定家としての信用を失い、今の仕事に落ち着く。妻とは離婚しており、時々、娘のいまりを預かっている。口が達者で、知識もあり、記憶力もいい。20年かけて真贋を見極める目に磨きをかけた。
- 佐輔(佐々木蔵之介)
- 陶芸家。若い時は将来有能だったが、その有能さが仇となり、贋物作りを強要されてしまう。贋物を作るのは上手いが、長年、そればかりやってきたため、自分自身の茶碗を作ることが難しくなってしまった。妻の康子、息子の誠治とボロアパートで暮らしている。
映画『嘘八百』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『嘘八百』のあらすじ【起】
古美術商“獺”を経営する則夫は、娘のいまりを連れて大阪の町を物色していた。すると、大きな蔵のある屋敷を発見する。屋敷を訪ねると佐輔という男が出てきた。則夫は名刺を渡して蔵を拝見したいと申し出る。蔵には佐輔の父が集めたという茶碗がたくさん収められていた。
佐輔は全部で1000万くらいにはなるかと尋ねてきたが、則夫は蔵から一つ持ってきた茶碗を鑑定して、これは贋物だと現実を突きつけた。その茶碗は老舗の樋渡開花堂という店から買ったのだそうだ。則夫は茶碗を2万5千円で買い取ると、その店へと向かった。店主の樋渡に、素人に偽物を売るのは詐欺だと言う則夫。高値で買い取らせるのが目的だったが、そこにテレビ出演などで有名な鑑定家・棚橋清一郎が現れ、上手く丸め込まれてしまう。
大した儲けにもならず、がっかりする則夫に、佐輔から電話が入った。蔵を整理したら、書きつけが出てきたという。それを読んだ則夫は、これは百姓一揆の決起文で大した値打ちもないと説明した。だが、もう一度、蔵を拝見してもいいかと言いだす。
いまりと蔵にやってきた則夫は興奮していた。実は、書きつけは決起文などではなく、千利休が形見の茶碗を通仙院に譲るということが書かれた譲り状だったのだ。譲り状があるということは、茶碗もある。せっせと探した末、則夫は利休の茶碗、長次郎の黒楽を見つけて震える。だが、佐輔にはそのことは伝えず、全て偽物の安物だったと嘘をついた。
翌日、全部の茶碗を100万円で譲り受けた則夫。いまりを連れて早々に立ち去りたいが、佐輔の息子・誠治と仲良くなったいまりは帰らないと言いだす。面倒くさくなった則夫は娘を残し、一足先にその場を後にした。大儲けできてホクホク顔の則夫だったが、ラジオで不吉な運勢を耳にし、不安になって茶碗を確認してみると、なんとそれは何から何まで贋物にすり替わっていたのだった。
映画『嘘八百』のあらすじ【承】
大急ぎで屋敷に戻ったが、そこには佐輔の姿はなく、代わりに見知らぬ初老の男がいた。男はこの屋敷の主の絹田だと言う。佐輔は絹田が留守をしている間の留守番に雇ったバイトだった。
絹田から佐輔の居場所を聞き出した則夫は、“土竜”という名の居酒屋にやってくる。そこに集まっていた連中は、皆、あの贋物を作った者たちだった。譲り状の紙職人、筆跡偽造の達人、箱書きを作った材木屋、そして、茶碗を作った佐輔。則夫は彼らにまんまと騙されたのだ。
逃げる佐輔を追って、彼の自宅のボロアパートを突き止めた則夫は、そこにいまりを発見して驚く。いまりは誠治と相思相愛になっており、絶対に帰らないと言う。訳も分からず、その部屋で朝を迎えることになった則夫。佐輔には康子という妻がいたが、その日の朝、愛想を尽かして出ていってしまった。
佐輔は20年前、若手陶芸家として賞を受賞するほどの腕の持ち主だったが、そのせいで樋渡と棚橋に良いように利用され、贋物を作らされ続け、その挙句に捨てられたのだという。やり返そうとしない佐輔にイライラした則夫は、本物以上の贋物を作って、二人に一泡ふかせようと提案。そして、自分から奪った100万に色をつけて返せという。実は、則夫も若い時、あの二人に騙され、鑑定家の道を閉ざされていたのだ。
則夫と佐輔は、土竜に集まる仲間たちも巻き込んで、樋渡と棚橋への復讐を開始する。
映画『嘘八百』のあらすじ【転】
美術館で利休の生い立ちなどを勉強するが、今まで贋作ばかりを作っていた佐輔は新しい発想が生まれてこない。そんな時、新婚の頃に康子が大金を出して買ってきた茶碗を見て、あの時の気持ちを思い出し、沸々と創作意欲が湧いてくる。
良い土を手に入れた佐輔は、失敗してはやり直し、試行錯誤を繰り返しながら、誰も見たことのない青釉を使った茶碗を完成させる。それに、偽の譲り状と箱書きが用意された。決戦の準備は整った。次は樋渡と棚橋に揺さぶりをかけて、おびき出さなくてはいけない。
オークション会場に顔を出した則夫は、そこに来ていた樋渡と棚橋にこっそり耳打ちした。絹田という男の家で、利休の茶碗が見つかったと言い、ぜひ自分の目で確認してくださいと誘いをかけた。
疑りながらも、絹田家にやってきた二人。そこに、美術館の学芸員が文化庁の文化財部長を連れて現れる。まさかに事態に則夫も少し緊張する。もし本物ならば、国が買い取ると言いだした。棚橋の鑑定が始まるが、彼はあまり信用してはいないようだった。だが、則夫の豊富な知識と相手を煽る口八丁で、説得力のある説明が繰り広げられる。
競りが始まり、どんどんと値が上がっていった。だが、そこにいるのは全員仕込みだった。樋渡や棚橋が声を上げなくては意味がない。いつの間にか駆けつけた康子も競りに参加して値を釣り上げるが、その時、棚橋がこれは贋物だときっぱり言った。今まで青釉を使った利休の茶碗など見たことがないと一蹴させる。競りは終わり、学芸員も残念そうに去って行った。
作戦は失敗に終わったとがっかりしていたが、そこに棚橋と樋渡が大急ぎで戻ってきた。彼らは値が上がりすぎたので、贋物だと嘘をついて、後でこっそり取引しようと企てていたのだ。もう一度、茶碗を見た棚橋は、これこそ幻の利休の茶碗だとすっかり騙されていた。樋渡は、これを1億円で買い取りたいと言いだす。絹田は迷い、消費税分の800万円もプラスしてほしいという。こうして、則夫たちは1億800万円を騙し取り、作戦は大成功で幕を閉じた。
映画『嘘八百』の結末・ラスト(ネタバレ)
誠治といまりは結婚式を挙げることになった。だが、式の最中、もう一人の花嫁が乱入し、式はうやむやになってしまう。それは則夫の仕込みで、いまりに結婚はまだ早いと思っていた。
自宅へと帰ってきた佐輔たちだったが、誠治が何も言わずに大金の入ったバッグを掴むと、家を飛び出していなくなってしまった。ホテルに泊まっていた則夫のところでも同様のことが起こる。いまりが大量の現金が入ったバッグを持って、姿を消したのだ。
状況を知った則夫と佐輔は空港へと車を走らせた。そこにいまりを発見した二人は、彼女を止めようとするが、誠治に妨害され、彼女はバッグを持ったままゲートをくぐり、高跳びしていってしまった。
飛行機を見送った二人。佐輔は、また贋物で一儲けしようと考えるが、則夫は、そんなことしないで、あんた自身の茶碗を売れ。400年待たなくても良い器なんだから、と激励した。意気投合した二人は、九州方面にでも行こうかと話ながら、車を走らせていった。
いまりは高額の現金を所持していたため、飛行機には乗れず、空港で取り調べを受けていた。そこに誠治が駆けつけてくる。彼を見たいまりは、嬉しそうに笑顔を作った。
映画『嘘八百』の感想・評価・レビュー
最後だけ少し蛇足的だが、軽快なテンポで進むのは、二人の掛け合いも含めて気持ちがいい。中井貴一と佐々木蔵之介の魅力で面白くなっているのは明らかで、別の俳優だったら、もっと退屈になってしまったかもしれない。それくらいお話しに捻りがないとも言える。昼間から居酒屋で時間を潰すおっちゃん達が、ちょっと本気出したら1億を手に入れたというのが面白い。肩の力が常に抜けていながら、程よい緊張感を生み出す雰囲気の作り方は見事だった。(MIHOシネマ編集部)
大阪・堺を舞台に、テンポのいい展開と、クスッとさせる笑いが心地よいコメディ。内容は『オーシャンズ11』を思わせる逆転劇で、観終わった後は心地よい爽快感が残る。
中井貴一と佐々木蔵之介という、本来ダンディでかっこいいはずの2人が冴えないおじさん同士のバディを演じるというギャップも効いているし、実際冴えないおじさんにしか見えないのはさすがの演技力だと思う。他の登場人物達もそれぞれ個性が強く、揃って強烈な印象を残していくのも楽しい。(女性 20代)
中井貴一と佐々木蔵之介。沢山のドラマや映画に出演する俳優さんですが、どこか「胡散臭い」雰囲気があると言われるとそう感じてしまいませんか?この作品はその「胡散臭さ」をものすごくうまく利用した、リアルでとても面白い作品でした。
古物商と陶芸家が手を組んで一攫千金と言うと、もう悪いことしか浮かんできませんよね。まさにそのイメージした通りの展開とストーリー。分かっていたお話なのに面白いんです。中井貴一と佐々木蔵之介のリアルな演技は「演技」と思えないほど自然で本当はこの2人ってこういう人なのでは…と錯覚してしまうほどでした。続編もあるので軽い気持ちで見て欲しい作品です。(女性 30代)
騙し合いといってもほのぼのとしていて、くすくす笑えるコメディ映画です。佐々木蔵之介と中井貴一のコンビは、豪華絢爛でした。二人の関西弁がとても自然で聞き心地が良く、色気が漏れ出ています。骨董品とか古美術がテーマですが、難しい話はほとんどありません。骨董品は単に古ければ価値が高いというわけではなく、その品が織りなす物語が重要なのではないかと思います。物の価値について、今一度じっくり考察する機会を与えてくれる作品です。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー