映画『ラプラスの魔女』の概要:硫化水素中毒による事故が発生し、地球科学研究者である大学教授が調査に訪れる。だが、死亡するには不可能な地形であった。不可思議な事故に関して思い悩む教授だったが、彼の前にラプラスの魔女と名乗る女性が現れる。謎が謎を呼ぶサスペンス映画。
映画『ラプラスの魔女』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:サスペンス
監督:三池崇史
キャスト:櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰、志田未来 etc
映画『ラプラスの魔女』の登場人物(キャスト)
- 青江修介(櫻井翔)
- 地球科学研究を専攻している大学教授。硫化水素中毒事件の調査を依頼される。研究に関して頑なな面はあるものの、円華と関わるうちに先入観を改める。常識的で理性的。
- 羽原円華(広瀬すず)
- 開明大学理数研究所の脳神経外科、教授の娘。甘粕謙人を探している。自ら脳手術実験の被験者となり予知能力を覚醒。ラプラスの魔女と呼ばれている。鋭い目つきの黒髪の少女。
- 甘粕謙人(福士蒼汰)
- 才生の息子。硫化水素中毒によって意識不明の重体に陥るも、奇跡的に一命を取り留める。父の意向で特殊な脳手術を施され絶対予測能力を覚醒し、ラプラスの魔王と呼ばれるようになる。父親に復讐しようとしている。
- 水城千佐都(佐藤江梨子)
- 映画プロデューサーの妻。大金を得る代わりに謙人へと協力する。
- 中岡裕二(玉木宏)
- 警視庁麻布北署の刑事。最初の事故から殺人だと直感し、青江にしつこく自然現象について聞いてくる。刑事としてはかなり優秀で、調査力に長けている。事ある毎に青江へと相談にやって来る。
- 甘粕才生(豊川悦治)
- 鬼才と言われる映画監督。8年前、本人以外の家族が硫化水素にて自殺を図っており、唯一の生き残りである息子、謙人を助けるために特殊な脳手術を施す。実はかなり自己中心的で、理想を貫こうとして家族を殺害した犯人。
映画『ラプラスの魔女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ラプラスの魔女』のあらすじ【起】
赤熊温泉の奥地にて、硫化水素による死亡事故が発生。地形的に中毒死する可能性は限りなくゼロである。
大学にて地球科学研究を専攻する教授、青江修介は警察からの調査依頼を受け、自らの足で地形を確認し、そのような結論を出した。遺体があった場所は風の通りが良く、そこに致死量に至るほどの濃度で硫化水素が滞留することはあり得ないからである。よって、これが事故死であるとは考えにくい。
青江が言外にそのような発言をすると、では殺人事件の可能性はあるかと警視庁麻布北署の刑事、中岡裕二が問う。彼は死亡した男性を捜査しており、しつこく青江を追いかけた。宿へ戻った青江は、フロントのソファにいる女性に目を留める。現場の視察へ向かった際、自分達と同じように現場を見に来た女性だった。
大学へ戻った青江は、不可思議な現象に頭を悩ませる。どんなに考えても風がある限り、致死量の硫化水素が滞留することなど不可能だ。亡くなった男性は映画プロデューサーで中岡は妻の水城千佐都が怪しいと睨んでいた。そんな時、中岡から連絡が入る。今度は別の場所で、またも硫化水素中毒による遺体が発見されたとのことだった。
現場を確認後、そば屋にやって来た刑事と教授。亡くなったのは男性俳優で、今回も水城千佐都が関係していると言う。その日の夜は旅館に宿泊した青江。前の現場で見かけた女性、羽原円華が突然、部屋に訪ねて来る。円華はたった1人で友人を探しているらしく、事故現場へ連れて行ってくれと頼むのであった。
その頃、中岡は死亡した俳優と映画プロデューサーの関係を調べ、映画監督の甘粕才生と繋がりがあることを突き止める。
一方、現場へ向かった青江は、地形を見た円華が専門用語を並べ立てるのを聞き、訝しむ。彼女は自らをラプラスの魔女だと言って、去って行くのであった。
映画『ラプラスの魔女』のあらすじ【承】
ラプラスとは、18世紀フランスの数学者でラプラスの悪魔の提唱者である。ラプラスの悪魔とは、全ての物資の力学的状態を知ることができ、かつそれらのデータを解析できるだけの能力と知性が存在すれば、不確実なことはなくなり未来や過去、全てを見通すことができる。したがって、未来の状態を完全に予知できるというものだった。
以前、温泉宿で見た円華の行動から鑑みるに、彼女は恐るべき計算能力を持っている。ラプラスの魔女という呼称はあながち、間違ってはいないのだろう。
数日後、大学の研究室に中岡がやって来る。彼はあれからも捜査を続け、8年前に甘粕才生の自宅で硫化水素事故が発生し、妻と娘が亡くなっていたことが分かる。更に甘粕は事故後、自身のブログを1年間、更新し続けていた。そこには、事故で一命を取り留めた長男、謙人の様子が逐一、書かれているのだった。
硫化水素中毒によって昏睡状態となった謙人だったが、甘粕の元に試験的な脳手術の話が舞い込む。その手術が成功すれば、息子が意識を取り戻す可能性があると聞き、一も二もなく飛びついた。そうして、手術は成功し謙人は無事に意識を取り戻す。しかし、彼にはこれまでの記憶が一切、失われていた。
青江は若い頃の甘粕の写真を目にし、円華が探していた探し人にとても似ていることに気付く。
すぐさま円華へ連絡を入れた青江。恐らく脳手術を行った甘粕の息子、謙人が円華の探し人だ。彼女はきっと事故の謎を解明しているはずだと円華に教えを乞うた。すると、彼女は公園の小川へ彼を呼び、立つ場所と時間を細かく指定。そして、ドライアイスの煙を用いて、空気の流れを可視化した。煙は青江だけを避けて渦巻く。驚愕した彼はその現象を容易には信じられず。だが、そこへ黒服の男達が現れ、円華を囲む。青江もまた彼らに促され、一緒に行くことになった。
開明大学の数理学研究所へ案内された青江は、脳神経外科医である円華の父親と対面。そこで、驚愕の真実を知ることになる。特殊な手術を施された謙人は3年後、絶対予測ができる恐るべき計算能力を発揮していたのだ。更に円華の父親は実の娘にも、その手術を施した。この研究は政府からの依頼にて極秘に行われていたが、脳外科的にはかなり難しい手術であり成功例は今のところ、円華と謙人のみであった。そうなると、自然現象を予測して人が死ぬよう陽動できるとすれば、円華以外にはラプラスの魔王と呼ばれる謙人しかいない。青江は謙人が復讐をしているのではないかと考えるのであった。
映画『ラプラスの魔女』のあらすじ【転】
研究所にて思案した青江はもうこれ以上、この件に関わるべきではないと判断し、帰路に就こうとする。だがその時、研究所内を疾走する円華を発見。彼女は青江が乗るエレベーターへ飛び込んで来て、協力が必要だと言うのでついて行くことにした。
中岡の捜査により、謙人が記憶を保持していたことが判明。更に、謙人は円華にラプラスの悪魔になるには覚悟が要ると言っていたらしい。彼は自然現象を利用して連続殺人を行っている。青江には今の人類には、その能力は早いのではないかと感じられた。
乱流の予測が苦手だった謙人。以前、円華は竜巻にて母親を亡くしたトラウマを克服しようと、竜巻が出るタイミングを予測してもらったが、その時は上手くいかなかった。しかし、その夜は月の虹が出る絶好の気候で、2人でそれを眺めたのである。少なくとも、円華にとって彼は悪人ではなかった。
水城千佐都を尾行することにした青江と円華。一度、中岡に連絡を入れると、実は甘粕と妻は元より不仲で、離婚寸前だったことが分かる。更に中学生だった娘は援助交際で問題を起こし、児童相談所の世話になっていたらしい。ではなぜ、謙人は記憶を失ったふりをしたのか。思考を巡らせた青江は、恐らく犯人が身近にいて、身を守るためだったのだろうと予想。そうなると、謙人の一番側にいた人物は父親のみ。家族を硫化水素事故に見せかけ、殺害したのは父親の甘粕だったのである。
千佐都が甘粕の施設へやって来たため、見張っていた青江と円華だったが、そこに公安と研究所の警備が現れ対立する。警備が円華の味方になってくれたため、2人は甘粕の後を追うことができた。行き先は奴が書いていた絵コンテに示されている。
映画の撮影場所となった崖の中に建つ廃墟へやって来た甘粕は、千佐都の意識を奪って邸の中へ。そこで、父と息子は8年振りの対面を果たした。
映画『ラプラスの魔女』の結末・ラスト(ネタバレ)
少し遅れて屋敷へやって来た青江と円華。暗雲垂れこめる空を窺い、この場所にてダウンバーストが発生するのを予測。全ての条件が揃い始めていると言う円華。恐らく、謙人は父親と共にダウンバーストで死のうと考えているのだ。しかし、こんな時になって円華のトラウマが発生。彼女は怯えてしゃがみこんでしまうが、青江の励ましでトラウマを乗り越える。彼女は風の流れを読み、謙人を助ける方法を考えた。
その頃、甘粕は映画監督としての自分勝手な考えにより、家族を殺害したと自白。理想の家族を演出するために自身のブログで美化した悲劇を描き、後に自分の人生が代表作としてこの世に残されると豪語した。彼は隠し持っていた銃を手に、息子をも殺そうとする。そこへ円華が乱入。直後、ダウンバーストが発生する。強風が吹き荒れ、円華が予測して置いた車が風によって吹き飛ばされる。そうして、予測通りに邸へ激突した。
これにより、穴が開いた邸の内圧が外と同じになり、爆発力を弱めることに成功。怪我はしたものの全員が生き延びた。瓦礫に埋もれた父親へ近寄ろうとした謙人。彼の前に円華が立ち塞がり、復讐をやめるよう説得する。彼女の強い意思に負けた謙人は、父親へと声をかけ涙を流した。その時、空に浮かんだ月に虹がかかる。その美しい月光を思わず眺めてしまった円華と青江。気がついた時には謙人の姿はどこにもなかった。
その後、硫化水素による殺人やラプラスの悪魔に関しての情報は、国家権力によって極秘とされ、事件は事故として処理された。姿を消した謙人については、未だに発見されていない。後日、救助されたはずの甘粕が自殺したとのニュースが流れ唖然とした青江。そんな中、彼の元に円華が訪ねて来る。遠くへ行くので挨拶に来たと言う。彼女はもし未来が見えていたとしたら、知りたいかと青江に問う。彼は少し考えた後、知りたくないと答えるのであった。
映画『ラプラスの魔女』の感想・評価・レビュー
原作はミステリー作家として名高い、東野圭吾氏の書き下ろし長編小説。始まりは事故の調査だったが、そこから驚くべき問題へ突入していく。ストーリーとしてはかなり引き込まれる内容で、いつの間にか没頭している。果ては国家機密の研究が関わってきて、かなり大規模に。絶対予測ができる知能とはいかほどのものか、ぜひとも体験したいものである。
緻密に作り込まれた物語で、専門用語も沢山出てくるが、ちゃんと分かりやすく説明されるため、混乱することはない。豊川悦治が演じる映画監督の狂気はさすがと言えるし、刑事役の玉木宏もはまり役だと感じた。(MIHOシネマ編集部)
みんなの感想・レビュー