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映画『星めぐりの町』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『星めぐりの町』の概要:愛知県豊田市の山奥にて豆腐屋を営む主人公。ある日、亡き妻の遠縁にあたる、東北大震災にて被災した少年を引き取ることになる。だが、少年は震災でのトラウマと家族を亡くしたことで心を閉ざしていた。人として男として、生きることを教える感動作。

映画『星めぐりの町』の作品情報

星めぐりの町

製作年:2017年
上映時間:107分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:黒土三男
キャスト:小林稔侍、壇蜜、荒井陽太、神戸浩 etc

映画『星めぐりの町』の登場人物(キャスト)

島田勇作(小林稔侍)
大豆と水に拘りを持ち、丹精込めて豆腐を作る職人。愛情深い人物で妻亡き後、娘の志保を男手一つで育て上げる。普段は温厚で思慮深く、非常に人好きのする性格だが、ここぞという時に必要な言葉をかけることのできるできた人物。
島田志保(壇蜜)
勇作の1人娘。車の整備士をしており、エンジン音だけで異変を聞き分けることができる。大型バイクを乗りこなす男勝りであるものの、内面は非常に女性らしく細やか。単独でふらりと向かうツーリングや日本画が趣味。
弥生(高島礼子)
小料理屋の女将。勇作の豆腐に惚れこみ、店でも数量限定で出している。客あしらいは堂に入ったもので、会社の重役や社長などの顧客を多く持つ。
木内政美(荒井陽太)
5歳の頃、東北大震災にて被災し、家族全員を亡くした少年。勇作に引き取られるも、心を閉ざしている。言葉数は多くないが、素振りや行動に少年らしさが垣間見える。後に率先して勇作の豆腐作りを手伝うようになる。

映画『星めぐりの町』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『星めぐりの町』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『星めぐりの町』のあらすじ【起】

愛知県豊田市の山奥にて、平野屋豆腐店を営む島田勇作は娘の志保と2人暮らし。勇作は若い頃、京都にある豆腐の名店で修行した後、のれん分けしてもらった経験を活かし、大豆と水に拘って丹精込めた豆腐を作る職人だった。彼は移動式の販売トラックで週3日、地域を回って豆腐の販売を行っている。娘の志保は優れた車の整備士で大型バイクを乗りこなす男勝り。早くに妻を亡くした勇作は、独り身の志保をとても心配していた。だが、娘は父の心配も気にせず、休日になったらバイクにまたがり早朝にふらりとツーリングへ出かけてしまうのだった。

勇作の豆腐は地域でも人気で、それに加え彼自身も営業上手である。たった1人で豆腐を作っているので、お客さんには1人1丁の販売でお願いしていた。更に豆腐を届けるついでに独居老人の家へも訪問し時々、食事の面倒を見たりもする。その日も方々へ足を伸ばし、自宅へ戻った勇作。

家の前に後輩の警察官が来ているのを目にする。彼は1人の少年を連れていた。聞くところによると少年、木内政美は5歳の頃、東北大震災で被災し家族全員を津波で失ったらしい。実家は岩手県にあったが、その後も様々な場所をたらい回しにされ、どこに行っても馴染めなかったと言う。そして、とうとうここへ辿り着き、警官は勇作に政美を預かってもらおうと考えたらしい。どうやら亡き妻の遠い親戚でもあったらしく、勇作のところが最後の頼みの綱なのだそうだ。

勇作は例え妻の遠い親戚であったとしても、子供の面倒を見るほど暇ではないと断ったがその時、消防車のサイレンを耳にした政美が悲鳴を上げて家から飛び出してしまう。幼い頃に経験した恐怖や絶望が、彼の心に深い傷を作っているようだった。
勇作は警官とあちこちを探し回り、倉庫の片隅に蹲っている政美を発見。その姿を目にした勇作は彼を預かることにするのであった。

日が暮れた頃、志保が帰宅。だが、政美は勇作と志保に怯えて逃げ回るばかりで一切、言うことを聞かない。そんな少年に志保は腹を立て早々に匙を投げたが、勇作は怒ることもなく政美を優しく労わるのであった。

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映画『星めぐりの町』のあらすじ【承】

勇作の豆腐や油揚げは、小料理屋でも人気を博している。料理屋の女将である弥生は勇作と旧知の仲で、彼が作る豆腐製品に惚れこんでいた。故に、豆腐や油揚げが最も美味しく食べられるよう細心の注意を払って料理に出しているのだった。
弥生の店には大会社の重役や社長もやって来る。常連の彼らもまた勇作の豆腐や油揚げに心を奪われ、接待にも店を利用していた。

店におからを届けた勇作は、弥生を介してある男性と挨拶を交わす。まさか、その男性がある大会社の社長であるなどと、夢にも思わない勇作。その後、帰宅した彼は政美が夕食を食べていないと志保から聞き、手ずからおにぎりを作った。そして、引き篭もっている部屋へ届ける。

ところが、朝になってもおにぎりには手がついた形跡がない。台所へ向かった勇作は、政美が冷蔵庫を漁っている姿を目撃するのだった。朝の日課として、勇作は水に浸した大豆の様子を見る。その後に志保と朝食を摂り、移動販売へ。その頃には志保もまた会社へ出勤して行く。勇作は出発前、政美に声をかける。好きにしていいと言うと逡巡した後、一緒について来るのだった。

昼頃、少年に弁当を渡し豆腐の配達へ向かったが、戻って来ると車中で政美が弁当を口にしている。勇作は建物の影に身を潜め、その様子をこっそりと見守るのであった。その日から政美は食事を摂るようになり、ひとまずは安心した勇作親子。

翌日も豆腐の移動販売に政美を連れて出た勇作だったが、交差点で停車した際、横断歩道を保育園児たちが通り過ぎる。その様子を目にした政美は目の色を変え突然、車から降りて走り出して行く。保育園児たちは近くの公園へ散歩に来ていたらしいが、政美は幼くして亡くなった妹を思い出し、よく似た女の子を抱き締めているのだった。そのせいで、保育士に怒られてしまうも、勇作と通りかかった警官とで頭を下げた。

映画『星めぐりの町』のあらすじ【転】

肌身離さず手のひらサイズのスノードームを持っている政美。どうやらそれは妹の形見らしい。少年は亡き幼い妹を恋しがり涙を流した。勇作は彼に泣きたい時は思い切り泣けと言うのだった。

次の日の朝、政美が初めて食卓へ着いた。勇作親子は特別に何か言葉をかけるでもなく、少年が食事するのをそっと見守る。その日は政美を連れて和紙工房へ。紙の原料となる楮は、皮を剥いて中身だけを使うため、木の皮は廃棄される。勇作はその皮を使って水のろ過をしているのだ。厳選された大豆はもちろんのこと、水もまた豆腐の命である。自宅へ帰った勇作は政美にろ過のやり方を教えつつ、作業を少しばかり手伝ってもらった。

少しずつ少しずつ。政美は勇作親子との生活に馴染む。秋が過ぎ、冬がきて桜が咲く春になった。少年は豊かな自然の中で、穏やかに過ごしながら職人として豆腐を作る勇作の背中を見続けた。

そんなある日、移動販売中に黙って政美が姿を消してしまう。近くにサッカーグラウンドがあったため、もしかして来ているかもしれないと立ち寄ってみた勇作。思った通り、政美は同年代の少年達に混ざってサッカーボールを追いかけていた。相変わらず、彼は何も言わなかったが、褒めると少しはにかむ。

映画『星めぐりの町』の結末・ラスト(ネタバレ)

いつからか、政美は率先して豆腐工房の床掃除を始めるように。大人用の長靴ではサイズが大きいので、いつも裸足でやっていた。
掃除が終わると、志保が乗っているバイクを眺める政美。志保はそんな彼の姿を見かけ、バイクに乗せることにした。すると、政美は嬉しそうな笑みを見せるのだった。

以来、政美は目に見えて自分から行動するようになる。移動販売へ連れて行くと、勇作よりも早く車から降りて準備を始める。勇作の真似をして、手拭いを腰に挟めるのも忘れなかった。そうなると俄然、可愛く思えてしまう。勇作は頑張ってくれる政美のために衣類や足りない物を購入し、こっそり部屋に置いておいた。
すると、彼はとても喜び、ろ過装置にお礼の手紙を貼り付けてくれる。早朝、その手紙を目にした勇作もまた顔には出さないが、嬉しく思うのであった。

その日、町へ配達に向かうことになった勇作。政美に声をかけると留守番をすると言うので置いて行った。弥生の店へ夏限定で作っている絹ごし豆腐を届ける。絹ごしは手間もコストもかかり赤字になるため、いつもは作らないが、政美に食べさせたくて作ったと言う。その余りを世話になっている弥生と店員たちに分けたのだった。1年に夏の2か月間しか食べられない限定の絹ごし豆腐を、春に食べられると店員たちは大喜び。

だがその時、足元がよろめくほどの地震が彼らを襲う。勇作は揺れもまだ治まらないうちに急いで自宅へ帰った。1人で留守番をしている政美が心配だったのだ。しかし、家の中に政美の姿はなく、自分の荷物も持たずに逃げ出したようだった。同様に心配して志保も帰って来たが、近くを探しても見つからない。志保は警察に捜索願を出し、消防団にも近くの山を探してもらった。

その間、勇作は政美を探さずに自宅待機。彼は政美のことは放って置けと言う。例え子供でも男なら、歯を食いしばって乗り越えなければならない壁がある。今、誰かがそれを助けてしまえば、人として男として強くなれないと言う。政美は家族を失った心の傷を受け入れ、乗り越えなければならない。それが、今なのだった。そんなことを言いつつ、やはり政美が心配で寝ずに帰りを待っている勇作。

翌早朝、家の前に政美が立っていた。志保はそんな彼の姿を目にし、感極まって涙。勇作は何事もなかったかのように政美を迎え、朝食の準備を行った。
その日の昼、町を眺望できる公園へ政美と来た勇作。辛いのは自分だけではない。みんな辛いと思っていても、口には出さずに生きている。だから、政美も負けずに生きなければならない。すると、政美は宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を唱和し始める。勇作も一緒に唱和すると、最後に少年がこう言った。

自分はもうどこにも行かない。雨にも負けず、風にも負けず豆腐を作る。そんな勇作のような豆腐屋になりたいと。そうして、勇作と政美は互いに抱き締め合うのであった。

映画『星めぐりの町』の感想・評価・レビュー

作中で登場する食事がとにかく美味しそう。食は直接的に生きることへ繋がるため、食事や料理のシーンをしっかりと加えたのではないかと言われている。加えて豆腐職人である勇作の人となりが素晴らしく、男ならどっしりと構え、黙って見守ることを一貫している。

震災で被災したことは確かに心を痛める出来事であり、トラウマになることも当たり前のことと思う。少年は心の傷から立ち直れずにいたが、勇作の背中を見て次第に心を開くようになる。その様子がじっくりと描かれている素晴らしい作品。(MIHOシネマ編集部)

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