映画『老人ファーム』の概要:和彦は母が病気を患ったことをきっかけに、実家へと帰った。そして、老人ホームの介護職員の仕事に就いた。和彦は周囲に対して文句や意見を言わず、大人しい性格だった。しかし、気の強い入居者のアイコと出会ったことで少しずつ変わり始める。
映画『老人ファーム』の作品情報
上映時間:82分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:三野龍一
キャスト:半田周平、麻生瑛子、村上隆文、合田基樹 etc
映画『老人ファーム』の登場人物(キャスト)
- 和彦(半田周平)
- 母が病気を患ったことをきっかけに、実家へと帰る。老人ホームの介護職員として転職する。良く言えば優しく、悪く言えば主体性がない性格。恋人の遥のことを大切に思っている。
- アイコ(麻生瑛子)
- 老人ホームの入居者。気が強く、人に助けてもらうことを嫌う。後藤に対して反抗的な態度を取る。
- 後藤(村上隆文)
- 老人ホームの管理責任者。不利益を被ることを嫌う。入居者に対して威圧的な態度を取る。
映画『老人ファーム』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『老人ファーム』のあらすじ【起】
和彦は老人ホームで働くため、面接を行った。面接の場には和彦だけではなく、根元という青年もいた。根元は仕事に対する思いを、施設管理者の後藤に熱く語った。その間、和彦は入居者の様子を眺めた。電源が入っていないテレビを見ながら笑っている老人がいた。その老人は和彦達が帰るのに合わせて施設を出て行こうとした。後藤が老人を引き止め、施設の中に戻っていった。ドアには暗証番号式の鍵が取りつけられていた。
和彦は病院へ行き、退院した母と一緒に家に帰った。和彦は介護職員として働くようになった。掃除をしたり食事の介助をしたり、やることは多かった。母から仕事の様子を聞かれるが、具体的なことは何も言わなかった。ただ、良い人達ばかりだと話した。母は実家に帰ってきて良かったじゃないかと笑った。
根元の都合で、和彦は代わりにシフトに入ることになった。だが、文句を言わず、素直にそのことを受け入れた。夜、和彦が車の中で食事をしていると、恋人の遥が会いに来た。和彦は母の前や職場では見せないような穏やかな表情で、遥との時間を楽しんだ。家に帰ると、母からどこに行っていたのか聞かれた。和彦はパチンコだと誤魔化すが、遥と会っていたことはバレていた。母は2人の関係を認めておらず、不機嫌だった。
映画『老人ファーム』のあらすじ【承】
和彦は後藤に頼まれ、入居者達を外に連れ出した。連れて行ったところは、遊具があり動物がいる場所だった。皆が思い思いの時間を過ごす中、入居者のアイコは動物を見ることもなく座っていた。和彦は動物が嫌いなのかと思い、声をかけた。すると、人間よりもマシだと言われる。アイコにあなたはどうか質問されるが、和彦は何も答えられなかった。
後藤は入居者の男性が勝手にプリンを食べようとしていることに気づき、取り上げてルールを守らないとダメだと叱った。和彦は男性が不憫に思い声をかけるが、男性は何も言わず悲しそうな表情で立ち去った。後日、和彦は男性のためにプリンを購入して来た。すると、後藤からルールが乱れるので勝手なことをするなと注意される。和彦は後藤に何も言い返せなかった。その代わり、その場に現れたアイコが、後藤に小さな男だと文句を言った。
和彦は蹲って倒れているアイコを見つけ、傍に駆け寄った。立つのを手助けしようとするが、アイコは人に頼るのを嫌い和彦を拒んだ。和彦はそのままにしておくことができず、部屋に戻るのを見守った。アイコは和彦のことを何を考えているのか分からないと言い、そんな人に助けてもらうのは嫌だと突っぱねた。和彦はどうすればいいか分からず、子供のように途方に暮れた。
映画『老人ファーム』のあらすじ【転】
七夕。老人ホームでも笹が飾られ、入居者の願いごとが吊るされた。短冊には「恋がしたい」「酒が飲みたい」「お菓子が食べたい」と書いてあった。和彦はお菓子やお酒を用意し、入居者に振る舞った。皆楽しそうに騒ぎ、アイコも上機嫌に歌を歌っていた。
和彦は後藤の指示を聞かず、反抗的な態度を取るようになった。後藤はそんな和彦に戸惑う。そんなある夜、アイコが行方不明になった。焦った後藤は和彦を罵りながらアイコを探した。
和彦はアイコを見つけるが、様子がおかしかった。いつもの強気なアイコはどこにもいなかった。アイコは死ぬときぐらい放っておいて欲しいと言い、泣き崩れた。和彦はそんなアイコの姿にショックを受ける。後藤はアイコを連れて帰ると、拘束具を使って部屋から抜け出せないようにした。そこにアイコの息子がやって来た。息子は母の姿を見て激昂した。後藤は和彦に罪を擦りつけた。
和彦は仕事を辞めた。遥は和彦が無職になったことを気にしておらず、そんなことで悩むなんてダサいと笑った。一方、母は落ち込んでしまい、和彦と会話もせずに仏壇の前に座り込んだ。
映画『老人ファーム』の結末・ラスト(ネタバレ)
和彦は老人ホームに戻り働き始めた。入居者のために行動することを止め、掃除を行って決められた通りに働いた。段ボール箱の中には、和彦が育てた花が捨てられていた。あれから、アイコはすっかり大人しくなっていた。アイコの息子も老人ホームに来ることはなく、後藤は平穏になったことを喜んでいた。和彦は反抗せず、後藤の話を聞いていた。
入居者の男性は和彦にお酒が飲みたいと訴えるが、和彦が答えることはなかった。入居者の男性はそんな和彦に失望する。和彦は段ボール箱に捨てられていた物を燃やした。そこに、部屋から抜け出してきたアイコが現れる。アイコは和彦のことをすっかり忘れていた。
和彦はアイコを連れてダム湖を訪れた。アイコは震える声で和彦に感謝し、和彦は笑顔を見せた。アイコは橋から飛び降りたのか、突然姿を消した。和彦はアイコが持っていた杖を回収し、車に乗り込んだ。
和彦は老人ホームへと戻った。介護職員達はアイコがいなくなったことで騒いでいた。後藤は展示物を滅茶苦茶にし、同僚達を威圧した。同僚達は和彦の豹変に恐怖した。アイコのこともあったため、警察に通報しに行った。和彦は窓を開け、老人達を逃がした。しかし、後藤によって連れ戻されてしまう。和彦は杖を振りかぶり、後藤を威圧した。そして、冗談だと呟いた。
遥は家から出て行く男性の頬にキスをして笑顔で見送った。和彦は男性が立ち去るのを待ってから遥の家を訪ねた。
映画『老人ファーム』の感想・評価・レビュー
主人公の和彦は良く言えば優しく、悪く言えば主体性がない男性である。周囲に対して文句や意見を言うこともなく、鬱憤を我慢しながら日々を過ごしている。特に珍しくもない、平凡な人物である。そんな彼が、気の強い老人アイコと出会ったことで少しずつ変わり始める。物語ラストの和彦の行動を見ているとその変化が良かったのかは不明である。だが、きっと和彦にとって意見を述べることができるアイコは、憧れの対象だったのではないかと思う。(MIHOシネマ編集部)
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