映画『薄氷の殺人』の概要:ディアオ・イーナン監督の長編3作目となる作品。第64回ベルリン国際映画祭では金熊賞と、ジャン役のリャオ・ファンが銀熊賞を受賞した。連続殺人事件に挑む元刑事が、事件に深く関わる女性に惹かれながらも真相へと近付いていく様を描く。
映画『薄氷の殺人』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:ラブストーリー、サスペンス、フィルムノワール
監督:ディアオ・イーナン
キャスト:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン、ワン・ジンチュン etc
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映画『薄氷の殺人』の登場人物(キャスト)
- ジャン(リャオ・ファン)
- 刑事として働いていたが、怪我が原因で保安課へ異動になる。以来、やりがいをなくし酒ばかりの生活を送っていた。同僚ワンとの再会をきっかけに、迷宮入りとなった過去の担当事件を解決すべく奔走する。
- ウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)
- クリーニング店で働くとても美しい女性。周りの男たちが相次いで殺害されたため、警察から目を付けられる。事件の解決に協力するうちに、ジャンに惹かれ始める。
- リアン・ジージュン(ワン・シュエピン)
- 1999年に見つかった殺人事件の被害者かと思われていたが、実際はある事件を隠蔽するために死人に成りすましていた。逮捕時に逃走したことにより、警官に射殺された。
- ワン(ユー・アイレイ)
- ジャンの刑事時代の同僚。再会したジャンの協力を得てリアンを追い詰めるが、隙を突かれ殺されてしまう。
映画『薄氷の殺人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『薄氷の殺人』のあらすじ【起】
1999年の夏。中国北部の各地にある石炭工場で、切断された体の一部が相次いで発見されていた。つい先日妻との最後の旅行を終え、離婚が成立したばかりの刑事、ジャンがこの事件の担当となる。やがて身分証と服が発見され、リアン・ジージュンという男のものであることが判明した。
ジャンはリアンについて調べるため、職場だった工場へ聞き込みに行く。同僚の男に尋ねると、リアンは8年に渡って計量部で働いていたと言う。また、体の一部が発見された15箇所の工場のほとんどに、リウ・ファーインという男が石炭を運んでいたとの情報を得た。
ジャンたちはリウの居場所を突き止め、理容室にいたところを取り押さえた。彼らを見て逃げ出したもう一人の男も共に捕える。しかし、男は銃を隠し持っていて、突如撃ち合いが始まった。男とリウ、そして同僚の刑事2人が死亡した。リウが最後の力を振り絞って撃った1発が当たり、ジャンも負傷する。容疑者リウが死亡したことにより、事件は迷宮入りとなった。
映画『薄氷の殺人』のあらすじ【承】
2004年の冬。怪我が原因で、ジャンは工場の保安課に異動になっていた。やりがいを失ったジャンは、酒を飲んでばかりの生活を送っていた。
そんなある日、ジャンはかつての同僚ワンと再会する。ワンは同僚2人と車内で張り込みをしている最中だった。2001年と最近に起きた2件の殺人事件に関係する女性、ウー・ジージェンを張っているのだと言う。ウーは、1999年に死亡したリアンの妻である。被害者は2人共体を切断されていて、1999年の事件を彷彿とさせるものであった。
元刑事として血が騒ぎ出したジャンは、ウーを探るため勤務先のクリーニング店を何度も訪れた。ウーが配達に出たときには尾行もするが、バイクのエンジンがかからなくなり途中で見失ってしまう。しかしジャンはそこで、来るときにはなかった不審な足跡を雪の上に発見する。
ある日、怪我の手当てをしたのがきっかけで、ジャンはウーをスケート場へ誘うことに成功する。美しいウーに、ジャンは惹かれ始めていた。ワンも同行し、遠巻きにウーを見張る。スケートのあと、2人は映画館へ移動した。ワンは、2人が乗ったタクシーを追う不審なトラックに気が付く。映画の上映中、トラックからはスケート靴を担いだ男が降りてきた。ワンは男を容疑者だとみなし手錠をかけ、仲間に応援を求める連絡を入れた。しかし、その隙にスケート靴の歯で手錠を切っていた男に殺されてしまう。
映画『薄氷の殺人』のあらすじ【転】
ワンの死後、ジャンはスケート靴を担いだ男に付けられていることに気が付く。ジャンは人で混み合うダンス会場へと入って男を巻き、逆に男の尾行を開始する。そして、男が鉄橋の上から切断したワンの遺体を落とすのを目撃した。鉄橋の下には、石炭を積んだ列車が走っていた。ジャンは、男が1999年に死亡したはずのリアン・ジージュンではないかと疑い始めていた。石炭を工場へと運ぶトラックは、すべて計量台を通る。切断した体をあちこちの工場へばらまけるのは、そこで細工ができる計量員だ。体をすべて列車に落とすと、男はスケート場へ向かった。ジャンはスタッフに頼み、リアンの名で呼び出しの放送をしてもらう。するとそれを聞いた男が場外へと逃げ出し、ジャンの疑念は確信へと変わった。
ジャンはウーに真相を問い質した。ウーは、5年前リアンが強盗をしようとして人を殺してしまい、その罪を隠すため死人に成りすましたのだと告白した。そしてそれ以来、ウーに近寄ってきた男を殺していたのだった。ウーにリアンを呼び出してもらい逮捕を試みたが、途中で気が付いたリアンは逃走する。刑事たちは発砲しながら追いかけ、その弾が当たってリアンは死亡した。
警察は、1999年に見つかった被害者の身元捜査を続けていた。ジャンはクリーニング店へと赴き、店主に頼んで1999年にウーがだめにしてしまったという皮の上着を出してもらう。当時、この上着の持ち主は店に苦情を入れてきていたが、ある日突然姿を消していた。ジャンはこの上着の持ち主が真の被害者ではないかと考えた。ポケットに入っていた名刺を手掛かりに、ナイトクラブ「白昼の花火」へと辿り着く。オーナーの女性に尋ねると、上着は夫のものであると認めた。1999年に、夫はある女と出て行ったと言う。その女こそが、ウーなのだった。
映画『薄氷の殺人』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジャンはクリーニング店を訪ね、ウーを遊園地に誘う。観覧車から見える夜景には、ナイトクラブ「白昼の花火」が一際目立っていた。ジャンは、真相について自分から話すようにとウーを促す。翌朝、刑事たちに連行されたウーは、本当のことを打ち明けた。上着はリー・リエンチンという男のもので、賠償金を払えなかったウーに何度も体の関係を強要していた。それに耐えかねたウーは、ある日リーを刺し殺してしまった。リアンが強盗殺人を犯したのではなく、ウーのために事件を隠蔽しようとしたことがこの連続殺人事件の始まりだった。
一方、ジャンは久しぶりに社交ダンスクラブを訪れていた。元刑事としての使命感と愛する女性の狭間でやりきれない思いを抱えていたジャンは、流れ始めた音楽に合わせてでたらめなダンスを踊る。
そして後日、ウーがかつて住んでいたアパートで現場検証が行われた。検証が終わり外に出ると、大量の花火がビルの屋上から発射される。ジャンの仕業だった。白昼の青空で炸裂する花火を見て、ウーは僅かに微笑むのだった。
映画『薄氷の殺人』の感想・評価・レビュー
切断された手が工場内へと運ばれていく冒頭の場面や、トンネルをくぐり抜ける間に月日が進むという演出が印象的だった。ウー・ジージェン役のグイ・ルンメイがとても美しく、画面に映るたびミステリアスで儚げな雰囲気に釘付けになる。全体を通して重く暗い空気が漂う作品だが、原題の「白日焰火(白昼の花火)」を表すラストシーンによって少し救われたような気持ちになった。(MIHOシネマ編集部)
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