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映画『わが谷は緑なりき』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『わが谷は緑なりき』の概要:ジョン・フォード監督により、リチャード・レウェリン原作のベストセラー小説が映画化された作品。第14回アカデミー賞では、最優秀作品賞を含む計6部門で受賞した。ウェールズ地方の炭鉱町を舞台に、そこで暮らす少年ヒューとその家族の日々を描く。

映画『わが谷は緑なりき』の作品情報

わが谷は緑なりき

製作年:1941年
上映時間:118分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ジョン・フォード
キャスト:ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール etc

映画『わが谷は緑なりき』の登場人物(キャスト)

ヒュー・モーガン(ロディ・マクドウォール/ナレーション:アーヴィング・パイケル)
モーガン家の末っ子。頭が良く、一家で初めて学校へ通う。父や兄を尊敬していて、大学進学を勧められても炭鉱で働く道を選ぶ。嫁ぎ先から戻ってきた姉を訪ねたり、夫を亡くしたブロンの家に住み込むことを決めたりと家族想いの少年。
ギルム・モーガン(ドナルド・クリスプ)
ヒューの父。厳格な性格で、教会への敬意を大事にしている。組合を作るという息子たちの提案やストライキにも反対し、最後まで炭鉱で働き続けた。
ベス・モーガン(サラ・オールグッド)
ヒューの母。家族想いで、相手が誰であろうと臆せず意見できる果敢な女性。息子たちとの別れや夫との死別にも気丈に振る舞った。
アンハード・モーガン(モーリン・オハラ)
ヒューの姉。母と共に父や兄たちの世話を焼く優しい性格。グリュフィド牧師と惹かれ合うも、炭鉱主の息子と結婚する。結婚生活はうまくいかず、失意のうちに嫁ぎ先から戻ってくる。
イヴォール・モーガン(パトリック・ノウルズ)
モーガン家の長男。ブロンと結婚したり、合唱を披露するためウェールズ城に招待されたりなど、一家の幸せや名誉を代表するような存在だったが、炭鉱での事故により命を落とした。
イアント・モーガン(ジョン・ローダー)
モーガン家の次男。組合を作ることを父に提案するも、反対され家を出る。のちに家に戻るが、高給を理由に鉱員を解雇され、村を出て行った。川に落ちた母ベスとヒューを助け、ヒューが学校から傷だらけで戻ってきたときには憤慨した。
デビー・モーガン(リチャード・フレイザー)
モーガン家の三男。イアントと共に組合を作るために出て行く。家に戻ったもののイアントと同じ理由で鉱員を解雇となり、村を去った。
オーエン・モーガン(ジェームズ・モンクス)
モーガン家の四男。ギルム・ジュニアと共にアメリカへ赴く。
ギルム・モーガン・ジュニア(エヴァン・S・エヴァンス)
モーガン家の五男。ストライキの後、全員が職にありつけないという状況を見て、アメリカに行くことを決意する。
グリュフィド牧師(ウォルター・ピジョン)
大学を出て、谷に来たばかりの牧師。寝たきりのヒューを励まし続け、快復してからは勉強を教えて学校へ通う後押しをした。アンハードとはお互い惹かれ合っていたが、犠牲と献身に生きると決めた自身の人生に巻き込むことはできないと告げる。
ブロン(アンナ・リー)
隣の谷からイヴォールに嫁ぐためやって来た美しい女性。ヒューが寝たきりとなった際には献身的に看病をした。イヴォールを事故で亡くし、その葬儀の夜に出産する。

映画『わが谷は緑なりき』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『わが谷は緑なりき』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『わが谷は緑なりき』のあらすじ【起】

ヒュー・モーガンは生まれ育ったロンダの谷を去ろうとしていた。母のショールで荷物を包みながら、ヒューは谷で過ごした長い年月に思いを馳せ始めた…。

ウェールズ地方の緑豊かな谷で、モーガン一家は暮らしていた。父ギルムと5人の兄たちは炭鉱で働く鉱員だった。鉱員たちは炭鉱の行き帰りの道でよく歌を歌っていて、合唱の習慣が根付いた村であった。炭鉱から帰ってきた父と兄たちが風呂に入るのを姉のアンハードが手伝い、その後は家族揃って食事をし、片付けたあとには父からお小遣いをもらう、という毎日。まだ幼い末っ子のヒューにとっては、そのわずかなお小遣いを持って通りの向こうまで走り、菓子店でタフィーを買うのが楽しみだった。

ある日の午後、隣の谷からブロンという美しい女性が両親を訪ねてくる。兄のイヴォールに嫁ぎに来たのだ。ブロンに一目惚れしてしまったヒューは、何も言葉を発せなかった。ブロンに挨拶をするために両親と兄たちが揃うと、ヒューは部屋へ戻るように言われてしまい、名残惜しそうにその場を離れた。

結婚式の日、一家と村の人々は教会へ集まった。母ベスは息子の晴れ姿を見て号泣していた。式を担当するのは、村にやってきたばかりのグリュフィド牧師だった。アンハードとグリュフィド牧師は、お互いを一目見た瞬間に恋に落ちていた。結婚式の後も、祝いの宴はモーガン家で遅くまで続く。グリュフィド牧師も訪ねてきて、誰かが歌い出した歌をアンハードと一緒に歌い、楽しそうに笑い合うのだった。

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映画『わが谷は緑なりき』のあらすじ【承】

翌日。日当を減額するという、炭鉱主エバンズからの知らせが貼り出されていた。別の鉄工所が閉鎖され、失業した鉱員たちが低い賃金で仕事を受けているためだった。兄たちは鉱員で組合を作るべきだと提案するが、ギルムは反対する。兄のイアント、オーエン、デビー、ギルム・ジュニアの4人は家を出て行くことを決意し、食事中にも関わらず去っていった。すかさずアンハードも立ち上がり、兄たちの世話をするため自分も一緒に行くと言うが、ベスに止められ部屋へ行くように言われてしまう。自分はここに残っているのだということを伝えるために、ヒューはわざと食器の音を立てた。いるのはわかっている、と父に答えてもらい、ヒューは安心したように微笑んで食事を再開した。

日当減額の影響は大きく、ついに鉱員たちはストライキを起こした。22週間に渡ってストライキは続き、反対派のギルムは村人から冷たく当たられるようになっていた。その状況に耐えかねたベスは、丘で行われる男たちの集会に自分も参加することを決める。雪が吹きすさぶ夜、大勢の村人を前にしてベスはギルムへの行いを糾弾した。

集会を終えたヒューとベスは家路についたが、途中で川に落下してしまう。ヒューは通りがかったイアントたちに助けを求め、救出されるが意識を失う。その後、無事意識を取り戻すも、極度の冷えにより体がうまく動かなくなっていた。また動かせるようになるかはわからない、と医者が話すのを聞いてしまい、不安がるヒューをグリュフィド牧師が励ます。ベスも意識はあるものの、上の階で寝たきりとなっていた。しばらくの間、ヒューとベスはお互いのいる部屋の天井と床を棒でつついて会話をした。

映画『わが谷は緑なりき』のあらすじ【転】

春が訪れ、まだぎこちないながらもベスは歩けるようになって、階下までヒューに会いに来た。すっかり白くなった母の髪に驚くが、ヒューは再会を喜んだ。イヴォール率いる多くの村人がお見舞いに集まり、ベスに歌を捧げる。イアント、オーエン、デビー、ギルム・ジュニアの4人も家に戻って来た。ベスは皆を食事に招き入れた。

長く続いたストライキも、グリュフィド牧師とギルムの尽力で解決した。しかし、仕事に対して人の方が多く、全員が職をもらえるわけではなかった。その状況を見て、オーエンとギルム・ジュニアはアメリカへ行くことを決めた。長く寝たきりの生活だったヒューは、グリュフィド牧師の助けもあり、元通り歩けるようになった。

ある安息日、炭鉱主エバンズの息子イエスティンからアンハードへ結婚の申し込みが入る。アンハードはグリュフィド牧師の家を訪ね、想いを伝えたが、聖職者として生きると決めた人生に巻き込むことはできない、と拒まれてしまう。お互いに想い合っているのにも関わらず、2人が結ばれることは叶わなかった。

そして、アンハードとイエスティンの結婚式が行われた。アンハードは終始浮かない表情をしていた。祝福するために集まった人々から離れたところで、グリュフィド牧師は式の様子を見守っていた。

ヒューはグリュフィド牧師に勉強を教わり、一家で初めて、隣の谷にある学校に通うことになった。しかし、炭鉱町から来たヒューは田舎者扱いされ、教師からも生徒からもからかわれてしまう。放課後、上級生たちと取っ組み合いの喧嘩をして傷だらけになって帰ると、その姿を見たギルムは闘い方を教えてもらうため、村に住む拳闘家ダイを呼んだ。おかげで生徒たちとはやり合えるようになるが、喧嘩を見つけた教師によって棒でぶたれてしまう。翌日、ダイたちは学校を訪れ、教師を拳闘でやっつけた。以後、ヒューは無事に学校生活を送れるようになった。

そんなある日、非常事態を知らせる汽笛と鐘が谷に鳴り響いた。炭鉱でイヴォールがトロッコの下敷きとなり、命を落としたのだった。不安な面持ちで玄関先に出ていたブロンは、その知らせを聞いて崩れ落ちた。イヴォールの葬式の夜、ブロンはイヴォールとの子を出産した。

学校を首席で卒業したヒューは、大学へ進学し医者や弁護士になることを勧める両親に対し、炭鉱で働くと告げる。その意志は固く、反対していたギルムもついには認めた。そしてヒューは、イヴォールを亡くし寂しがるブロンの家に住み込んで働くことになった。

映画『わが谷は緑なりき』の結末・ラスト(ネタバレ)

ヒューが炭鉱で働き始めたその日、イアントとデビーは解雇される。一番腕がいいゆえに、給料が高いことが理由だった。仕事を失った2人は村を去ることを決め、ついにヒューの5人の兄たちは皆、ロンダの谷からいなくなってしまった。

一方、アンハードは嫁ぎ先のケープタウンから単身で戻ってきた。しかし実家には戻らず、丘のてっぺんにあるエバンズの屋敷で生活していた。ヒューが屋敷を訪ねると、グリュフィス牧師との別れや意地悪な使用人たちにより、アンハードはすっかり気力を失っていた。グリュフィド牧師への想いを母に打ち明けていればよかったと、アンハードは泣きながらヒューを抱き締めた。

その頃、使用人は取り巻きたちを集め、アンハードは牧師を愛人にしていて、イエスティンとはもう離婚するのだという噂を流していた。取り巻きたちは他言しないと誓ったが、次の日には村中に広まっていた。ヒューは炭鉱で同年代の鉱員たちにいじめられ、帰り道では村の奥方たちに後ろ指を指されるのだった。

アンハードの噂に関する集会が教会にて開かれることになり、ヒューは一家で唯一出席することにした。集会の冒頭、グリュフィド牧師は村人たちの卑怯さを非難し、自身は谷から去ることを告げて教会を出て行った。ヒューは後を追い、グリュフィド牧師の家で別れの挨拶を交わしていると、再び谷に汽笛と鐘が鳴り響いた。炭鉱で落盤事故が起きたのだ。

様子を見ようと、村人たちが炭鉱に押し寄せる。ギルムの他、数人はまだ炭鉱の中にいるらしいが、続々と引き揚げられてくる人々の中にもその姿はなかった。グリュフィド牧師は有志を募り、ギルムたちの救出へ向かうことにする。ヒューも共に炭鉱を探し回り、ついに瓦礫の下敷きになっているギルムを発見した。ヒューは父に駆け寄り、抱き締め合うが、お前は立派だと言い残すとギルムは息絶えた。しかし、谷での思い出と共に、父の姿は今もヒューの心の中で生き続けているのだった。

映画『わが谷は緑なりき』の感想・評価・レビュー

谷に住む人々の心が荒んでいく様や、モーガン家から家族が去っていく様子が、炭鉱から出る廃石に丘が侵食される様子と対比して描かれているのが印象的だった。モーガン家の人々やグリュフィド牧師、ブロンを見ていると、本当の意味での強さや愛とは何なのかということを考えさせられる。谷を去る間際のヒューが昔を回顧する映画のため、もうロンダの谷は住み続けたい場所ではないのだろうと寂しい気持ちにもなる。しかし、今もヒューの心の中にある思い出や人々の姿には、現代においても大切だと言えるものが詰まっていると感じた。(MIHOシネマ編集部)

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