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映画『ベルリン・天使の詩』あらすじとネタバレ感想

映画『ベルリン・天使の詩』の概要:「ベルリン・天使の詩」(原題:Der Himmel über Berlin)は、1987年のフランス、西ドイツ合作映画。監督は「都会のアリス」、「パリ、テキサス」などのヴィム・ヴェンダース。主演は「アメリカの友人」、「ブラジルから来た少年」などのブルーノ・ガンツ。共演は本作がデビュー作のソルヴェーグ・ドマルタン。「ブリキの太鼓」、「U・ボート」などのオットー・ザンダー。「刑事コロンボ」シリーズのピーター・フォーク。シンガーソングライターのニック・ケイヴ。本作は第40回カンヌ国際映画祭最優秀監督賞を受賞。

映画『ベルリン・天使の詩』 作品情報

ベルリン・天使の詩

  • 製作年:1987年
  • 上映時間:128分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ヴィム・ヴェンダース
  • キャスト:ブルーノ・ガンツ、ソルヴェーグ・ドマルタン、オットー・ザンダー、クルト・ボウワ etc

映画『ベルリン・天使の詩』 評価

  • 点数:100点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

[miho21]

映画『ベルリン・天使の詩』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『ベルリン・天使の詩』のあらすじを紹介します。

ベルリンの街。廃墟の上から人々を見守っている天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)がいる。ダミエルは、親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)と、今日見た自然や人々の様子について情報交換し、永遠の霊であり続けながら人間ではない自分に辟易としていた。彼らはごく普通の人間の格好で街を歩き、誰彼と無く傍に寄り添うようにしてその心の言葉に耳を傾けていた、彼らの姿は子供たちには見えてはいたが、平静を装い深く関わらないように務めていた。そして彼らの目には世の中がモノクロにしか映っていなかった。彼らは毎日モノクロに映るベルリンの街中を散策し、人々の心の声に耳を傾けながら日々を過ごしていた。そんな中、刑事コロンボ役で親しまれているアメリカの映画スター、ピーター・フォーク(本人)がベルリンで撮影に入る映画の脚本を読んでいる。ピーターは元天使でありだ見えるとカシエルの存在に気づいていた。ある日サーカスに迷いこんだダミアンは、空中ブランコを練習中の美女マリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン)を見て一目惚れし、やがてマリオンの傍で彼女の心の声に耳を傾ける内に想いを止められなくなってしまう。最後の公演を前にマリオンは言い知れぬ行く先の不安を募らせていた。ロック・コンサートで踊るマリオンの手に触れるダミエル。街のコーヒースタンドでピーターはダミエルに人間になることを勧める。壁を超えてノーマンズランドを散策するダミエルは、マリオンへの愛をカシエルに告白する。そして西ベルリン側の壁の傍で目を覚ましたダミエルの眼の前には、鮮やかな色彩の世界が広がっていた。

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映画『ベルリン・天使の詩』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ベルリン・天使の詩』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

悟りと煩悩の間に揺れる人間の葛藤

二人の天使は、幸せそうに街を闊歩しながら人々の声に耳をそばだてているのだが、その悩みを聴くだけで救いの手を差し伸べることは出来ない。本来神の使いという存在であるべき天使なのだが、その存在に関して宗教的に触れる部分は描かれておらず、普通の中年紳士という出で立ちの風貌で、何とも虚無的な存在に見える。宗教の概念が救済というところに依存するのであるならば、この二人の存在はやはり堕天使ということになるのだろうか。カシエルが語っているように、自分たちは”霊”でいようと表現される部分からも、天使とは言い難い霊的な存在なのかも知れない。悟りという概念が虚無というところに行き着くのならば、生きている甲斐というものは拒絶されてしまう。本作の中で語りかけられるような詩は人の存在について考えさせられる部分であるが、生まれながらに煩悩というものに苛まれながら、その煩悩に振り回されながらも人間として生きるという意味を語っている。行き着くところは悟りなどではなく、生きる意味など考えずに日々を全うしなければならない事を語っているようにも思えるのだ。”天使”とも”霊”とも言えるような不確かで架空の存在から、宗教的でなくリアルに人間社会を見つめる事で、人々のささやかな煩悩と葛藤を描いた客観性に、ヴィム・ヴェンダースの着想の巧みさが窺える。

人生の真実を小市民の生活に発見する

小津安二郎の作品に多大な影響を受けたヴィム・ヴェンダースならではの視点であり、天使の視線から人々の生活を見つめるという物語の設定が、映像に言い知れぬ美を漂わせている。哲学的であり表現も比喩的なものが多いので難解な映画と思われがちだが、感覚的な部分で受け止めるような類のものではないので、幾度となく観ている内に深さが理解出来てくる作品である。この種の物語を表現するにあたっては避けて通れないような表現方法であり、何でもかんでも辻褄が合わないと物事を理解できない人には不向きかも知れないが、それを緩和してくれる役柄としてピーター・フォークの存在がある。元天使でありながら彼の生き方は極めて人間的であり、人生を謳歌するという事を教えてくれる道しるべとなる役割を担っている。


ある人にとっては恐ろしく退屈な話だろう。私自身、この作品を一度も寝ずに観れたことは数える程しかないのだが、それでもこの作品は私の人生を変えた一本だ。散文的な冒頭の数十分は抗いがたい睡魔を呼ぶ。しかしある瞬間、低空飛行を続けていた飛行機がふっと雲の上に出たかのように映像に息吹が吹き込まれる。そこに映るのは今はもう存在しない「西ベルリン」という街なのだが(壁の崩壊後、街は大きく変わった)、短い間でもそこに住んでみたいと思わせる何かを持った作品だ。ピーター・フォークも最高。(男性 40代)

映画『ベルリン・天使の詩』 まとめ

本作で表現される天使の世界は、神の世界でも人間の世界でもない中間の世界である。人間界は描かれているが、天上界を想い起こさせるようなシーンはなく、天使は人間に限りなく近く、見えている世界がモノクロとカラーの違い程度しかない。天界に存在する筈の天使がその世界に生き甲斐を見いだせず、平凡な人間に憧れているという設定がいい。アメリカの俳優であるピーター・フォークの存在は、平凡な人間である中に小さな生き甲斐を見つけることの大事さを語る、自由の象徴とも言えるのではないだろうか。東西の壁によって阻まれたドイツの中で生きる人々の無情さと希望が儚く描かれた叙情詩である。

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