映画『王の男』の概要:「王の男」は、2005年の韓国映画。朝鮮時代(燕山君)の歴史ドラマ。暴君に寵愛された女形芸人の愛と苦悩を描く、韓国版”ハムレット”。カム・ウソン&イ・ジュンギ主演。
映画『王の男』 作品情報
- 製作年:2006年
- 上映時間:122分
- ジャンル:時代劇、コメディ
- 監督:イ・ジュニク
- キャスト:カム・ウソン、イ・ジュンギ、チョン・ジニョン、カン・ソンヨン etc
映画『王の男』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『王の男』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『王の男』のあらすじを紹介します。
時は、朝鮮時代。燕山君(よんさんぐん:第10代王)の治世。芸人チャンセン(カム・ウソン)と女形芸人コンギル(イ・ジュンギ)は仮面劇の良き相棒。一旗揚げるために、2人は漢陽(現代のソウル)へ行き、王をネタにした仮面劇で民衆の笑いと人気を得ます。
その評判を聞き、忠臣チョソンがチャンセンたちを王宮へ招くと、官僚たちの非難の的とされます。このままでは殺されるかもしれない!チャンセンは、1かバチかの大勝負に出ます。”王様を笑わせる!”と。
燕山君(チョン・ジニョン)の前で演じることになったが、緊張の為上手くいかない。そんな中、女形芸人コンギルが機転を効かせて王様を笑わせることに成功。こうして、チャンセンたちは王宮の芸人として召し抱えられたのです。
王のそばには、悪女と名高い側室チャン・ノクスや金で官位を買った官僚たちがいます。チャンセンたちは、王のネタに加えて、官僚ネタやあろうことか先王のネタまで脚色して上演します。先王のネタを基にした仮面劇を見て、激怒した王は、ついに母親の死に関わった側室たちをその場で切り殺し、ショックを受けた皇太后も死にます。
王の寵愛を得た女形芸人コンギルは、毎夜呼ばれて、王の前で指人形劇をします。先王の時代、幼少期に母親を喪った悲しみと孤独を抱えていた王は少しずつ心を癒されていきます。そんな中、チャンセンに”王宮を出ていこう!”と言われ、同意するも寂しそうな王の身を心配するコンギル。
市中に抗議文が張り出され、それを見た王は怒ります。コンギルへの寵愛に嫉妬したチャン・ノクスの策略で、コンギルが抗議文を書いた首謀者として捕らえられてしまいます。
チャンセンは、コンギルを助けるため、”俺が書いた”といい、死刑を言い渡されます。死刑の前日、忠臣チョソンはチャンセンを救おうとしますが、チャンセンは綱渡りをしながら、王のネタで演じます。再び、王の怒りを買ったチャンセンは、両目を焼かれてしまう。
かなしみのあまり、コンギルは手首を切って死のうとするのでした。盲目になったチャンセンは、最後の綱渡りに臨む。一命を取り留めたコンギルも綱渡りに加わり、演技をします。”生まれ変わっても芸人になりたい!”と2人はとても自由な気持ちで、新しい世界へ旅立つのです。
映画『王の男』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『王の男』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
魅惑のエロチックな世界~男VS男VS女の闘い
女形芸人コンギルを演じるイ・ジュンギの美貌と繊細で時に大胆な演技が素晴らしい。コンギルを中心にして、3人の男女の愛憎関係が複雑にからみあっています。綱渡りの名人で良き相棒のチャンセンは、コンギルを弟のように大切に思い、コンギルが美貌ゆえに両班(朝鮮時代の王族に次ぐ支配階級)たちのなぐさみ者になることを憂いでいます。
一方、コンギルを寵愛する燕山君は、暴君であるが、幼い頃、母親を亡くした心の傷を抱え、女とコンギルと酒に溺れてゆきます。そして、三大悪女の1人、側室のチャン・ノクスは、王の寵愛を受けるコンギルに嫉妬をして、コンギルを王宮から追い出さそうと策略を企てるのです。”本当は女じゃないの?裸になってみなさいよ!”とコンギルに強く迫ります。
王宮の陰湿さと美貌ゆえに不幸に巻き込まれていくコンギルの姿が涙を誘います。身分制度が厳しく、男尊女卑が根深い朝鮮時代だからこその関係性ではないでしょうか?次は色に注目してみます。後半、燕山君は赤い官服を着ていました。彼が激しく感情を爆発させる度、血を受けて真っ赤になった様に見えます。愚王であることを暗示しているのではないでしょうか。
コンギルは、王の寵愛を得て、きらびやかな官服をまとっています。チャンセンの服は変わりません。王の側室チャン・ノクスは、表情が険しく見えます。
仮面劇の役割とは
劇中で描かれている仮面劇は、貧富の差や性差を超えて自由に生きようという気持ちの表れです。王や官僚をネタにして笑わせるのはとても心地よいこと。本作の2番目の見どころです。下品な下ネタも多いですが、上手く演じていて本当に面白い。
演劇の役割が、社会の批判や新しい情報を提供する力であるならば、成功しているということ。王が暗い顔をしていても、民衆が笑っていればいい。例えば、王が影絵を通して、自らの孤独を打ち明けるシーン。”父王、母上が恋しいです!”といい、涙をながす燕山君。王の悲しみがストレートに伝わってきます。
劇中劇が、効果的に心理描写を描いている点にも注目して下さい。コンギルが燕山君に見せる、指人形劇もかわいく温かい気持ちになります。
両性具有の美を持つ俳優~イ・ジュンギの魅力
女形芸人コンギルを演じる時の腰つきがなまめかしい。女性にしか見えない優しい顔も。今も座る時、足が開かないそうです。いわゆる女の子座りしかできなくなったらしい。役が人を作るのですね。性を超えた美しさと繊細な演技が魅力です。イ・ジュンギは本作で人気スターになりました。この映画のオーデションを受ける前までは役に恵まれず、悩んでいたそうです。
共演した燕山君役のチョン・ジニョンの演技を高く評価しており、学ぶことが多かったと語っています。綱渡りの名人で良き相棒役を演じたカム・ウソンとの演技の息もぴったり!ずっと仮面劇を見ていたいとさえ思います。まるで、朝鮮時代の空気感をまとったかのような存在感。作品ごとに違う表情を見せてくれます。
本作を観て、女らしい役柄よりも男らしいイ・ジュンギの方が好きと思う人もいるでしょう。だまされたと思ってみたら、きっとハマリますよ。最近のイ・ジュンギについて。兵役を除隊後、初の父親役を演じた「two weeks」(13)をはじめとして、アクション時代劇「朝鮮ガンマン」(14)に出演。最新作は、歴史ファンタジー「夜を歩く士」で主役を演じています。
歴史物が似合う俳優として、これからも応援してゆきます。ご期待下さい。
イ・ジュンギ演じるコンギルの女性よりも女性らしい仕草や表情に心奪われる人も多い今作。燕山君を演じたチョン・ジニョンやチャンセンを演じたカム・ウソンなど個性豊かなキャストに目が行きがちですが、ストーリー的にも素晴らしく、世界観に感動しました。
暴君と呼ばれた燕山君でしたが、心に深い傷を負っており、それを癒したのがコンギルの優しさでした。普通に考えれば感謝すべき立場なのに、それに嫉妬し貶めようとする女の醜さには心底呆れました。
目を覆いたくなるような拷問のシーンもありますが、全体的にはとても美しい描写が多く、女性が見やすい作品だと思います。(女性 30代)
映画『王の男』 まとめ
「王の男」は、イ・ジュンギ主演作でイチオシの作品です。やはり歴史物が彼には一番合います。劇中劇から、恋愛・アクション・コメディとなんでも器用にこなせますし、クールなまなざしがたまりません。あなたはどのイ・ジュンギが好きですか?
本作は、イ・ジュンギの魅力だけでなく、燕山君役のチョン・ジニョンの狂いの演技も素晴らしいです。怒りに任せて先王の側室を斬り殺すシーンや、影絵で自らの孤独を打ち明けるシーンに注目して下さい。感情の緩急が見事な演技と狂いかたに心揺さぶられます。
綱渡りのシーンでは、相棒チャンセン役カム・ウソンがスタントなしで演技に臨んだそうです。リアルな綱渡りのシーンは、何度みてもかっこいい。しかも、カメラアングルは下から上へ映しているので、観ているほうもドキドキ。これから、韓国映画を観たいと思っている人には歴史ドラマから観るのがおすすめです。
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