映画『異人たちとの夏』の概要:山田太一作の同名小説の映画化で1988年公開の日本映画。妻子と別れたシナリオライターの主人公が12歳の頃亡くした両親と再会したり、妖艶な恋人との交流を描いた不思議な物語。
映画『異人たちとの夏』 作品情報
- 製作年:1988年
- 上映時間:110分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ファンタジー、ホラー
- 監督:大林宣彦
- キャスト:風間杜夫、秋吉久美子、片岡鶴太郎、名取裕子 etc
映画『異人たちとの夏』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『異人たちとの夏』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『異人たちとの夏』のあらすじを紹介します。
脚本家の原田(風間杜夫)は生まれ育った浅草に仕事の帰りに立ち寄る。
寄席に入ったとき、既に他界している父親にそっくりの男(片岡鶴太郎)を見つけた。
声をかけられた原田は何となくこの父似の男についていった。
着いた場所は木造のアパート、まさかと中に入ってみるとまたしても他界している母(秋吉久美子)がいたのだ。
今の原田はこの時の両親より10歳も上になってしまっていた。
脚本家として大成した息子を喜んでくれる両親に、昔はできなかった分甘える原田。
そしてここで知り合いになる桂という女性。彼女とは話もあい、恋に落ちた。
しかし彼女もまた闇の女性(名取裕子の)、彼女はこの世の住人ではなかった。
両親もまたこの世のものではないのだ。
原田は次第にやせ細り、死相が出てきてしまう。
そしてお盆で姿を消さなくてならない両親と浅草の今半ですき焼きを食べに行った原田は、そこで両親の胸のうちを明かされる。
そしてすき焼きの向こう側に、大好きだった両親の姿は消えていった。
映画『異人たちとの夏』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『異人たちとの夏』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
片岡鶴太郎の役者としての演技力
俳優片岡鶴太郎は個人的に好きではない。
いつも同じような演技をして、つまらないという印象があるからだ。
しかし本作品での彼はひと味も二味もちがかった。
浅草で寄席をみるような、まさに、チャキチャキの下町の男をいなせに演じている。
男らしさのなかに優しさを備えている男を見事に演じ、なぜかこの映画の鶴太郎だけは絶品である。
名取裕子のシーンは不必要
両親との再会だけでは異人との夏にはならなかったのだろう。
だからといって、この世のものではない名取裕子を登場させる必要があったのか。
もちろん両親との美談だけではもの足りず、記憶には残らなかったかもしれないがそれにしても
もう少しストーリーの重要性を考えてほしいものだ。
ラストの今半のシーンは感動的
幼い頃両親を自転車事故でいっぺんに亡くしているため、甘えられずに大人になってしまった主人公。
だからこそ再会した途端、キャッチボールをしたり急に親に甘えたりしはじめる。
しかし今半ですき焼きを囲んでいる親子は確かに威厳のある愛情深い親と子だった。
そして湯気越しに会話する親子。
そこには生きてほしいという願いと、今まで感じることができなかった親から子への無償の愛情が確かにそこにあったのだ。
このシーンは後々も語りつがれ、名シーンとなっている。
日本の古き良きオヤジとお袋といった雰囲気を描きたかったのか、この最後だけを見るだけでもこの映画を見てよかったと思えたのである。
ヨガを極めたヨギーとして活躍する片岡鶴太郎が俳優だったとは知らず、古き良き日本を感じさせる彼の演技に魅了されてしまいました。大切な人を亡くしたことがある人だったら分かると思いますが、絶対に叶わないとわかっていてももう一度会いたいと願ってしまうものです。亡くなったはずの両親に出会える、そんな夢のようなお話を良い意味で淡々とあっさりと描いた今作は悲しさよりも愛情を深く感じられる素敵な作品でした。
この作品を見るときっと、すき焼きが食べたくなるはずです。(女性 30代)
本作は、妻子と別れて離婚で傷付いたシナリオライターの男が死別した若き両親と浅草で再会するという不思議な幸福を描いた山田太一原作小説を基にした怪談ファンタジー作品。
時代を感じずにはいられないノスタルジックな日本の夏の雰囲気や奇妙で寒気がするファンタジックな世界観が良かった。
そしてこれは、ただのおとぎ話ではなく、孤独な現実と幻想が表裏一体となっていて、日本人の死生観がよく描かれているところに不思議な魅力を感じた。(女性 20代)
映画『異人たちとの夏』 まとめ
昔の映画というのは何とも味わい深い。
もう雰囲気だけで感動してしまうようなそんな作風のものが多いのだ。
本作も昔の両親に会うというテーマで進むが、現代でいうと「流星ワゴン」がそうである。
過去に戻ってなにかしたいなど人は必ず思うものである。
それが両親の愛情を知らなかったり、甘え知らずだったりすると余計に現実逃避もしたくなってしまうというもの。
そのような心の弱さがこのような映画を見ると誰にでもあるのだと気づかされる。
タイトルの異人という言い方も面白い。
幽霊を匂わさず、あくまで異人にこだわった製作者側の考えも聞いてみたいところである。
本作品を見て心が温かな気持ちになり、静かな感動を覚えたことは忘れられない。
みんなの感想・レビュー
すき焼きを食べるシーンが印象的。卵の割り方とか。
5歳したの弟が去年の7/16に死んでしまい、初盆です。
悲しくて仕方なく、思わず、「異人たちとの夏」を検索した。
夏の暑いひが続くと、亡き人に逢いたくなる。