映画『ゆれる』の概要:2006年公開の日本映画。香川照之とオダギリジョーが主人公の兄弟を演じ話題になった作品。帰郷した兄弟と幼馴染で出かけた吊り橋で幼馴染が落下する、事件なのか、事故なのかをスリリングに描いている映画である。
映画『ゆれる』 作品情報
- 製作年:2006年
- 上映時間:119分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
- 監督:西川美和
- キャスト:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文 etc
映画『ゆれる』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
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映画『ゆれる』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ゆれる』のあらすじを紹介します。
写真家として活躍中の猛(オダギリ・ジョー)は母親の一周忌のために帰郷した。
父親とは折り合いが悪く滅多に帰らなかったが、温厚な性格の兄の稔(香川照之)とは馬があった。
父親と兄はガソリンスタンドを経営、そこで働いていたのが兄弟の幼馴染である智恵子(真木ようこ)だ。
帰郷したその夜、猛と関係をもった智恵子。
翌朝は兄弟と3人で自宅近くの渓谷へ出かけることに。
渓谷には吊り橋がある。
ふと猛が見ると兄と智恵子がもみ合いになり、智恵子が橋から落下したのだ。
警察が捜査を進めるも事故死と判断。
しかし稔は自分が突き落としたと証言する。
やがて公判が進んでいくうち稔は証言を一変させる、実は罪悪感から突き落としたといってしまったのだというのだ。
しかし弟の猛は証言台で稔が突き落としたと証言する。
それから7年後、刑を終えて稔が出所する日に。
前日父親が撮影していた昔の自分たちのビデオを見て思わず号泣した猛は、兄を迎えにいく。
そして言うのだ「家に帰ろう」と。
映画『ゆれる』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ゆれる』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
近年まれにみる大傑作
この物語は幼馴染の女性を吊り橋から突き落としたのか、そうでないのかどいうところから始まる。
そして一貫してこの問題を最後まで解決させずにいくのである。
一緒にいた弟が兄と女性が吊り橋にいてもみ合いになっているのを下から目撃しており、警察からも聞かれる。
しかしここで明らかになる兄弟の確執。
東京でオート系のお洒落なカメラマンとして成功していた弟と田舎で細々と父親とガソリンスタンドで働く兄。
父親からよく思われていない弟を唯一優しく迎えてくれていた兄だったが、実は心の中にはドロドロろした闇を抱えていたのだ。
弟への嫉妬、幼馴染への愛情、父親への葛藤、そんなのを全部隠して笑顔でいた兄。
警察の捜査で当然疑われた兄は最初は殺したというが、その後撤回。
証言をころころとかえるようになっていく。
この間に兄弟は面会し、胸のうちをそれぞれ明かす。
犯罪を犯したかどうかではない、もはや信じるか信じないかの究極のところである。
やがて弟も証言台へ立ち、兄が突き落としたのを見たと言う。
このことで決定的に実刑になってしまった兄。
弟は本当に見たのか?
これは弟の妄想であるだろう。
つまり、弟が兄の運命を握っていたのであり兄弟の確執が暴かれてから弟の兄への不満がこのような形となってしまったということではないか。
つまり、どうとでも言えたのだ。
もしも兄に対してわだかまりがなかったら「見ていない」「突き落としていない」などといったのでは。
このやりとりが実に生ナマしく辛かった。
そして最後の名シーン。
父親が撮影した8ミリの中に映っている幼い兄弟は、あの吊り橋で遊んでいる。
まだ仲が良い頃だ。
7年の刑を終えた兄が出所、そのノスタルジックなビデオをみた弟は迎えに行った。
そして思わず「兄ちゃん」と叫んでしまった。
このあとの兄弟の結末は描かれていない。
許しあったのか、また憎しみあうのか。
非常に考えさせられる作品であった。
「ゆれる」というタイトルの通り、橋がゆれることで起こる事件により、兄弟の間で心や感情が揺れていく。人間の妬みや憎しみが怖いほど繊細に描かれ、見ているこちら側まで心をえぐってくる。西川美和監督の人間描写はあまりにもリアルで、ドキュメンタリーを見ているような気持ちになるのだ。
事件を通してお互いの思いが暴かれてゆくが、ラストでは明確な結末が描かれず、その先がどうなったのかは鑑賞者側に委ねられている。(女性 30代)
映画『ゆれる』 まとめ
香川照之とオダギリ・ジョー。
この2人の演技合戦は鳥肌がたつほどの凄さであった。
特に香川照之に関しては徐々に精神状態が崩壊して行く感じが絶妙で、不気味であり恐怖を感じた。
人間の怖さを痛感させられたし、また人の心の闇は実際はどうかわからないという表面所の人間関係が多くなっている昨今で自分はどうかと振り返るきっかけとなった映画であった。
これほどの傑作は最近では珍しいし、女性監督ならではの繊細さが非除に見ごたえのある作品にしていると思う。
緊迫感溢れるこのような作品をどんどん製作してほしい。
日本の映画界も変わってきているのだと嬉しくなるのは自分だけだろうか。
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