映画『学校II』の概要:養護学校を舞台に、生徒らが入学から卒業するまでの3年間を描くドラマ。様々な障害を持った生徒達と、それを見守る教師達を通じ、人々の温かさと共に、社会の彼らに対する冷たさも同時に知っていくこととなる。
映画『学校II』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:山田洋次
キャスト:西田敏行、吉岡秀隆、浜崎あゆみ、神戸浩 etc
映画『学校II』の登場人物(キャスト)
- 青山竜平(西田敏行)
- クラスの担任で、みんなからは「竜先生」の愛称で親しまれている心優しい教師。全ての生徒らに平等の愛情を持って接し、正しく指導する。妻とは離婚しており、娘の由香との関係にも少々亀裂が生じている。
- 緒方高志(吉岡秀隆)
- 軽度の知的障害を持ち、そのことで中学時代に虐めに遭う。それが原因で一切言葉を発せなくなってしまう。
- 久保佑矢(神戸浩)
- 介護が必要な重度の知的障害を抱えている。うまく感情を現せないため、その度に暴れては問題を起こす。ただし、高志のことは「お兄ちゃん」と呼び彼には素直になる。
- 小林大輔(永瀬正敏)
- 主に重度の障害を持つ佑矢の面倒を見る係だが、彼の気持ちが分かってやれずに葛藤する。本心では、養護学校ではなく普通の学校へ教師として赴任したかった。
- 北川玲子(いしだあゆみ)
- 竜平達のクラスの副担任。慈愛に満ちた優しい性格で、生徒達が社会に出るまでの間だけでも精一杯の愛情で見守ろうとしている。
映画『学校II』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『学校II』のあらすじ【起】
竜別高等養護学校で教師として働いている青山竜平。皆からは「竜先生」と呼ばれ慕われており、家庭内では娘に進路のことで反抗され、離婚した元妻との間で板挟みになっている。そんな時、高志という少年が、佑矢という生徒を連れたまま外出し戻って来なくなってしまう。佑矢は、介護が必要な重度の障害がある少年だった。やがて、街で2人がバスに乗って行ったという情報を得る。更に駅まで足を運ぶと、2人は旭川行きの列車に乗ったらしい。何のために旭川へ向かったのかと考える一同だったが、高志が歌手の「安室奈美恵」のファンだったことを思い出し、またライブの日が今日だったことに気付く。
入学当初から、高志は無口だった。学校へ来る前、小学校の間は喋る子だったそうだが中学へ上がると同時に話さなくなってしまった。高志の障害は軽いものであったが、中学時代に受けた差別と虐めにより傷ついた彼は心を閉ざしたのだ。同じ入学式の日、佑矢は暴れ出し、母の所へ帰ると叫び廊下を駆けて行く。その日は佑矢に振り回され、疲弊する一同。
佑矢に付くことになったのは若い教師・小林で、彼のこれからの接し方について早速悩みに直面する。表現の仕方が分からない佑矢は、事あるごとに暴れ、周囲に迷惑をかける。また別のある日、授業中に他の生徒に迷惑をかけた佑矢。逃亡しながら大便をし、小林は下着を変えてやる。それでも反抗的な態度を取る佑矢に、小林は一体自分の何が駄目なのかとやり場のない思いに疲労する。小林は佑矢を抱き締めながら、唸るだけの彼に「どうすればいいんだ」と問いかける。
映画『学校II』のあらすじ【承】
やはり、佑矢の態度には教師だけではなく生徒らも皆が振り回されていた。小林は必死に彼に勉強を教えようとするのだが、何かが起きるたびに「お母さん」と叫び学校内を徘徊する佑矢。そして、勝手に倉庫に入りプリント類を散らかす佑矢。とうとう堪忍袋の緒が切れた小林は佑矢の胸倉を掴み、これまで溜め込んでいた鬱憤を爆発させるように怒鳴り始めた。怯えてその場でお漏らししてしまう佑矢だったが、そこへ竜平が飛び込んできて、慌てて彼を止める。小林は怒りの頂点に達していたのか、「もう佑矢は母親の傍に帰した方がいい、本人も母さんばかり言うじゃないか」と言いつけるが、竜平は変わらず温和なペースで佑矢へ近づいていく。まるで子供と遊ぶような優し気な口調で、「佑矢は、紙が好きだもんな」とコピー用紙の束を与え、佑矢もそれで遊ぶのに夢中になる。不貞腐れる小林に、子供達に迷惑を掛けられるのが教師の仕事だ、と竜平は言う。小林は自分の力不足からか、落胆し教室へと戻って行く。すると、副担任の怜子がいた。小林は怜子に、保育園ならまだしも、自分は佑矢の便や尿を処理するために教師になったわけじゃないと不満を露わにする。それを聞いた怜子は厳しい口調で「じゃあ、保育園で子供のおしっこや便を始末するのは程度の低い仕事なの?」と問いかけ、しかし、自分はここ2ヶ月もの間、佑矢につきっきりでおかしくはないかと訴える。ちっともおかしいことじゃない、と怜子はそれを否定し、行く行くは社会に出て行く彼らを、せめてこの学校にいる間だけでも愛してあげたいと言う。
夏休みになると、教師達は生徒らの家を巡る。竜平は海辺で釣りをしている高志を見つけ話しかけに行く。竜平は昨日、佑矢の家を訪問したが佑矢の母親に「あの子は寮生活に向いていないから、辞めさせたい」と言われたことを高志に話す。竜平はそれが辛く、高志に意見を聞いてみる。そして、高志の声を聞かせてくれとも言う。それでもだんまりを続ける高志だったが、やがて大きな魚が釣れたことに嬉しそうに笑顔を見せ、共に喜ぶ竜平。
夏休みも終わり、その日の授業では作文を生徒らが作文を読み上げていた。そんな中、内気な「もとこ」という女子生徒が初めて作文を書き、怜子がそれを読み上げる。内容は「みんなのことが好き」という至って単純なものであったが、怜子は思わず涙ぐむ。しかし、佑矢が暴れ出し、もとこの作文を破いてしまう。その時、高志が立ち上がり「佑矢、うるさいぞ!」と感情と共に声を露わにするのだった。みんなも勉強してるんだからお前も勉強しろ、分かったら「はい」と返事をしろ、と怒鳴りつける高志に佑矢は手を上げながら「はい」と答える。初めて聞く高志の声に教師らは驚きつつ、また佑矢も大人しく席に戻り母への作文を書
き始めるのだった。
その日以来、高志は変わった。表情を見せるようになり、言葉を発するようになった。佑矢も佑矢でそんな高志を「お兄ちゃん」と慕うようになり、2人は親しくなる。高志との触れ合いを通じ、小林にも素直になっていく佑矢。
映画『学校II』のあらすじ【転】
ある日、校長室に佑矢の母親が尋ねてくる。校長は、佑矢のお陰で高志が変われたことを説明し、佑矢は人の心を動かせる子なんだと説明する。そこへ高志が呼ばれて訪れるが、佑矢の母は泣きながら高志にありがとう、と言葉を漏らす。
やがて、時は過ぎ2年の1学期。新聞社主催のコンクールで高志の出した作品が最終予選に残った。高志は教室でリハーサル代わりに皆の前で作文を読み上げ、やがて本番の当日でも高志はこれまでとは打って変わり、緊張しながらも一期一句間違えずに読み終える。高志の母も会場に来ており、その姿に涙ぐむ。優勝には至らなかったものの、高志の作文は準優勝に選ばれたのだった。
3年の2学期、生徒らは会社や事業所に就職を目指す。高志はクリーニングの工場で働き始めるが、周りとの協調性が取れず、僅か1週間で社長に解雇されそうになる。竜平はもっと長い目で見て欲しい、と訴えかけるが高志の願いもあり、結局辞めることになってしまう。竜平はそんな高志を向き・不向きがあるから仕方がないと励ます。高志はやがて、涙で声を震わせながら「佑矢は自分が馬鹿だって知らないんだろう?俺はもっと馬鹿だったら良かった」と話し始める。竜平はすぐにそれを否定し、佑矢は言葉にならない代わりにその瞳で感情を表そうとしているんだと言う。そして高志のその言葉は佑矢を侮辱する言葉だと叱る。高志は自暴自棄になったようその場でヒステリーを起こし暴れるが、竜平が慌てて抱き締め、「そんなに辛かったならもっと早く迎えに行けば良かった」と後悔の言葉を漏らす。
時は戻り、竜平と小林はライブ会場へ辿り着く。しかし、既に終わった後で、2人の姿を見つけることはできなかった。とりあえず近くのホテルを取り、待機する竜平と小林。しばらく横になっていたが、小林は居ても立ってもいられず近くのゲームセンターやコンビニを見に行くと立ち上がる。
一方、高志は養護学校の先輩・木村が働いているホテルへ向かっていた。ホテルのスタッフに木村の名を出すと、すぐに話が通じ木村と合流する2人。木村はホテルの調理場で働いている。木村のお陰で寝床を提供してもらい、高志と佑矢は彼の部屋に身を置く。木村も木村で、高志と同じように葛藤を抱えていた。物覚えが悪く、軽度の障害を持つ自分に悩んでいるのだった。
映画『学校II』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、高志は公衆電話から怜子に電話をする。佑矢は帰すが、自分は戻らないと言う。問い詰めようとする怜子だったが、一方的に電話は切れてしまう。高志は学校への行き先を書いたメモを佑矢に預け、バスに彼を乗せる。しかし、結局佑矢が暴れ出してしまい彼の後を追ってくる。ついてくるなと言ってもついてくる佑矢に、高志は怒って雪原の中で殴り掛かる。その時、ふと空を見ると熱気球が飛んでいるのを目にする2人。そこへ、通りかかった夫婦が2人を車で拾う。夫婦は2人に優しく接してくれ、趣味で仲間達と熱気球に乗っているようだ。そして、高志と佑矢は気のいい夫婦に奨められるまま気球に乗ることに。その高さに興奮し叫ぶ2人。
2人を探す竜平と小林は、怜子からの連絡を受け木村のホテルを訪れるも行き違いになってしまっていた。雪の中を車で走る竜平と小林だが、話に夢中になるあまり竜平は積もった雪の中に突っ込んでしまう。竜平も小林も怪我はないが、竜平はあることに気付いていた。どこからともなく聞こえてくる、佑矢の叫び声に。耳を澄ませると確かに高志と佑矢の歌声が聞こえ、急いで外に出る2人。気球に乗った高志と佑矢を見て、ありったけの声で叫ぶ竜平達。こちらの苦労など露知らず「何してるの」と能天気な佑矢に、しかし、竜平らは安堵したように微笑み気球を追いかける。気球から降りた高志達は無邪気に近寄ってきて、竜平らもそれを迎え入れるのだった。
校長からは叱られる高志と佑矢だったが、2人が去った後で校長は竜平に2人のやったことに感心していた。竜平も、2人のあんなに嬉しそうな顔を見たのは初めてだったと語る。
やがて、卒業式の日が訪れ別れの日がやってくる。竜平は「何もしてたれなくてごめん。何で卒業なんかするんだ。もっとここにいろ」と涙で声を震わせる。泣き崩れる竜平に代わり、小林は皆に明日から社会人になり、悲しいことも沢山あると語る。そして。そんな時はいつでも自分達の所へ来いと言う。クラス中が静かな涙に包まれ、小林も堪えきれず教室を去り、廊下で密かに嗚咽を漏らす。やがて、卒業歌を口ずさみながら彼らの3年間の学校生活は終わりを遂げたのだった。
映画『学校II』の感想・評価・レビュー
私事だが、以前の職場で軽度の障害を持った方が特別枠で働いていた。この映画で、ふとそれを思い出した。彼らに悪気はないのに、どうしても差別や偏見は付き纏い、世間は冷たい。この作品では、そういったしがらみの中で苦しむ人々の全てを、優しく描く。決して現実はこうも優しくはないのかもしれない。けれど、竜平達のような人もいるのだと救いを求めずにはいられない。尚、まだ無名の浜崎あゆみが出ていたり、安室奈美恵が出ていたりW歌姫の共演という点も驚き。(MIHOシネマ編集部)
小学校の頃から「特別支援学級」があり、障害を持った子と一緒に過ごすのが日常的だった私は「障害」に対して強い偏見を持つことはありませんでした。しかし、自分たちと違う「少数派」である障害を持った子に対して偏見や差別、いじめがあることも子供ながらに感じていました。
受け入れる、愛するなど言葉にするのは簡単ですが実際に行動に移すのは容易なことでは無く、こちらがそうしてあげたいと思っても相手に拒まれてしまうこともあるのだと分かりました。
自分と違うことに「偏見」の目を向けるのでは無く、違う部分こそ受け入れてあげる気持ちが本当に大切なのだと感じます。(女性 30代)
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