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映画『ニーゼと光のアトリエ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ニーゼと光のアトリエ』の概要:1944年、実在する女性精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラが、愛と芸術を用いて現代に通ずる心理療法を確立するまでを描いている。人としての尊厳を無視され、虐待と人体実験のような治療が常識だった当時、彼女は個人と向き合い人を癒す治療法を見出す。

映画『ニーゼと光のアトリエ』の作品情報

ニーゼと光のアトリエ

製作年:2015年
上映時間:109分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ホベルト・ベリネール
キャスト:グロリア・ピレス、シモーネ・マゼール、ジュリオ・アドリアォン、クラウヂオ・ジャボランヂ etc

映画『ニーゼと光のアトリエ』の登場人物(キャスト)

ニーゼ・ダ・シルヴェイラ(グロリア・ピレス)
女性精神科医。かつて働いていた国立精神医学センターへ戻って来るも、人体実験のような治療方針に抵抗。心理学者ユングから影響を受け、新たな精神医学と治療法を見出そうとする。
フェルナンド(ファブリシオ・ボリヴェイラ)
外出恐怖症でとにかく外へ出ることに怯える。色黒の青年。言葉はほとんど話さない。抽象的な絵を描くようになる。アデリーナと良い雰囲気になる。
カルロス(ジュリオ・アドリアォン)
中年の精神疾患を持つ男性で、神がかった考えを口にしては美しい絵を描く。種を集めるのが趣味。曼荼羅のような絵や素朴な風景画を描くようになる。
アデリーナ(シモーネ・マゼール)
体格の良い女性で、いつも人形を抱いている。作業療法室へ来て女性らしく化粧をし始める。淡い色使いで柔らかい絵を描くようになる。
アルミール(フェリッペ・ホッシャ)
ニーゼの同僚で精神科医。押しが弱くインテリ風だが、ニーゼのやろうとしていることを理解し、応援してくれる。アトリエを開こうと提案。
リマ(アウグスト・マデイラ)
作業療法の担当看護師。患者に対して非常に強権的で今で言う虐待を平気で行っている。ニーゼのやろうとすることが理解できなかったが、次第に認めるようになる。

映画『ニーゼと光のアトリエ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ニーゼと光のアトリエ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ニーゼと光のアトリエ』のあらすじ【起】

1944年、リオデジャネイロ。エンジェーニョ・ジ・デントロの国立精神医学センターへ赴任した精神科の女性医師ニーゼ・ダ・シルヴェイラ。精神疾患の患者の治療と言えばショック療法と、重度であれば大概がロボトミー手術で対応されていた時代。更に医師会は完全に男性社会で、女性医師は卑下される対象でもあった。

就業初日に医師講演会へ参加することになったニーゼは、統合失調症である患者に電気ショックを与え、意識を無理矢理奪うというとんでもない治療法を目にする。その治療が患者にとって良いものとは到底思えず、センター長へ訴えたニーゼ。だが、嫌ならここで働かなくても良いと言われ、仕方なく引き返すのであった。

センターでのニーゼの担当は看護師が主だって運営していた作業療法部門に決定。そこは実質、作業療法とは名ばかりで病院のトイレ掃除や壊れ物の修理などを行っており、作業療法室はまるで廃墟のように殺伐とした場所だった。担当の看護師は女性と男性リマの2人。数年前、この病院で働いていたことがあるニーゼは、郊外の病院へ行っている間に病院内が荒れ果てていることに驚きを隠せない。その上、ニーゼは病院の治療方針について行けないと意見したため、この異動は体の良い病院内左遷だった。

それでも彼女は、環境の改善を図るべく2人の看護師に掃除をしようと言うも、リマからは給料内に掃除は入っていないとのことで断られてしまう。仕方ないので、女性看護師と2人でこつこつと掃除を行った。
その後、ニーゼは医師のミーティングにて他の医師たちに協力を要請。中には協力を拒否する医師もいたが、いよいよ活動を開始。

精神疾患の患者の程度はそれぞれで、話を理解できる者からそうでない者までいる。リマは言うことを聞かない患者には酷く横暴で、ニーゼは彼を強く叱りつけた。患者の話は治療のヒントになる。彼女は患者達の行動や言動を事細かに観察。それぞれに合った治療法を確立しようとしていた。

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映画『ニーゼと光のアトリエ』のあらすじ【承】

患者の言動や行動には必ず理由がある。人を殺しかねないほど狂暴な患者にも、憤っている理由があるはずだ。特に狂暴な患者を作業療法へ参加させたニーゼ。その日は童心に帰り、サッカーをして遊ぶことに。すると、患者達は興奮して乱闘騒ぎへと発展してしまう。
病院で行われている治療や監禁は、人としての尊厳を無視している。ニーゼはまず、その根本的なことから見直して欲しいと他の医師たちへ訴えた。

そんなある日、同僚のアルミールがニーゼのやろうとしていることに賛同し、作業療法室でアトリエを開かないかと提案してくれる。そこで、ニーゼは最も手がかかる患者を厳選し、作業療法室へ呼び込むことに。そして、スタッフ達へは患者のことをクライアントと呼ぶよう促した。

すると、日が立つにつれ作業療法室に集まる患者達は、思い思いの絵を描くようになる。中年の男性患者カルロスは美しくカラフルな絵を描き、フェルナンドは抽象的な絵を描く。そうして、アルミールの紹介でニーゼの作業療法に注目しているという、女性芸術家が研修へ来ることになった。

その日は、クライアントそれぞれに綺麗だと思う服を選んでもらい、みんなでお出かけ。着飾ったクライアント達からも笑みが漏れ、これまでにない楽しげな雰囲気に。次第に彼らからは狂暴性が抜け、人間らしい尊厳を取り戻すきっかけを得るのであった。

映画『ニーゼと光のアトリエ』のあらすじ【転】

以来、それぞれが個性的な絵を描き始め、驚くべき才能を発揮し始める。そこで、ニーゼは尊敬する心理学者ユングへと患者が書いた絵の写真と手紙を送ることにした。

体格が良く女性らしいアデリーナは柔らかい絵を描くようになり、フェルナンドは混沌とした絵からやがて何もない部屋の絵を描き、そして整然と整理された部屋の絵を描くようになる。カルロスは曼荼羅のような絵を描いたかと思えば、素朴な風景画を描いたりして多彩さを見せた。初期の絵から見ていくと、それぞれに自らの存在価値を認め新たな道や居場所を見出し始めているようだった。

そこで、ニーゼとアルミールは絵の展示会を開催することにする。展示会には多くの人々が訪れ、中でも有名な評論家までもが来て素晴らしい絵に感嘆。ニーゼの療法に否定的な同僚も2人やって来たが、彼らは人権を無視した残酷な人体実験をしているに過ぎない。その方法を否定したニーゼ。患者は明らかに以前よりも精神的な改善が見られ、狂暴性は鳴りを潜め穏やかになりつつある。完全治癒とは言えないだろうが、それでも彼らが穏やかになったのは事実なのだ。

そんなある日、アデリーナと良い雰囲気になり前進を見せていたフェルナンド。彼女がカルロスへ寄り添うのを目にし、心の均衡を崩してしまう。そこで、彼の母親が呼ばれ不調になったのは、嫉妬心からだと説明。母親の話によると、フェルナンドが精神的に均衡を崩したきっかけは失恋のせいらしい。故に、アデリーナが離れたことで、フェルナンドは心の傷が開いてしまったのだろうと予想された。彼が絵で人生を描こうとしていると察したニーゼ。母親にはロボトミー手術を受けさせない方が良いと告げた。

すると、このことにセンター長が意を唱える。ニーゼは全ての責任は自分が取ると断言し、説き伏せた。落ち込んで臥せっていたフェルナンドを支え、仲間の元へ送り出すことに成功したニーゼ。彼は次第に笑みを取り戻し始める。

しばらく後、ニーゼの元へユングから手紙の返事が来る。ユングは患者の過去を辿り、個々に合った診療方法を勧めてくれるのだった。
作業療法室では何頭かの犬を飼っている。動物の面倒を見ることで、心を落ち着かせる動物療法である。新たな犬も増え患者達は犬達をとても可愛がっていた。

映画『ニーゼと光のアトリエ』の結末・ラスト(ネタバレ)

ところが、病院での犬の飼育は不衛生であるという理由から禁じられており、このままでは病院が罰せられてしまうとセンター長に苦言を呈される。だが、ニーゼの療法では犬は必要不可欠であり、患者達にとっても今や愛される存在だ。このことでセンター長と口論になったニーゼ。規則に従わなければ、処罰を下すと告げられてしまうのだった。

かつては狂暴で手が付けられなかった患者が、粘土を使って戦士の像を作り始める中、フェルナンドもようやくキャンバスに向かって絵を描き始める。彼は部屋の窓が開いている絵を描き、いつかは窓が開くと話した。
伸び伸びと自由に描く患者達を視察に来た有名評論家は、ニーゼの療法は単なる医学的研究に留まらず、芸術と政治における革命だと言う。彼はニーゼのことを大勢の人々へ紹介し、反対意見を持つ同僚含め世論を動かそうと言うのだった。

感謝祭が開かれ音楽とダンスを楽しむ患者達。その日、繊細なタッチで絵を描く元海軍兵士だったクライアントがとうとう自宅へ帰ることになった。兄夫婦との蟠りを解いたらしく、本人も兄夫婦も終始笑顔で祭りを楽しんだ。

しかし、翌日。作業療法室へやって来たアデリーナは、庭の様子を目にして悲痛な叫び声を上げる。彼らが飼っていた犬達が全て、許可もなく安楽死させられていたのである。このことにより、クライアント達は深く嘆き悲しみ精神状態も不安定になってしまう。泣き声と叫び声は病院中へ響き渡り、穏やかになったはずの狂暴な患者がリマへと襲い掛かってしまうのだった。

元々、攻撃性の高かった彼は担当医の判断で、ロボトミー手術を受けさせられることとなり、ニーゼは非力な自分と彼を思い涙に暮れた。
これをきっかけに、有名評論家の話を本格的に考え、とうとうクライアント達の作品を大々的に発表することを決意。

展覧会のタイトルは、『無意識に秘められた可能性を信じて』とし、クライアント達を芸術家として表記した。展覧会には多くの人々が訪れ、人が秘める素晴らしい可能性を引き出すニーゼの治療法に賛同し、おおいに支持するのであった。

映画『ニーゼと光のアトリエ』の感想・評価・レビュー

実在する女性精神科医、ニーゼ・ダ・シルヴェイラが、現代の精神医学へ通じる革新的な療法を確立するまでを描いている。1940年代と言えば、精神異常者には人としての尊厳などなく、全ての感覚を無にしてしまうロボトミー手術が主流だった。ロボトミー手術は脳に手を加え、感情の一切の信号を切断してしまう手術である。

ニーゼが行った療法は、当たり前にある人としての尊厳を大切にし、愛情と忍耐を持って患者と向き合うことだった。今でこそ、それが当たり前の治療法とされているが、当時としてはかなり風当たりが強かったに違いない。彼女の深い愛情に涙する素晴らしい作品。(MIHOシネマ編集部)


本作は、従来の暴力的な心理療法の常識に疑問を持ち、愛と芸術で人を癒した実在の女医ニーゼ・ダ・リルヴェイラを基に描いたヒューマンドラマ作品。
ショック療法などを行い精神病患者たちが人間扱いされなかった時代に、患者に絵筆を与えたことで変化が起こる。
癒しを受け取った時の患者の表情、絵が出来上がっていく過程にメッセージ性を感じて面白かった。
1人の人間として向き合うことの大切さに改めて気付かされた良作。(女性 20代)

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