映画『ライオンは今夜死ぬ』の概要:死の演技について悩む老齢な俳優の主人公。撮影の休暇を利用し、かつて愛した女性が住んでいた古い屋敷を訪れる。彼はそこで、亡くなったはずの女性の幻と相対しながら、映画の制作をする子供達へと協力。次第に映画製作の楽しさを思い出していくのだった。
映画『ライオンは今夜死ぬ』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:諏訪敦彦
キャスト:ジャン=ピエール・レオ、ポーリーヌ・エチエンヌ、イザベル・ヴェンガルテン、モード・ウィレール etc
映画『ライオンは今夜死ぬ』の登場人物(キャスト)
- ジャン(ジャン=ピエール・レオ)
- 70歳を過ぎた老齢な俳優。価値観の違いから、死の演技ができないと思い悩む。かつて愛した女性ジュリエットの屋敷を訪れ、幻を目にする。子供達の映画へ出演することにより、映画制作の楽しさを思い出し、生死の考え方を見直す。
- ジュリエット(ホーリーヌ・エチエンヌ)
- ジャンが愛した女性。若い頃に亡くなっており、屋敷を訪れたジャンの前に幻となって現れる。ジャンの前に何度も現れては語り合い、やがて湖へと姿を消す。美しく可憐な女性。
- フィリップ(アルチュール・アラリ)
- 映画技師として子供達の映画制作を指導している。保護者のような存在で、アドバイザー。
映画『ライオンは今夜死ぬ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ライオンは今夜死ぬ』のあらすじ【起】
南フランス、コートダジュール。死の演じ方が分からないと悩む老齢の俳優ジャンは、相手役の女優が失恋にてしばらく休むとのことで数日、仕事を休む羽目に。彼は死の価値観について、死に安らぎなどなく70歳から80歳の間にやってくる貴重な出会いなのだと語る。ひとまず、数日は休みになるので、こちらにいる知り合いを訪ねることにした。
会いに行った女性はジャンと同じくらいの年齢で、彼に対し私ではなく他にもっと会いたい人がいるはずだと言う。ジャンは曖昧に頷き、新たに花を用意し本当は会いたかった女性の元へ赴く。その場所は古い屋敷で主である女性ジュリエットは若い内に亡くなっていた。
ジャンはジュリエットの部屋でしばらく休憩し、そこでなんと彼女の幻を目にする。かつて愛した女性の姿を見たジャンは驚愕するものの、どこから入ったのかカメラを手にした子供達が勝手に部屋へ侵入して来る。子供達はジャンの姿に驚くと、頭のイカれた爺さんだと言って走り去った。
それでも、彼の存在が気になるのか離れた場所からずっと窺っている。管理人は一体、何をしているのだろうか。すると、そこへかつての友人が訪れ、ジュリエットが亡くなったのは1972年のことで、死の原因は自殺か事故か分からないと言う。そこで、ジャンはしばらく屋敷で過ごす許可を得て、屋敷の鍵を借り受けるのであった。
映画『ライオンは今夜死ぬ』のあらすじ【承】
子供達は屋敷で映画を撮影したいと考えているらしいが、人の家に勝手に入るのは不法侵入である。彼らを指導している映写技師のフィリップはちゃんと許可を得なさいと話し、画面に映っているジャンにも許可を得るよう注意を促した。
しばらく屋敷で暮らすため、ジャンは町で買い物。子供達も彼の後を隠れて尾行しているが、バレバレである。そこで、ジャンは生意気で口の悪い子供達に、屋敷まで荷物を持たせることにする。何だかんだ言いつつも、荷物を持って大人しくついて来る子供達。
意外なことにジャンが名乗ると、子供達もきちんと名乗ってくれる。更に子供達は屋敷で映画の撮影の許可を貰い、ジャンが俳優だと知ると出演して欲しいと頼むが、どんな映画を撮るかも決まってない様子。そこで、ジャンはまず皆で話し合って脚本を作ってくるよう話すのであった。
子供達が去って行くと、ジャンの前に再びジュリエットが現れる。夜遅くまで彼女と語り合い歌を唄ったジャン。ジュリエットは現れた時と同様に、不意に姿を消してしまうのだった。
翌日、脚本を作った子供達がジャンを訪ねて来たが、留守なのか彼は出て来なかった。ジャンがいないと屋敷の中へ入れないし、撮影をすることもできない。ジャンの出演と撮影に関して、子供達は意見を交わし合うも仲間割れしてしまう。どうしても、ジャンの存在が必要だと言い張る少年は、その後も何度か屋敷を訪ねたが、結局ジャンとは会えなかった。
映画『ライオンは今夜死ぬ』のあらすじ【転】
更に翌日、少年はスタッフの1人だという少女と一緒に再び屋敷を訪ねた。すると、その日は屋敷のドアが開いていて、中へ入ることができる。ジャンは寝室で倒れたかのように床で意識を失っていた。少年と少女は声を掛け映画の話をした後、他の仲間を連れて来ると言って屋敷を後にする。
ジャンは子供達と食事をしながら、脚本を聞かせてもらう。ストーリーとしては、良くできていた。そこには、ジュリエットも登場する。子供達は遠慮もなくジャンに話を聞きたがる。彼は隠すことなく子供達の質問に答えた。ジャンには妻がいたが、本当に愛した女性はジュリエットただ1人である。だが、彼女は30、40年前に亡くなっていた。けれども、屋敷に住むようになってから、幻となって会いに来てくれる。
その日の深夜、寝ているところをジュリエットに起こされたジャン。2人で深夜の散歩デートへと出かける。そこで、ジャンはどうしても死を演じることができないと話した。人生において死というものは、生の影である。死は生の終わりを示すものでもある。だが、ジュリエットだけは見捨てないと言う。故にこの先は共に過ごすと。すると、彼女はこの先というのは気に入ったと言って姿を消すのであった。
翌日も屋敷へ子供達が訪れ、撮影が開始。一応、監督の係や演出らしい係もいて、ジャンに演技指導を行うが、いかんせん素人である。意見が錯綜して分かりづらいこともあって、何度も撮り直しを行う。屋敷内はかつてないほど賑わい、老齢のジャンは疲れ果ててしまうのであった。
映画『ライオンは今夜死ぬ』の結末・ラスト(ネタバレ)
そうしてとうとう、映画が完成する。ジャンは子供達が映画を撮影することに様々なアイデアを出し合い、とても楽しみながら作っていたことに喜びを見出す。それは、大昔に感じていた喜びでもあり、ジャンにとっても久しぶりの感覚であった。
フィリップを加え映画の試写を行ったが、ラストシーンを撮り直したいとの意見が出る。そこで、ジャンは近くの湖でラストシーンを撮ろうと提案した。
フィリップと子供達、ジャンはバスに乗って湖へ。ラストシーンの撮影を行った。だが、撮影の合間に湖へと半身を浸したジュリエットが現れる。彼女はジャンに別れを告げ、また会おうと言って湖の中へと消えて行く。ジャンはしばらくの間、ジュリエットが消えた場所を見つめ続けるのだった。
子供達が老齢のジャンを労わりつつ、迎えに来てくれる。撮影は夕方まで続いた。
数日後、屋敷を訪れた子供達は、中から家財道具が運び出されている様子を目にする。そこにジャンの姿はなく、礼を述べる手紙だけが残されていた。
撮影が再開する。ジャンは子供達との映画作りに参加し、幻のジュリエットと過ごしたことにより自分の死や生を見つめ直すことができた。故に、実際の撮影でも死を演じることができるようになる。彼は自分の納得のいく演技を行い、撮影を無事に終わらせるのであった。
映画『ライオンは今夜死ぬ』の感想・評価・レビュー
死を演じることができない老齢の俳優が、子供達との映画作りに携わりつつ、かつて愛した女性の幻と対峙し自身の生と死を見つめ直すという内容。作中に登場する子供達は、一般公募から選ばれ実際に子供達だけで脚本を作り、撮影が行われている。それをそのまま映画として撮影してしまうのだから、すごい試みである。
老齢の俳優と未来ある子供達との交流は、かなり有意義なものとして映り、主人公は子供達の意に沿うよう見守っては穏やかに諭す。視聴者もまた主人公と同じように、懸命に映画を作る子供達から映画作りの楽しさや未来への希望を得ることができる。ワールドプレミア上映では、スタンディングオベーションが響いたほどの素晴らしい作品。(MIHOシネマ編集部)
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