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映画『愛しのアイリーン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『愛しのアイリーン』の概要:冴えない42歳の主人公は失恋の果てにフィリンピンへ向かい、フィリピーナを嫁に迎える。実家へ戻ると父親が亡くなっており、母親は外人の嫁に酷く憤った。金の繋がりしかない夫婦生活と日本での生活に歯車は狂いっぱなし。それぞれの生きづらさを描いた作品。

映画『愛しのアイリーン』の作品情報

愛しのアイリーン

製作年:2018年
上映時間:137分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、サスペンス
監督:吉田恵輔
キャスト:安田顕、ナッツ・シトイ、河井青葉、ディオンヌ・モンサント etc

映画『愛しのアイリーン』の登場人物(キャスト)

宍戸岩男(安田顕)
42歳の冴えない日本人男性。穏やかな気質で同僚の愛子に片思いしていたが、失恋の果てにフィリンピンへ向かいアイリーンと結婚する。愛情深く性欲も強い。アイリーンを深く愛し、彼女を守ろうとして心を病んでしまう。
アイリーン・ゴンザレス(ナッツ・シトイ)
金のために日本人の岩男と結婚し、来日する。実は未だに処女で夫の岩男にも体を触れさせない。可愛らしく無邪気。岩男の愛情に応え、処女を捧げる。
宍戸ツル(木野花)
岩男の母親。気性が荒く男勝り。宍戸家の嫁にアイリーンは相応しくないと憤っており、決して認めようとしない頑固者。息子に異常な愛情を注いでいる。
吉岡愛子(河井青葉)
岩男が務めるパチンコ店の同僚でシングルマザー。酔った勢いで上司と一夜を共にしたことがあるが、岩男のことを気にしている。清楚な容貌をしているが、実は誰とでも体を重ねるヤリマン。
塩崎裕次郎(伊勢谷友介)
フィリピーナと日本人男性との間に生まれ、阻害されて育つ。日本と日本人を憎み搾取する側に立とうとして、やくざになる。フィリピーナの売春を斡旋して稼ぎ、アイリーンを連れ去ろうとする。英語とフィリンピン語が堪能。
マリーン(ディオンヌ・モンサント)
フィリピンパブのホステス。アイリーンの相談役となる。自分の境遇を理解し達観している節がある。スタイルの良い美人。

映画『愛しのアイリーン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『愛しのアイリーン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『愛しのアイリーン』のあらすじ【起】

42歳の独身男、宍戸岩男は田舎町のパチンコ店に勤め、年老いた両親と暮らしている。彼は同僚のシングルマザー吉岡愛子へと密かに好意を寄せていたが、上司とフィリピンパブへ行った際、愛子と上司がいい仲であることが判明してしまう。
失恋した岩男は両親とも口論となり家を飛び出したまま、行方をくらましてしまうのだった。

母親のツルはかなり気性が荒く、岩男の嫁選びに余念がない。彼女は認知症気味の夫の面倒を見ながら、いなくなった息子を連日、探し歩いたものの一向に見つからず。何かをこつこつと作っていた夫がツルとの思い出の揺り椅子を完成させた。その直後、夫は脳梗塞でぽっくりこの世を去ってしまうのだった。
そんな中、夫の忌中に行方をくらましていた岩男が、フィリピン人の嫁を連れて帰って来るのである。

2週間前、家を飛び出した岩男はこつこつと貯めた300万円を使って、嫁探しツアーへ参加。行き先はフィリピンで、1日に30人の言葉の通じないフィリピン人女性と面会する。疲れ切った岩男は面倒になり突然、現れたアイリーン・ゴンザレスを嫁にすることにした。アイリーンは母親と一緒に大勢の子供達と暮らしており、貧しい暮らしであるため、結婚するには仕送りが条件だった。

ツアーガイドの力を借りてアイリーンと結婚した岩男。アイリーンも仕送りのために結婚したため、結婚生活に夜の営みが含まれているとは考えていなかった。手酷く拒絶された岩男だったが、嫁を連れて颯爽と帰国したのであった。

言葉も事情も分からないアイリーンは、葬儀中の粛々とした雰囲気も読めず音程の外れた歌を唄っては、亡き夫が作ったツルの椅子へ座る。ツルはアイリーンを嫁とは認めず、猟銃を手に迫った。その勢いで揺り椅子は壊れてしまい、嫁姑戦争が勃発。
その日の夜は実家に泊まることができず、岩男はアイリーンとラブホテルへ泊まった。

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映画『愛しのアイリーン』のあらすじ【承】

実家へ帰ることもできず、ホテルへ泊まり続けることもできないため、岩男が仕事へ行っている間は車で過ごすアイリーン。新婚夫婦の会話はもっぱら片言の英語で、岩男は嫁を連れてフィリピンパブへ。ホステスのマリーンにアイリーンを預けた。アイリーンは未だに処女で、初めては愛する人と過ごしたいと考えていたが、マリーンはそもそもその考え方が間違っていると指摘。家族を養うための犠牲なのだと説得され、日本語の辞書を貰うのだった。

日本語の練習をしつつ、岩男と共に時を過ごす。時には彼の職場で過ごすこともあった。
家ではツルが貞淑な妻を体現する女性を岩男の嫁に迎えたいと考えている。その女性は友人の孫で、話せば話すほどツルの理想にぴったり。母親は彼女を嫁に迎えたいと頼み込むのであった。

そんな時、マリーンの店でフィリンピン人を母親に持つという塩崎裕次郎と出会ったアイリーン。彼はアイリーンを辛辣な言葉で責め立て、売春婦と同じだと言うのであった。
アイリーンと別れさせたいツルが、岩男夫婦をようやく自宅へと受け入れる。嫁と姑は言葉が通じないことをいいことに笑顔を浮かべながら、言いたい放題。

少なくとも岩男はアイリーンに優しく、仕送りも忘れずに渡してくれる。一緒に日本語の練習もしてくれるし、不満があるとすれば肉体関係がないことだけ。岩男は無邪気なアイリーンに惹かれ、いつしか深い愛情を持つようになるのだった。

そんな岩男に少しずつ心を開くようになったアイリーンは、ツルのことを思い壊してしまった椅子を直そうとする。そこへ、塩崎が現れ日本へ復讐するために自分の元へ来ないかと誘う。ツルは見知らぬ男の出現に警戒を強めたが、邪魔な存在であるアイリーンを連れて行ってくれるという言葉に心を動かされる。

映画『愛しのアイリーン』のあらすじ【転】

そんなある日、アイリーンにお使いを頼んだツルは、ここぞとばかりに嫁候補と息子を会わせる。アイリーンはお使い先のお寺で、英語ができる僧侶と出会い日本の文化を教えてもらうことに。彼女はかつて日本には子が親を捨てる文化があり、姥捨て山という場所が存在していたことを知るのだった。

お使いを終えて帰宅したアイリーンだったが、ツルと塩崎によって家から連れ去られそうになる。そこへ、戻った岩男が遭遇したが、塩崎に殴られてしまう。アイリーンが連れ去られてしまったため、岩男は必死で塩崎の車を追った。
山道を猛スピードで走り、塩崎を追い詰めた岩男だったが、暴力に縁のない岩男はたちまちのうちに殴り倒されてしまう。塩崎とアイリーンが口論となっている隙を突いた岩男は、猟銃で男を撃ち殺してしまうのだった。

2人で山中に遺体を埋めた。アイリーンはショック状態で、岩男は血塗れの彼女に財布を渡し銀行口座の暗証番号を教える。財布を持たせて逃がそうとしてくれたのだ。アイリーンはそんな彼の深い愛情に心を打たれ、彼は自分が守ると心を決める。
血塗れのまま実家へ戻りツルを怒鳴りつけた岩男は、そのままアイリーンと体を重ね互いの愛情を確かめ合うのだった。

数日後、岩男の前に強面の男が2人現れる。彼らは明らかにヤクザで、塩崎の行方を探していた。岩男は精神的に追い詰められ愛子へと癒しを求めるようになり、アイリーンのことをぞんざいに扱うようになる。嫌がらせは続き、徐々に追い詰められる宍戸家。穏やかな日々が戻ることはない。
冬がきて外には連日、大雪が降る。岩男はアイリーンに仕送りを渡すこともしなくなり、やがて妻へと手を上げるようになるのだった。

映画『愛しのアイリーン』の結末・ラスト(ネタバレ)

そうして、ある夜を境に岩男が忽然と姿を消してしまう。神社から山奥へ入った岩男は愛するアイリーンを守るため、わざと冷遇し抑圧された愛情を木に刻み付けることで不安を解消していた。アイリーンは夫の車を発見し、山奥でその惨状と凍死した岩男を発見してしまうのである。

ツルもまた行方不明となった息子を探していたが、見つけることができずに不安を募らせていた。岩男は両親にとってようやくできた子供であったため、それはもう大切に育てたのだ。故にツルの愛情は一般的な愛情よりも深く、岩男だけが全てであった。彼女は息子を奪ったアイリーンを目の敵にして、スコップで殴り酷く責め立てる。アイリーンもツルの気持ちが幾分か理解できたため、岩男の死体が神社の山奥にあることを泣きながら明かすのであった。

岩男の死体がある場所へツルを案内。母親は凍死した息子を目にして愕然とし、ショックのあまり倒れてしまう。ツルを連れて帰宅したアイリーン。祖国の母とも喧嘩してしまい、残るはツルだけが頼りである。しばらく意識を失っていたツルだったが、目覚めた時には言葉も話せず起き上がることもできなくなっていた。ツルを病院へ連れて行こうとしたアイリーンだったが、義母は彼女を拒絶。

何度も拒絶されたが、懸命にツルの面倒を見るアイリーン。そんな中、マリーンの勤めるフィリンピンパブが売春の斡旋を行っていたとして、警察に摘発される事態が発生していた。
数日後、アイリーンは家を出る決意を固め、ツルを置いて出て行こうとする。すると、義母は自分を山へ捨てて行けとジェスチャーで伝えるのだった。嫁は仕方なく義母を背負って雪山へ。指示に従い小さなお堂の前でツルを下ろした。アイリーンは涙を流し、岩男の子供を身籠っているかもしれないとツルを説得。自殺を止めることに成功した。

だがその帰り道、ツルはアイリーンの背で息を引き取ってしまう。アイリーンは警察に全てを明かしたが、駐在は彼女の言葉をまともに受け取らず。たった1人になってしまったアイリーンは、とぼとぼと歩き続ける。深々と雪が降る中、不意に岩男が自分へと愛を囁く声が聞こえ、アイリーンははっとして振り向くのであった。

映画『愛しのアイリーン』の感想・評価・レビュー

日本人男性と結婚するフィリンピーナの苦難と悲劇を描いた作品。原作は熱狂的なファンを持つ漫画家、新井英樹の同名漫画。原作を読んだことのない人でも、かなりショッキングで生々しい作品であることが分かる。原作では主人公はまるでゴリラのような巨体であるらしいが、今作ではカメレオン俳優と名高い安田顕が主人公を怪演し演技の幅を見せる。更に母親役の木野花が鬼気迫る演技で作品をより狂気へと導いている。

アイリーン役にフィリンピンのオーディションで抜擢された新人ナッツ・シトイが演じているが、彼女がまた可愛らしく無邪気で健気。作品の唯一の救いとなっている。予備知識のない状態で見たため、始まりからまさかこのような結末に至るとは予想していなかった。原作はもちろんのこと、監督の手腕と俳優達の熱演が実を結んだ結果なのだろう。(MIHOシネマ編集部)


異国の地で暮らすってとても大変なことですよね。日本で頑張っている外国人を見ると少し優しくしてあげなきゃという気持ちになってしまいます。UberEATSの配達員さんが外国人だった時には少しのミスなら許してしまったり…。
でもこの作品を見ると、日本にいる外国人に対する偏見や差別みたいなものってまだまだあるんだなあと悲しく感じました。日本語が分からないと知ると、聞こえるように悪口を言ったり…なんとも言えない気持ちになります。
前半はそんなアイリーンの大変な日本暮らしを描いていましたが、後半はかなりハード。愛することを初めて知った不器用な男の狂気にも思える行動から目が離せません。(女性 30代)


家族で見るには不向きです。愚直が行き過ぎて下品、醜悪、狂気すら感じましたが、滅茶苦茶面白かったです。田舎の閉塞感とか、子離れできずにいる老いた母を描いていて、深刻な社会問題がちらほらと垣間見えます。それに加えて岩男、岩男の母、アイリーン、皆愛を渇望しているのでしょう。岩男とアイリーンの想いが通じ合う数日間のみ、大変甘美で愛おしい気持ちが溢れました。安田顕の、変質者じみた演技にびっくり仰天し続けた二時間強でした。(女性 30代)

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