映画『ジェノサイド・ホテル』の概要:2008年11月26日、インドのムンバイで発生したイスラム過激派による、同時多発テロ事件を題材に制作された作品。突如として占拠された高級ホテル、タージマハル・ホテルにて、命を脅かされる恐怖と人質になった人々の懊悩を描く。
映画『ジェノサイド・ホテル』の作品情報
上映時間:128分
ジャンル:サスペンス
監督:リアム・ワーシントン
キャスト:ジョセフ・マーラー・テイラー、スクラージ・ディーパック、ミヒカ・ラーオ、カビル・シン etc
映画『ジェノサイド・ホテル』の登場人物(キャスト)
- ショーン(ジョセフ・マーラー・テイラー)
- 休暇を利用しムンバイを訪れていた。心優しく純朴な青年。インドを心から楽しみ、兄妹の妹と良い雰囲気になる。
- アティヤの祖父(スクラージ・ディーパック)
- がんに侵された娘へと孫を会わせるためにムンバイを訪れていた。穏やかで優しい人物。アティヤをとても可愛がっている。着衣から見ても裕福と思われる。
- アティヤ(ミヒカ・ラーオ)
- がんに侵された母を持つ少女。祖父と共にホテルに宿泊中だった。可愛らしく無邪気。祖父の言うことをよく聞く良い子。推定5歳。
- ヤーシーン(カビル・シン)
- イスラム過激派の戦士。坊主頭の若い青年。アーマドとペアを組んでテロへと参加している。冷酷な命令に動揺し、躊躇う様子を見せる。
- アーマド(キーラン・クマール)
- イスラム過激派の戦士。薬漬けでまるで人殺しをゲームのように思っている。無慈悲で少々、乱雑な面が目立つ。
- オズ(ネイサン・キー)
- ユダヤ系ロック歌手。妻との結婚式をするためにムンバイを訪れていた。信仰に対し度々、持論を展開する。
- クレア(マーテル・ハマー)
- 記者。娘を持つ母親でもある。上司と密に連絡を取り、情勢を仕入れてくれる。報道により、人質の命が脅かされていると非難。
映画『ジェノサイド・ホテル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ジェノサイド・ホテル』のあらすじ【起】
休暇を利用しインドのムンバイを訪れていたショーン。宿泊先は最高級のタージマハル・ホテルで、インドを大いに満喫していた。
2008年11月26日。その日もショーンはムンバイで開催された祭りに参加し、満足してホテルへ。ホテルには様々な理由で訪れた大勢の宿泊客がいた。一旦、部屋へ戻ったショーンはシャワーを浴びた後、エレベーターでホテルのレストランへ向かった。ところが、階層へ到着する前に建物を揺るがすほどの衝撃が起こる。ほどなくしてドアが開いたものの、レストランは見る影もなく、煙が立ち込め激しい銃声と銃弾の嵐が巻き起こっているのだった。
咄嗟に身を屈め、床を這ってエレベーターから下りたショーン。いくつもの銃声が鳴り響く中、痛みや恐怖で泣き叫ぶ人々の声が聞こえた。
危険と隣り合わせのホールから厨房へ逃れた彼は、コックや給仕と共に身を潜めたが、そこへも襲撃者が立ち入り無差別に銃を乱射。無残にも銃弾に斃れる人々を横目にショーンはタイミングを見てその場から逃げ出すのであった。
ホテルの部屋で異変を察し、孫のアティヤと外の様子を窺っていた祖父は、孫に恐怖を与えないよう銃声を花火のようだと例えていた。
3階の304号室では記者のクレアがスマホにて何が起きているか、上司と連絡を取り合う。たまたま出会った10代後半の兄妹と共に部屋のドアを封鎖。ニュースによると、イスラム過激派が10か所の要所へと同時多発テロを行ったとのことだった。
腹部を負傷した老婦人を助けたショーンは、身を潜めていた他の宿泊客と合流。部屋の宿泊客であるオズはユダヤ系ロック歌手で、妻と結婚式を挙げるためにムンバイを訪れていた。
同じ頃、上司との電話で記者が3階に宿泊しているとの報道について口論していたクレア。そこへ、救助隊と名乗る者が部屋を訪れる。本物の救助隊なら良いが、本物である可能性は限りなく低い。
映画『ジェノサイド・ホテル』のあらすじ【承】
イスラム過激派の戦士、ヤーシーンとアーマドはヒンドゥー教を信仰し、このテロを成功させた暁には英雄になれると思っている。彼らは報道により記者が3階にいると知ると、3階のすべての部屋を虱潰しに回った。そうして、クレアの部屋へも訪れたが、彼女は息を潜め様子を窺う。反応がないことで相手は去ったが、部屋の電話が鳴る。そこで、兄妹の兄と口論したが、兄が電話に出てしまう。そのせいで、部屋にいる人数が犯人に知られてしまうのだった。
一方、オズの部屋では信仰について論争が巻き起こっていた。そんな時、ドアを叩く音が鳴り響く。警戒しながらドアを開けると、部屋から逃げ出したクレアと兄妹だった。
同じ頃、ヤーシーンとアーマドは過激派の上役から計画の進行が遅れていると叱咤される。そして、生存者を発見したら、即座に撃ち殺せと命令されるのだ。
爆発にてホテル内に火災が発生。アティヤと祖父の部屋やオズの部屋へも煙が充満し始める。幼い孫を守るため、祖父は煙を排出しようとして奮闘し、大量の煙を吸い込んでしまう。そのせいで彼は意識が朦朧となり、気絶してしまうのだった。
オズがホテルに宿泊していることがニュースにて報道される。報道とは万民へと情報を送ると同時に犯人へも情報を与えてしまうため、この報道により狙われる危険性が高まってしまう。
イスラム過激派はヒンドゥー教の神のみが唯一と考える。故に、キリスト教を受け入れずに対立し、武力にて根絶やしにすることを目的としていた。そのため、ヤーシーンは上役からオズを殺せと命令される。
映画『ジェノサイド・ホテル』のあらすじ【転】
オズの妻が機嫌を直したことで一同に笑顔が戻る。ショーン達は布を結び合わせ、窓からの脱出を考えたものの、外で待ち伏せするイスラム過激派によって1人が狙撃され死亡。脱出は失敗した。夜が明けても騒動は静まらず、銃声が鳴り響く。ショーンは遺体を絨毯で包み皆の目から隠した。
犯人は生存者をいぶり出す計画らしい。2日目にして治安部隊がホテルへ突入しようとしたが、7~8人で構成される犯人は非常によく訓練された武装兵であり、突入に失敗していた。
ホテルには50人ほどの客が残っており、命が脅かされている。世間では新たな9.11だと騒がれ、世界が悲しみに包まれた。
そうしているうちに老婦人の容態が悪化。ショーンは医者を探しに単独で部屋から出ることに。静まり返った廊下を進んでいると背後から突然、声をかけられる。ホテルの従業員だと言う少年は、密かに生存者をホテルの外へ避難させていた。そこで、ショーンは医者がいないかを聞く。すると少年は、医者はいたが、外へ避難させたと述べた。ところが、会話中にエレベーターの到着音が鳴る。現れたのはヤーシーンとアーマド。少年は自分が囮になってショーンを逃がしてくれるのだった。
やむなく部屋へ戻ったショーン。老婦人はホテルの窓から美しい夕空を眺めながら、息を引き取った。夜になって再び銃声が響く。犯人が部屋に近づいているのだ。部屋に籠る生存者は一気に緊迫。
アティヤと祖父の部屋へもヤーシーンとアーマドがやって来た。祖父は足音を忍ばせドアへと近寄ったが、犯人は別の部屋を襲撃。そんな中でもアティヤは部屋の中でかくれんぼを楽しむ。
一方、ストレスが溜まり緊迫状態に苛立ちを募らせたオズの部屋では、生存者たちが口論中。ヒートアップした怒鳴り声が廊下へと漏れ出てしまい、犯人に気付かれてしまう。ヤーシーンとアーマドは救助部隊を装って部屋のドアを次々と叩き始める。すると、またも上役から叱責の連絡が入る。報道によるとオズはすでに外へ逃亡したらしく、計画が失敗に終わったと激怒していた。
映画『ジェノサイド・ホテル』の結末・ラスト(ネタバレ)
どうやら、兄妹の兄がスマホのSNSでオズはもうホテルから逃げたと載せたらしい。これにより、オズは命拾いしたわけである。
そうして、4日目。とうとう立てこもりが終了したと各々へ連絡が入る。生存者たちは涙を流し抱き合って喜んだ。救出部隊が訪れるまで、部屋で待機して欲しいと言われた一同。アティヤと祖父も荷物をまとめ、外へ出る準備を進めた。
ところが、兄妹間で喧嘩が勃発。兄が部屋を飛び出してしまう。ショーンは彼を連れ戻すために部屋の外へ出て、廊下に転がる無数の遺体を目にする。そして、兄妹が宿泊していた2階へ。しかし、廊下の先から声が聞こえ立ち止まった。そこにはアーマドに銃口を向けられた兄の姿が。彼は助かるためにムスリムだと嘘をついたらしく、あえなく銃殺されてしまう。その部屋にはイスラム過激派の戦士たちが人質と共に潜伏していた。部屋の電話を使用して立てこもりは終了したと各部屋へ連絡を入れていたのだった。
ショーンは急いで部屋へ戻る。電話のせいで人質が潜伏している場所が判明してしまった。ヤーシーンとアーマドがエレベーターで20階へ。ちょうど、ショーンも階段にて20階へ辿り着き、彼らの姿を目視した。
アティヤの祖父もまた、異変を察して孫娘を戸棚に隠す。オズたちも連絡にて立てこもりが犯人による嘘であることを知り、息を潜めていた。
アティヤを隠した祖父は犯人によりドアが叩かれるのを聞き、孫の荷物を隠した後、死を覚悟してドアを開ける。次の瞬間、彼は銃撃されて命を落とした。
犯人同士で口論が展開される中、オズの部屋にいた妹の着信音が鳴り響く。オズはドアが開かれる瞬間を狙ってナイフで反撃したものの、銃に勝てるはずもなく2人の犯人は部屋へ突入し、生存者を皆殺しにした。
全てを見ているだけしかできなかったショーン。絶望に打ちひしがれたが、そこへアティヤが出て来る。少女もまた絶望していたが、今度こそ守らなければならないと足を踏み出した。彼はアティヤを抱き上げ逃走。その姿をヤーシーンが見つけて銃を発砲した。
少女を抱いたまま階段を駆け下りる。そして、血塗れになりながらもホテルの外へ逃れた。救助隊が一斉に駆け付け助かったと思ったが、銃弾はショーンを貫通し少女の胸を貫いていたのだった。
映画『ジェノサイド・ホテル』の感想・評価・レビュー
インドのムンバイで実際に起こった無差別テロによる惨劇を描いている。イスラム過激派はヒンドゥー教を信仰するあまりキリスト教を頑なに認めず、驕った考えに偏っている。それを武力で行使するのは間違っていると思うのだが、中にいる彼らにそれを知らせることは非常に困難だと感じた。作中ではまるで洗脳のように若者を扇動している上役がおり、武装兵達は薬物で正気を失い、罪のない人々を次々と容赦なく殺していく。
日本ではとても考えられない惨劇であり、その恐怖に晒された人々の精神的苦痛は想像以上だろうと思う。今作はテロによる惨劇と恐怖を主に描き、人質の背景は軽く流す程度。彼らの論争こそが、世界の情勢を描いているように思われ、信仰の自由を考えさせられる。(MIHOシネマ編集部)
銃撃の音や怯える宿泊客達の姿がとてもリアルで、テロの恐ろしさが感じられる作品だった。自分がもしあの場所にいたらどうするだろうと想像してみたが、冷静に動ける気が全くしない。無邪気なアティヤがいることで、テロ行為の残酷さがより際立っていたと思う。希望から一気に絶望に叩きつけられた終わり方で、テロが救いのない行為だということが表されていたように感じた。なぜこんな酷いことができるのか、理解に苦しむ。(女性 30代)
テロの現場にいた人たちの恐怖を物凄くリアルに感じられる作品でした。今作で描かれているのは犯人に対する反撃や報復ではなく、テロリストたちにただ怯える人たちの様子です。2008年に実際にムンバイのホテルで起きたテロ事件を元に作られているので理不尽に事件に巻き込まれてしまったホテルの宿泊客の緊迫とした様子や恐怖を感じている描写が臨場感がありすぎて、見るのをやめてしまいたくなるほど怖かったです。
ハッピーエンドとは言えないラストに胸が苦しくなりました。(女性 30代)
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