映画『ドッグマン』の概要:犬のトリミングサロンを営むマルチェロが、街の厄介者のシモーネにこき使われて転落していく話。マルチェロは気弱で流されやすい性格のため、最後は一人になってしまうのが痛々しい。
映画『ドッグマン』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:マッテオ・ガローネ
キャスト:マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ペッシェ、アダモ・ディオニージ、フランチェスコ・アクアローリ etc
映画『ドッグマン』の登場人物(キャスト)
- マルチェロ(マーセロ・フォンテ)
- 小さな街でドッグサロンを営む男。気弱で、長い物には巻かれる性格。街の厄介者のシモーネの言いなりになり、近隣の仲間から仲間外れになる。
- シモーネ(エドアルド・ペッシェ)
- 全てを暴力で解決する街の厄介者。マルチェロに悪事の手伝いをさせ、マルチェロを追い込む。
映画『ドッグマン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ドッグマン』のあらすじ【起】
イタリア南部の寂れた海辺の街で、マルチェロは「ドッグマン」という名前のドッグサロンを営んでいた。マルチェロはどんなに獰猛な犬にでも丁寧に、愛情を注ぎながら接していた。マルチェロは離婚し、娘と別々に暮らしていた。そのため、1日の大半を店で1人、犬の世話をして過ごすことが殆どであったが、大好きな犬と過ごす時間を幸せに感じていた。マルチェロの娘は頻繁に店に遊びに来たので、娘が来た時には一緒に犬達のトリミングをするなど和やかに過ごしていた。マルチェロとマルチェロの娘はとても仲が良く、マルチェロは私の可愛い天使、と娘を呼び可愛がっていた。
ある日、シモーネが突然マルチェロの店にやって来た。シモーネは体格が良く乱暴者であった。町人から物を奪ったり、店や民家に盗みに入ったり、暴力を笠に着てやりたい放題やっていた。町人たちもシモーネを厄介者扱いするものの、対峙すると歯向かえる者はおらず、泣き寝入り状態だった。シモーネはマルチェロの持っているコカインを奪いにきたのであった。マルチェロは金を払うようにとシモーネに言うが、シモーネはマルチェロの胸ぐらを掴み、壁に押し付けて威嚇した。
映画『ドッグマン』のあらすじ【承】
この出来事から、シモーネはマルチェロを手下のように扱うようになった。シモーネは頻繁にマルチェロの店に訪れ、マルチェロを度々悪事に加担させた。民家に強盗に入る際にはマルチェロに車の運転をさせ、コカインを手に入れるためにマルチェロにコカインを売ってくれていた友人に奇襲をしかけた。マルチェロは嫌がりながらも、小心者でお人好しなため、シモーネに付き合っていた。
ある日、シモーネはバーにあるゲーム機を破壊し、費やしたコインを全て返すようにバーの店主を脅した。バーの店主はゲーム機を殴り続けるシモーネを止めるが、無駄であった。結局シモーネはお金を奪って店を出ていった。このようなことが日常的に起こるため、町人たちは集まって、シモーネを始末することを企てた。マルチェロはその場にいたが、難色を示し無言だった。
映画『ドッグマン』のあらすじ【転】
シモーネがマルチェロをバイクに乗せ街を暴走していると、突然バイクに乗った男が小道から飛び出して、シモーネに向かって発砲した。シモーネを撃ったのは、町人達に雇われた他所の街の男であった。シモーネは倒れ、放っておけば命を落としかねない状況であった。マルチェロは、病院に行くことを拒むシモーネを担いで家に運び、体に残っている銃弾を取り除き看病した。
シモーネに支配されているマルチェロの楽しみは、娘と出かける旅行と隣人達とやるフットサルであった。マルチェロは少ない売り上げで娘を旅行に誘い、ダイビングを楽しんでいた。旅行を喜ぶ娘の姿を見て、マルチェロはもっと稼いで娘を喜ばせたいと考えた。
シモーネは怪我から復活し、再び街で暴れ始めた。マルチェロの元を訪れたシモーネは、マルチェロに提案を持ち掛ける。それは、マルチェロの店と隣の質屋の間にある壁を壊し、質屋に強盗に入るというものであった。その質屋は、マルチェロの友人のフランコが営んでいた。友人との付き合いを大切にしていたマルチェロは、それだけはできないと断るが、シモーネには関係なかった。シモーネはフランコの店にある品々を盗み、それをマルチェロの仕業に仕立てた。警察で尋問されたマルチェロは、シモーネを庇い、刑務所に入ることになる。
映画『ドッグマン』の結末・ラスト(ネタバレ)
マルチェロが刑務所から出所して街に戻ると、それまで仲良くしていた友人達は、マルチェロを裏切り者として、罵声を浴びせて仲間外れにする。街中からのけ者にされたマルチェロを見て、マルチェロの元妻は娘をマルチェロに会わせることを避けた。絶望の中、マルチェロはフランコの店に強盗に入った時の分け前を貰うために、シモーネを訪ねる。シモーネは殆ど価値の無いアクセサリーをマルチェロに渡し、生意気だとしてボコボコにする。
どん底のマルチェロは復讐を企てた。シモーネに嘘のコカイン取引を持ち掛け、店に呼び寄せたマルチェロは、隙をついて大型犬用の檻にシモーネを閉じ込める。許しがたい侮辱を受けたシモーネは、怒り狂い檻を破壊しようと大暴れする。檻が壊れシモーネの頭が出かけたところを、マルチェロは鉄パイプでシモーネの頭を殴り気絶させる。マルチェロはシモーネの手足を縛り、首を鎖で繋いだ。目を覚ましたシモーネは、弱った振りをしてマルチェロの隙をつき、マルチェロの首を絞める。格闘の末、マルチェロはシモーネを乗せていた電動台のスイッチを押した。ベッドは下に下がり、シモーネは首に繋がれていた鎖で窒息死した。
マルチェロはシモーネの遺体を海辺に運び、火を放った。マルチェロが火に包まれるシモーネの遺体を眺めていると、フットサルコートから仲間達がフットサルをしている声が聞こえてきた。マルチェロは仲間達に向かって、ついにやったぞ、と繰り返し叫ぶが、仲間達からの反応は無かった。仲間達に認めてもらいたいマルチェロは、シモーネの遺体を包む火を消し、シモーネの遺体を肩に担いで仲間達の元へ戻った。しかし、戻った場所には誰もいなくなっていて、マルチェロは圧倒的な孤独に立ち尽くした。
映画『ドッグマン』の感想・評価・レビュー
マルチェロのお人好しで貧弱な性格は、悪さをするような器ではなく、シモーネに支配されていく様子が痛々しい。閉鎖的な地域で、理不尽なことばかりの毎日と、次第に孤独になっていくマルチェロの状況に言葉を失った。全編に渡って犬が登場するが、どんなに酷い仕打ちをされても主人に従うマルチェロの姿こそが、ドッグマンなのではないかと思う。イタリアの寂れた海辺の街の雰囲気が、この作品を一層薄暗く、救いようのないもののように思わせる。(MIHOシネマ編集部)
本作は、イタリアの田舎で「ドッグマン」というトリミングサロンを経営する男と、厄介者の友人との関係性を描いたヒューマンドラマ作品。
2人の関係性がシンプルで分かりやすく、主人公が厄介者の友人と従属関係にあり、温厚で人の顔色を窺ってばかりな性格には少々疑問も多く感じた。
しかし、その辺りのリアルな心情が細かく表されていてとても見応えがあった。
タイトルも物語全体を指しているようで意味深く、こちらに問いかけているようにも感じられた。(女性 20代)
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