映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』の概要:1930年代に現代ヨガを確立させた人物ティルマライ・クリシュナマチャリア。彼の弟子達を取材する中で見つけた、ヨガのルーツとは。本当にヨガは5000年も前から存在したのか。「体の動きを制御し心をコントロールする」ヨガのルーツに迫る。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督:ヤン・シュミット=ガレ
キャスト:ヤン・シュミット=ガレ、ティルマライ・クリシュナマチャリア、アレックス・メディン、K・パタビジョイス etc
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』の登場人物(キャスト)
- ヤン・シュミット=ガレ
- 本作品の監督かつインタビュアー。自身の妻がヨガを学んでいることもあり、ヨガのルーツを探るべく、現代ヨガの父・クリシュナマチャリアの弟子や子供達をインタビューしていく。
- ティルマライ・クリシュナマチャリア
- 現代ヨガの基盤となるものを作った人物。自身はバラモン階級の出身であるが、ヨガを万人に広めようと尽力を尽くした。3男3女に恵まれ、子供達もそれぞれヨガの伝道師となっている。
- アレックス・メディン
- ノルウェー、オスロの出身でヨガ講師。パタビジョイスの元で修行していた。監督と共にインタビューに同席したり、クリシュナマチャリア一家の相関図を教えたりする。
- K・パタビジョイス
- クリシュナマチャリアの弟子。当映画の撮影期間中に亡くなり、その後を孫のシャラートが継いでいる。
- B・K・Sアイアンガー
- クリシュナマチャリアの弟子で義弟にあたる。アイアンガー曰く、クリシュナマチャリアは他の弟子には優しい反面、自分にはとても厳しかった。そのため師の元を去り自分の流派を見つけたという。
- シリーバシャル
- クリシュナマチャリアの3男でヨガの伝道師。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』のあらすじ【起】
インド、ムチュクンテ(Muchukunte)という村を訪れたガレ監督。そこは1930年代に現代ヨガの基礎を確立させてた人物、クリシュナマチャリアの出生地であった。監督はインドの南に位置するマイソールで彼の弟子達に取材を開始した。その弟子の1人であるK・パタビジョイスはまだ生きていた。
偉大なる賢人ティルマライ・クリシュナマチャリア
マイソールで出会った、オスロ出身でヨガ講師のアレックス・メディンと一緒にパタビショイスの元を訪れた。また、その日は「グルプールニマー」と言い、インドでは師匠に感謝を捧げる日とされていた。ヨガの導師を含め、偉大な師に感謝を捧げる日であった。
監督は妻がパタビジョイス流派のヨガを学んでいたこともあり、自身もヨガを通して心と体の融合を感じていた。ここで監督はヨガのポーズの1種である「アーサナ」は果たして本当に5000年前から存在していたのかを疑問に持ち、取材を続けることにした。
パタビジョイスが言うに、クリスナマチャリアは厳しい師で、間違えると叩かれたという。当時ヨガは少数の年配者や僧侶が知っているぐらいで、クリスナマチャリアは「ヨーガ・コルンタ」という古い文献から学び、パタビジョイス含め、弟子達に教えていた。またその文献の写しはヤシの葉に書いていたため、アリが食べてしまい現存はしていない。
監督は実際にパタビジョイスからヨガの指導を受ける。「最初は呼吸の音で始まる。鼻と喉の両方で息を吸うように意識する」と指導を受ける。しかし、言われた通りのポーズを取ろうとするもなかなかできない。すると、パタビジョイスは「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」第1章の最後を引用して、年老いた人でも病気の人でも日々練習を重ねればヨガを完璧にマスターできると優しく説いた。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』のあらすじ【承】
パタビジョイスの指導を経て、監督は2つのアーサナを習得したいと思うようになった。それはあぐらを組むパドマ・アーサナと、頭で立つシールシャ・アーサナである。
クリスナマチャリアの優秀な弟子 B・K・Sアイアンガー
B・K・Sアイアンガーはインド西部の街、プネーで教えており、クリシュナマチャリアの義弟にあたる。また、彼はパタビジョイスとは異なる方法を学んでおり、長くて30分間アーサナを維持する方法を得ていた。彼はこれまでそれを75年間日々続けている。
アイアンガーによれば、その当時インド人にとってヨガは異質のものであったという。伝統を研究する研究者も哲学の側面ばかりを重視し、ヨガの実践を軽んじていた。ヨガに対して偏見のあった時代、修行をする人は精神的に病んでいるか、家族と疎遠になっている者ではないかと考えられていた。アイアンガーの実演を見て曲芸とさえ揶揄されていたという。
アイアンガーがプネーの地に来たのは1937年17歳の時であった。クリスナマチャリアに実際に教わったのは15日から20日の間であったにも関わらず、彼はクリスナマチャリアにプネーの地を任された。アイアンがーはある日、師であるクリシュナマチャリアからヨガには向いていないと言われ、それに加えて世間の人のヨガに対する悪い印象もあり、師の元を去り自分の理論を確立させることにした。それが今日に至る。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』のあらすじ【転】
監督は今一度クリシュナマチャリアの相関図を洗い直すことにした。そして、クリシュナマチャリアの3男であり、ヨガの指導者であるシリーバシャルに会うことにした。シリーバシャルによると、その1930年代のインドは独立間近であり、イギリスとの戦いに備えていた。そこでクリシュナマチャリアは動きを速く、高度にしたヨガを開発したという。それはヴィンヤサ・クラマと名付けられた。特徴としては1つのアーサナから次のアーサナへの動きを繋げたもので、それによって王族の男子は身軽に動く方法を学んだという。
クリスナマチャリアの娘 プンダリーカヴァッリーとアラメール
クリスナマチャリアは学者や司祭が属するバラモン階級の出身だった。そして大学卒業後にヒマラヤの洞窟に住むラーマモーハン・プラフマチャリアの元へ弟子入りを果たす。そこで、彼はプラフマチャリアから3000ものアーサナと呼吸法のプラーナーヤーマを教わる。
クリスナマチャリアは体の機能を制御して心臓を2分停止することができたという。それを聞いた監督はヨガの起源とインドの神秘に興味を持ち始める。次女のアラメールによると、クリスナマチャリアは常に神を思い、練習に集中しろと厳しくしていたという。しかし、「厳しい」ということで子供達や弟子達を守っていたのだ、とアラメールは言う。
クリスナマチャリアの妻ナマギリ
1930年代のインドにおいて、ヨガを知る者はごく限られた人達であった。しかし、クリスナマチャリアはその壁を取り払った。妻ナマギリがヨガを学べたのも、ヨガは万人のもので、女性にも学ぶ権利があるからだとクリスナマチャリアが強く思っていたからに他ならない。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』の結末・ラスト(ネタバレ)
ガレ監督は、山登りやジョギング中に幸福感が得られたり、アイデアが浮かんだりし、脳が活性化すると言う。さらに、それはヨガでも同じような感覚になると発言すると、メディンが「賢人パタンジャリ曰く、ヨガとは心の動きを滅すること」だと言う。そして、ヨガをすると心が落ち着き、意識がクリアになっていくと説明した。
彼らがプネーに滞在している間に、メディンの師であるパタビジョイスが亡くなった。パタビジョイスは70代になってからアメリカで有名になった。そして、その跡を継いだのは孫のシャラートである。パタビジョイスが生前説いていた言葉が引用される。完全に体を制御できるようになれば、心の制御もできるようになる。到達には長年の練習が必要であるが、いつかコントロールできる日が来る。それが本当のヨガであるとパタビジョイスは言う。
1947年のインド独立の後、クリスナマチャリアの道場が財政困難との理由で閉鎖され、一家はしばらくの間家の畑に頼って生活をしていた。ある日、チェンナイで出版業を営むS・プラサードからヨガによる治療法を教えてほしいと連絡が入る。クリスナマチャリアはチェンナイに居を移し、生徒を受け入れ、個人指導を行った。そして、チェンナイの大学でヨガを教え始め、そこで初めてヨガが科目となる。
3男のシリーバシャルがアーサナの起源を知る手がかりとして小さな寺院を案内した。壁に描かれているのはヒンドゥー教の神話に初めて出てくる神、ヨガ・ナラスィムハである。シリーバシャルはその神を指差しながら、神話の時代、神の取る姿勢のことをアーサナといったと教えた。
最後にシリーバシャルは言う。ヨガは神の存在が重要なインドで始まった。インド人にとって、神を思うのは容易いことである。しかし、欧米では違う。クリスナマチャリアは信仰心をうえつけたくなかったはずである。そのため晩年は、ただ言うだけの教え方ではなく、手取り足取り教え、教育の仕方を模索していたという。
監督は考察する。今も昔もアーサナは体を伸ばす手段ではある。しかし、集中し正しく呼吸すれば効果を発揮するもの、それがヨガなのである。
映画『聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅』の感想・評価・レビュー
ヨガはお洒落な人がするエクササイズの一環だと勝手に思っていた。しかし本当のヨガは「体の動きを滅し、心をコントロールするもの」であり、それが最終的には自分のコンディションや内面と向かい合うことに繋がるということを初めて知った。また、ヨガがとても素晴らしいもの、で終わらないところも共感を得られた。弟子によってある種、確執のようなものが存在し、それがそれぞれの流派へと繋がるところもとても人間臭い。ドキュメンタリー故の嘘偽りのない作品である。(MIHOシネマ編集部)
本作は、現代ヨガを確立したティルマライ・クリシュナマチャリアの子孫たちを取材し、ヨガのルーツに迫ったドキュメンタリー作品。
南インドで100年継承されている近代ヨガの歴史や奥深さに触れられた。
現地の人々や風景は観ているだけで旅したくなるほど素晴らしいものだった。
特に、デモンストレーション風景やヨガを突き詰めた人の姿は印象的で、神聖な雰囲気が感じられて圧倒された。
ヨガはしないけれど、様々な流派があることや、伝承していく上での人間らしさが感じられて興味が湧いた。(女性 20代)
ヨガってこんなにも奥深くて、ポーズの一つ一つにしっかりと意味があるのだと初めて知りました。意識の高い人が健康のためにやっているものだと安易に考えていたのが少し恥ずかしくなりました。
ヨガのポーズってどこに効くの?とか、なんの意味があるの?なんて思ってしまうものもありますが、ただ身体のどこかに効くとかそういうものではなくて、呼吸や魂まで連動するものなんですね。
こんなポーズ絶対に出来ないでしょ…と思っても実際にそれをやってしまう彼らの姿はとても美しく、心が浄化されるような気持ちになる不思議な作品でした。(女性 30代)
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