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映画『蜜のあわれ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『蜜のあわれ』の概要:老作家の周りではしゃぐ少女。実は彼女は赤い金魚だった。老作家と金魚との秘密の恋は耽美でエロティック。老作家のことが忘れられずこの世に出てきてしまった幽霊、ゆり子の登場をきっかけに状況が静かに、大きく動いていく。室生犀星の映像化不可能と称された「赤子」を二階堂ふみが時に可愛く、時に妖艶に演じ切った作品。

映画『蜜のあわれ』の作品情報

蜜のあわれ

製作年:2016年
上映時間:105分
ジャンル:ラブストーリー
監督:石井岳龍
キャスト:二階堂ふみ、大杉漣、真木よう子、韓英恵 etc

映画『蜜のあわれ』の登場人物(キャスト)

赤木赤子(二階堂ふみ)
元は300円しかしないおてんば金魚。人間の姿となり老作家に愛でられている。始めは自分のことを「あたい」と称していたが、老作家と恋人同士となってからは「赤井赤子」として生きる。
老作家(大杉漣)
赤子を金魚売りの男から買ってきた。肺病を患っている。家には19年間寝たきりの妻がいる。赤子からの申し出で、金魚と恋人同士となる。
田村ゆり子(真木ようこ)
赤子が老作家の講演会中に出会った着物の女性。実は12年も前に心臓麻痺で死んだ幽霊で、昔老作家に書き物の指導を受けていた。左手首に時計をむしり取られた時にできた痣がある。
芥川龍之介(高良健吾)
老作家の側に何度か登場する。老作家若き頃、追いつかなくてはと必死に目指していた存在。老作家に対してあまり友好的ではない。
金魚売りの男(永瀬正敏)
様々な種類の金魚を売る男性。赤子も、元々はその内の1つの金魚鉢にいた。赤子の頼みを聞き入れる優しい性格の持ち主。
まる子(韓英恵)
老作家の愛人で学校の教師を務めている。老作家とは2ヶ月前から逢瀬を重ねている。

映画『蜜のあわれ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『蜜のあわれ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『蜜のあわれ』のあらすじ【起】

薄い赤地の衣をまとったボブ頭の少女が文芸誌を読みながら老作家と話している。自分のことを「あたい」と呼び、17歳くらいの少女は、動くたびに水音がする。老作家は「あたい」のその姿を逃さまいと原稿を書いたり、スケッチしたりしていた。少女は「おじさま、人を好きになるということは、愉しいものでございます、と仰ってみて」と挑発的に言うも老作家はできないと突っぱねる。拗ねた「あたい」は老作家からモデル代を受け取り、水筒を持って出かけて行ってしまう。残された老作家のスケッチにはなんと赤い金魚の絵が描かれていたのだった。

第1章 あたいの初夜

「あたい」が尾ひれの怪我をして帰って来た。彼女は近所の野良猫に金魚と正体がばれてしまったのだ。しかし、老作家には人間の臀部にしか見えない。舐めて治してやると奥の方で19年寝たきりの妻が何やら頼み事を言う声が聞こえる。

ある日「あたい」は老作家の講演会を聴いていた。すると、隣に白い着物をまとった女が座る。具合が悪くなった女は「あたい」に介抱されたことにより、回復する。老作家が講演会を終えると「あたい」が待っていた。今まで田村ゆり子さんという、左手首にひっかかれた傷がある女性といたと言うも、その女性は12年も前に心臓発作で死んだと言われてしまう。会場を後にして老作家と「あたい」はバーにいた。すると後ろの階段のところで田村ゆり子が現れる。逃げる彼女を追って行くとゆり子は一礼して川の中へ飛び込み、姿を消すのだった。

「あたい」は短い人生楽しいことで埋め尽くしたい、おじさま恋人になってとお願いする。その願いを受け入れる老作家。名前を決めてあげようと提案すると、「赤井赤子」がいいとはしゃぐ少女。その瞬間から彼女の名前は「赤子」となった。

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映画『蜜のあわれ』のあらすじ【承】

第2章 金魚のそら似

ある日、田村ゆり子は赤子の正体を掴むべく彼女の後を尾行していた。赤子もそれに気付いており、自分が元いた金魚売りの男のところへ身を潜める。そこへやって来たゆり子は赤子を見失い混乱する。元は300円しかしない金魚だとバラした赤子に、自分は自分の意思なしにこの世に出て来てしまった幽霊だと白状する。

2人は花を買う老作家を目撃する。老作家は赤子に映画を観に行くと嘘をついて2ヶ月前から愛人宅へ通っていたのだった。真実を知ってショックを受ける赤子。そして死んだ者の世界へ連れて行ってとお願いをする。ゆり子の部屋には老作家のサインがある原稿用紙が置かれていた。老作家に恋したことを後悔する赤子。ゆり子もまた老作家に恋しており、赤子に共感する。

赤子は老作家に2ヶ月前から愛人宅へ通っていたことを責める。しかし、老作家に上手くかわされてしまう。怒った赤子は愛人である、まる子の家へ向かった老作家を追って外出を決行する。赤子は金魚売りと仕組んで金魚の姿となり、まる子の部屋へと忍び込む。しかし、そこで見たものは老作家を慕うも彼に罵倒されてしまったまる子の姿であった、赤子はまる子の老作家への気持ちに同情し、思わずゆり子の膝の上で泣いてしまう。

映画『蜜のあわれ』のあらすじ【転】

第3章 死と税金

老作家は医者から肺病を患っているから大学病院へ行けと言われてしまう。病室を出ると、とっくの昔に死んだ芥川龍之介がニヒルな笑いを浮かべていた。

家に帰り、老作家は懐中時計を見ていると、赤子が改まって老作家の子供が欲しいと申し出る。金魚の赤ちゃんを産み、老作家の子として育てたいとの発言に対し、絶対に駄目だと怒る老作家。絶対に産むと言い残し、赤子は出かけて行ってしまう。

赤子の外出後、老作家の筆は思うように進まない。意を決して2階に上がると、そこには全裸になった赤子が見知らぬ男性を受け入れていた姿であった。

老作家は何十畳もある部屋で芥川龍之介と、彼にしなだれかかった花魁と面会する。花魁もまた齢26で死んでいた。「君にできることは足掻くことだけだ」と挑発してくる芥川に対して、老作家は「まだまだ生きてやる」と言い返す。芥川は静かに「死と税金からは逃れられないと言うだろう」と言葉を残すのだった。

映画『蜜のあわれ』の結末・ラスト(ネタバレ)

第4章 命あるところ

すっかり老いぼれた老作家と腹部が大きくなった赤子が庭を眺めていた。するとゆり子が部屋を通り過ぎ、赤子はお腹を抱えながら追いかけて行く。今日こそは老作家と会ってほしいとの頼みにゆり子は渋々承諾する。そして、赤子が「あたい」と言わなくなったと気付き指摘すると、赤子は母になるんですもの、と微笑んで応えるのだった。そこへ老作家が到着し、田村ゆり子という人物は存在しない、老作家が書いた書物の中に登場する人物だと説明する。それを聞いたゆり子は生きていた頃から幽霊だったのかもしれない、と呟く。そして、元気な赤ちゃんを産んでねと言い残し、以前飛び込んだ川の向こう側へと去って行く。

家に戻ると赤子は荷造りを始める。始めは怒り狂っていた老作家も、次第には1人にしないでくれと懇願する。泣き崩れる老作家に気持ちは揺らぎつつも、赤子は「おじさま、さようなら」と目に涙を浮かべながら去って行くのであった。

金魚売りの男が老作家の元を訪れ、金魚の死体を披露する。それは金魚の姿となった赤子の姿であった。大泣きし、意気消沈した老作家。お手伝いさんに声を掛けられ返答した次の瞬間、体勢を崩し仰向けに倒れてしまう。するとそこに、死んだはずの赤子がやってくる。老作家は赤子の手を取り立ち上がると、笑顔になりながら「人を好きになるということは、愉しいものでございます」と言い、2人はダンスする。2人はいつまでも踊り続けるのだった。

映画『蜜のあわれ』の感想・評価・レビュー

現実には寝たきりの妻がいながらも妄想の中にこそ生きがいを感じている老作家。老作家の世界の中でしか生きられない赤子。その赤子の妄想によって形作られたゆり子。人を思う気持ちが強ければ強いほどその存在は具現化し、自分の良いように捉えてしまうものなのだろうか。赤子からの発案で老作家は赤子と恋人同士となり、赤子からの申し出で金魚の父になろうとした老作家。実はそういう風に見せかけて本当は全て自分の無意識な願望なのではないかと思ってしまった。結局のところ、人は誰しも拠り所となる場所は本能なのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)

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