映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』の概要:15世紀半ば、オスマン帝国に反旗を翻したヴラド公打倒のため、スルタンは戦闘に特化した騎兵隊デリラを討伐に向かわせる。7人のデリラは虐げられる民を救出しつつ、ヴラド公の城を目指す。日本では珍しいトルコ映画。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:アクション、アドベンチャー
監督:オスマン・カヤ
キャスト:ジェム・ウチャン、エルカン・ペツェッカヤ、イスマイル・フィリズ etc
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』の登場人物(キャスト)
- ゴクルト(ジェム・ウチャン)
- オスマン帝国騎兵団デリラの隊長。非常に信心深く仲間思いで忠誠心が強い。黒翼を模した鎧を身に纏っている。決断力と統率力に優れており、幼い子供には慈愛を持って接する。愛情深い人物。
- ヴラド(エルカン・ペテッカヤ)
- ワラキア公の息子で幼い頃、忠誠の証としてオスマン帝国へ送られる。深い恨みを抱えつつ幼少期を王子と共に過ごし、領地を賜った折に反旗を翻す。冷酷で残虐。通称ドラキュラ公。自らを神の子と宣う。
- アスガール(イスマイル・フィリズ)
- オスマン帝国騎兵団デリラの一員。先の戦いにて弟を亡くし、深い悲しみを抱いている。ゴクルトを信奉している様子があり、彼の言葉を真摯に受け止める。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』のあらすじ【起】
15世紀半ば、オスマン帝国ムラト2世の治世。ローマ人がワラキアと呼んでいた地が帝国の領土となり、ワラキア公は忠誠の証として2人の息子を人質に差し出した。だが、ムラトは2人のうちの1人、ヴラドだけを受け入れ自分の王子と同じ教育を施す。やがて、王子は帝国を受け継ぎスルタンとなり世界の征服者と呼ばれ、ヴラドは通称ドラキュラ公と呼ばれるようになるのだった。
やがて、ヴラドはスルタンの命令を無視し、賜った領地にて残虐の限りを尽くすようになる。彼は抵抗する兵士や領民を串刺しにし、見せしめとして城への道に何百と並べていた。幾度となく忠告と警告を発したスルタンだったが、ヴラドは従わず。そこで、スルタンはオスマン帝国一の精鋭、騎兵隊デリラの出兵を決定させる。
デリラは常に戦場を渡り歩き山や地で暮らし、スルタンに絶対の服従を誓う少数精鋭の戦いに特化した隊である。隊長のゴクルトはスルタンからの勅令を受けヴラドの領地へと向かった。
一方、ヴラドはオスマントルコへの復讐を果たすべく、あらゆる生き物を死滅させる毒薬を開発。ネズミに毒を含ませ町に放つため、大量のネズミと赤苔を貧民に集めるよう命令。彼はローマ法王の後ろ盾も拒絶し、自らが神だと宣った。
ヴラドの領地内では彼の非正規兵がうろついている。安全に城へ向かうには北の道を遠回りしなければならなかった。だが、ゴクルトはデリラが出兵したのは、ヴラドに虐げられている民を救うことでもあるとし、非正規兵が警備を行う道を堂々と通る決断を下す。
彼らは非正規兵が町を襲撃する様子を目にし、ただちに戦闘を開始。生存者の救出を行った。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』のあらすじ【承】
生存者の女性と赤ん坊を連れたデリラは更に道を進み、ジプシーの一団に一時の休息を頼んだ。それぞれに思うところのある夜を過ごし翌朝、女性と赤ん坊をジプシーに預ける。そして、デリラは再びヴラドの城を目指して出発。
その頃、ヴラドの元にはローマ法王からの使いが訪れていた。ローマはオスマン帝国に反旗を翻したヴラドを称え、キリスト教の守護者として冠を授ける。だが、ヴラドは帝国のスルタンに復讐するため、反旗を翻したのであってローマ法王のためではない。称えるというのなら、自分を神の子として認めろと述べる。それができないならば、ローマ法王もスルタンと同様にすると使者を脅迫するのだった。
一方、デリラは崖の間に位置する原っぱで休息を取っていた。先の戦闘で弟を亡くしたアスガールは、へらへらと笑う仲間の戦士が癪に障るらしい。赤ん坊と泣く泣く別れた無口な戦士も落ち込んでいた。ゴクルトは笑う戦士もまた、アスガールと同じように大切な人や何かを失ってきたのだと話す。デリラに所属する戦士たちは、脛に傷を持つ者が殆どである。故にそれらを抱え無口になるか、虚勢を張って偽物の笑顔を貼り付けるか、ただそれだけの違いなのだと。その言葉にアスガールは自分の行いを振り返り、仲間に悪いことをしたと反省。
しかし、それから数分も経たないうちに神の啓示を受けたシャーマンの戦士が敵襲を訴える。デリラはすぐさま構えを取ったが、笑う戦士がアスガールを庇って矢に討たれる。反撃して襲撃者を倒したが、相手はヴラドの非正規兵だった。傷を負った笑う戦士はその場に残さざるを得ない状況となる。しかし、アスガールは納得しない。そこで、シャーマンの戦士が笑う戦士の治療を引き受け、ゴクルト達は先へ進むことになった。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』のあらすじ【転】
その町では酒場に格闘技のリングがあり、デリラは面倒ごとを避けるため、黙したままで食事を開始した。だが、リングに立つ男は彼らに対して罵倒を浴びせる。すると、言ってはいけない言葉に腹を立てた無口な戦士が突如、立ち上がりリングへ。ゴクルトと仲間達は相手を気の毒に思いつつ食事を続けた。当然、無口な戦士が勝利して席へ戻って来る。仲間達は食べ物を分けることで彼を労わった。
翌日も馬を走らせたデリラ。だが、休息を取ろうにも川の水が毒されている。そこでゴクルトは探索が得意な名無しの戦士に新鮮な水を得る場所を探させた。だが、名無しの戦士はそこで非正規兵の襲撃に遭い、連れ去られてしまう。このことに気付いたのは、名無しの親代わりである師匠の戦士である。彼は何かを察して名無しの戦士が連れ去られた場所へ向かった。川岸に水筒だけが残されている。師匠は息子同然の名無しの戦士が消えたことで動揺。一行は仲間を救出するべく馬を走らせた。
近くの町へやって来たデリラたちは、まず教会へ。彼らは獣の皮を見に纏い異様な雰囲気を持っているため、民衆からは常に遠巻きに見られる。その町の教会の神父は、ゴクルトの旧友であった。彼はデリラの任務を密かに手助けしており、機は熟したと言う。そこへ、漁師の孫だという少年がやって来る。少年はデリラの存在を信じており、神父の小間使いをしていた。デリラはスルタンから秘密裏に任務を受ける特殊部隊でもある。故に民衆にはその存在はただの噂話として広まっているのだった。
捕らえられヴラドの元へ連れて来られた名無しの戦士は、拷問を受けその存在を問われる。だが、彼は決して口を割らなかった。
その頃、デリラは少年が住む舟小屋にて神父からヴラドの近況を聞いていた。ヴラドは疫病を患った人間と赤苔を調合し、細菌兵器を作っている。細菌はネズミの体内で培養され疫病を振り撒く。しかし、ヴラドの城には名無しの戦士が捕らえられている。ゴクルトは神父にネズミの駆除を頼み、デリラは城への潜入を決めた。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、ゴクルトはヴラドの陰謀を密かに探った少年へと黒翼の飾りを与え、次世代のデリラとなることを喜び出発。デリラは組織で育成も行っている。少年はデリラ組織へと入ることを心に決めていた。ゴクルト達が出発後、神父は錬金術師の研究施設へと侵入し爆破。
その頃、デリラは傷だらけとなった名無しの戦士を人質に待つヴラドの大部隊と相対。名無しの戦士は息も絶え絶えであったが、沈黙を守り抜いたと笑う。デリラはその姿を目にし、今こそ殉死の時だと決意するのだった。
目前に甲冑を身に纏ったヴラドが現れる。ゴクルトは剣を手に仲間を鼓舞。そして、死に絶えるまで戦うこと、世界中へとデリラの戦いを知らしめることを誓う。寸前でシャーマンの戦士と傷を癒した笑う戦士も追い着き、少数精鋭のデリラは大軍へと突撃を開始した。
ヴラドは名無しの戦士を殺害し、大砲を放つ。だが、デリラは数々の戦場を駆け抜け戦いに特化した戦士たちである。シャーマンの戦士のお陰で方々に散っていたデリラの仲間達も援軍として駆け付け、激しい戦いを展開した。
そんな中、ゴクルトはヴラドと対峙。激しい戦いを展開し、ゴクルトは奴から殴られ膝をついてしまう。だがその時、彼は戦場の最中、自らの守護獣である狼の姿を垣間見る。奮起した彼は再び立ち上がり、ヴラドの首を討ち取ることに成功するのだった。
戦いの後、無口な戦士が仇を討ち取ったとして勝鬨を上げる。師匠の戦士は名無しの戦士の死を悼み、彼に獅子を狩る者として名を与えた。デリラは仲間の死を深く悼み手厚く葬る。
デリラは墓石にも立てられず孤独に葬られる。他者の命を救うため、自ら死に向かう者。先頭を切って行き二度と戻らぬ者。そんな彼らを人々はデリラと呼ぶ。ゴクルトは戦場にて死を迎えた時、いかなる運命も受け入れると石に刻むよう遺言を残した。デリラの正体を誰も知ることはないが、歴史が続く限り叙事詩として語り継がれるだろう。
映画『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』の感想・評価・レビュー
日本ではあまり見ないトルコ映画で、ドラキュラ公と呼ばれるヴラドがオスマン帝国に反旗を翻した際の戦いを描いている。一方的に帝国側からの視点で描かれているため、ヴラド公はまるで悪人として映っている。
そもそもデリラのデリとは帝国の非正規兵を意味するものらしく、傭兵が集まってできた隊であったようだ。だが、今作では討伐に向かう7人の戦士はスルタンに忠誠を誓い騎兵隊と目されている。この7人はそれぞれに痛ましい過去を持ち、異様な風貌をしている。彼らの生い立ちなども繊細に描き、騎兵隊の奮闘を存分に描けている作品だと思う。(MIHOシネマ編集部)
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