この記事では、映画『天河伝説殺人事件』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『天河伝説殺人事件』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『天河伝説殺人事件』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:ミステリー
監督:市川崑
キャスト:榎木孝明、岸恵子、日下武史、財前直見 etc
映画『天河伝説殺人事件』の登場人物(キャスト)
- 浅見光彦(榎木孝明)
- ルポライター。兄の陽一郎は警察庁刑事局長。事件が起きると放っておけず、探偵の真似事をしてしまう。
- 長原敏子(岸恵子)
- 旅館・天河館の女将。美しい女性。孤児で、苦労しながら生きてきた。とある秘密を抱えている。
- 水上和憲(日下武史)
- 能楽の名家・水上流の宗家。息子の和春は他界している。和春のための追善能を機に、引退を表明する。
- 水上秀美(財前直見)
- 水上和憲の孫。能の才能に溢れた人物。だが、水上流の宗家になるつもりはない。気が強い性格。
- 水上和鷹(山口粧太)
- 水上和憲の孫で、秀美の異母兄妹。水上流の宗家になるつもりはない。天河神社の巫女である福本千代栄と愛し合っている。
映画『天河伝説殺人事件』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『天河伝説殺人事件』のあらすじ【起】
新宿の高層ビルの前。多くの人がいる中、一人の男(川島幸司)が突然倒れて死亡した。同じ頃、奈良県吉野郡天河村の山深い場所で、一組の若いカップル(福本千代栄と水上和鷹)が会っていた。一方、東京の田園調布の屋敷内で、四人の男女が激しく対立していた。やはり同じ頃、旅をしていた浅見光彦は、吉野の町外れで亡くなった鳥を拾っていた。浅見は鳥を埋める場所を探していたのだが、密猟に間違えられ警官に連行されてしまう。困っていたところを、浅見の行いを見ていた女性・長原敏子に助けられる。
12年前に急逝した水上家の元後継者・和春のための追善能を催すため、話し合いが行われた。能楽の名家・水上流の宗家である水上和憲は、当日に行う予定を話した。孫の和鷹と秀美には能の曲目・二人静を披露するよう指示した。どちらが主役を務めるかは、二人の稽古を見て決めるつもりだった。さらに、和憲は追善能を終えた後、引退することを表明する。
和憲が跡継ぎにと望んでいるのは、秀美の方だった。和鷹はそれで文句はなかったが、秀美は跡を継ぎたくなかったので嫌がった。一方、川島を司法解剖した結果、毒殺されたことが分かった。死亡したとき、川島は天河神社の御守り「五十鈴」を持っていた。仙波警部補と倉田刑事は天河神社を訪れた。購入者の名簿はあったが、1000人分もあった。一方、天河神社の巫女である千代栄は、和鷹との交際を両親に反対されていた。

映画『天河伝説殺人事件』のあらすじ【承】
浅見は能についての旅情ルポを書くため、天川村を訪れた。そこで、敏子が女将を務める旅館・天河館に宿泊することを決める。その後、浅見は天河神社を訪れ、宮司から話を聞いた。天河神社では例年、薪能が行われていた。そして、能に使われる様々な面が宝物庫に保管されていた。
水上流の長老である高崎義則が何者かに殺された。高見は林道で高崎に会っていたため、犯人と間違えられてされて捕まってしまう。しかし、アリバイがあったことから、すぐに釈放された。和鷹と秀美は現場を確認した後、天河館に宿泊した。
「五十鈴」の購入者名簿を調べたが、川島幸司の名前はなかった。仙波警部補達は天川村に来たのは無駄足だったとがっかりするが、浅見に全ての事件が繋がっている可能性があると言われる。仙波警部補達は浅見と新宿で会い、分かったことを教えた。仙波警部補達の調べにより、川島と高崎が喫茶店で会っていたことが分かった。仙波警部補は高崎が川島を殺し、その復讐のために高崎が殺されたのだろうと推理した。
和憲は能の曲目・二人静の主役を和鷹に任せることを決定した。それは、和鷹が後継者に決まったのも同然だった。秀美はその決定に満足していたが、秀美を後継者にしたかった母の菜津はショックを受ける。秀美は母を慰めた。その時、和鷹が異母兄妹だと教えられる。菜津は和鷹が誰の子か知らなかった。
映画『天河伝説殺人事件』のあらすじ【転】
追善能が行われた。そこで、和鷹が毒殺される。和鷹は和憲が演じるはずの『道成寺』を披露しようとしていた。和憲の代わりを務めることは、和鷹と和憲以外、誰も知らされていなかった。浅見は小道具の「雨降らしの面」の裏に毒が塗られていたのではないかと推理する。仙波警部補は面を探すが、何者かに持ち去られた後だった。
和鷹に使われた毒は、川島に使われた物と同じものだった。秀美は和鷹を疎んでいた母の犯行ではないかと危惧していたが、浅見はそれを否定した。和鷹と和憲の入れ替わりを誰も知らなかったため、本当は和憲が命を狙われていた可能性が高いと推理したのだ。浅見は和鷹の生みの母の存在に着目する。
浅見は天河館を訪れた。敏子は薪能の準備の手伝いで、天河神社に行っていて不在だった。仲居の石渡ユリは浅見を部屋に案内しながら、少し前に敏子が突然寝込んだことを話した。一方、天河神社の宝物庫で「雨降らしの面」が保管されていたため、宮司が犯人ではないかと警察に疑われていた。
敏子は秀美を連れて天河神社の神輿蔵を訪れた。そこは人気がなく、秘密の会話をするのに最適の場所だった。敏子が秀美と話していると、慌てた様子で浅見が駆け込んできた。浅見は川崎と敏子が同郷だと知り、川崎の同窓会名簿を調べていた。川崎と敏子は中学の同級生だった。
映画『天河伝説殺人事件』の結末・ラスト(ネタバレ)
敏子は和鷹の生みの母だった。敏子は孤児で、引き取り先でも大切にされず苦労していた。それを中学の担任が不憫に思い、天河館の主人に託した。敏子はそこで和春と出会い、愛し合うようになった。そして、和鷹を身籠った。だが、生後間もない和鷹を水上家に奪われてしまう。その代わり、和鷹を宗家にするという約束の証として「五十鈴」を渡されたのだ。
川島は能衣装などを扱う会社に勤めており、その販路を広げたいと野心を抱いていた。敏子と水上家に繋がりがあることに気づき、敏子に近づいて「五十鈴」を奪った。川島は「五十鈴」を見せ、自分の会社と取引するよう高崎を脅した。秀美は高崎が川島を殺したのかと危惧するが、敏子がそれを否定した。川島を毒殺したのは敏子だった。薬と毒薬を入れ替えたのだ。
高崎は敏子の犯行に気づき、会いに行った。高崎は秀美ではなく男の和鷹が跡を継ぐべきだと考えていた。しかし、敏子が人を殺したことで、跡を継がせることができなくなった。敏子は咄嗟に高崎を崖から突き落として殺してしまったのだった。敏子はそれ以上犯行について語ることができず、神輿蔵を立ち去った。浅見は和鷹を毒殺してしまったのは、敏子だと秀美に教えた。本当は和憲を殺すつもりだった。そして、和憲は敏子の犯行に気づき、面を隠したのだった。
薪能の後、和憲は敏子と会った。和憲は敏子の犯行を知り、約束を破って秀美に跡を継がせようと考えていたことを後悔していた。そして、和鷹に跡を継がせることを決めたのだ。その結果、敏子に我が子を殺させてしまったのだった。敏子は和鷹を手放したことを後悔していた。和憲から「雨降らしの面」を受け取り、和鷹を思いながら自殺した。その後、秀美が宗家に選ばれた。
映画『天河伝説殺人事件』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
「浅見光彦・事件簿ファイル第一号」として制作された作品で、雰囲気としてはフジテレビ系列で放送されていた『浅見光彦シリーズ』そのままという印象である。金田一耕助などのミステリーものが好きな方なら、楽しんでみることができるのではないかと思う。母子の悲しい別れが描かれていて、長原敏子の気持ちを思うと辛くなった。和鷹と敏子が親子だと知った後に二人が会話しているシーンを振り返ると、敏子がとても愛おしそうに和鷹を見ているのがよく分かる。(MIHOシネマ編集部)
テレビドラマの「浅見光彦シリーズ」が好きなら見て損は無い今作。榎木孝明演じる浅見光彦は、金田一耕助っぽさもありハラハラしながら楽しむことが出来ました。
ストーリーは比較的簡単で、犯人もわかりやすいかなと思います。小説のような読み進めていくドキドキ感や、犯人を推理する楽しみが欲しい方には物足りないかもしれません。
しかし、2時間ドラマで放送されるものよりも大掛かりな演出もあり、これはこれで面白いと思いました。(女性 30代)
幻想的な天河の風景と、陰謀渦巻く殺人事件が見事にマッチしていて、とても引き込まれました。主人公・鏡味の冷静沈着な推理が心地よく、少しずつ真相に近づいていく過程がスリリングでした。犯人の動機が悲しく、単なるサスペンスに留まらない余韻を残しました。映像美も必見の一作です。(20代 男性)
重厚なミステリーの中に日本神話や伝説を織り交ぜた独特の世界観が魅力でした。犯人が最後に明かす真実が切なく、ただの犯罪映画ではない深みを感じます。天河神社の神聖な雰囲気が物語に緊張感を与えていて、ラストまで緊張感が途切れませんでした。ミステリー好きにはたまらない作品です。(30代 女性)
テンポはややゆったりしていましたが、その分、じっくりと登場人物たちの心情を描いていて良かったです。犯人が意外な人物だったことに驚きましたし、その動機にも納得できる悲しみがありました。ラストシーンで静かに事件が収束していく感じも好みでした。和製本格ミステリーの佳作だと思います。(40代 男性)
女性目線で見ると、登場する女性たちの悲哀が強く印象に残りました。表向きは華やかでも、心に傷を負ったまま生きる彼女たちの姿が胸に刺さりました。犯人の行動も単なる悪意ではなく、歪んだ愛情から来ていたのだと思うと、複雑な気持ちになります。ミステリーとしても十分に楽しめました。(20代 女性)
若干時代を感じさせる演出でしたが、逆にそれが作品全体にノスタルジックな味を出していて良かったです。天河神社の神秘的な雰囲気が、単なる事件を超えた「人間ドラマ」に昇華させていました。誰もが幸せになれない結末に、静かな余韻を覚えました。じっくり味わいたいタイプの映画です。(50代 男性)
天河という土地が持つミステリアスな雰囲気を最大限に活かしていて、冒頭から一気に引き込まれました。犯人の動機も一筋縄ではなく、観終わった後も「本当に彼(彼女)だけが悪かったのか?」と考えさせられる内容でした。静かながらも力強い作品でした。もう一度見返したくなります。(30代 女性)
サスペンスの展開自体はオーソドックスでしたが、背景にある神話や古代信仰のモチーフがとても興味深かったです。鏡味の推理シーンが地味ながらも丁寧で、少しずつ真実が明らかになる過程にワクワクしました。最後は切ない終わり方でしたが、それがまたこの作品らしいと思いました。(40代 男性)
人物描写が丁寧で、それぞれのキャラクターに感情移入しやすかったです。特に、犯人側の視点をもう少し描くことで、単なる犯行ではなく「人間の弱さ」として描いていた点が素晴らしかったです。景色の美しさと物悲しいストーリーの対比も印象的でした。大人向けの上質なミステリーです。(20代 女性)
映画『天河伝説殺人事件』を見た人におすすめの映画5選
八つ墓村(1977年版)
この映画を一言で表すと?
因習に縛られた村で起こる恐怖と悲劇を描いた、日本ミステリー映画の金字塔。
どんな話?
山間の閉ざされた村で、莫大な財産を巡る血塗られた因縁が再び蘇る。生き別れた息子が村に戻ったことで封印されていた過去が暴かれ、恐ろしい連続殺人事件へと発展していきます。重厚な日本ミステリーです。
ここがおすすめ!
古き良き日本映画の持つ濃密な雰囲気と、ミステリアスな村社会の怖さが圧巻。『天河伝説殺人事件』のように、自然と伝統文化の中に潜む闇に惹かれた人にはぜひ観てほしい名作です。
砂の器(1974年版)
この映画を一言で表すと?
一つの殺人事件が明らかにする、過去と血の因縁を描く名作ミステリー。
どんな話?
東京で起きた身元不明の老人殺害事件。捜査を進めるうちに、悲しい過去を背負った一人の青年に辿り着きます。日本各地を巡る捜査と、宿命を背負った人間の哀しみを描く、心揺さぶるサスペンスです。
ここがおすすめ!
圧倒的なスケールで描かれる人間ドラマと、ラストに明かされる真相の深い哀しみが忘れられません。『天河伝説殺人事件』のように、単なる推理を超えた「心に響くミステリー」が好きな方におすすめです。
犬神家の一族(1976年版)
この映画を一言で表すと?
血縁と財産を巡る恐ろしい陰謀劇、横溝正史ミステリーの代表作。
どんな話?
戦後の混乱期、財産相続をめぐる一家に次々と起きる怪事件。名探偵・金田一耕助が家族に隠された秘密を暴き、真実を明らかにしていく。緻密なトリックと人間模様が絡み合う本格ミステリーです。
ここがおすすめ!
豪華なキャストと重厚な演出で、時代背景も感じさせながらサスペンスを盛り上げます。『天河伝説殺人事件』同様、日本文化と伝統が絡むミステリーを堪能したい方には間違いなく刺さる一作です。
悪魔の手毬唄(1977年版)
この映画を一言で表すと?
美しい童謡に秘められた連続殺人の謎を追う、哀しきミステリー。
どんな話?
因習の残る山村で起こる奇怪な殺人事件。子守唄になぞらえた犯行と、村に隠された過去の悲劇。金田一耕助が、真相に迫る中で明らかになる人間の業と哀しみを描いた傑作です。
ここがおすすめ!
静かな山村に漂う不穏な空気と、切ない真相が心に残ります。『天河伝説殺人事件』と同じく、舞台の風土が物語を深めているので、空気感を楽しみたい方にぴったりの作品です。
霧の旗(1965年版)
この映画を一言で表すと?
正義と復讐の狭間で揺れる女の愛憎劇を描いたミステリー。
どんな話?
無実の罪で兄を失った妹が、復讐のために冷酷な手段を選び取っていく物語。正義とは何か、復讐は人を救うのかを問う、社会派サスペンスとして高く評価された一作です。
ここがおすすめ!
淡々とした語り口の中に潜む激しい感情描写が見どころ。『天河伝説殺人事件』同様、犯罪に至るまでの心の動きや葛藤に焦点を当てたストーリーを求める方には、非常におすすめの映画です。
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