映画『ハート・ロッカー』の概要:2008年に公開され、アカデミー賞などを受賞して話題となった、アメリカ軍の爆弾処理班の日々を描いた作品。監督はキャスリン・ビグロー、主演はジェレミー・レナー。
映画『ハート・ロッカー』 作品情報
- 製作年:2008年
- 上映時間:131分
- ジャンル:アクション
- 監督:キャスリン・ビグロー
- キャスト:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズ etc
映画『ハート・ロッカー』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『ハート・ロッカー』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ハート・ロッカー』のあらすじを紹介します。
バグダットにある米軍駐留基地で、爆発物処理班の班長、トンプソン二等軍曹が任務中に命を落とした。
同じ部隊だったエルドリッジ技術兵やサンボーン軍曹が悲しむ間もなく、新しい班長ウィリアム・ジェームズ一等軍曹がやってくる。
ジェームズの型破りな爆弾処理を目の当たりにし、サンボーンとエルドリッジは不安になる。
最初こそジェームスに殺意すら覚えたエルドリッジとサンボーンだったが、彼がただのコミュニケーション下手だと判明し、仲間意識が芽生えていく。
だが、エルドリッジの精神状態は崩壊寸前で、軍医のジョン・ケンブリッジ中佐のカウンセリングを受けていた。
ある日エルドリッジを心配したケンブリッジが、任務に同行する事になる。
“人間爆弾”にされていた少年の遺体を発見したジェームズたちは、そこでケンブリッジの命も失ってしまう。
遺体は基地でDVDを売り、ジェームズとも親しかったベッカムにそっくりだった。
怒りに駆られるジェームズは暴走し、エルドリッジの足を撃って彼を無理やり帰国させることになる。
サンボーンはジェームズに、なぜそこまで無謀な賭けが出来るのかと尋ねるのだが、ジェームズ自身にもわからなかった。
帰国後、離婚しても一緒に暮らしている妻と幼い息子に、バグダットでの体験をなんでもない顔をして話し聞かせるジェームズがいた。
映画『ハート・ロッカー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ハート・ロッカー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
緊張感と軍隊経験者の異常な「普通」をうまく引き出した
低予算で製作され、全編スーパー16ミリカメラで撮影された作品。
モキュメンタリー作品とは違う手ブレ感が、爆弾処理時の緊張感や感情を上手く表している。
序盤のテロップで「戦争とは麻薬のようなもの」と出ているが、トンプソン二等軍曹が亡くなる寸前での爆弾処理中も冗談を言いあったり、終盤では帰国したジェームズ一等軍曹が幼い息子や別れた妻に対して、世間話をするように戦場の悲惨な話をするなど、感情が欠落しているように思える場面が多い。
しかしそれを“当たり前”として描いている演出は上手い。
軍隊経験が浅いと思われるエルドリッジが、トンプソンの死後に明らかに精神が破綻していく様子も、ケンブリッジ軍医が“カウンセリング”という言葉を使わない事や、次から次へと行われる爆弾処理の様子から「おかしい事ではない」とみせている。
サンボーンの神経質さもジェームズの命知らずな爆弾処理の様子も、軍隊経験が続けば当たり前の事として描かれている。
終盤でジェームズが再び戦地に赴くシーンも当たり前の様子として描かれているが、なぜ自ら危険に向かっていくのか、戦争は麻薬のようだと見事に示している。
ベッカム少年の多すぎる謎
ベッカム少年は“人間爆弾”になって命を落としたように思われ、その後ジェームズはベッカム少年の雇い主を探そうと危険を冒してまで基地から出るが、エルドリッジが負傷して帰国した後にベッカム少年に声をかけられている。
彼はスパイ行為をしていたのか、なぜベッカム少年の母親はジェームズに対して激怒したのか、いろいろな謎を残したままになっている。
また、サンボーンが子供が欲しいけれど無理だと言い続けた理由も、明らかにならないまま終わっている。
依存性の高い、麻薬のようなスリルのアメリカ軍の爆弾処理班の精神状態は上手く描けているが、その周囲の事に関しては無頓着な作品でもある。
映画『ハート・ロッカー』 まとめ
アメリカ軍の爆発物処理班の日常を淡々と描きながらも、麻薬のような中毒性に冒された彼らの戦争という「危険」への執着心や、心の脆さを表現している。
注意してみればおかしな表現や言葉、行動がたくさんあるのだが、それをおかしいと感じさせない演出やキャストの演技力が素晴らしい。
低予算のために高価なカメラを使って凝った映像は撮れなかったようだが、微妙な手ブレ感や距離感が、爆弾処理という張り詰めた緊張感のある現場を表現するのにはピッタリだ。
ミリタリー好きなら手に取るであろう戦争をモチーフにしたシューティングゲームを、作中でエルドリッジがプレイしており、ケンブリッジの事を募集用広告で見たと軽く話すのも現実味がある。
軍に入隊した経験のある人が心の病を負いやすい、という問題へのアンチテーゼのようにも思える作品だ。
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