映画『ファーゴ』の概要:ジュエル&イーサン・コーエン兄弟が、ミネソタ州ファーゴを舞台に描いたクライム・サスペンス。狂言誘拐のはずが次第に殺人という闇にはまってゆく。個性派俳優スティーブ・ブシェミ出演。1996年に低予算で製作。
映画『ファーゴ』 作品情報
- 製作年:1996年
- 上映時間:98分
- ジャンル:サスペンス、コメディ
- 監督:ジョエル・コーエン
- キャスト:フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェミ、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア etc
映画『ファーゴ』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ファーゴ』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ファーゴ』のあらすじを紹介します。
1987年、ミネソタ州ミネアポリス。自動車のディラー、ジェリー・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)は多額の借金を抱えていた。そこで、妻ジーンを誘拐させ、8万ドルの身代金を義理の父親ウェイドから奪おうという狂言誘拐を思いつきます。
自動車の整備士を仲介して、顔が不細工な小男、カール・ショウォルター(スティーブ・ブシェミ)と大男のゲア・グリムスラッド(ピーター・ストー・メア)と会う。この2人に狂言誘拐を依頼したのだが、まず報酬として車を1台引き渡す。
妻ジーンがカール達に誘拐されるが、逃亡中に職務質問した警察官やその現場にいた目撃者を次々に殺してしまう。事件発生後、妊娠中の女性署長マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)が捜査を開始。丁寧な聞き込みで犯人を追う。
殺害された警官のメモから、逃走中の車を洗い出し、ジェリーの自動車販売店へ。マージは盗まれた車はないかとたずねるが、ジェリーは相手にしない。
カールはジェリーに対して報酬を上げるよう要求。そのため、ジェリーは誘拐犯たちが更に100万ドルを要求してきたと義理の父親ウェイドに話す。しかし、ジェリーを信用していない義父は、ジェリーだけで犯人と取引することを許さない。
身代金の受け渡しの日。義父は単身、現場へゆくが、約束が違うと怒ったゲアによって銃で殺されてしまう。ジェリーも一足遅れて現場へ向かうが、既に殺された後だった。
ウェイドから奪った身代金100万ドルを、8万ドルだけ残して、カールは残りを雪原に埋めた。ジェリーの妻ジーンもアジトで死んでいた。カールとゲアは、車をどちらがもらうかでもめ、その結果、ゲアがオノでカールを殺してしまう。
マージがようやく、アジトをつきとめた頃、ゲアは殺したジーンとカールの遺体を粉砕機で刻んでいた。血しぶきとカールの両足が無残にも、マージの目に飛び込んできます。マージは、ゲアを無事、犯人として捕らえます。
”こんなにいい天気なのに・・・人生はお金だけではないのよ”と輸送中のゲアに話しかけるが、ゲアは何も答えない。逃亡中のジェリーも潜伏先のモーテルで身柄を確保された。
事件解決後。マージは寝室で夫ノームと一緒にいた。”あと2ヶ月なの。”と新しい命の誕生を待ち望む。夫ノームは、妻ジーンに自分のデザインした切手が発売されると報告。2人の幸せな会話が続く。
映画『ファーゴ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ファーゴ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
どうにも止められない!負の連鎖とコメディ
ジュエル&イーサン・コーエン兄弟はドタバタコメディを得意としています。本作「ファーゴ」もそんなコメディ色の強い映画。狂言誘拐を実行する凸凹コンビ、大男のゲアとへんな顔で小男のカール。なりゆきで殺人を次々と犯してゆきます。まず、2人が依頼者の妻ジーンを誘拐したシーン。
2人は逃げ惑うジーンを追いかけます。しかしその途中で、ゲアがジーンに付けられたひっかき傷を治す薬を探したりと実にのんびりとしています。反対にその後、シャワー・カーテンを被ったまま、2人の前に飛びだしてくるジーンというようにまるで漫才!緩急のある展開と緊張感がとてもよく表現されています。
次に車内での2人。ゲアはたばこをふかしながら、一度返事を返しただけ。カールは、運転しながら延々とゲアにしゃべりまくっています。一体、この2人は何だ?と思ってしまいますね。特にスティブ・ビシェミが演じるカールの不細工な顔と性格が合っていて面白い。次になにをするのだろうと期待してしまいます。
コーエン兄弟が描く人物像はみんな濃くて一度観ただけで忘れられません。特にブシェミは作品の常連俳優です。出演作として、「ビックリボウスキ」ではワンテンポだけ会話に遅れる、元サーファー役を好演しています。この作品も面白いのでぜひご覧下さい。
「ファーゴ」の魅力は、負の連鎖が止まらない過程にみえる、人の愚かさや悲しみではないでしょうか。また田舎町ファーゴという地域性がより狂気を強めています。
2つの頭脳を持つ男、犯罪という非日常性に遊ぶ
実話ではないが、実話のようなリアルさを持ったクライム・サスペンス。そのリアルさを際立たせているのが対比表現です。1つ目は、大男ゲアと小男のカール。どこまでも続く雪原と殺しで流れる血。犯罪を犯していく凸凹コンビとささやかな愛を育むガンダーソン夫婦など、悲劇と喜劇がコインの裏表のようにぴったりと結びついています。
だからこそ、観ていて苦しくなるんです。もう逃げられない!そんな緊張感が、ゆっくり時が進む田舎町ファーゴに溶け込んでいます。観ている私たちはもうコーエン・マジックにかかっています。本作は、ファーゴが舞台ですが、撮影のほとんどはミネソタ州ミネアポリスで行われたそうです。この場所は、コーエン兄弟が生まれ育った場所。
実は狂言誘拐や殺人が起きても不思議じゃない場所なのかも。そして2つの頭脳をもつ男こそ、コーエン兄弟なんです。
雪景色を除いてこの雰囲気とストーリーを完璧にしたのが、同じコーエン兄弟の作品『ノーカントリー』というような感じだ。アメリカの田舎で起こる気味悪い事件を描いていて、動機の分からない無惨な殺しが恐ろしかった。
そしてフランシス・マクドーマンドの安定感が見ていて素晴らしいし、スティーブ・ブシェミ演じる前科者もクセが強くて面白い。あのサウンドトラックも後からじわじわくる中毒性があるのでまた観たくなるし、予想できないサスペンス展開も見応え十分だ。(女性 20代)
フランシス・マクドーマンド演じるマージのベテラン感がクセになる。彼女は俳優になる前は本当に刑事だったのではないかと思えるくらい、とにかくちょっとやそっとのことでは動じない、熟練の刑事然とした振る舞いが妙にリアルで格好良かった。
あえて淡々と進んでいくストーリーは妙に緊張感があり、気付けばラストのマージとゲアの対峙を固唾を飲んで見守っていた。スティーブ・ブシェミとピーター・ストーメアの誘拐犯コンビもクセが強くて最高だし、全体的に98分という短さとは思えないくらいの内容の濃さだった。(女性 30代)
映画『ファーゴ』 まとめ
コーエン兄弟が作る映画の魅力とは、奇妙な登場人物であったり、計算しつくされた物語や台詞にあります。コーエン映画の常連で個性派俳優のスティーブ・ブシュミが「即興ってものはほとんどありませんから。どこまでもきっちりと書き込まれた脚本ですからね。」(96年のカンヌ国際映画祭での発言より)と語っています。「ファーゴ」では、雪原の場面が多いので撮影は大変だったことでしょう。
兄弟で映画監督というのは、ウオシャウスキー姉弟など何人かいますが、筆者の中ではコーエン兄弟が1番上手いと思う。そしてなによりも個性的な登場人物が魅力的です。本作では、不細工で小男のカールと妊婦の警察官マージ・ガンダーソンが素敵!特にマージの堂々とした演技がいい。見どころは、夫のためにミミズを買ってくるシーン。しかも昼食の時にミミズを夫に渡すのです。
のんびりとした田舎町の雰囲気がよく表現されています。一見、脈絡のない物語に見えるが、骨組みがしっかりしていて決してコーエン兄弟の考えから外れることはない。そして、コーエン兄弟には、”何もないより2つの頭脳”という好きな言葉があるらしい。2人の頭脳があれば、どんな映画だって撮れる!という思い。それぞれが脚本家であり、監督、プロデューサーであるということ。
そんなコーエン兄弟の頭脳&素晴らしい映画にこれからも期待したい。
みんなの感想・レビュー
ノーカントリーは大好きで何度も見返したけど、ファーゴは個人的にあまり刺さらなかった。
実話じゃないのに「これは実話である」と大嘘をつくのは、詐欺的なものに引っかからないのかな?
何やっても悪い方に進んでいく悪党たちと幸せな夫婦の対比はわかるけど、面白いかと言われるとあまりハラハラもしないし、緊迫感もなくて映画としては少々退屈だった。
しかしこの夫婦はお互いに思いやりを忘れず、小さな幸せに感謝して日々を過ごしているから、これからもずっと幸せなんだと思う。
旦那は禿げた小太りオッサンしかも冴えない画家だけど、主人公はそんな旦那を愛しているのが良い。
その辺に転がってる些細な幸せを幸せと感じられるかどうかって大事ですね。
日系人のマイクの存在が必要あったのか最後まで謎だった。
父親の策略で母親を誘拐された息子が気の毒すぎる…。
ラストの主人公、あんな現場を目の当りにしたのにわりと平然としていて、肝が据わっている。