映画『海を飛ぶ夢』の概要:2004年公開のスペイン映画。監督・脚本はアレハンドロ・アメナーバル。共同脚本はマテオ・ヒル。出演はハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、クララ・セグラなど。
映画『海を飛ぶ夢』 作品情報
- 製作年:2004年
- 上映時間:124分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:アレハンドロ・アメナーバル
- キャスト:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、クララ・セグラ etc
映画『海を飛ぶ夢』 評価
- 点数:95点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『海を飛ぶ夢』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『海を飛ぶ夢』のあらすじを紹介します。
舞台はスペイン。ラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)は世界中を旅して周る海の男。19歳でノルウェー船のクルーとなったものの、1968年8月23日、25歳の時に彼は、岩場での事故で頭部を打ち、首から下が完全麻痺となってしまう。以来、ベッドの上で過ごす日々が続いたラモン。
献身的な家族に支えられながらも、彼は部屋の外を眺めたり、空想の世界に逃げ込むしか楽しみがなかった。そんな彼が出した結論とは、自分の人生に終止符を打つ事だった。
ラモンはさっそく、尊厳死を支持するジュネという団体の女性弁護士フリア(ベレン・ルエダ)にコンタクトを取る。
フリアはラモンと接触をし、彼の真摯な気持ちを知り、なんとか彼の願いを叶えてやりたいと考える。
そんなある日、ドキュメンタリー番組に出演したラモンの姿を見たという女性ロサ(ロラ・ドゥエニャス)がやって来る。彼女はテレビ番組でラモンを見て、彼の自殺を思いとどまらせようと思っていたのだ。
フリアとロサ、という正反対の女性と出会い、ラモンの心は激しく揺さぶられて行く。果たしてラモンの出す結論とはなんなのか。そしてラモンは尊厳死を迎える事が出来るのだろうか。その時、家族や愛する人はどんな反応をするのだろうか……。
映画『海を飛ぶ夢』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『海を飛ぶ夢』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
鬼才アレハンドロ・アメナーバル監督の新たなる境地
「テシス」や「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」など、ドンデン返しをメインとしたストーリーで映画ファンをうならせたアナメーバル。そんな彼が初めてまっとうとも言えるヒューマンドラマに挑戦したのが今作「海を飛ぶ夢」である。
実在の人物ラモン・サンペドロの手記を元に、アナメーバルは尊厳死という難しいテーマをドラマとして昇華させる事に成功した。自殺と言う題材を選んだ時点で映画のトーンが暗くなりそうなものなのだが、この映画にはそんな気配はみじんも感じられない。なぜならラモンという男が徹底的に明るい人間として描かれているからだ。
ラモンという人間の魅力
死という選択肢を選びながらも、常にユーモアを忘れないラモンの姿に、登場人物だけでなく観客も心を動かされる事は間違いないだろう。そんな彼がなぜ死を選ばなければならないのか。そしてそれは逆に、五体満足であるわれわれ観客は、五体不満足のラモンよりも人生を謳歌出来ているのか、という自問自答にも繋がってくるのだ。非常に奥深い作品と言えるだろう。
素晴らしいキャスト陣
今作でラモンを演じたのは、スペインの名俳優ハビエル・バルデム。首から上のみという難度の高い役を要求されながらも、見事にそれに答えた最高の演技を見せてくれる。今作でベネチア映画祭を始め、世界各国で賞を総ナメにしたのも納得の出来だ。他にもスペイン映画界ではおなじみの女優ベレン・ルエダの好演も忘れがたい。
そして最後まで看病をしつつも、ラモンの意志を尊重する家族の姿に、我々は真の愛情を見出す事だろう。見終わった後に、生きるとは、死ぬとはなにか、と考えさせられる、非常に上質な人間ドラマである。
本作は、25歳の時の事故により約30年首から下の不随と戦った実在の人物「ラモン・サンペドロ」の手記『地獄からの手紙』を基に尊厳死を描いたヒューマンドラマ作品。
本人の意思はもちろん、周囲の人々の立場や想い、家族や大切な人との残された時間、様々な想いに胸が張り裂けそうな気持ちだった。
主人公が自ら命を絶つ前に残したビデオの「生きることは権利であり、義務ではない」という言葉が大変意味深かった。
死を選ぶ権利、尊厳死の認められる国が少しでも増えて欲しい。(女性 20代)
実在の人物、ラモン・サンペドロの手記から作られた今作。首から下が不随の状態になってしまった彼はどんな考えから「尊厳死」を選んだのか、学ぶことが多すぎる作品でした。
毎日を平凡に生きている私にとっては生きるというのは意識もしない「当たり前」のことで、死ぬのは怖いし死にたくないから当たり前に生きているのです。しかし、ラモンにとって死は怖いことでは無く、一つの道だったのかなと感じました。生きることも死ぬことも自分自身で選んで良い「道」の一つだと考えると、生活の全てが当たり前ではなくなるし、一つ一つの行動、言動を大切にしなければいけないなと感じました。(女性 30代)
映画『海を飛ぶ夢』 まとめ
世界各国に自殺や尊厳死をテーマにした映画は数多く存在する。しかしこれほどまでに尊厳死を前向きにとらえた映画は珍しいだろう。日本では周防正行監督の「終の信託」のように社会正義の方面に行ってしまいがちだが、スペインではそのさらに先をいっているのには驚きだ。おそらく尊厳死というものが日本よりも社会に受け入れられているからだろう。人間には生きる権利だけではなく、死を選ぶ権利というものが存在する。生きていれば必ずいい事があるとは限らないし、死ぬという事が必ずしも不幸なものとは限らないのだ。映画のラストで、死の直前のラモンは最高の心の底からの笑顔を見せてくれる。この笑顔に嘘がない以上、この映画はハッピーエンドの終り方なのだろう。
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