映画『シリアスマン』の概要:生真面目なユダヤ人の大学教授に突如として不条理な災難が降りかかってくる様子を描いたコメディ映画。コーエン兄弟の監督作品で、第82回アカデミー賞で作品賞と脚本賞の2部門にノミネートされた。
映画『シリアスマン』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
キャスト:マイケル・スタールバーグ、リチャード・カインド、フレッド・メラメッド、サリ・レニック etc
映画『シリアスマン』の登場人物(キャスト)
- ラリー・ゴプニック(マイケル・スタールバーグ)
- 生真面目な大学教授で、物理の授業を教えている。韓国人生徒を落第にしたことを契機に次々と不幸に遭遇し、仕舞には家を追い出されてしまう。
- ジュディス・ゴプニック(サリ・レニック)
- ラリーの妻。密かに恋人を作っており、ラリーに離婚を迫る。しかし、その恋人を交通事故で失ってしまう。
- ダニー・ゴプニック(アーロン・ウルフ)
- ユダヤ人学校で学ぶラリーの息子。ユダヤ教で成人となる13歳を迎える。授業中にラジオを聞いたり、マリフアナを吸ったりと素行は決して好ましくない。
映画『シリアスマン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『シリアスマン』のあらすじ【起】
ヘブライ語の授業中にダニーは小型ラジオで音楽を聴く。そしてラジオのケースに20ドルを忍ばせる。しかし、ラジオを聞いていることが教師にばれてしまい、ラジオを没収されてしまう。奪われた20ドルは級友からマリファナを買った代金だった。
健康診断を受けたラリーは大学で物理の授業を行う。職員室に戻ったラリーの元に落第した韓国人生徒が不満を言いに来る。ラリーは成績を変えることを拒否し、韓国人生徒を送り返す。その後、ラリーは現金の入った封筒が机に置かれていることに気付く。
ラリーが自宅に戻ると、隣人の男が自分の家の敷地まで芝刈りをしていた。夜になり、ジュディスはラリーに恋人ができたから離婚をしたいと切り出す。そして再婚のために絶縁状を書いてほしいと言い出すが、ラリーは突然のことに戸惑う。
ラリーが韓国人生徒を呼び出し、封筒の件を問い質すが本人は関係ないと否定する。家に戻ったラリーの元に妻の恋人が会いに来る。そして恋人はラリーに手土産のワインを渡す。
映画『シリアスマン』のあらすじ【承】
ダニーは校長室の机からラジオを取り戻そうとするが、ラジオは消えていた。支払いを求める級友から追われたダニーは走って逃げて帰宅する。テレビのアンテナの修理のために屋根に上ったラリーは隣人女性が全裸でくつろいでいるのを覗き見してしまう。
ラリーは大学の同僚からラリーのことを誹謗中傷する投書が送られてきていることを明かされる。ラリーは韓国人生徒が犯人ではないかと疑う。帰宅したラリーは隣人の男と敷地の境界について言い合いになる。その後ラリーはジュディスと恋人の3人で話し合いをする。そして子供達への悪影響を避けるためにラリーは家から追い出されてしまう。
韓国人生徒の父親がラリーに会いに来て、名誉毀損で訴えると脅してくる。ラリーはラビに相談に行くが、若い代理人が対応する。若い代理人は離婚も神の御心だとして、新しく物事を見る機会だと説く。ラリーは続いて離婚や敷地の境界の件で弁護士に会いに行く。弁護士と相談中にダニーが電話してきて、またテレビのアンテナの調子が悪いと言ってくる。
映画『シリアスマン』のあらすじ【転】
モーテルから出勤しようとしたラリーは脇見運転をして追突事故をおこしてしまう。丁度同じ頃にジュディスの恋人もゴルフに向かおうとして事故を起こす。大学に着いたラリーはレコード会社からアルバムの定期購入に関する支払いの督促を受ける。ラリーはアルバムの件でダニーを問い詰めようとするが、ダニーから急いで家に戻るように言われる。そして恋人が事故死したことを知らされる。
ラリーは2人目のラビに会いに行く。ラリーはジュディスが恋人の葬式代を出すように求めていることへの不満を口にする。ラビは患者の歯の裏に神からの啓示を見付けた歯科医の話をするが、その話に結論はなくラリーは戸惑う。
ジュディスの恋人の葬式が行われる。そして親族が家に集まっていたところに警察がやって来る。警察はラリーの兄が違法ギャンブルをしており、次は逮捕すると警告する。ラリーは隣人女性に会いに行き、隣人女性とマリフアナを楽しむ。しかし、今度は兄が男娼で逮捕されてしまい、大騒ぎとなる。そしえ、ラリーは弁護士に兄の逮捕の件を相談する。
映画『シリアスマン』の結末・ラスト(ネタバレ)
ラリーは権威あるラビに助けを求めに行くが、忙しいと言われて断られてしまう。ラリーは夜中に兄の泣き声で目を覚ます。絶望した兄を気の毒に思ったラリーは兄を国外逃亡させるが、途中で兄は隣人の男に撃たれてしまう。ラリーはそこで目を覚まし、現実と夢の境が分からなくなる。
ダニーはマリフアナでハイになったままユダヤ教の成人式を迎える。ラリーとジュディスは幸せそうに息子の様子を見つめ、ジュディスは恋人がダニーのために大学に投書を送っていたことを明かす。ダニーは権威あるラビに会い、ラビから没収されたラジオを返してもらう。
ラリーは高額の法律相談の請求書を受け取る。お金が必要にラリーは韓国人学生の成績を合格点に書き換える。その途端にラリーのデスクの電話が鳴り出す。電話は医者で、検査の結果を話し合うために来てほしいというものだった。ラリーは電話で結果を告げてもらえないことに不安を感じる。
学校にいたダニーは竜巻が発生しているので避難するようにと指示される。空には竜巻が真っ黒な渦を巻いていた。
映画『シリアスマン』の感想・評価・レビュー
コーエン兄弟がユダヤ人としてのルーツを見つめた小粒な作品で、とても私的な雰囲気に満ちている。著名な俳優が出ている訳でもなく、他のコーエン兄弟作品のような知名度は高くないが、非常に質の高い作品に仕上がっている。米国のユダヤ人社会の様子も興味深く、作品世界にぐいぐいと引き込まれる。ダニーが追い込まれる不条理な状況は『バートン・フィンク』の上を行き、笑いを誘う。最後の竜巻で終わるエンディングも秀逸だ。(MIHOシネマ編集部)
真面目に一生懸命やっているのに、次々と不幸や災難に見舞われてしまう主人公が本当に可哀想なのですが、細かい描写やセリフの一つ一つにブラックユーモアが溢れていて、クスッと笑ってしまう作品でした。
コーエン兄弟が作る作品は正統派というより、少し斜に構えた感じの良い意味で「ひねくれた」ものが多く、それが好きな方も多いはず。私もその一人なので今作は大満足の作品でした。
これだけ不幸なことが続いてどん底まで落ちたら、ちゃんと幸せなことも待っているよと励ましてあげたくなる作品です。(女性 30代)
本作は、生真面目で信仰心の厚いユダヤ人の物理学大学教師ラリーに突如として降りかかる不条理な不幸を描いたコーエン兄弟によるコメディー作品。
様々な災難に襲われ振り回される主人公がとにかく可哀想、しかし面白い。
こんなに立て続けに事件が起こって、周囲とコミュニケーションすら困難になったら、自分なら投げやりな気持ちになると思う。
旧約聖書の世界観、真面目な人が報われない不条理なストーリー、砕けた雰囲気共にとても好みな作品だった。(女性 20代)
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