映画『アイネクライネナハトムジーク』の概要:作家、伊坂幸太郎の同名短編小説を映画化。劇的な出会いを求めるしがない会社員が、ある女性と出会い10年間の交際を経てプロポーズ。ところが、彼女はプロポーズに頷かず家を出て行ってしまう。出会いによって互いの絆を見つめ直す珠玉のラブストーリー。
映画『アイネクライネナハトムジーク』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:今泉力哉
キャスト:三浦春馬、多部未華子、貫地谷しほり、原田泰造 etc
映画『アイネクライネナハトムジーク』の登場人物(キャスト)
- 佐藤(三浦春馬)
- しがない会社員。押しが弱く穏やかな性格。劇的な出会いを求めていたが、紗季と出会い恋人同士になる。10年交際したという惰性でプロポーズするが、家を出て行ってしまった紗季の気持ちが分からず思い悩む。
- 本間紗季(多部未華子)
- 世界ヘビー級ボクシングの試合があった日に佐藤と出会い、後に恋人同士となる。10年間の交際期間を経てプロポーズされるが、佐藤の惰性的なプロポーズに納得できず、実家に帰ってしまう。互いの絆を見つめ直す機会を佐藤に与え、大切なことを思い出させる。塾の受付をしている。
- 織田一真(矢本悠馬)
- 佐藤の大学時代からの親友。自分勝手で俺様のだらしない性格だが、大学のマドンナを射止めて結婚。2児の父親となる。劇的な出会いなどないと否定的。
- 美奈子(貫地谷しほり)
- 美容師。常連客の弟であった世界ヘビー級のボクサーと恋人同士になり結婚。一児の母親となり、夫を献身的に支える。
- 藤間さん(原田泰造)
- 佐藤の会社の先輩。突然、奥さんが幼い娘を連れて家を出て行ってしまい、ショックを受ける。穏やかで気さくな性格。
映画『アイネクライネナハトムジーク』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『アイネクライネナハトムジーク』のあらすじ【起】
劇的な出会いを待ち続けるしがないサラリーマンの佐藤。すでに既婚者で親友の織田一馬は、そんなものはないと否定的だった。
そんなある夜、先輩の同僚、藤間さんと残業をした佐藤は、突発的に立ち上がって泣き出した藤間さんに驚いて会社のPCにコーヒーをぶちまけてしまう。そのせいでこれまで集めたデータが消えてしまい、穴埋めをするため、街頭アンケートする羽目に。当の藤間さんは奥さんが家を出て行ったショックで会社を休んでいた。
そうして、仙台駅前で街頭アンケートをしているのだが、押しの弱い佐藤に誰も立ち止まらない。世間はボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチで沸いている。ふと気付くと近くでギターの語り弾きが歌を唄っていた。歌に耳を傾けた佐藤は、自分と同じように立ち止まった女性と不意に目が合う。リクルートスーツを着た女性に思い切って声をかけると、快くアンケートに答えてくれた。就職活動中だと言う本間紗季に好印象を抱いた佐藤。彼女とはその場で別れた。
一方、美容師の美奈子は常連客のお節介がきっかけで、彼女の弟と電話で話す間柄になる。直接、会ったことはないが、常連客の弟は気さくでとても感じの良い男性だった。彼は自分の職業を事務職だと話し、ボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチで挑戦者の日本人選手が勝ったら、美奈子に告白しようと考えているらしい。そうしてその日、テレビにかじりつき試合の結果を見守っていた美奈子。予想外にも日本人選手が奮闘し、試合に勝利してしまう。そこで、常連客から連絡が入り、実は彼女の弟が今し方試合に勝利した日本人選手であることを知る。勝利者のインタビューでチャンプは、試合の後にまだ挑戦しなければならないことがあると照れながら笑うのだった。
休日、織田の家には奥さんの友人である美奈子と恋人になったボクサーが訪れていた。佐藤も織田の家に向かう予定だったが、公園のトイレに立ち寄った際、トイレの裏で中学生が同級生をいじめている現場に遭遇。声をかけると他の学生たちは逃げて行ったが、虐められていた学生が残った。すると、織田から携帯に着信が入る。事情を話すと織田とボクサーが駆け付けてくれた。
映画『アイネクライネナハトムジーク』のあらすじ【承】
学生の姉も駆け付け、弟は耳が聞こえにくく補聴器をつけているせいでいじめられていると聞く。少年は卑屈になっている。そこで、ボクサーを始め、織田も少年を励ました。
後日、ボクサーから貰ったサインを復帰した藤間さんに渡した佐藤。藤間さんはボクサーの奮闘に勇気づけられたと言う。家出した奥さんとも連絡が取れたらしい。そこで、佐藤は藤間さんと奥さんの出会ったきっかけを聞いたが、正に絵に描いたような劇的な出会い方をしていたのだった。
そんな出会い方をしたいと望む佐藤だったが、やはり織田は否定的である。なぜなら織田と奥さんは大学の同窓生で劇的というほどの出会い方ではなかったからだ。
その後、藤間さんの奥さんが出て行った理由を聞く。どうやら些細なことが日々、積み重なり夫に嫌気が差した様子。だが、藤間さんは出会ったのが奥さんで良かったと思っている。
大学の同窓生の結婚式当日、佐藤は織田と共に披露宴会場へ。その日の夜は、ヘビー級チャンピオンの試合があった。結婚式へ向かう途中、工事現場に差し掛かった佐藤は、交通整理をしている誘導員が本間紗季であることに気付く。佐藤は車を停めて彼女へとシャンプーを手渡した。
その頃、ヘビー級チャンピオンは挑戦者の一撃でダウン。試合に負けてしまう。
元チャンプになってしまったボクサーの元には誹謗中傷の手紙やはがきが相次いで送られ、美奈子も彼を心配していたが、見守ることしかできなかった。
映画『アイネクライネナハトムジーク』のあらすじ【転】
10年後、高校生になった織田の長女は、駐輪場を無賃で利用するおじさんを成敗して帰宅。
娘は自分勝手で俺様な父親の行動に苛立ちを隠せない。母親はとても献身的で一生懸命に夫を支えているが、父は妻の苦労を顧みることがないのだった。
同時刻、ホテルのレストランで恋人となった紗季と食事をした佐藤。彼は食事中ではなく、ホテルの駐車場に来てから紗季にプロポーズ。ところが、紗季の返事は少し考えさせて欲しいというものだった。
10年間、付き合い続け同棲までしている佐藤と紗季。佐藤は彼女がどうして結婚に頷いてくれないのか、その理由が分からなかった。
翌朝、紗季が実家へ帰ってしまい茫然としてしまった佐藤。世間は元チャンプが10年を経て再び、世界戦へ挑むとのことで話題になっていた。
元チャンプと知り合いである織田は意気揚々とチケットを購入し、試合を楽しみにしている。だが、奥さんはまだ幼い長男の面倒で試合を見に行くことができず、長女に一緒に行って欲しいと言う。しかし、長女は父親のことが嫌いなので、どうしても一緒に行きたくない。母と娘は口論となり、長女は家を飛び出してしまった。
向かった先はドラッグストア。長女はそこで食器用洗剤を買いに来た佐藤と遭遇する。長女は両親のことについて佐藤に愚痴を明かす。代わりに佐藤は、織田夫婦の馴れ初めと親友の凄いところを語った。織田は奥さんが学生の身でありながらも妊娠したことを聞き、迷わずに大学を辞めて働き出したらしい。帰宅した長女は母親と和解。母は父のことを当たりだったと笑うのだった。
プロポーズしたことで10年もの間、一緒にいることの意味が分からなくなってしまった佐藤と紗季。
一方、美奈子はボクサーと結婚し、一児の母親となっていた。夫が勝てない試合が続き苦しんでいる時期を美奈子は献身的に支えた。
元チャンプの試合当日。その日は10年前と同じ日付で、紗季と佐藤が初めて出会った日でもあった。織田と長女は試合会場へ向かい、佐藤はギターの語り弾きの元へ。彼はそこで去って行く紗季を発見する。バスに乗り込んでしまった彼女を佐藤は必死で追いかけた。
映画『アイネクライネナハトムジーク』の結末・ラスト(ネタバレ)
試合が劣勢で進む中、佐藤は走ってバスを追いかけている。元チャンプはダウンしてしまったが、カウントが終わる前に立ち上がった。彼を応援する人々の声が朦朧とする元チャンプに届く。そんな中、一人の青年が立ち上がり枝を折った。彼は10年前に耳が悪くいじめられていた少年だった。その姿を目にした元チャンプは再び闘志を滾らせ次のラウンドへ。
その頃、必死にバスを追っていた佐藤は、公園で迷子になっている子供を発見。子供に構っている間、バスが行ってしまった。佐藤は肩を落として帰ろうとしたが、近くのバス停に立っている紗季を見つける。彼女は佐藤に気付いてバスを降りてくれたのだった。
離れて暮らしている間に自分の思いを見つめ直した佐藤は、出会った相手が紗季で良かったと告げる。10年付き合ったという惰性で結婚するのではなく、大切な相手だと思えるからこそ結婚したかったと。紗季はその答えに頷き、プロポーズの返事をその場でしようとしたが、佐藤は彼女を半ば無理矢理バスに乗せ、返事は後でいいと見送るのだった。
元チャンプは奮起した直後から猛攻撃を仕掛け、相手のダウンを勝ち取った。ところが、最後の一撃を放ったのが試合終了後と見なされ結局、判定負けという結果に。この判定には多くのファンが憤りを顕わにした。
試合の翌日、仕事中の佐藤に藤間さんから連絡が入る。藤間さんは結局、奥さんと離婚してしまい現在は東京にいる。元チャンプの試合を見た藤間さんは、佐藤を思い出し奥さんとの馴れ初めの裏話を明かしてくれた。それも最近になってようやく知った事実だったと言うのだった。
藤間さんと奥さんの馴れ初めの裏話を聞き、穏やかな気分で帰宅した佐藤。自宅に紗季が帰っていることに気付き、満面の笑みを浮かべる。彼女がいることに嬉しさを隠せない佐藤に、紗季は突然、プロポーズの返事を告げた。結婚してもいいですよという返事に、佐藤は改めてプロポーズ。紗季は笑顔でそれに頷くのだった。
映画『アイネクライネナハトムジーク』の感想・評価・レビュー
シンガーソングライター斉藤和義のファンであった作家の伊坂幸太郎が、彼との交流を経て書き上げた初のラブストーリーを映画化。互いの交流によってそれぞれに素晴らしい作品を作り上げ、斉藤和義の優しい楽曲が作品を支え彩っている。
出会いと絆をテーマに10年の歳月を描いたラブストーリー。それぞれの出会いと馴れ初め、10年後の姿と絆の大切さが繊細に描かれている。主人公は故三浦春馬、ヒロインには多部未華子が演じており安定した演技力を発揮。作品には主人公の周囲の人々の出会いと絆も描かれ、常に穏やかな雰囲気が漂う。ボクサーの奮闘を応援する気持ちと主人公を応援する気持ちが重なることで、共感度を高めている。出会いと絆の大切さを見つめ直すきっかけをくれる素敵な作品。(MIHOシネマ編集部)
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