この記事では、映画『誰よりも狙われた男』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『誰よりも狙われた男』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『誰よりも狙われた男』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:サスペンス、ミステリー
監督:アントン・コルベイン
キャスト:フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト etc
映画『誰よりも狙われた男』の登場人物(キャスト)
- ギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)
- テロ対策を担当するドイツの諜報員。過去に情報提供者を命の危険に晒してしまい後悔している。
- イッサ・カルポフ(グリゴリー・ドブリギン)
- ドイツに密入国した、チェチェン人とロシア人のハーフ。父親の遺産を受け取るために、ドイツにやって来た。
- アナベル・リヒター(レイチェル・マクアダムス)
- 人権派の弁護士。イッサが難民としてドイツ国籍を得られるよう助力する。
- トミー・ブルー(ウィレム・デフォー)
- 銀行家。
- マーサ・サリヴァン(ロビン・ライト)
- CIAの職員。ドイツ当局と組んでイッサを追っている。
- ファイサル・アブドゥラ博士(ホマユン・エルシャディ)
- アラブ人の活動家。イスラム過激派との関連が疑われている。
映画『誰よりも狙われた男』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『誰よりも狙われた男』のあらすじ【起】
2001年9月11日。アメリカ同時多発テロの首謀者、モハメド・アタはドイツのハンブルクで犯行を計画した。しかし、当局はそれを察知できず、現在のハンブルクでは各国の情報機関が前轍を踏むまいと躍起になっていた。
一人のアラブ風の男が海沿いの廃車置場に上がった。男は辺りを気にしながら、車の影に身を潜める。人通りがないことを確かめた男は、どこかへと消えていった。
ギュンターは机に沢山の写真を広げ、電話で指示を送った。電話を切ったギュンターは写真に写る男の顔を眺めながら、煙草を燻らせた。
海から現れたアラブ風の男は、パーカーで顔を隠し、人混みに紛れる。通行人と肩がぶつかり、罵声を浴びせられても男は騒ぎを起こさないに、じっと耐えた。
イスラム教の印象を改善するための会合の客席にギュンターはいた。その帰り、駅で不審者を目撃したという通報があったと、部下から連絡が入る。チェチェン出身のイッサ・カルポフという男だった。イッサはパーカーのフードを深く被って顔を隠し、同じく顔を伏せた男たちとメモ書きのようなものをやり取りしていた。

映画『誰よりも狙われた男』のあらすじ【承】
イッサ・カルポフ。イスラムの名を持ち、ロシアの姓を持つその男のことが気にかかり、ギュンターは部下に捜査を命じた。
ギュンターはイッサの調査を進める一方で、アブドゥラという男の消息を追っていた。ギュンターはドイツ内のモスルに送り込んだスパイから、アブドゥルの渡航履歴に関する情報を入手した。アブドゥラはドバイからの帰り、直通線があるにも関わらず、キプロスを経由していた。更に、アブドゥラはセブンスフレンズというキプロスの海運会社とも関係があるらしい。ギュンターは部下にその会社の実態を調査させると共に、部下の調査によって判明した、イッサの取引相手が通う店に向かった。
ジルバーザックという店で、ギュンターがイッサの取引相手に話を聞くと、彼はすんなりイッサについて語った。イッサは銀行家のトミー・ブルーという男を探しているということだった。
イッサの居所が遂に判明した。ギュンターは彼の目的を掴むため、イッサを泳がせることにした。その折、ギュンターは当局からアメリカが動き出したという報せを受ける。
ギュンターに面会を求めてきたのは、CIAのマーサという女性だった。彼女の目的は、イッサの調査だった。
映画『誰よりも狙われた男』のあらすじ【転】
ドイツ警察とCIA、そしてギュンターたち情報局による合同会議が始まった。ドイツ警察はロシアからの情報を基にイッサをイスラム過激派の構成員と断定し、早急な逮捕を提案した。しかし、ギュンターはイッサが本当にイスラム過激派であるならば、彼をドイツ内のイスラム共同体に入り込ませて情報源にするチャンスだと訴えた。マーサはギュンターの意見に賛同する。ギュンターは72時間の猶予を与えられた。
イッサはメリクという青年の家に匿われていた。メリクは人権派の弁護士アナベルに、イッサのことを相談した。アナベルは亡命を望むイッサの手伝いを請け負った。話が決まると、イッサはアナベルにトミーの捜索を依頼した。アナベルがトミーと接触すると、イッサには莫大な遺産があることが発覚した。
マーサからの要請を受けて、ギュンターは彼女と会った。マーサはギュンターに手を組もうと持ちかけてきたが、ギュンターはCIAのことを信用していなかった。
アナベルの指示でイッサは隠れ家を変え、ギュンターたちはイッサを見逃してしまう。
映画『誰よりも狙われた男』の結末・ラスト(ネタバレ)
セブンスフレンズという会社はアルカイダのフロント企業で、テロの資金調達を行っており、アブドゥラがそこに財産を注入していることが発覚する。イッサに残された遺産を狙ってアブドゥラが彼に接触すると考えたギュンターは、イッサの捜索を急いだ。
ギュンターはアナベルを拉致し、独居房に監禁する。そして、イッサの居場所を教えるよう、何度か説得を続けると、アナベルは協力に応じた。
イッサは遺産をアブドゥラの活動に寄付するつもりでいた。しかし、それはイスラムのためではなく、汚いことをして金を稼いだ父親と決別するためだった。イッサがドイツに悪影響を与えることはないと判断したギュンターは、内務省とCIAにその旨を報告する。それから、彼はアブドゥラ逮捕に向けて動き出した。ドイツ国籍を与えることを条件にイッサを協力者として迎え入れてはと提案するギュンター。内務省とCIAは渋々ギュンターの提案を受け入れた。
アブドゥラ逮捕の作戦が実施された。イッサと共に車で動き出したアブドゥラを捕まえるため、ギュンターたちは陣形を整えた。しかし、そこに黒塗りの車が数台現れた。それは、CIAの車だった。CIAはアブドゥラたちの車に追突し、乗っていったアブドゥラとイッサを引き摺り降ろすと、自分たちの車に乗せて連れ去ってしまった。
映画『誰よりも狙われた男』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
これは名優フィリップ・シーモア・ホフマン最後の主演作というだけで一見の価値がある。
煙草をふかしてウィスキーをあおる、腹の出たうだつの上がらない中年男。きちんとスーツを着込んで敵だらけの会議に臨む、キレ者の男。何をやっても圧倒的な存在感のある、大好きな名優だった。
タクシー運転手に扮した彼が車を降りて画面の奥に去って行く、その何者も寄せ付けない後ろ姿。この名優のこれからを見ることはできないのが悲しい。(男性 40代)
アメリカ同時多発テロが起きてから、テロの脅威というものがリアルになったと思う。本作品は重厚感がある物語で、テロリストを捕まえるため、策を練り行動を起こす主人公のギュンターの姿にハラハラさせられた。ラストは少し辛みのある終わり方で、残されたギュンターの姿に切なさを感じた。
フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作となったのは、惜しいなと本当に思った。存在感があり、意思の強さを感じさせる男を見事に表現していた。(女性 30代)
静かで、落ち着いていて、言ってしまえば物凄く地味なタイプのスパイ映画なのですが、だからこそ一つ一つの行動に意味を感じ、サインをするだけのシーンで息を飲むほど緊張してしまうのだろうとこの作品の凄さを感じました。
フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作と言うことですが、彼は苦悩を抱えながらも芯のあるキャラクターを演じるのが本当に上手くて、今作でもまさにそうだなと感じます。これは演技力の問題ではなくて、彼の人生や経験により自然と纏ったものなのだろうと、改めて大きな存在を失ってしまったなと悲しくなりました。(女性 30代)
フィリップ・シーモア・ホフマンの渋い演技に引き込まれました。諜報活動のリアルを徹底的に描いたストーリーで、派手な展開はないものの静かな緊張感が途切れません。バッハマンの作戦が最終的にアメリカによって潰されるというラストにはショック。信じていた者に裏切られる悔しさが、痛いほど伝わってきました。(30代 男性)
ハリウッド的なスパイ映画とは違い、登場人物の心理戦が中心でとても重厚でした。特に、イスラム系移民の青年がただ平穏に暮らしたいだけなのに、諜報の道具にされてしまう展開が悲しい。バッハマンの“正しいことをしたい”という姿勢が皮肉にも報われず、観終わったあと言葉が出ませんでした。(40代 女性)
若干スローペースだが、現代の諜報社会のリアルを丁寧に描いている点が非常に良かった。バッハマンが築いた信頼関係や周到な計画が、あっけなく踏みにじられるシーンはとても辛い。ホフマンのラストシーンの背中がすべてを語っていて、静かな怒りと諦めが滲んでいた。社会派サスペンスの傑作だと思います。(20代 男性)
地味だけど確実に胸に残る映画。テロと戦う名目の裏で、国家がどれだけ勝手に動いているのかが分かるリアルな描写。特にアメリカの一方的な介入には嫌悪感さえ覚えた。主人公の正義はあまりにも人間的で、だからこそ裏切られたときの絶望感が強烈。これが現代のスパイ戦だとしたら、少し怖いです。(50代 男性)
女性弁護士が、難民青年の支援に全力を尽くす姿がとても印象的でした。彼女も巻き込まれ、最終的に信じていた政府に裏切られる姿には怒りを覚えます。バッハマンの静かな怒りが滲む表情が忘れられません。ハッピーエンドを期待して観ると絶望しますが、現実の世界を見せつけられるような一作でした。(30代 女性)
冒頭から終始張り詰めた空気が漂っていて、静かだけど目が離せない作品でした。主人公のバッハマンが信念を持って動いているのに、それがあっけなく踏みにじられるあの結末は本当にやるせない。スパイという仕事の虚しさ、現場の人間がどれだけ振り回されているかが痛感できる社会派サスペンスです。(40代 男性)
ホフマンの圧倒的な存在感に魅了されました。クールで淡々と仕事をこなすが、その裏にある理想と情熱が感じられて、目が離せませんでした。国家レベルの非情な現実が明らかになる終盤、彼の怒りの表現がまた凄い。あのラストの歩き去る姿には、多くの感情が詰まっていて胸が締め付けられました。(20代 女性)
映画『誰よりも狙われた男』を見た人におすすめの映画5選
裏切りのサーカス
この映画を一言で表すと?
静寂の中で緊張が走る、極上の諜報心理戦!
どんな話?
1970年代の冷戦下、イギリスの諜報機関“サーカス”に潜む二重スパイをあぶり出すため、現場を退いたベテランスパイ・スマイリーが秘密裏に調査に乗り出す。誰が味方で誰が裏切り者なのか、静かで知的な駆け引きが続く。
ここがおすすめ!
ジョン・ル・カレ原作という点でも共通し、情報戦の現実と孤独が深く描かれています。アクションではなく会話と表情で進む緊迫感が、『誰よりも狙われた男』のような重厚なドラマを求める方にぴったりです。
善き人のためのソナタ
この映画を一言で表すと?
監視する者が、いつしか心を揺さぶられていく静かな傑作。
どんな話?
1980年代の旧東ドイツ。国家保安省(シュタージ)の監視員が、文化人夫婦を監視する任務を通じて、人間らしさを取り戻していく姿を描いた、深い人間ドラマ。情報と感情が交錯する。
ここがおすすめ!
権力構造の中で“正しさ”を模索する主人公の姿は、『誰よりも狙われた男』のバッハマンと重なります。政治と個人の狭間にある人間の葛藤が丁寧に描かれ、静かな感動が味わえる逸品です。
シリアナ
この映画を一言で表すと?
石油と政治の裏に潜む、世界の“見たくない現実”を暴く。
どんな話?
中東の石油利権を巡り、CIA、企業、王族、テロリストが複雑に絡み合うサスペンス。複数の視点で語られ、誰が正義で誰が悪かを判断することが困難な、現代の地政学を象徴する物語。
ここがおすすめ!
国際政治と諜報の現実を描く作品として、『誰よりも狙われた男』と通じるものが多いです。硬派な社会派ドラマを求める方にこそ観てほしい、骨太で考えさせられる一本です。
ミュンヘン
この映画を一言で表すと?
報復の果てに残るのは正義か、それとも虚無か。
どんな話?
1972年のミュンヘン五輪で起きたテロ事件の報復として、イスラエルの秘密工作員たちが実行犯を次々と暗殺していくが、次第に彼らは目的と手段の矛盾に苦しんでいく。スピルバーグ監督による社会派サスペンス。
ここがおすすめ!
国家の正義と個人の良心が衝突する重いテーマは、『誰よりも狙われた男』を気に入った方に響くはず。精緻な描写と緊迫した演出で、観る者の心に問いを投げかける一作です。
ゼロ・ダーク・サーティ
この映画を一言で表すと?
執念が導いた“正義”の果てに待っていたのは、空虚な勝利。
どんな話?
9.11後、CIAの女性分析官マヤが、ビンラディンの居場所を突き止めるまでの10年間を描く実録ドラマ。尋問、諜報、政治の駆け引きの中で、任務に人生を捧げた彼女の執念が光る。
ここがおすすめ!
リアルな情報戦と、個人の感情や葛藤を描いた点で『誰よりも狙われた男』と共鳴します。一見の成功がもたらす虚しさや矛盾に気づかされる、現代戦のリアルが詰まった衝撃作です。
みんなの感想・レビュー
彼の死が悔やまれます。ロビン・ウィリアムズも薬がきっかけで亡くなっているし、ハリウッドの薬物汚染はどうにかならないものなのでしょうか?名優をこんな形で失ってしまうのは惜しい。
主人公を演じるのはフィリップ・シーモア・ホフマン。ヤクのやり過ぎで死んだ名優です。「あの頃ペニー・レインと」での演技が有名ですね。国際指名手配中の男を淡々と追いかけ、徐々に追い詰めていく。『007』なら女と都合のいい設定でどうにかする問題なのに、なんて偉いんだ!と思ってしまうのは、映画ファンならではの感情でしょう。
格スパイ映画なのにわかりやすい。脚本家の腕が光っています。フィリップ・シーモア・ホフマンの演技力で魅せるシーンも多く、たまに出てくるジョークは笑えます。観ないと損しますよ。やっぱり、スパイ映画はテレビ画面で見るよりも、劇場の大スクリーンで見たほうがいいです。