この記事では、映画『あ・うん(1989)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『あ・うん(1989)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『あ・うん(1989)』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0054806
製作年 | 1989年 |
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上映時間 | 113分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 降旗康男 |
キャスト | 高倉健 富司純子 板東英二 富田靖子 |
製作国 | 日本 |
映画『あ・うん(1989)』の登場人物(キャスト)
- 門倉修造(高倉健)
- 門倉工業社長。水田とは元戦友で、何かにつけて水田家の世話をしている。
- 水田たみ(富司純子)
- 水田の妻。夫のことを愛しているが、門倉が家を訪れてくれるときは歓迎する。
- 水田仙吉(板東英二)
- 門倉の元戦友で、製薬会社に勤めている。妻と娘を非常に愛している。
- 水田さと子(富田靖子)
- 仙吉とたみの娘で18歳。門倉のおじさんを、第二の父のように慕っている。
- 門倉君子(宮本信子)
- 門倉の妻。夫があまり家に寄りつかないことで、心を痛めている。
- まり奴(山口美江)
- 芸者。門倉の紹介で、水田とも顔なじみになる。
- 石川義彦(真木蔵人)
- さと子の見合い相手。良家で育った帝大生で、誠実な男性である。
映画『あ・うん(1989)』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『あ・うん(1989)』のあらすじ【起】
昭和12年春。栄転で上京してくる水田一家のために、門倉が前もって借家の掃除をしていた。門倉と水田は元戦友であり、妻・たみ、娘・さと子とも仲が良い。夜、ラジオを持ってくる門倉を一家は歓迎し、一緒に栄転祝いの夕食をとる。
門倉は神楽坂の料亭に水田を連れていき、芸者・まり奴を紹介する。妻・君子は、夫があまり家に帰ってこないため寂しく留守番をする毎日である。
君子が、さと子と帝大生・石川義彦の見合いを仲介する。二人は気が合うようだが、水田は学歴が低いため、身分が不相応ではないかと返事を保留にする。実は水田は、前の職場の次長が会社の金を使い込んだことで、5000円もの大金の弁済を迫られていた。門田はその話を聞くと、金を肩代わりしてくれる。
結局、家柄の問題に加えさと子がまだ若いからという理由で、縁談は断ることになった。しかしさと子が肺炎で倒れたとき、義彦はヴェルレーヌの詩集を持ってお見舞いに来てくれる。
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映画『あ・うん(1989)』のあらすじ【承】
雨の日。水田家に門倉がやってきた。たみは門倉が金を用立ててくれたことに礼を言う。門倉の会社は、以前は特需景気で羽振りがよかったが、最近は経営状態がよくない。一方水田の会社にジャワ支店ができることになり、たみは転勤になったら門倉に会えなくなることを心配している。門倉はたみから会社のことを応援されことをきっかけに、無事に会社を立て直す。
たみは、水田の帰りが毎晩遅い上に月給の前借り伝票が出てきたため、何かあったのではないかと門倉に相談する。そのとき酔っ払った水田が帰ってきて、まり奴に入れ込んでいることが判明する。門倉は水田をまり奴に合わせたのは自分の責任だと言って、たみに謝罪する。
数日後水田が神楽坂の料亭に行くと、まり奴が身請けされたことを告げられる。
映画『あ・うん(1989)』のあらすじ【転】
祭の日。たみはさと子の部屋で「駆け落ち、修善寺」と書かれた書き置きを見つける。水田とたみは修善寺の旅館に出かけるが、二人は見つからない。そこへ門倉がやって来たので、旅館の番頭は、駆け落ち現場に亭主が殴り込みに来たのかと誤解する。さと子と義彦は、日比谷で活動写真を見ていただけだった。三人は、仲良く部屋に泊まり酒を飲む。
君子が門倉の浮気調査を依頼し、彼の行き先を突き止めた。彼女が水田を連れて現場に乗り込むと、確かに門倉がおり、そこへまり奴が帰ってくる。水田は、門倉が妻を差し置いてまり奴にのめり込んでいることを責める。しかし実際は、水田がまり奴に入れ込みたみが悲しむ姿を見たくなかったため、門倉が金を出したのだった。水田はそれを聞いて、腹を立てる。
さと子が義彦の部屋で会っていると、特別高等警察がやって来て二人は連行される。門倉が裏から手を回したおかげで、さと子は釈放される。たみはさと子に義彦を諦めさせたいと門倉に相談するが、「実らないとわかっていても、人は惚れるものだ」と返される。
映画『あ・うん(1989)』の結末・ラスト(ネタバレ)
神楽坂の料亭で、門倉と水田が芸者遊びをしている。門倉は上機嫌だが、水田はまり奴の件をまだ怒っている。門倉が水田によくしてくれるのは、たみへの愛情からだと気づいた水田は、門倉に絶交を申し渡す。
日本軍が南京を完全占領したというニュースが流れる雪の日、水田のジャワ行きが決まった。たみは同行すると即答するが、さと子は東京に残りたいと言う。水田の栄転を祝うために、門倉が久々に水田家を訪れる。たみは、もう会えなくなるかもしれないことが寂しいと言って泣く。
そのとき義彦がやってきて、召集令状が届き一週間後に入隊することが決まったと告げる。呆然としているさと子に、門倉は「今夜は帰ってこなくていい」と言う。それを聞いて駆け出していくさと子。三人は涙が止まらず、一緒に飲むことにする。
翌朝。たみはまだ寝ている水田に向かって、門倉の行く場所がなくなってしまうため、やはりジャワには行かないと言う。
映画『あ・うん(1989)』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
門倉と水田、そしてたみの三人の関係性が非常に繊細に描かれており、心が揺さぶられる作品でした。高倉健の抑制された演技が門倉の複雑な心情を際立たせ、富司純子のたみもまた、内に秘めた感情を静かに表現していて見事でした。昭和の空気感や人間模様が丁寧に描かれていて、見終わった後も余韻が長く残る映画です。(30代 女性)
門倉のたみへの思いが切なく、また水田との友情の在り方にも考えさせられました。戦前の日本を舞台に、恋愛と友情の狭間で揺れる人間の姿が静かに描かれ、非常に深みのある物語でした。映像の美しさも際立っており、時代の雰囲気に浸れる一本です。(40代 男性)
高倉健と富司純子の共演というだけでも見応えがありますが、物語の中で描かれる微妙な三角関係がとてもリアルで、感情移入せずにはいられませんでした。たみの揺れ動く心情と、それを見守る門倉の切なさに胸を打たれました。(50代 女性)
若い頃に見たときには分からなかった人間関係の機微が、年齢を重ねてから観るとよくわかりました。門倉のたみへの想いと、それを押し殺す姿に日本人らしい美徳を感じます。全体的に派手さはないが、心に残る名作です。(60代 男性)
人間関係の重厚さや、感情を押し殺す昭和の美徳がよく描かれていて、非常に味わい深かったです。登場人物たちの言葉にしない想いが、俳優陣の演技によってしっかり伝わってくるのが素晴らしい。時代背景が好きな人にもおすすめです。(70代 女性)
戦前という時代設定が、登場人物たちの振る舞いや価値観に強く影響していて、それが作品の魅力になっていました。門倉のたみに対する一途な想いと、水田への友情との葛藤がリアルで、現代の感覚とは違う静かな情熱を感じました。(20代 男性)
門倉の無言の優しさが、たみや水田との関係性の中で浮かび上がってくる演出が見事。感情を表に出さずとも伝わる心の動きがとても丁寧に描かれており、現代の作品にはない奥ゆかしさがありました。和の心を再認識させてくれる映画です。(30代 女性)
人間の複雑な感情をここまで繊細に描き切った作品は少ないと思います。門倉と水田の友情に対するたみの存在が、均衡を保っていた関係を少しずつ崩していく様がリアルでした。観終わってからも心に残り続ける映画です。(40代 男性)
恋愛映画でもなく、友情映画でもない、どちらとも言い難い微妙な関係を描いているのが本作の魅力です。高倉健の静かな演技に引き込まれ、たみとの関係がどこへ向かうのか、最後まで目が離せませんでした。昭和の空気感も素敵でした。(50代 女性)
大きな事件もなく、日常の中での人間の心の揺れ動きがテーマになっているところが魅力でした。たみの存在が二人の男の関係にどう影響するかをじっくり見せてくれる構成に、年齢問わず多くの人が共感できるはず。静かな名作です。(60代 男性)
映画『あ・うん(1989)』を見た人におすすめの映画5選
東京物語(1953)
この映画を一言で表すと?
家族のすれ違いが静かに胸を打つ、日本映画史上に残る珠玉の名作。
どんな話?
年老いた両親が東京に住む子供たちを訪ねるが、冷たくあしらわれる。唯一の嫁・紀子だけが心を寄せるが、親の死によって家族の絆が浮き彫りになる。世代の違いや家族関係の複雑さが描かれた、深く考えさせられる作品。
ここがおすすめ!
小津安二郎監督の代表作であり、静かな演出の中に深い感情が込められています。家族との関係に悩んだことがある人なら誰でも共感できるシーンがあり、観終わったあとに余韻が長く残ります。美しい構図と間も見どころです。
男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976)
この映画を一言で表すと?
笑いと涙が交差する、下町人情の名作シリーズの中でも屈指の感動回。
どんな話?
フーテンの寅こと寅次郎が久々に葛飾柴又に戻ると、親友の娘が失恋で落ち込んでいた。彼女を励ましながらも、寅自身も再び恋をするが――。笑いあり、涙ありの人情物語が展開される。
ここがおすすめ!
山田洋次監督による“人情”の真骨頂。日本人の心の奥底に響く優しさと切なさが絶妙に描かれており、昭和の空気を味わいたい人には特におすすめ。『あ・うん』のような人間関係の機微を描いた作品を好む方にぴったり。
家族ゲーム(1983)
この映画を一言で表すと?
型破りな家庭教師が暴く、家族という制度の歪みに鋭く切り込む一作。
どんな話?
成績不振の弟のために家庭教師を雇った一家。しかし、教師の風変わりな指導法が家族の関係性に影響を与え、やがて家族の“仮面”が剥がれていく。風刺的ながらもリアリティあるドラマが展開される。
ここがおすすめ!
ユーモラスでありながらも、家庭のあり方や教育の問題に真っ向から挑んだ骨太な作品。松田優作の怪演も必見で、独特のテンポや不穏な空気感が『あ・うん』とは違った角度で人間関係を描き出しています。
雨あがる(1999)
この映画を一言で表すと?
人のやさしさと誇りを静かに描く、心温まる時代劇。
どんな話?
職を失った侍・三沢伊兵衛とその妻が旅の途中で大雨に見舞われ、一宿一飯の恩を受ける。剣術の腕を見込まれて藩主に招かれるが、伊兵衛は誇りを持って生きる道を選ぶ――。静かながらも深い感動が心を打つ。
ここがおすすめ!
黒澤明の遺稿を基に製作された作品で、人の本質をじっくりと見つめた温かい物語。妻との夫婦愛や人とのふれあいが丁寧に描かれており、『あ・うん』の落ち着いた世界観が好きな方にはぜひ観てほしい一作です。
たそがれ清兵衛(2002)
この映画を一言で表すと?
武士としての誇りと、家族への愛を描いた哀愁漂う人間ドラマ。
どんな話?
家計を支えるために早く帰宅する「たそがれ」清兵衛。周囲には変人扱いされながらも、家族と過ごす時間を大切にする姿が描かれる。ある日、旧友の依頼で剣を握ることになり、運命が動き出す。
ここがおすすめ!
藤沢周平原作、山田洋次監督による静謐で力強い時代劇。派手なチャンバラはないものの、人物描写に重きが置かれ、清兵衛の生き様に深い感動を覚えます。人の優しさと強さを描いた傑作です。
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