映画『愛の新世界』の概要:ピンク映画出身の高橋伴明監督が、女優志望のSM嬢と玉の輿を目指すホテトル嬢の友情と、彼女たちのたくましい生き様をサバサバと描く。本作が映画初主演となる鈴木砂羽が、豪快なヘアヌードを披露している。若かりし頃の松尾スズキ、宮藤官九郎、阿部サダヲらの姿も見られる。
映画『愛の新世界』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春、コメディ
監督:高橋伴明
キャスト:鈴木砂羽、片岡礼子、杉本彩、萩原流行 etc
映画『愛の新世界』の登場人物(キャスト)
- レイ(鈴木砂羽)
- 東京の小劇団で芝居の修行をしている女優の卵。生活費を稼ぐため、道玄坂のSMクラブで女王様として働いている。S嬢の才能があり、固定客多数。カラッとした性格で、物事に動じない。動植物が大好きなので、郊外の自然豊かな場所で暮らしている。
- アユミ(片岡礼子)
- 道玄坂のデートクラブに所属しているホテトル嬢。レイが勤めるSMクラブと勤務先のデートクラブが同じ建物内にあるため、レイと顔見知りになって意気投合する。医者や弁護士と結婚するという夢があり、かなりの結婚資金を貯めている。
- さくら(中島陽子)
- レイと同じ劇団に所属する劇団員。デブキャラのしっかり者で、似たような体型の劇団員と付き合っている。アユミが所属するデートクラブで、電話番のアルバイトを始める。
- 澤登(萩原流行)
- レイの客。ヤクザの幹部で、背中には立派な刺青を入れている。普段は部下に恐れられる強面のヤクザだが、性癖は極度のマゾ。情け容赦ないレイの大ファン。
映画『愛の新世界』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『愛の新世界』のあらすじ【起】
東京の小劇団で女優をしているレイは、生活費を稼ぐため、SMクラブの女王様をしている。最初は興味本位で始めたのだが、女王様はレイにとって天職だったようで、彼女は雑誌のグラビアを飾る人気SM嬢となる。
SM嬢としていくら人気が出ても、やはりレイの夢は女優として成功することであり、彼女は熱心に芝居の稽古を続けている。レイが所属している劇団『ドリームキッズ』は、演出家の松木も含めて劇団員が8名しかいない小さな劇団で、団員たちもみんな若い。女優は、レイとデブキャラのさくらしかいないため、レイは劇団の看板女優だった。
性に奔放なレイは、日替わりで男性劇団員と関係を持つようにしている。劇団員はマドンナのレイを独り占めしたりせず、仲良く彼女の好意に甘えていた。レイは、他にも不特定多数の男性と付き合っていたが、どれもこれも長続きせず、すぐに飽きてしまう。男に恨み言を言われても、レイは全く気にしない。
レイの勤めるSMクラブは、「道玄坂ハイム」という建物の一室にある。この建物には、他にもいくつかの風俗店が入っていた。ある日、出張仕事に出かけたレイは、同じ建物内のデートクラブでホテトル嬢をしているアユミとエレベーターで一緒になる。レイとアユミは初めて言葉を交わし、今度飲みに行く約束をする。
映画『愛の新世界』のあらすじ【承】
レイとアユミは、それぞれ指定されたラブホテルへ向かい、客の相手をする。アユミを呼んだのは、説教好きな中年男性で、1番スケベなタイプだった。
アユミには、医学部を目指して3浪中の彼氏がおり、アユミはその彼氏と結婚すると決めていた。彼氏の実家は個人病院を経営しており、結婚が実現すればアユミは玉の輿に乗れる。アユミはホテトル嬢をして1000万円も貯金し、その金を他銀行から父親名義で自分の口座に振り込む。それを彼氏に見せて、「父が結婚資金に振り込んでくれた」と嘘をつく。これは自分の家柄を偽るための戦略だった。
一方、レイを呼んだ客は、女になった自分をいじめて欲しいと願う中年男性で、奇妙な女装をしてレイにいじめてもらう。レイに自分の変態性を罵倒されることが、その客にとっては最高の喜びだった。
仕事を終えたレイと仲間のSM嬢たちは、朝方まで酒盛りし、それぞれ帰路につく。レイは、東京郊外の自然豊かな場所でひとり暮らしをしており、小鳥のさえずりを聞きながら眠りにつく。仕事場の渋谷へ行くには少々不便だったが、自然を愛するレイは、ここで動植物と触れ合う時間を大切にしていた。
劇団員のさくらは、アユミが所属するデートクラブで、電話番のアルバイトを始める。芝居の稽古で鍛えたさくらは、電話の応対もしっかりしており、即戦力となる。さくらは、アユミとライバルのホテトル嬢の大喧嘩も、一喝してやめさせる。
SMクラブに出勤したレイは、常連客の澤渡を迎える。澤渡は立派な刺青を背負った極道の幹部だったが、極度のマゾだった。情け容赦なく自分をいじめ抜いてくれるレイに、澤渡は本気で惚れ込んでいた。
映画『愛の新世界』のあらすじ【転】
レイとアユミは約束通り飲みに行き、お互いの仕事について語り合う。2人は自分の仕事に誇りを持っており、それを隠したりはしない。レイは、女王様の仕事は芝居の勉強にもなると思っていた。
飲み屋、カジノ、ホストクラブ、オカマバー、クラブをハシゴしたレイとアユミは、2人組の男にナンパされ、深夜のドライブを楽しむ。男から、海沿いの別荘で飲もうと誘われるが、2人はさっさと帰る。そのまま渋谷まで走って帰った2人は、今度夜明けの海に行こうと約束して、それぞれ帰路につく。
帰宅したレイは、田舎の母親へ手紙を書く。母親には「セラピストのアルバイトを始めた」と報告する。SM嬢の仕事には、セラピストのような側面があるのも事実だった。レイはその手紙に「セラピストの仕事は芝居の勉強になる」と書いておく。
アユミのライバルだったホテトル嬢の結婚が決まり、仲間たちでお祝いの場を設け、彼女を送り出す。喧嘩ばかりしたアユミも、心から彼女の幸せを祈る。
次の公演の台本が仕上がり、レイたちは芝居の稽古に励む。劇団員は様々なバイトをしながら、芝居を続けていた。レイも劇団員も、みんな芝居が大好きだった。
近所のラブホテルで女性が絞殺される事件が発生し、近隣のデートクラブが臨時休業する中、怖いもの知らずのアユミは商売に精を出す。ところが、危険な客に指名され、アユミはナイフを突きつけられる。アユミは店に電話して、「ナポリタン」という暗号で緊急事態を知らせる。さくらが暗号に気づき、店長に知らせたため、アユミは無事に救出される。そんな目にあっても、アユミは客を取り続ける。
下半身に異変を感じたレイは、産婦人科へ行き、性病と診断される。レイは、劇団員に自分が性病であることをサラッと告げる。彼女と関係を持っていた劇団員は、仲良く病気をもらっており、みんなで病院通いを始める。その頃、アユミは医者の卵と別れ、今度は司法試験に挑戦中の弁護士の卵と付き合い始めていた。
映画『愛の新世界』の結末・ラスト(ネタバレ)
レイのところへ、妙に理屈っぽい客がやってくる。普通の性体験に飽きたと言い放つその男は、女王様のレイに向かって、偉そうな口をきく。レイは、「私の流儀でやらせてもらう」と宣言し、男を縛り上げる。強引に目隠しと猿轡をされた男は、そのまま暗い部屋で数時間に渡って放置され、従順な奴隷に調教される。クラブのオーナーは、レイの才能に惚れ込み、2号店の店長を任せたがる。しかし、レイにその気はない。
劇団の公演日がやってきた。澤渡は、ルール違反を承知でレイの身元を調べており、売れ残っていた大量の当日券を密かに買い占める。それを部下に無料配布させるが、客は集まらない。律儀な澤渡は、タダ券にJリーグのチケットを付けて、レイのために客を集める。
澤渡の尽力で満員になった劇場で、レイと劇団員は、精一杯の芝居を見せる。客席には、アユミの姿もあった。芝居はなかなか好評で、レイたちは満足して公演を終える。テンションの上がったレイたちは、誰彼かまわずキスをして、祭りの終わりを祝う。
公演後、ルール違反を詫びに来た澤渡に、レイは素直に礼を述べる。レイにキスされそうになり、澤渡は目を閉じる。ところが、レイの代わりにさくらが澤渡にキスをしてしまう。何も知らない澤渡は、感激の涙を流していた。みんなは澤渡を気遣い、事実を伏せておく。
レイと劇団員にアユミも加わり、打ち上げも大いに盛り上がる。朝方まで大騒ぎして、劇団員たちは酔い潰れて寝てしまう。早朝、一緒に帰り始めたレイとアユミは、レイの提案で、夜明けの海へ向かう。
レイとアユミは、2人組の男をナンパして、車を確保する。レイは無免許で車を大暴走させ、男たちを震え上がらせる。あちこちで事故を起こしながら、とある海岸へたどり着いたレイとアユミは、男たちを砂浜へ埋め、全裸で海へ入る。目隠しをされ、顔から下を埋められた男たちの前で、全裸のレイとアユミは、子供のようにはしゃぎ回る。
ようやく帰宅したアユミは、弁護士の卵に逃げられたことに気づく。しかし、アユミは落ち込んだりしない。同じ頃、レイも帰宅し、気持ち良さそうに窓を開ける。レイは、こんな日々を満喫しており、「明日からはもっと面白いはずだ!」と、期待に胸を膨らませるのだった。
映画『愛の新世界』の感想・評価・レビュー
本作は、女優を目指すSMクラブの女王様と玉の輿を狙うホテトル嬢の友情や生き様を描いた青春ヒューマンドラマ映画。
日本映画初のヘアヌードで注目を集めた作品。
バブル崩壊後の東京という知らない時代の知らない世界が新鮮で、2人の美しく健康的なヌードはいやらしさがなく爽やかな印象を受けた。
特に、主人公レイのカラッとした性格と生き様が格好良くて、人生は楽しんだもの勝ちなのだから彼女のようにカラッと楽し気に生きたいとしみじみ思った。(女性 20代)
本当に素敵な青春映画でした。SM、風俗、夜の街。過激なワードに少し怖気づきますが、ストーリーは純粋な青春映画。こんなにもやりたい放題で、丸裸な作品は初めて観ました。
主演の鈴木砂羽はこの作品が22歳のデビュー作。ものすごく潔く、貫禄に圧倒されました。そしてこの作品の監督、高橋伴明は性をテーマにした作品がお得意ですが、今作は鈴木砂羽に首ったけだったのでしょう。彼女のための作品といった感じでした。
若い頃、やんちゃしていた世代にはたまらない作品だと思います。(女性 30代)
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