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映画『愛の小さな歴史』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『愛の小さな歴史』の概要:2014年製作の日本映画。自主製作にも関わらず海外メディアからも評価されている中村龍太郎監督の作品で、ばらばらになった家族をテーマに心の中をむき出しの表現で描いたヒューマンストーリー。

映画『愛の小さな歴史』の作品情報

愛の小さな歴史

製作年:2014年
上映時間:81分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:中川龍太郎
キャスト:中村映里子、沖渡崇史、光石研、高橋愛実 etc

映画『愛の小さな歴史』の登場人物(キャスト)

執行夏希(中村映里子)
学生時代、親友を交通事故で亡くし、休学。現在は配達の弁当屋に務めている。小さい頃両親が不仲になり、母は病死、父は葬儀にも出ず不倫相手の女性と駆け落ちする。そのせいで父からの暴力や棄てられたという記憶から逃れられず、今も苦しんでいる。
執行大悟(光石研)
夏希の父。無職で団地に暮らしている。かつての部下が現在の悲惨な生活を娘に伝えたことで、夏希と再会、同居生活をすることになる。無口でアルコール依存である。
芹沢夏生(沖渡崇史)
小さい頃両妹を祖父の元に置いて家を出、現在は金貸しをしている。見た目に反して真面目で一途なところがあり、面倒見の良い男性。
芹沢夏美(中村朝佳)
夏生の妹、夏生が出て行ったあと認知症の祖父の介護を経験。家族が欲しいと夢見て夜の商売をしながら金を貯めているが、薬物依存から抜け出すことが出来ない。

映画『愛の小さな歴史』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『愛の小さな歴史』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『愛の小さな歴史』のあらすじ【起】

夏希は大学生の時に、親友を事故で亡くした。
そのショックから休学し、現在は弁当などの食品を扱う会社で働いている。
仕事は顧客への車での配送。
いつも注文を受ける客の中に、ピアニストの男性がいる。
夏希はこの男性の家を訪れ弁当を渡し、彼とする少しだけの雑談を密かに楽しんでいた。

ある日、ピアニストの男性からリサイタルの知らせをもらい出かけた夏希。
会場に居たことに気がついたそのピアニストは、夏希を追い外に出てきた。
「自分をピアノで表現することに感動した」という感想を言う夏希に、彼は「今日買い換えたので」と使わなくなったカメラをくれる。
「自分の撮りたい物を撮って」と言ってくれた。

夏希に家族は居ない。
正確には父親がいるが、母を苦労させたあげく病死させ、その後葬儀にも出ずに不倫相手と駆け落ちしたことが心の傷となり許せないでいた。
居場所も知らないし、毛頭会う気など無い。

しかしある日のこと。
夏希が会社で仕事をしていると、突然一人の若い男が入って来た。
その男は昔夏希の父親と同僚で、その時父親に貸した3万円を代わりに返せと言ってきたのだ。
夏希はそのことに激怒し、男を追い出した。
しかし諦めて帰った男の後を走って追い、3万円を渡す。
「これで最後にしてくれ」と手切れ金のつもりだったのだ。
男は夏希に父親の現在の住所を教え、去って行った。

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映画『愛の小さな歴史』のあらすじ【承】

夏生は金貸しの仕事をしている。
それは不法の金利、当然返済が間に合わず自殺者も出してしまっているほどだった。

ある日夏生は思い立って、昔別れた妹のアパートまでやって来た。
妹は薬漬けであり、それを更生させたかったのだ。
しかし突然家に来られた妹の夏美は、夏生に出て行けと怒る。
今まで放っておかれたのに、何故今更こんなことをするのかと怒っているのだった。

だが夏生は聞かない。
無理矢理、夏美と同居することにする。
夜の商売をしている夏美は、夕方から外出するが夏生は夜ご飯を作り生活をサポートする気でいた。
昔好きだった「アルプスの少女ハイジ」のDVDをレンタルしてくるなど、幼い頃の夏美の思い出をたどっている夏生を鬱陶しく思い、口もききたくない夏美だった。

映画『愛の小さな歴史』のあらすじ【転】

夏希は突然気が変わり、あの男が教えてくれた父親の住所に行ってみることにした。
団地の部屋の前で中々出てこない父親に「娘の夏希だ」と叫ぶと、父がドアを開ける。
部屋の中はゴミでいっぱいで、煙草の吸い殻もそのまま。
夏希は「養育費も払っていなかったのに煙草は買うんだね!」と父を責めた。
そして同居することを告げる。
自分と暮らすことが、父への一番の復讐であると考えたのだ。

夏希がいつものように商品を持って、あのピアニストの家を訪れたある日。
中から一人の女性が出てきた。
それは彼の妻だった。
勝手に期待していた夏希は酷く傷つき、泣きながら車を走らせる。
自宅に戻ると機嫌の悪かった夏希は、幼いころ味わった自分の苦しかった思いをはき出す。そして父を責め、異常に暴力を振るった。

夏生は仕事帰りの夏美に普通の仕事をしろと言う。
しかし幼い頃自由が無かった夏美は、今までの苦しい思い出を兄にぶつける。
そして突然リストカットしてしまった。
急いで病院まで裸足でつれて行く兄の姿を見て、少しだけ感謝する夏美だった。

映画『愛の小さな歴史』の結末・ラスト(ネタバレ)

夏希が父に今までのことを責め立て、暴力を振るっている時のことだった。
そこにあの金を貸していたという男が入って来た。
男を送りがてら話を聞くと、父親が彼に借金をしていたというのは嘘で3万円を返して来た。
父親のように慕っていた夏希の父の家に、初めて娘が描いてくれたという似顔絵が飾られていてそれを渡したかったということだった。
「憎むより許せ」とアドバイスをするその男。
夏希は急いで家に向かった。

夏希は自宅であのピアニストからもらったカメラで父親を撮影した。
夏生もまた、他の人にあげるはずだったカメラで妹の姿を撮影した。

そして電話が鳴る。
夏希の父は自殺。
夏美は薬物の過剰摂取で遺体となって発見された。
絶望感で耐えられない二人は、亡き父と妹に導かれるように夏希の父が暮らした団地の庭で出会うのだった。

映画『愛の小さな歴史』の感想・評価・レビュー

夏希と夏生のエピソードがそれぞれに進んでいく。
アルコール依存の父親も、薬物依存の妹も、わずらわしくても家族として大事な存在。
それぞれの小さな歴史が重なって、また歴史を紡いでいく。

「憎むより許せ」の言葉が心に残る。
夏希が父親を、夏生が妹をカメラで撮った小さな笑顔でホッとした。
ラストのビデオカメラで撮影していたお祭りのシーンが良かった。(女性 40代)


本作は、バラバラになった家族を描いた中川龍太郎監督によるヒューマンドラマ作品。
まず、池松壮亮の存在感や安定感が印象的だった。
そして、誰もが抱える悲しみや絶望に涙が止まらなかった。
そこから立て直し懸命に生きていく人間の強さが登場人物それぞれの観点から描かれていて、多面的に観れる作品。
結末に向かうにつれてじんわりと、冒頭シーンの意味が分かる。
タイトルの通り「愛の小さな歴史」を描いていて腑に落ちた。
良い作品に出会えた。(女性 20代)


この作品の中村龍太郎監督の『四月の永い夢』があまりにも良かったので、こちらの作品も鑑賞しました。もう何もかも上手くいかなくて、どうしようもない日ってあるじゃないですか。そんな日はこの作品を観ると、少し心が落ち着くというか、モヤモヤが晴れる気がします。
夫婦の愛、兄弟の愛、親子の愛、色んな愛が描かれていて、憎くて仕方ない人にも愛する誰かがいて、愛してくれる誰かがいて。苦しいのは自分だけじゃない。苦しい思いをする人がいるから、幸せを感じられる人もいる。そんなことを考えさせてくれる作品でした。すごく深くて、心にぐっときます。(女性 30代)


二組の家族の様子が同時進行で展開するストーリーです。殊に、中村映里子と三石研が演じた父と娘が流石だと感じました。娘の、父への許せない気持ち、葛藤、衝動の演技力に感服です。中村龍太郎監督の作品は初めて見ましたが、映像の切り取り方やストーリーの濃さ、音などさまざまな点で才能を感じさせます。物語を綺麗にまとめすぎていないところも、とても好きです。ラフマニノフの曲が流れる中でのカットには、切なさ、儚さを何度も感じました。(女性 30代)

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