映画『雨あがる』の概要:武士の三沢伊兵衛は妻のたよと共に当てのない旅をしていた。ある日、豪雨により川が氾濫してしまい、宿屋に泊ることを余儀なくされる。ある日、その宿屋で女性が米を盗まれたと騒ぎ立てた為、伊兵衛は仲裁に入る。
映画『雨あがる』の作品情報
上映時間:91分
ジャンル:ヒューマンドラマ、時代劇
監督:小泉堯史
キャスト:寺尾聰、宮崎美子、三船史郎、吉岡秀隆 etc
映画『雨あがる』の登場人物(キャスト)
- 三沢伊兵衛(寺尾聰)
- 流浪の武士。剣の実力はあるが、どこの藩に行っても上手くいかず旅を続けている。心優しい男性で、困っている人を見ると放っておけない。
- 三沢たよ(宮崎美子)
- 伊兵衛の妻。夫を静かに見守り支えている。
- 永井和泉守重明(三船史郎)
- 藩の城主。癇癪持ちだが、融通の利く性格。伊兵衛の実力を見て、剣術指南番に勧誘する。
映画『雨あがる』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『雨あがる』のあらすじ【起】
武士の三沢伊兵衛は旅の途中、豪雨により川が氾濫してしまい足止めを余儀なくされる。宿屋では貧しい生活を送る人達が、上がらない雨にうんざりしていた。伊兵衛は宿屋の自室に戻り、妻のたよに当分宿屋から動けない旨を伝え苦労をかけてすまないと謝罪した。だが、たよは気にしている様子も無かった。
突然、女性が自分の米を盗まれたと言って宿屋に怒鳴り込んでくる。伊兵衛は女性の元へ行こうとするが、たよは伊兵衛を引き留めた。そして、皆にのけ者にされて淋しいのだと女性の心情を察した。だが、あまりの剣幕に伊兵衛は居ても立ってもいられず、間に入り穏やかに女性を窘めた。
伊兵衛は出掛けて行き、たくさんの食糧を買って宿屋に戻った。そして、宿屋の者達に食事を振る舞った。久しぶりの豪華な食事に宴が始まる。怒鳴り込んできた女性も宿屋に帰ってきた為、伊兵衛は食事を手渡して宴に呼んだ。始めはぎくしゃくした空気だったが、皆すぐに宴を楽しんだ。
伊兵衛は部屋に戻り、たよに頭を下げた。そして、宿屋の人達の為に賭け試合をしたことを打ち明ける。たよは賭け試合をしないという約束を破ったことを静かに窘めるが、怒ってはいなかった。そして、伊兵衛が持ってきた食事に笑顔を見せた。
映画『雨あがる』のあらすじ【承】
雨が上がり、伊兵衛は早朝から散歩に出掛けた。そして、林の中に入り、刀の練習を1人静かに行った。だが心の中は、たよに苦労をかけていることへの申し訳なさで一杯だった。
伊兵衛が林の中を進むと、男達の争う声が聞こえた。果たし合いを行う男達の間に入り、手刀で動きを封じて刀を取り上げた。そこに、藩の城主である永井和泉守重明が現れ、伊兵衛の見事な動きを褒めた。
伊兵衛が宿に戻ると、永井和泉守重明の部下達が待っていた。殿の命令で伊兵衛を迎えに来たと言われ、伊兵衛は部屋へと身支度に戻る。だが、よれよれの着物しか無い為、伊兵衛は途方に暮れていた。たよは事情を理解しており、伊兵衛の為に着替えの着物を用意していた。
伊兵衛は着物に着替え、堂々と殿に挨拶をした。殿は堅苦しいのが嫌いらしく、庭に出て話を聞くことになる。そして、伊兵衛は剣術指南番の誘いを受ける。殿は伊兵衛に興味を持っており、身の上話について問い掛けた。伊兵衛は奥州の勘定方に勤めていたが、机に向かうのが嫌で旅に出たことを話した。殿は伊兵衛に話しの続きを求め、路銀はどうしているのか問い掛けた。伊兵衛は道場主との立ち合いで、打ち込んでくる前に謝ることで、いい気分になった道場主から恵んでもらっていることを嬉しそうに話した。
伊兵衛の話はさらに続き、最後の場所だと心に決めて入った江戸の道場のことを話した。それは、殿も知る程の剣客である、辻月丹の道場だった。伊兵衛は立ち合い中、どのタイミングで謝罪をするかを考えていた。だが、先に辻の方が参ったと手をついた。伊兵衛は戸惑いながら魂胆を話すと、辻は隙があるのに捉えどころがなくて困ったと笑っていた。その後、伊兵衛は辻の元で修業を行い他の藩を渡り歩いたが、どうも上手くいかなかったと悲しそうに話した。
映画『雨あがる』のあらすじ【転】
殿は伊兵衛を夕食に招き、家老達を紹介した。そして、指南番として伊兵衛を雇うことを話した。家老達は戸惑い、どこの誰かも分からない者が指南番に就くことを嫌がった。だが、殿の意思が固い為、腕前を披露する為の御膳試合を提案する。伊兵衛はそれを承諾する。
伊兵衛はお土産を持って嬉しそうにたよの元に戻った。そして、御膳試合をしたら剣術指南番になれると報告する。たよは微笑みを称えて伊兵衛の話を聞いていた。
全部で3試合ある御膳試合が始まる。伊兵衛は無駄に竹刀を打ちに行かず、相手の攻撃を避けて一瞬のスキを狙って攻撃に転じた。そして、2試合勝利を収めたが、3試合目を担当する道場の師範が来ない。伊兵衛の実力を見て相手役として名乗り出る者もおらず、殿自らが対戦することを決める。しかも、竹刀ではつまらないと言って、槍を手にした。伊兵衛は竹刀を手に互角の戦いを続ける。だが、伊兵衛が打ち込んだ力が強く、勢い余って殿を池の中に落としてしまう。殿は怒って去ってしまい、伊兵衛は落ち込みながら城を後にした。
伊兵衛が林を抜けて帰ろうとした時、刀を持った男達に取り囲まれる。伊兵衛の策略に嵌り、賭け試合に負けた道場の者達だった。伊兵衛が剣術指南番になるのが許せず、実力行使に出たのだ。だが、10人程の男を相手にしても、伊兵衛は勝利を収めた。
映画『雨あがる』の結末・ラスト(ネタバレ)
殿は奥方に晩酌をしてもらいながら、今日あった出来事を話した。そして、負けたのに優しくされたことに腹が立つと悔しそうにしていた。奥方は面白そうにその話を聞き、本当に強い人は善良人でも誰かの恨みを買うものだと話した。その意見に殿は納得する。伊兵衛がどこに行っても上手くいかないのは、きっとそこに原因があるのだ。
伊兵衛は気落ちしたまま部屋に戻り、酒を飲ましてくれと頼んだ。たよは何も聞かずお酒を晩酌する。そして、宿屋に居た人達が皆、出立したことを伝えた。伊兵衛達は貧しくも明るく優しかった客達に思いを馳せた。そして、伊兵衛は今日の御膳試合で3勝したことを伝えた。殿を池に落とした事で不安な部分もあったが、きっとあの殿なら雇ってくれるだろうという思いがあった。
次の日、天気は晴れだった。伊兵衛はそわそわした気持ちで過ごしていたが、家老達がやって来る。家老達は伊兵衛が賭け試合を行ったことを知り、指南番の話を白紙に戻したいと言ってきた。伊兵衛は理由を話そうとするが、家老は伊兵衛の話を聞こうともしなかった。そこに、たよがやって来て「何をしたのかではなく、何の為にしたのかが大事だ」と意見した。伊兵衛はたよを窘めた。たよはそれを受けて、伊兵衛に向けて話し出した。これからは好きな時に賭け試合を行い、人々を助けて欲しいと頭を下げた。家老は苦虫を噛み潰したような顔をして、家臣を連れて立ち去った。
伊兵衛達は町の人達の協力の元、無事に川を渡り旅へと出立した。その頃、殿は家臣からたよの話を聞き、伊兵衛達を連れ戻すことを決める。殿は自ら馬を走らせ、後を追いかけた。
映画『雨あがる』の感想・評価・レビュー
タイトルの通りに非常に晴れやかな気持ちのする映画。ただの人情話にとどまらずしっかりとした殺陣が味わえるのも魅力的。寺尾と宮崎が演じる夫婦のバランスがよく、古き良き日本人という空想の中にしか存在しない理想郷を思い浮かべる。黒沢明監督の晩年はこうした映画が作られる環境ではなかったため、こうした制作になったのだろうが、三船が演じる三沢伊兵衛はいったいどんなのだろうか。と惜しまれる。(男性 30代)
「侍」とは。「サムライブルー」に「侍ジャパン」、日本の代表的なものに対して付けられることが多いこの「侍」というネーミング。この作品では「侍」と呼ばれるものの苦悩や葛藤、そして生き様が描かれています。
刀をもって悪者を懲らしめるイメージのある「侍」。しかし、侍であるためには強く、優しくなくてはいけない。どんなに貧しくても広くて暖かい心を持たなければいけない。強いからこそ、弱い者への配慮を怠ってはならない。
「侍」のかっこよすぎる生き様に感動しました。本当に素晴らしい作品です。(女性 30代)
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