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映画『あん』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『あん』の概要:満開の桜の下「店長さん」は「トクエさん」と出会った。街のどら焼き屋で2人で最高の「あん」を作る。「桜がきれいだった。楽しかった。」人生はときどき残酷でときどき楽しい。人を大切にしたくなるあったかいお話。

映画『あん』の作品情報

あん

製作年:2015年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:河瀬直美
キャスト:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子 etc

映画『あん』の登場人物(キャスト)

店長さん(永瀬正敏)
どら焼き屋の店長さん。昔暴力事件を起こし、世話になった先代のお店を継ぐ。人と距離をとりながら生活するが、トクエさんと出会い次第に心を開いてゆく。
トクエさん(樹木希林)
どら焼き屋のアルバイト。若い頃ライ病を発症し、療養所に隔離されてしまう。あん作りの名人で彼女が作ったどら焼きは評判になる。
女子中学生(内田伽羅)
シングルマザーの家庭で育つ。高校進学をためらう多感な女子中学生。黄色いカナリアを飼っているが、大家さんにばれて家出する。
施設の友人(市原悦子)
トクエさんの親友。トクエサンの死後、カセットテープとあん作りの道具を店長さんに託す。

映画『あん』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『あん』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『あん』のあらすじ【起】

満開の桜の下、 ワケありの男(永瀬正敏)が、どら焼き屋をやっていた。
そこに、大きなサングラスをかけたおばあさん(樹木希林)が訪ねてくる。アルバイト募集の張り紙を見たらしい。
「あたしだめかしら。時給は300円でいいの」
男は、迷惑そうにおばあさんを追い払う。「またくるわね」と言い残しておばあさんは去った。そのお店には、できそこないのどらやきの皮をもらって帰る女子中学生(内田伽羅)がひとり。この子もワケありそうだ。

またおばあさんが訪ねてきた。彼女はトクエさんという。
「50年あんを作ってきたの。あんは気持ちよ。これちょっと食べてみて」
ビニール袋を押し付けて逃げるように去る。中には彼女が作ったつぶあんが入っていた。男は夜の居酒屋で女子中学生とまた会う。酔っぱらいながら興奮気味に話した。
「味も香りもぜんぜんと違う。びっくりするほどおいしいんだよ!」

桜の花が散って、ひさしぶりにトクエさんが訪ねてきた。
「もしよろしければ、手伝ってくれませんか?」
彼女はなぜか、涙を流した。
「どら焼きはあんが命でしょ?お天道様が顔を出す前に仕込みをはじめます。」
そんなこんなで2人のあん作りはスタートした。

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映画『あん』のあらすじ【承】

「豆の渋みが残るから。」
「ゆっくりね」
「湯気の香りが変わってきた」
「おもてなしだから」
「せっかく来てくれたんだから、畑から」
「いきなり煮たら失礼でしょ」
全く違う2人が力を合わせてあんを作る。なかなか息が合っている。独特な調理法で作ったどら焼きは、無事完成した。2人でどら焼きを食べる。トクエさんは、男のことを「店長さん」と呼んだ。
「ぼく、どらやきあんまり好きじゃないんです。甘党じゃないんですよ」
驚くトクエさん。
「じゃあなんで店長さんは、どら焼き屋をやっているの?」
意味深に微笑む店長さん。2人で作ったどら焼きは近所でも評判になっていった。

女子中学生は黄色いカナリアを飼っていた。シングルマザーの母親のもとで暮らす彼女。恋人と電話をする母親に反発を覚えていた。

ある日開店すると驚くことに、行列ができていた。トクエさんのあんが評判になり、近所の人が詰めかけたのだ。2人の顔に笑顔が浮かんだ。

映画『あん』のあらすじ【転】

ある日、オーナーの奥さんが突然訪ねてきた。トクエさんのことで話があるという。
「知り合いが言うには「ライ」じゃないかって。」
トクエさんの住所はライ病患者を隔離している療養所だった。ライ病とは、別名ハンセン病ともいい、一生隔離される病。近所の評判を気にして、トクエさんを辞めさせろと詰め寄る。
「少し、時間をください」
男はうつむきながら、そう言った。

いつものようにあんを作るトクエさん。そんな彼女を男は優しい目で見つめた。
「トクエさん、接客もしてください。自由にやっちゃってください」
彼の決心は固かった。
「指どうされたんですか?」
なにげなく、女子中学生が質問してしまう。男の表情が強ばる。
「これねー、若い頃病気して、指が曲がったままになっちゃったの。」
その場ではなんとかなったものの、彼女は図書館でライ病について知ってしまう。

どら焼き屋は、お客さんがぱったり来なくなってしまった。途方に暮れる2人。彼女の噂が近所に広まったからだ。店を去るトクエさんを何も言わず見送った。

ひとりでお店に立っているとトクエさんから手紙が届いた。
「あんをたいているときの私は、いつも小豆の言葉に耳をかたむけていました。ひいらぎが店長さんに声をかけろと言うんです。迷惑かけてごめんなさい。」

映画『あん』の結末・ラスト(ネタバレ)

家出した女子中学生が、カナリアをかかえて訪ねてきた。彼女は、昔、トクエさんにカナリアを譲る約束をしていたのだ。
「店長さん、トクエさんに会いに行きませんか?」
2人はバスに乗った。

そこは静かで木が生い茂っていた。鳥の声がする。歩いて行くとそこには楽しそうに談笑する患者の姿があった。
「綺麗な黄色ね」
久しぶりに会ったトクエさんは少し元気がなさそうだ。彼女は施設に来たときのことを語り始めた。遠くを見ながら、楽しそうに、悲しそうに。
「店長さん。楽しかったです。」
涙を流す店長さん。
「桜がきれいだった、楽しかった。」

店長さんはトクエさんに、手紙の返事を書いた。
「僕は、トクエさんとは違う理由で、社会に出られなかった時期があります。酒場で喧嘩をして、相手に重い障害を負わせてしまったのです。」
でもトクエさんは、二度と帰っては来なかった。3日前に、トクエさんは亡くなっていた。

トクエさんは施設の友人(市原悦子)にカセットテープとあん作りの道具をたくしていた。カセットテープがトクエさんの代わりにしゃべる。
「カナリアを早くに放してしまいました。ここから出してと言うんです。ごめんなさい。店長さんは私と同じ目をしていました。私に子供がいたらきっと店長さんぐらいだったでしょうね。」
トクエさんが眠る墓には、ソメイヨシノが植えられていた。春になったら満開の桜が咲くだろう。

映画『あん』の感想・評価・レビュー

人間の冷たさと優しさ、強さと弱さを感じることができる物語。樹木希林さんの自然な演技が素敵だった。トクエさんが他界してしまったのが悲しいというより寂しくて、また会いたいなと思うような温かな人柄だった。無知、無理解というのは人を差別するきっかけになるため、恐ろしいなと思った。自分も含め、人間は理解する努力をやめてはいけないと改めて感じた。後悔を抱える店長さんの未来が、少しでも明るければいいなと思う。(女性 30代)


とても素朴で温かい作品。樹木希林さんの独特な演技が日常の素朴さをより感じさせる。「あん」になるまでの小豆の旅のように、人もまた、出会いや時間の費やし方によって「人」としての味が変わっていく。店長である千太郎さんは徳江さんと出会い、また徳江さんは千太郎さんと出会い、お互いが出会わなければ生まれなかったであろう日常がそこにできたように。
誰かと出会うことで自分の中に新しい何かが生まれる。自分に何もなくても、出会い、そこで生まれる少しの変化がそれだけで素晴らしく、それがあるから人生は面白いのだと感じさせる作品であった。(女性 30代)


過去に問題を起こし、心を閉ざした主人公がどら焼き屋さんの店主となる。そこで働きだしたおばあちゃんのトクエさんがあんを丁寧に愛情をこめて作る描写にとても癒された。トクエさんを樹木希林が演じているが、自然で素朴な演技で彼女の出演作品は大好きだ。この映画でもその才能と魅力が溢れている。どら焼き屋さんに足を運ぶ中学生の女の子を、実の孫である内田伽羅が演じていて2人のやり取りにも注目だった。普段、考える機会の少ない社会問題を、映像作品やエンターテインメントを通して社会に目を向けてもらうことはとても重要であり、映画は学びだと感じさせてくれる作品のひとつ。(女性 30代)


こういう作品って樹木希林が出ているだけで、本当に深みが増して、温かくなりますよね。そして温かいのに悲しくて、大事にしなければいけないはずの「人」。その人こそが、一番残酷だということを思い知らされました。
とにかく目がパンパンに腫れるほど泣きました。樹木希林演じる徳江さん。もう徳江さんなんです。彼女が発するセリフの一つ一つが胸に響きすぎて、涙で見えなくなるほど泣きました。
軽い気持ちで言った誰かのその一言が、人生を狂わせ、終わらせることになるかもしれない。しかし、誰かが言ってくれたその一言が、人生を救うかもしれない。そんな「人」の繋がりを感じる作品でした。(女性 30代)


孤独だった店長とトクエさんの出会い、そこから生まれる温かくささやかな日常と変化を丁寧に描いた作品。そんな彼らを追い詰める人々の無神経さにも悪意はない。だからこそリアルで残酷で、観ていて苦しくなる。そして言うまでもないが、樹木希林さんの演技はずば抜けて素晴らしい。コロナの流行で大切なことを忘れてしまいがちな今、このタイミングで観てよかったと思える作品だった。(女性 20代)

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