映画『エンジェル、見えない恋人』の概要:生まれながらにして姿が見えず透明な少年は、精神病院に入院中の母とたった2人で生きてきた。だがある日、彼の存在を唯一感じることのできる少女と出会う。2人は互いに愛情を抱くようになるが、少女が目の手術を受けることになり…。
映画『エンジェル、見えない恋人』の作品情報
上映時間:79分
ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー
監督:ハリー・クレフェン
キャスト:フルール・ジェフリエ、エリナ・レーヴェンソン、マヤ・ドリー、ハンナ・ブードロー etc
映画『エンジェル、見えない恋人』の登場人物(キャスト)
- マドレーヌ(幼少期:ハンナ・ブードロー / 10代:マヤ・ドリー / 大人:フルール・シェフリエ)
- 生まれながらに盲目で見えない少年エンジェルと愛を育むが、10代になった頃、目の手術を受けることになる。美しい赤毛の女の子で、見えるようになったらエンジェルと再会したいと強く思っている。透明なエンジェルの苦悩を理解し、一生を共に過ごす決意を固める。
- ルイーズ(エリナ・レーヴェンソン)
- エンジェルの母。姿を消すイリュージョンが得意だったマジシャンと恋人同士だったが、恋人がイリュージョン中に忽然と姿を消し、精神病院へ入院することになる。生まれながらに透明な子を人知れず出産して育てる。
映画『エンジェル、見えない恋人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『エンジェル、見えない恋人』のあらすじ【起】
姿を消すイリュージョンが得意だったマジシャンがショーの最中、イリュージョンにて姿を消し、それきり行方不明になってしまった。恋人だったルイーズは彼が行方不明になった後に妊娠していることを知り、不安を抱えながらも出産したが、なんと生まれた子供は透明だった。重さも存在も感触も確かにあり、声も聞こえる。ルイーズは姿の見えない息子エンジェルをたった1人で育てることにした。
まともな機関では教育できないため、ルイーズが教師となって言葉を教え必要な教育を施す。母と息子は外部との接触を一切、絶ちたった2人だけの生活を数年間、過ごした。
エンジェルが5歳になった頃、隣の屋敷に同じ年頃の女の子がいることを知ったが、母は周囲の人々がエンジェルを見るととても驚き、異様だと言って阻害するだろうと話し、人と関わることを許さなかった。
だが、隣家の屋敷に住む女の子も隣の建物を気にしている様子。エンジェルは住まいから出て初めて外へ出ることにした。その住まいとは、精神病院。ルイーズは妄想上で子育てをしているとして、病院へ入れられてしまったのである。だが、エンジェルは実在している。彼は隣家の女の子の元へ向かった。
女の子、マドレーヌは盲目であったため、エンジェルの気配を察することができる。2人は言葉を交わし友達になることにした。看護師と共に部屋へと戻ると母は自分がいなくなったら、息子はどうなるのかと不安を抱いているようだった。
映画『エンジェル、見えない恋人』のあらすじ【承】
翌日もマドレーヌの元へ向かったエンジェル。彼女と接することで自分の存在に疑問を抱き始める。普通の人は目に見えない彼には決して気付かない。だが、マドレーヌだけは気配と匂いで彼のことを見つけ出すことができる。少女と少年はそれからも逢瀬を続けた。
数年が立ち、10代へと突入した2人はやがて互いに意識し始め、深い愛情を抱くようになる。マドレーヌは赤毛で美しい少女へと成長していた。対して、ルイーズは次第に塞ぎ込むようになり、エンジェルのことも判別が難しくなりつつあった。
そんなある日、マドレーヌが目の手術を受けることになる。手術を受ければ視力が戻る確率が高いらしく、彼女はこれでエンジェルの姿を見ることができると言う。入院に数カ月を要するため、エンジェルとマドレーヌは泣く泣く別れた。
だが、エンジェルは視力が戻った彼女は、きっと自分には気が付かないだろうと分かっている。故に、彼にとってはマドレーヌとの別れは、永久の別れだ。数日は泣いて暮らした。
数日置きにマドレーヌから病院に手紙が届く。手術は順調に終わったらしいが、問題が発生したらしくもう少し入院生活が長引くらしい。とにかく、エンジェルと会えないことが酷く寂しいと書かれていた。
数カ月が経過すると、ルイーズの容態が悪化。彼女は熱を出した夜、息子へと自分が所持する湖畔の小屋に葬って欲しいと言葉を残し、翌朝に息を引き取った。少年は泣きながら施設を出て、列車へと飛び乗る。母に言われた通り、例の小屋を訪れた。
映画『エンジェル、見えない恋人』のあらすじ【転】
その後はマドレーヌの家へ侵入。数週間、数カ月を過ごし、やがて数年が経過。そうして、ようやくマドレーヌが戻って来た。大人になった彼女はとても美しい女性となり、エンジェルはしばらくの間、声もかけずに彼女の傍を離れずに過ごす。いつ気付いてくれるのかをずっと待った。
ところが、彼女はまるでエンジェルに気付かず、ルイーズの墓を見つけて愕然とする。彼女はそこにエンジェル宛ての手紙を置いて行く。手紙を見るとマドレーヌもエンジェルを探しているようだった。
それからもエンジェルは彼女の傍を離れずにいたが、気配を察する瞬間はあるものの気付いてくれそうにない。そこで、彼は手紙の返事を書くことにした。目を閉じて待っていて欲しいと。すると、彼女は言う通りにしてくれる。エンジェルはようやく彼女との時を過ごすことができた。そうして、目隠しをしたままのマドレーヌと肌を合わせる。
エンジェルはその後、目が見えるようになった時のことをマドレーヌから聞いた。彼女が目隠しをし続けている間は、逢瀬を続けられる。それからも2人は濃密な時を過ごし、エンジェルは母との思い出深い例の小屋へとマドレーヌを連れて行くことにした。
映画『エンジェル、見えない恋人』の結末・ラスト(ネタバレ)
湖畔に立つ小さな小屋の傍には、湖へと向けて小さな桟橋がある。彼女にその景色を見せ、その日の夜に自分の正体を明かすことにした。
そうして夜、明かりは付けずベッドに座ってシーツを被ったエンジェル。目前にやって来た彼女に自分が透明でも愛してくれるかを確認。マドレーヌはどんな姿でも愛すると言ってくれたが、実際にその姿を目にすると息を飲んで驚愕。
彼女はたちまち怯えてしまい、涙に暮れる。その様子を目にしたエンジェルも深い悲しみに襲われ涙を零した。
翌朝、泣き疲れ床で寝てしまったマドレーヌに毛布をかける。エンジェルが彼女に寄り添うと、目を閉じれば姿が見える。あなたが望むなら目を閉じたままでいると言ってくれる。だが、エンジェルは彼女に置き手紙を残して、屋敷から去ってしまうのだった。
母ルイーズ以外にエンジェルの存在を肯定してくれたのは、マドレーヌだけだった。けれども、目が見えるようになると透明なエンジェルの姿は彼女にすら見えなくなってしまう。彼は深い悲しみを抱き、自分以外の人と幸せになって欲しいと言う。マドレーヌは傷心を抱え屋敷から去る決意を固めるが、ふと目を閉じて何かを察したかのようにはっとする。
彼女はエンジェルに連れて行ってもらった小屋へ匂いや音、手触りの記憶を頼りに辿り着く。度々、目を閉じては彼の気配を探す。声をかけても出て来てはくれないだろう。マドレーヌはひたすら目を閉じて彼を探し出した。予想通り、湖畔にいたエンジェルは彼女から逃れるために湖へ。マドレーヌも慌てて湖へと飛び込んだ。
そして、泳げない彼を助けて岸へと上がる。泳ぎ方を知らないエンジェルは泳ぐことができなかった。マドレーヌのお陰でどうにか息を吹き返した彼は、彼女から思いもよらない言葉をもらうことに。マドレーヌは今後もずっと、エンジェルと暮らすと言うのだ。透明でもそのままの姿を愛すると。エンジェルはその後、両足首にアンクレットを付けることで存在を明らかにし、化粧で姿を現す手段を考える。マドレーヌは彼の子を妊娠。産まれた子供は幸い透明ではなかった。
その後、マドレーヌはエンジェルと共にマジシャンとして活躍し、夫に泳ぎ方を教え幸せな生活を送るのであった。
映画『エンジェル、見えない恋人』の感想・評価・レビュー
本作の監督は独特な感性を持ったユニークな作風で知られるジャコ・ヴァン・ドルマル。設定は特殊でありながらも、心に響く作品を世に送り出している監督でもある。産まれた時から透明な少年が、盲目の少女と出会い愛を育んでいくというストーリーだ。
序盤は精神病院に入院中の母親が妄想した子なのかと思うような演出がされているが、透明な少年視点からストーリーが展開することで際立った存在感を見せている。感触・息遣い・声や足音などの演出が素晴らしい。中盤以降、大人になった少女に見つけて欲しいと付け回すのだが、まるでストーカーである。目が見えるようなると、途端に存在が消えてしまう透明な彼の一途な愛に切なくなる。(MIHOシネマ編集部)
「姿の見えない少年」と「盲目の少女」のラブストーリー。とても純粋で優しくて、可愛らしいピュアな物語をイメージして鑑賞しましたが、想像とはかなり違う展開でした。
生まれつき姿が見えない「透明人間」である少年は人と距離を置き、隠れるようにして生活していましたが、ある日彼の存在を「感じる」ことが出来る盲目の少女が現れます。
「見えない」ことで上手くいっていた二人の関係が「見える」ようになると、どうなるのか…。不思議な世界観の作品でした。(女性 30代)
前半と後半で異なる系統のラブストーリーになります。生まれつき透明な主人公と、盲目な少女マドレーヌ。目の見えないマドレーヌだからこそ、主人公の存在を強く感じることができる。奇跡的なカップリングに観ていて心が温まります。マドレーヌの視力が戻ってからは一変。視えたことで見えなくなる彼の姿。彼女のショックも、主人公のショックも痛いほど共感できました。
透明な主人公の面影を映す演出や、時間の飛ばし方がオシャレだと思いました。時折見せるマドレーヌの並外れた感覚の凄さに、若干の恐怖も感じます。独特な雰囲気の作品です。(男性 20代)
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