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映画『暗殺の森』あらすじネタバレ結末と感想

この記事では、映画『暗殺の森』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『暗殺の森』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『暗殺の森』の結末までのストーリー
  • 『暗殺の森』を見た感想・レビュー
  • 『暗殺の森』を見た人におすすめの映画5選

映画『暗殺の森』 作品情報

暗殺の森

  • 製作年:1970年
  • 上映時間:115分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
  • キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ、ピエール・クレマンティ etc

映画『暗殺の森』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★☆☆

[miho21]

映画『暗殺の森』 あらすじネタバレ(起承転結)

映画『暗殺の森』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『暗殺の森』 あらすじ【起・承】

1938年 イタリア。哲学講師のマルチェロ・クレリチ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は全盲でファシズムに傾倒している友人のイタロに自分も組織に入れるよう幹部を紹介してくれと頼む。

マルチェロが組織へ提出した計画は、パリにいる反ファシズム主義者のクアドリ教授に近づき彼の行動や仲間の居場所を探るというものだった。クアドリはマルチェロの大学時代の恩師であり、もうすぐ自分はジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚する予定なので新婚旅行を装って彼を訪ねれば怪しまれないという細かい計算までしていた。大臣もこの計画を気に入り、マルチェロはすぐに組織の一員として迎えてもらえる。

マルチェロがファシストになったのも、中流家庭育ちで俗物的なジュリアと結婚するのも“普通になりたいから”という理由からだった。マルチェロには13歳の時、男色家の憲兵リーノに弄ばれ彼を射殺してしまったという過去のトラウマがあった。さらに彼の父親は精神病院に入院しており、母親は若い情夫をそばに置く薬物中毒者だった。そんな普通ではない自分が組織の活動をすれば社会から赦されるのではないかと考えたのだ。

彼はまず組織の暗殺者マンガニェロ(ガストン・モスチン)に母の情夫を始末させ、ジュリアと新婚旅行へ旅立つ。道中でジュリアは自分が15歳の時から両親の友人で60歳の博士と6年間も性的関係があったと告白するが、マルチェロは驚かない。

途中のヴェンティミリアで、マルチェロは組織の幹部から計画が変更になりクアドリを抹殺することになったと告げられ、銃を渡される。

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映画『暗殺の森』 結末・ラスト(ネタバレ)

パリに着いたマルチェロはジュリアを連れクアドリの自宅を訪ねる。そこには若くて美しい夫人のアンナ(ドミニク・サンダ)がいた。マルチェロは一目でアンナに惹かれる。

しかしアンナはマルチェロを警戒し、彼に冷たく接する。マルチェロはクアドリに“先生が大学を去ったから私はファシストになった”と言うが、クアドリは“君は本物のファシストとは思えない”と答える。クアドリはマルチェロが自分の主義や思想を持っていないことを見抜いていた。

アンナはマルチェロを拒絶しながらも彼に惹かれていく。マルチェロは全てを捨てアンナと逃げたいとまで思うが、マンガニェロが常に彼の行動を見張っていた。クアドリは翌朝からサヴォアの別荘へ行くことになっておりマルチェロ夫婦も誘われる。クアドリだけ先に出発させることをアンナに約束させ、自分たちは後から行く予定にする。

4人はその夜食事を共にし、ダンスホールで踊る。マンガニェロには翌朝クアドリがサヴォアへ旅立つことを伝え、その時に彼だけ暗殺するよう指示する。

翌朝、アンナと犬も車に乗ってクアドリと出かけたと報告を受けたマルチェロは、慌ててマンガニェロと後を追いかける。このままではアンナも殺されてしまうからだ。

森の中の山道でクアドリ夫妻の車は止められ、車外に出たクアドリは複数の男にナイフで刺し殺される。マルチェロたちは後方の車からその様子を見ていた。アンナはマルチェロに助けを求めるが、マルチェロは応じない。その後彼女は森の中へ逃げ込み銃殺される。マンガニェロは土壇場でアンナを見捨てた卑怯なマルチェロに失望する。

数年後、マルチェロには幼い子供がいた。ジュリアとの結婚生活は続いていたが、ムッソリーニ政権は崩壊しファシストは糾弾される立場になっていた。そこへ久しぶりにイタロから連絡がある。

イタロと歩いていた路地裏でマルチェロはあのリーノが自分の時と同じように浮浪者の少年を口説いているのを見かける。リーノが生きていたことに衝撃を受けたマルチェロは、リーノとイタロを指差し“こいつらはファシストだ!”と叫び始める。驚いたリーノは逃げ出し、イタロは群衆にのまれていく。1人になったマルチェロは裸の少年のそばに座り彼をじっと見つめる。

映画『暗殺の森』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『暗殺の森』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

マルチェロという主人公が象徴するもの

マルチェロは強い主義や思想があってファシストとなったわけではない。哲学を専攻し、いかにも自分の思想があるように見えるが、実は彼にそのようなものはない。“長いものには巻かれろ”の精神で、力のある者には従った方が得策だと考えているだけだ。

さらにマルチェロは潜在的な同性愛者であり自分を人殺しだと思い込んでいる。父は長年精神病院に入院しており、母は若い情夫を手放さない麻薬中毒者だ。自分の性癖と過去のトラウマや両親の異常性を彼は嫌悪している。そして彼は“普通になりたい”と言うのだが、本当はとても普通なのだ。むしろその自分の中身のなさを隠すためファシストになり、自分の正体を見抜けないようなジュリアと結婚したのではないだろうか。

群衆に紛れていると人は安心する。自分は間違えていないと思い込める。そして人よりいい思いもしたい。地位や名誉やお金も欲しい。そのためなら人を裏切ることも利用することも平気だ。たとえ卑怯者と呼ばれても構わない。それがマルチェロなのだ。

そういうマルチェロの正体を暴くような出来事やシーンが本作にはいくつかある。そして彼がアンナや友人のイタロを冷酷に見捨てたことへの深い苦悩は描かれない。そのマルチェロの姿を通して、ファシズムという極端で残酷な思想にさえ多くの大衆は深く考えずに同調し、その間違いが分かった途端、戸惑いなく次の思想に乗り換えたという現実を描き出している。非情で残酷なのは独裁者だけではない。

映像美とキャスティング

物語の内容は暗くて重いが、映像の美しさにはベルナルド・ベルトリッチ監督の高いセンスが如何なく発揮されている。様々なシーンで不思議な空間が作り上げられ、視覚に訴えてくる映像は強烈な印象を残す。

またステファニア・サンドレッリとドミニク・サンダの両女優も非常に魅力的だ。無知で無邪気なジュリアを演じるステファニア・サンドレッリはとても可愛いし、ドミニク・サンダはアンナの我の強さを魅惑的に演じている。マルチェロを演じたジャン=ルイ・トランティニャンもこの主人公の雰囲気にぴったりだった。

そしてなかなか人間味のある暗殺者マンガニェロを演じたのはガストン・モスチンだ。彼はあの「ゴッドファーザー パート2」で若き日のビトー・コルレオーネに暗殺されるマフィアのファヌッチを熱演しコッポラ監督に絶賛されたイタリアの俳優で、本作でも味のある演技を見せてくれる。


マルチェロが思う、自分がなりたい「普通」とは何なのだろうと考えさせられる作品でした。全体的にキャラクターの感情や気持ちが詳しく描かれず、とても感じ取りづらかったのですがマルチェロは人と違う自分を演じているだけで、実は至って普通の人なのでは無いかなと感じました。家庭環境や不運な境遇のせいで自分の人格は普通では無くなってしまったと訴えるように描かれていましたが、それを理解し「普通」になりたいと思っている時点でマルチェロは普通だと思います。逆に、彼の周りの人間の方が「普通じゃない」感じがして、普通とは…と考えてしまいました。(女性 30代)


本作は、ムッソリーニを中心としたファシスト政権の1920~40年代前半のイタリアを舞台に、ファシズムに影響されていく男クレリチを描いたイタリア・フランス・西ドイツの合作ヒューマンドラマ作品。
ファシズム体制の重厚な内容や臨場感溢れるカメラワーク、画面の中の配置や構図など細かいところまで計算されていて、物凄い驚異を感じた。
この主人公もまた同性愛者であり、男性による性被害者であったことを察すると、それが彼をファシストへと引き込んだのではないかと考えさせられた。(女性 20代)


イタリア・ファシズム期の不穏な空気を、主人公マルチェロの精神状態と重ね合わせることで見事に描いた傑作。彼が「普通」であろうとするがゆえに、むしろ異常な行動に走っていく皮肉が非常に印象的でした。最愛の教師を密告し、その妻をも見殺しにするシーンでは、言い訳の効かない冷たさを感じました。映像美と精神の歪みの融合が芸術的です。(30代 男性)


ベルナルド・ベルトルッチ監督の映像演出が神がかっています。斜光の使い方やシンメトリーな構図が主人公の歪んだ内面を可視化していて、ただの政治サスペンスに留まらない深さがある作品です。マルチェロが自分のトラウマや恐怖に囚われ、ファシズムに“逃げた”様は、今の時代にも通じる警鐘として響きました。(40代 女性)


一見スタイリッシュなスパイ映画のように見えて、実は人間の本質を問い詰める深い哲学映画。マルチェロの「平凡であること」への執着が、ここまで危険なものになるとは。結局彼はどこにも属せず、最後は社会からも自我からも切り離された孤独な存在になってしまう。観るほどに恐ろしく、そして美しい映画です。(20代 男性)


一度では理解しきれない映画かもしれません。でも、ラストのマルチェロが沈黙の中にいるシーンは、静かな絶望に満ちていて心を打たれました。彼が欲していた「普通」は、他人の期待や恐怖から生まれた幻影だった。社会に適応するふりをしながら、最も逸脱してしまった男の物語として、非常に切なかったです。(50代 女性)


映像的な美しさがとにかく際立っていて、ストーリーよりも視覚体験として記憶に残る作品。森のシーン、車内の陰影、すべてが完璧に構図を計算されている。マルチェロという男の“自己否定による順応”の生き様は、普遍的なテーマでありながらとても独特で、なぜか共感もしてしまうのが怖かった。(30代 男性)


フェミニズム的視点で見ると、ジアナの描かれ方が興味深かったです。彼女の自由さや性的魅力が、マルチェロの保守的で抑圧された価値観を逆撫でする。だからこそ彼は彼女をも見殺しにできたのでは。美しさと暴力、抑圧と解放が複雑に絡み合った作品で、ただの政治映画ではない多層的な深みを感じました。(40代 女性)


原作と比べると、映画の方がより詩的で抽象的に仕上がっていて好みでした。自分の過去の“異常さ”を帳消しにするために、極端に「普通」に執着する男の姿は、ファシズムの大衆心理の縮図として非常に示唆に富んでいます。芸術性と社会批評がここまで融合している映画は、なかなかありません。(60代 男性)


大学の映画研究でこの作品を扱いましたが、観るたびに新しい発見がある映画です。特に、視線と影の使い方が秀逸で、マルチェロの精神が常に監視され、同時に他人を監視する構造にあることを映像が語っている。人間が体制に順応しようとすることの危うさと、そこに潜む暴力性が鋭く描かれています。(20代 女性)

映画『暗殺の森』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『暗殺の森』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

愛の嵐(La Caduta degli Dei)

この映画を一言で表すと?

ファシズムと退廃を背負った一族の崩壊を描く、耽美と狂気の歴史絵巻。

どんな話?

ナチス台頭期のドイツを舞台に、巨大な鉄鋼財閥一家が権力と欲望の渦に飲まれて崩壊していく。親族間の裏切り、変質的な愛、体制への迎合が織りなす濃密な人間ドラマ。ヴィスコンティ監督による壮絶な問題作。

ここがおすすめ!

『暗殺の森』と同様に、政治と個人心理の交錯を通じて全体主義の恐ろしさを暴いています。映像の美しさと堕落の象徴的演出は衝撃的で、重厚な音楽と共に観る者の心をつかんで離しません。

愛と哀しみのボレロ(Les Uns et les Autres)

この映画を一言で表すと?

戦争と芸術、そして家族の記憶を辿る、時代を超えた叙情詩。

どんな話?

4つの家族が、第二次世界大戦を挟みながら異なる国・世代で生きていく姿を描く壮大な人間群像劇。戦争の記憶と芸術への情熱が交錯し、ボレロの旋律とともに時代を繋いでいく。

ここがおすすめ!

個人の選択と国家の歴史がどう交差するのかを、『暗殺の森』とは違うアプローチで見せてくれます。ドラマチックな演出と音楽が心を打ち、静かな感動とともに人間の尊厳を問い直す作品です。

羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs)

この映画を一言で表すと?

美と狂気、知性と本能の境界線を描く心理スリラーの金字塔。

どんな話?

若きFBI訓練生クラリスが、連続殺人犯を追うため、収監中の天才精神科医で猟奇殺人鬼レクター博士と対峙する。知性と恐怖がせめぎ合う究極の対話劇が展開する名作。

ここがおすすめ!

『暗殺の森』のマルチェロ同様、心の奥底にある「異常性」を掘り下げる心理劇として秀逸。人間の内面の闇と社会の異常性が交錯する構造が近く、スリリングでありながらも深い余韻が残ります。

戦場のメリークリスマス(Merry Christmas, Mr. Lawrence)

この映画を一言で表すと?

抑圧された男たちの中に芽生える、名もなき感情の軌跡。

どんな話?

第二次世界大戦中の日本軍捕虜収容所を舞台に、イギリス将校と日本軍将校の対立と交流を描く。敵味方を超えた理解と矛盾が、緊張と静けさのなかに静かに浮かび上がる。

ここがおすすめ!

権威、服従、アイデンティティというテーマを『暗殺の森』と同じく掘り下げる一作。映像詩的で静謐な語り口、坂本龍一とデヴィッド・ボウイの共演も注目。観る者に深い思索を促します。

Z(ゼット)

この映画を一言で表すと?

正義が国家に潰される瞬間を描いた、怒りと諦念のポリティカル・サスペンス。

どんな話?

ギリシャ軍事政権下をモデルに、政治家暗殺とその隠蔽を描いた実録風のサスペンス。真実を追う検事と、それを阻もうとする国家権力の不気味な構造が緻密に描かれる。

ここがおすすめ!

国家権力に従う“順応者”の危うさを描いた『暗殺の森』と見事に重なるテーマを持つ作品。力強いメッセージ性とリアリズムが光り、理不尽と闘うことの意味を鋭く問いかけてくる傑作です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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