映画『ある優しき殺人者の記録』の概要:2014年に製作された白石晃士監督のワンカットモキュメンタリームービー。オール韓国ロケの作品で、監督自身も出演している。殺人鬼と化した幼馴染の独占取材をする女性記者と、殺人鬼の意外な目的を描いた。
映画『ある優しき殺人者の記録』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:86分
- ジャンル:サスペンス
- 監督:白石晃士
- キャスト:ヨン・ジェウク、キム・コッピ、葵つかさ、米村亮太朗 etc
映画『ある優しき殺人者の記録』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ある優しき殺人者の記録』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ある優しき殺人者の記録』のあらすじを紹介します。
韓国人ジャーナリスト、キム・ソヨンの元に、障害者施設から脱走後、18人を殺害した容疑で指名手配されているパク・サンジュンから連絡が入った。
幼馴染であるソヨンに独占取材させるというのだが、日本人カメラマンを連れて来る事、そのカメラマンとソヨンの2人だけで指定の場所に来る事、そして警察には連絡しない事が条件だった。
そしてソヨンと日本人カメラマンの田代は、指定された廃アパートの一室へとやってきた。
田代にカメラを回し続ける事を約束させたサンジュンはソヨンの取材を受け始め、18人ではなく25人も殺害したと証言する。
幼い頃に幼馴染ユンジンの事故の瞬間を撮影してしまったサンジュンは、やがて“神の声”を聞くようになり、その通りにすればユンジンは生き返ると信じ込んでいた。
“声”に導かれるまま、27歳になった時に施設から脱走し、殺人を犯してきたと語る。
ソヨンと田代を呼んだのは、最後の2人の犠牲者が日本人なので言葉が通じる人物が必要だったため、そして殺めた27人とユンジンが生き返ることを証明するためだった。
“神の声”は偶然の産物だと告げるソヨンを退け、部屋にやってきた新婚旅行中の日本人カップルに襲い掛かるサンジュン。
最後の2人の条件だという首元のアザがカップルには無く、ソヨンにあるとわかり戸惑うサンジュンだったが、さらに彼をパニックに陥れる真実が発覚する。
映画『ある優しき殺人者の記録』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ある優しき殺人者の記録』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
密室劇のモキュメンタリーワンカット(風)ムービーという新しい作風
アカデミー賞を受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と同様に、カメラの長回しを使ったワンカットムービー。
白石晃士監督の代名詞ともいえるモキュメンタリー映画で本人がカメラマン役で出演、その名前が同監督のシリーズ作品「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズのカメラマン田代と同じという設定もあり、「コワすぎ!」シリーズを見ていれば楽しみ方が違ってくる作品でもある。
また、登場する謎の物体やストーリー展開が同監督の「オカルト」、「コワすぎ!」シリーズに通じるものがあり、この作品だけでも個性的な設定なのだが、他の作品を知っていれば“霊体ミミズ”といった小ネタの面白さがじわじわと来る作品だ。
編集箇所はわかりやすく、ワンカット風ムービーとした方が正しい印象が強い。
また、モキュメンタリー作品でもあるのでカメラのブレや動きが激しく、とても酔いやすい。
残酷描写は見る側を選ぶ
密室劇で飽きやすいように思えるが、韓国語と日本語が飛び交い、キム・ソヨン役のキム・コッピが韓国語と日本語の2ヶ国語を話す通訳のような立場にいるため、テンポよく進んで飽きにくい。
しかし残酷描写やグロテスクなシーンがあり、日本人カップルの言葉使いがあまりにも粗暴なため、見る側を選ぶ作品でもある。
クライマックスに目が放せないストーリー
“神の声”に従えば幼馴染が生き返ると、嘘のような話を突然語り出すヨン・ジェウク演じるパク・サンジュンの雰囲気には鳥肌が立つ。
見る側が病気だと確信した頃に、携帯電話の音声から謎の声が聞こえたり、予言通りに首にアザがある人間が2人登場するという展開には驚かされる。
最後にカメラが捉えるパク・サンジュン、キム・ソヨン、そして2人の幼馴染だというユンジンの姿は衝撃だ。
白石監督の作品ではお馴染となった、触手のような物体もクライマックスで登場する。
しかし25人以上殺めておきながら“仕方がない”で済ませ、ハッピーエンドで終わるという展開にはどこか納得しきれない。
妄想に取り憑かれた殺人鬼が幼馴染を生き返らせるために、次から次へと殺人を犯していくストーリーかと思いきや、神の声は本物だったり人間ではない謎の物体が登場したりと真面目にやっているのか奇を衒っているのか分からない不思議な作品でした。
モキュメンタリーと呼ばれる手法が使われているため殺人鬼の取材をするというリアルな設定ではありましたが、登場するキャラクターは個性的で理解するが難しかったです。
監督の作品が好きな方は楽しんで見られるのだと思いますが、初見の私はそこまで世界観に浸れず微妙な気持ちでした。(女性 30代)
映画『ある優しき殺人者の記録』 まとめ
近年、精力的に活動している白石晃士監督の、オール韓国ロケで製作された密室劇のモキュメンタリーワンカットムービー。
タイトルの通り、猟奇殺人鬼になった幼馴染のインタビューへ向かう記者と、そのインタビューの様子を収めた記録映像です。
精神を病んでしまったかのように思える幼馴染が、実は本当に不思議な力を感じていて、亡くなった幼馴染を蘇らせるために行動していたり。
暴力的な日本人カップルも、変わった性癖はあるものの、本物の“悪人”ではなくて生き残るための行動をしているだけだったり、人間味も漂う作品になっています。
ハッピーエンドには拍子抜けですが、「オカルト」や「コワすぎ!」のように異空間を使って時間を飛んだり、カメラマン田代の登場、そして白石監督お馴染の“霊体ミミズ”の出現には納得しちゃいました。
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