映画『ビッグ・フィッシュ』の概要:ダニエル・ウォレスの「ビッグ・フィッシュ 父と息子の物語」を原作に、空想と現実を行き交う不思議な世界と親子のつながりをティム・バートン監督が優しく描き出す。2003年公開のアメリカ映画。
映画『ビッグ・フィッシュ』 作品情報
- 製作年:2003年
- 上映時間:125分
- ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ、ラブストーリー
- 監督:ティム・バートン
- キャスト:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ、ジェシカ・ラング etc
映画『ビッグ・フィッシュ』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ビッグ・フィッシュ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ビッグ・フィッシュ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ビッグ・フィッシュ』 あらすじ【起・承】
妊娠中の妻とパリで暮らしているウィル・ブルーム(ビリー・クラダップ)は、アリゾナに住む父エドワード(アルバート・フィニー)の死期が近いと聞いて3年ぶりに実家へ帰る。母のサンドラ(ジェシカ・ラング)は久々に息子と会えて喜ぶ。
エドワードは作り話の得意な人気者だった。しかし、ウィルは成長するにつれ、同じホラ話ばかりする父にうんざりし、距離を置くようになる。病床でもエドワードは相変わらずで、ウィルを呆れさせる。そんなエドワードの物語とは、こんな風だった。
エドワードは子供の頃、魔女のガラスの目に映る自分の死に方を見た。その後、急に成長する謎の病気にかかり骨格が落ち着くまで3年間寝ていた。その時自分は大きな人間になるべきだと悟る。
元気になったエドワード(ユアン・マクガレー)は、あらゆることにチャレンジして町一番の大物になる。しかし彼が18歳の時に本物の巨人カールが現れ、町を荒らす。エドワードは町を救うためにカールを誘って旅に出る。
途中で一旦カールと別れ“スペクター(幻)”という美しい町にたどり着く。そこには詩人のノザー・ウィンズロウ(スティーブ・ブシェミ)や少女のジェニファーがいた。みんなはエドワードにいて欲しがったが、彼はいつか戻ると約束して町を出る。
カールと合流したエドワードはキャロウェイ団長の率いるサーカスへ行く。そこでサンドラに一目惚れする。エドワードはサンドラに再会するためサーカスで3年間ただ働きし、ようやく団長から彼女のことを教えてもらう。カールはサーカスの人気者となる。
エドワードはサンドラに熱烈なアプローチをして無事に結婚。しかし徴兵令状が来て戦地へ行く。一刻も早く帰るため、あらゆる危険な任務に就き、中国でシャム双生児の美人歌手と出会い、彼女たちとロシアやキューバを経由してアリゾナに戻ってくる。
映画『ビッグ・フィッシュ』 結末・ラスト(ネタバレ)
数年後、社交的な性格を活かして旅のセールスマンとなっていたエドワードはテキサスの銀行で詩人のノザー・ウィンズロウと再会する。ノザーは銀行強盗になっていたが、エドワードの話を聞いてウォール街で働くことにし、大金持ちになる。
ウィルが生まれた日。エドワードは子供の頃から探し求めていた伝説の魚“ビッグ・フィッシュ”を金の結婚指輪を餌にして捕まえる。ビッグ・フィッシュは指輪を返してくれ、エドワードはビッグ・フィッシュを川へ放してやる。
こんな話ばかり聞かされ“本当のことを話さないから父さんが分からない”というウィルに、エドワードは“俺は本物そのものだ”と答える。ウィルは留守の多かった父には愛人がいるのではないかとずっと疑ってきた。そして物置で見つけた書類を頼りに、スペクターのジェニファー・ヒル(ヘレナ・ボナム=カーター)という女性を訪ねる。
ジェニファーはウィルがエドワードの息子だとすぐにわかる。ストレートに“父とはそういう関係なのか”と聞くウィルに、ジェニファーはエドワードとの昔話を聞かせる。それは寂れてしまったスペクターの町とジェニファーの境遇を救ってくれたのはエドワードで、彼女はエドワードを愛していた。しかしエドワードは決してサンドラを裏切らず、彼女の愛は報われなかった。つまりエドワードにとってこの町や自分は空想の世界であり、ウィルたちのいる世界が現実なのだと教えてくれる。
ウィルが家に帰るとエドワードは発作を起こし病院に運ばれていた。夜中に意識を取り戻したエドワードはウィルに自分が死ぬ時の話をしてくれと頼む。その話だけは一度も聞いたことがなかったが、ウィルは自分の空想した父の最期を話して聞かせる。
朝になったら2人で病院を抜け出し川へ行く。川岸にはエドワードが出会ってきた全ての人がいて、皆がエドワードに笑顔で手を振っている。川には愛するサンドラがいる。ウィルがエドワードを川へ放すと彼はビッグ・フィッシュとなって泳いでいく。
“ビッグ・フィッシュが本当の父さんだった”というウィルにエドワードは“その通りだ”と答えて静かに目を閉じる。エドワードのお葬式には、大勢の人が集まり、その中にはカールや団長や双子、そしてジェニファーの姿もあった。
数年後、父親となったウィルは息子にエドワードの物語を語り継ぐ。物語の中でエドワードは永遠に生き続けていた。
映画『ビッグ・フィッシュ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ビッグ・フィッシュ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
境界線の見えない空想と現実
見終わった後、とても不思議な余韻が残る。それは結局どこまでが現実でどこからがエドワードの空想なのか、最後の最後まではっきりわからないからだ。
スペクターという町はてっきり空想の産物だと思っていたら実在していた。若い頃のエドワードが訪れたスペクターはまるで天国を思わせる。住民がみんな裸足で現実感のない幸福そうな町。それに巨人のカールやサーカスのキャロウェイ団長、それから双子の姉妹など、とても現実に存在するとは思えない人物たちが次々と登場する。当然こちらは全て空想だと思って見ている。しかし彼らはエドワードのお葬式に姿を見せる。しかもきちんと年老いている。“本当にいたんだ!”という驚きが最後にくるのだ。
ということは…エドワードの話は全てが空想なわけではなく、かなり事実も含まれていることになる。それがわかってから改めて物語をもう一度思い返してみると、空想と現実の見極めがつかなくて頭の中がごちゃごちゃになってくる。でもよく考えるとそんなものを見極めて何になるのかということに気づく。とても素敵な話だった。それでいいはずだ。
見たことがないもの(妖精やサンタクロースや魔女など)が絶対に存在しないなんて、誰も言い切ることはできないのだから。
語り継がれるビッグ・フィッシュ
たくさんの不思議な話を聞かせてくれる大好きな父が、自分が成長することでなんだか胡散臭く思えてくる。“そんなアホらしい話はいいから、もっとまともな現実味のある話をしようよ”と息子のウィルは父のエドワードに対してずっとイライラしているわけだ。
確かにエドワードは近所のおっちゃんだったらすごく楽しいだろうなと思える人物だ。しかし自分の父親となるとウィルのようにストレスを感じる人は多いだろう。親が変わっているというのは子供にとってなぜか恥ずかしいものだ。周囲の人が無責任に“おもしろいお父さんね”なんて言うので余計に腹が立つ。子供というのは本能的に親に“まとも”を求める。これはかなり現実味のある設定だなと感心した。
ウィルは最後に父の根底にある深い愛と願いを理解する。ウィルの作った父の最期の物語はとても素敵だった。ウィルには父がビッグ・フィッシュになりたがっていたことがちゃんと伝わっていた。ずっと大物になりたいと思い続けてきた父の願いを息子が叶えてあげたのだ。これほど最高の死に方はない。
ウィルの中で父の存在はこれからもっと大きくなり続ける。いつかウィルは“本当に父はビッグ・フィッシュだったのだ”となんの疑いもなく信じ込むようになるだろう。そして息子に“パパのパパはビッグ・フィッシュなんだよ”と自慢するようになるだろう。
ティム・バートン監督らしいファンタジックさとユーモア溢れるヒューマンドラマ。
自分の人生を奇想天外に語ってきた父と、真実を知りたがる息子。自分の死期が迫っていても、こんな死に方はしないとホラ話を続ける父。どこまで真実だったのか分からないけれど、父にとっては真実であり、信じたかったことなのだ。その意思が通じ合い、父のホラ話を息子が受け継いで語るシーンは胸が熱くなる。最初の話がラストに繋がっていく展開も良かった。(女性 30代)
予備知識なしでスタートすると、ティム・バートン監督の独特な世界に最初はついていけません。だんだん絵本のような世界に引き込まれて、最後には不思議な余韻を残す心温まる映画です。
親子愛も描かれていますが、結婚するまでの夫婦愛の方がインパクトが強いです。そのため、息子の印象はあれだけ嫌っていた父親と和解するラストまで薄いまま。
お花畑と川岸でみんなが集結しているシーンはポスターが欲しくなるくらい綺麗です。(女性 30代)
まだ子供の頃に見た時は正直よく分からなかったが、大人になるにつれて、見ていてすごく心に刺さる映画になっていった。父親の話の本当の意味を知った時、鳥肌が止まらなかったし涙が溢れた。主人公が父親の愛に気づくことができて、温かい気持ちになった。ティム・バートンの描く世界はファンタジーが強い印象だが、この作品は彼の描くファンタジーの世界と現実が上手く交わり、最後をしっかり現実に落とし込んできたのがとても好きだ。(女性 20代)
映画『ビッグ・フィッシュ』 まとめ
ティム・バートンの世界観が好きで画集も持っている。もちろん映画も見ている。この人の心の自由さと細かいこだわりにはいつもワクワクさせられる。
本作はファンタジーとリアリティーの境界線をぼやかしながら物語を展開していく、作り手としては非常に難しい作品だ。2つの世界にギャップがありすぎると流れが悪くてまとまりがなくなるし、かといって変化が無さすぎても分かりにくくなる。その自然なぼやかし方はさすがだった。いつの間にか、空想と現実の入り混じった不思議な物語に引き込まれていく。
ビッグ・フィッシュそのものの造形も好きだった。あの魚の話を映画にしてくれないかな…。できればパペット・アニメで。というわけで、個人的にティム・バートンは完全なるファンタジーの方が好きだが、これは良かった。何度か鑑賞したくなる作品だ。
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