映画『バースデー・ワンダーランド』の概要:誕生日の前日に突然、異世界の幸せ色のワンダーランドへ叔母と共に行くことになったアカネ。引っ込み思案の彼女は何事も消極的であったが、ワンダーランドを救う旅の中、様々な人々と出会い成長していく。
映画『バースデー・ワンダーランド』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ファンタジー、アドベンチャー、アニメ
監督:原恵一
キャスト:松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央 etc
映画『バースデー・ワンダーランド』の登場人物(キャスト)
- アカネ(松岡茉優)
- 小学生の少女。自信がないために軽くいじめられている同級生を助けられずにいる。引っ込み事案で、何事にも消極的。明け透けなチィのことが苦手。
- チィ(杏)
- アカネの叔母。非常にマイペースで自由奔放。思ったことをそのまま口にしてしまう、明け透けな性格。小さな雑貨屋を営んでおり、海外を放浪する癖がある。アカネのことを可愛がっている。
- ミドリ(麻生久美子)
- アカネの母。専業主婦でどこかのんびりとした性格。娘の性格を熟知しており、右頬に黒子がある。実はワンダーランドを救った先代の緑の風の女神。
- ピポ(東山奈央)
- 赤髪の小人で錬金術師ヒポクラテスの弟子。聡明で活発的。学校では優秀な成績を収め、念願叶ってヒポクラテスの弟子になる。
- ヒポクラテス(市村正親)
- 優秀な錬金術師。タキシードとシルクハット、眼鏡をかけたダンディな男性。非常に理知的で発明家でもあり、幸せ色のワンダーランド国民から慕われている。
- ザン・グ(藤原啓治)
- ワンダーランドを破壊して回っているごろつき。高身長で鉄の体を持ち、マントを深く被った不気味な相貌をしている。ワンダーランドを憎んでおり、井戸の破壊を目論んでいる。実はドロポの魔法によって姿を変えた王子。戦車のようなヨロイネズミという乗り物に乗っている。
- ドロポ(矢島晶子)
- ザン・グの助手で魔法使い。黒い猫のような容貌をしており、非常に身軽。魔法使いとしては未熟で、まともな魔法を使うことができない。癇癪持ち。実はピポの同窓生で、魔法使いの弟子。
映画『バースデー・ワンダーランド』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『バースデー・ワンダーランド』のあらすじ【起】
小学生で引っ込み思案のアカネは学校にて同級生が軽くいじめられていても、助けることができずにいた。彼女は誕生日の前日、学校へ行くことが憂鬱になり仮病を使って休んでしまう。母ミドリはそんな娘を叱ったりせずのんびりとした様子で、アカネが学校を休むこと了承するのだった。
ひと眠りした後、朝食を食べたアカネ。すると、ミドリから叔母チィが経営する雑貨屋へ自分の誕生日プレゼントを受け取りに行って欲しいと言われる。
チィは小さな雑貨屋を営んでいるが、とにかく自由奔放な人で明るく快活。行動力があるため、ふらっと海外に行っては雑貨を仕入れて来る。アカネはそんな叔母がとても苦手だったが、彼女が経営する雑貨屋は好きだった。
チィがお茶を入れている間、店の商品を見ていたアカネ。陳列された商品の中に手形の入った石板を見つけ、何気なく手を合わせてみた。すると、なぜか手形と自分の手がぴったりと嵌って抜けなくなってしまう。すると、店の地下室から謎の男性ヒポクラテスと小人のピポが現れる。2人は異世界、幸せ色のワンダーランドに危機が迫っているため、アカネに救って欲しいと言う。
チィは異世界と聞いてテンションを上げていたが、ヒポクラテスは自信を持つことができる不思議な錨型のペンダントをアカネへと与え、有無を言わせず地下室へ。チィも慌てて荷物を持って3人の後を追った。
次元の通路から異世界へ到着した一行。不思議な光景にまったく動じる気配がないチィに対し、アカネは茫然としたまま許容できず。しかし、そこへワンダーランドを荒らしているザン・グとドロポが登場。奴らは世界を不当に破壊している。ヒポクラテスは大きな羊の群れを呼んで奴らを追い返した。一行は近くにあるケイトー村へ。
映画『バースデー・ワンダーランド』のあらすじ【承】
幸せ色のワンダーランドはとても穏やかで色とりどりな国だったが、現在色が失われていくという現象が起きている。ヒポクラテス曰く、ワンダーランドの水が濁ってしまったせいで、色が失われ世界に影響を与えているらしい。錬金術師であるヒポクラテスは世界を救うため、緑の風の女神と呼ばれる伝説の少女を探しておりそれが、アカネだと言うのだった。
世界を救うことなどできるはずがないと否定的なアカネ。一行はその日、村長宅で世話になることになった。ザン・グとドロポは半年前に突如現れ、悪さをするようになったらしい。奴らは恐らくニビの町というごろつきばかりが集まる町から来たと思われる。
ワンダーランドの中心には時無し雨の城があり、そこには水を操る王がいる。雨王と呼ばれる王の一族は代々、水を操ってワンダーランドを穏やかに治めてきた。だが、5年程前に王と妃が相次いで亡くなり幼い王子が王座を継いだのだが、ここ1年程姿が見えないと言う。噂では、王子は病弱故に床に臥せっているらしい。そして、数カ月前から水が枯れ始め、王子の力が弱まっているのではないかと言われていた。
この世界には魔法使いと錬金術師がそれぞれに地方を守っているが、城は魔法使いが守っているため、錬金術師のヒポクラテスは手が出せない。しかし、魔法使いは現在、冬眠に入っており現状打破は難しい。故に伝説の救世主、緑の風の女神が必要だった。
翌朝、半強制的にアカネも城へ向かうことになり村長の車を借りていざ、城があるサカサトンガリへ向けて出発。荒野にて砂嵐をやり過ごし、2日目には雪が積もった町に到着。ここでも深刻な水不足が発生していた。ヒポクラテスが車の燃料を調達に行っている間、宿にザン・グとドロポがやって来る。奴らは宿の主人を脅して食糧と水を奪って行った。ザン・グとドロポは何かを企てているようだ。燃料屋で2人に遭遇したヒポクラテスは、奴らの目論見を知り止めようとしたが、ドロポの魔法によって小さい虫に姿を変えられてしまうのだった。
映画『バースデー・ワンダーランド』のあらすじ【転】
ヒポクラテスの帰りが遅いため、一行は迎えに行くことにしたが、車はあるけれども姿が見えない。仕方ないのでチィが車を運転して先へ進むことに。
道中、ヒポクラテスとピポの住まいを眺めつつ道を進む。翌日にはシズクキリという儀式があるらしく、王子には必ず出席してもらわなければならない。城へ向かうには山脈を抜けて行く。道にはザン・グとドロポが通過した痕跡が残っていた。奴らも城へ向かっている。一行は近道を通って行くことにした。
奇想天外な道のりを経て城へ。一方、ハエのような虫になってしまったヒポクラテスは、先に城へと向かうことに。すると、魔法使いが王子を鉄人形に閉じ込め、冬眠に入ってしまったことが分かる。シズクキリの儀式の前日には元に戻ると言っていたようだが、戻る様子がない。
シズクキリの儀式はサカサトンガリの町にある井戸で行われるというので、一行もそちらへ進路を変更。ヒポクラテスも戻って来たが、ハエになってしまった彼に気付く者は誰もいなかった。その後、二足歩行のしゃべる猫が審査する番所を通って、ようやくサカサトンガリへ。
その頃、城の重鎮たちは困り果てていた。王子も魔法使いも目覚めないが、儀式は行わなければならない。街を歩いていたアカネとピポはドロポを発見。追いかけて行くとドロポは番所に寄らず、街の外へと出て行く。その先には奴らの乗り物であるヨロイネズミが停車していた。ヨロイネズミには大砲が増設されている。アカネはザン・グとドロポが井戸の破壊を目論んでいることを知る。
その日の夜、ようやく魔法使いが目覚めサカサトンガリへ。すると、王子を閉じ込めていたはずの鉄人形に王子が入っていないことが判明。
日が暮れる頃まで悩んだアカネ。彼女は決意を固めヨロイネズミへ入ることに。すると、ザン・グが実は王子であり、魔法使いの弟子であったドロポが王子を現在の姿にしてしまったことが分かる。父王と妃を失った王子は酷く心を病み、井戸があるせいで不幸になったのだと思い込んでいるようだった。
アカネが彼を止めるべく声をかけるとヨロイネズミが急停車。ピポはドロポがかつての旧友であることに気付いており、彼を説得した。すると、ドロポが癇癪を起して魔法を乱立。そのお陰でヒポクラテスの魔法が解ける。
映画『バースデー・ワンダーランド』の結末・ラスト(ネタバレ)
ところが、ザン・グは他の3人を放り出し、アカネだけを連れてサカサトンガリへと強行。彼はアカネへと緑の風の女神ならば、自分を止めて見せろと言う。ヨロイネズミは街の塀を突き破り、井戸へ向けて大砲の照準を定める。ザン・グは大砲発射のレバーに手をかけたが、発射には躊躇いを見せた。
そこで、アカネは彼の言動から心の機微を察知。歴代の王はこれまでシズクキリの儀式を成功させてきたが、残された王子はたった1人で儀式へと挑まねばならず、強い恐怖を覚えていた。そこで、魔法使いは騒ぎを起こしてばかりいる王子を鉄人形に閉じ込め、冬眠に入ったのだ。
だが、アカネは問う。井戸を壊したら恐怖は去るのかと。彼女は自分も手伝うから、シズクキリの儀式を成功させようと言う。自分達の世界は文明が発達してとても便利になったが、人情的にはとても不便である。だが、ワンダーランドは昔ながらの生活をしており不便ではあるが、心は豊かだ。アカネは旅をしてワンダーランドの素晴らしさを知った。故に、この世界を守りたい。すると、王子の心の変化に伴い魔法が解けるのであった。
その後、ヒポクラテスの指示に従って錨型のネックレスの製作を行いサカサトンガリへと戻ったアカネ。ネックレスを王子へとプレゼントし、いざ儀式へ。儀式に失敗すると命を落とすが、次の儀式まで命の水で世界が潤う。故に、王子は恐怖を抱えていたのだ。アカネは女神のマントを纏い、王子と共に井戸の真上へと進んだ。
朝日が昇り、2人を照らす。王子は構えた剣から発生した雫を井戸へ落としたが、その後いくら待っても何も起きない。儀式は失敗したのだ。覚悟を決めた王子はマントを脱いで井戸へと身を投げようとする。しかし、アカネはそれを許さず揉み合った結果、2人は共に井戸へと落下してしまうのだった。
井戸の底にて王子は魔法使いに「覚悟を見た」と言われる。気が付くと井戸の真上へと戻っていた。すると、井戸から大量の水が噴き出し空へと舞い上がる。王子は剣を手にその水を何度も切りつけた。世界へと水を行き渡らせるためである。王子が斬った水は鳥の姿になり、世界へと羽ばたいて行く。儀式は成功し、アカネは泣きながら王子と笑い合うのだった。
新設された異世界の扉へ。王家から大切な客人へ向けて渡される足マットを受け取る。ワンダーランドで過ごした1日は、元の世界では1時間しか経過していないと言う。つまり、3日間はたったの3時間である。別れを告げたアカネとチィは異世界へ戻る建物に入り、そうして地下室の扉から現世へと戻った。
寂寥感に襲われた2人。言葉も少なく別れる。チィはそのままベッドへ直行して休み、アカネはマットを手に帰宅。ミドリは娘が持ち帰ったマットと飼い猫を目にし、微笑むのであった。
映画『バースデー・ワンダーランド』の感想・評価・レビュー
原作は作家、柏葉幸子の小説『地下室からのふしぎな旅』。アヌシー国際アニメーション映画祭2019の長編コンペティション部門にノミネートされている。
アニメのファンタジーでは王道の展開ではあるものの、異世界が正にワンダーランドであり非常にカラフルでありながら穏やかで魅力的だ。ワンダーランドの事情や状況説明も簡潔で分かりやすい。内容が濃くじっくり描いたら、1作では足りないように思う。共に旅をする叔母の存在感が大きく、主人公の引っ込み思案がバランス良く強調されている。非常によく整えられた作品。(MIHOシネマ編集部)
自信のないアカネを見て、自分の幼い頃を思い出した。一歩を踏み出す勇気がもてなかったアカネが、様々な出会いと経験を通して成長していく姿に感動した。大人でも十分楽しめたが、子供の頃に見たらもっと感動できたのではないかと思う。自分の幼い頃に見たかったなと思った。
アカネとは対照的な性格を持つ叔母のチィの存在が、物語の随所に生きていて良かったと思う。アカネだけだともっと暗い物語になっていたかもしれない。(女性 30代)
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