映画『ブランカとギター弾き』の概要:フィリピンのスラム街で路上生活をしている少女ブランカと盲目のギター弾きピーターとの心温まる物語。数々の映画祭で賞を受賞。長谷井宏紀監督の長編映画デビュー作となる。
映画『ブランカとギター弾き』の作品情報
上映時間:77分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:長谷井宏紀
キャスト:サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ、ジョマル・ビスヨ、レイモンド・カマチョ etc
映画『ブランカとギター弾き』の登場人物(キャスト)
- ブランカ(サイデル・ガブテロ)
- フィリピンのスラム街に生きるストリートチルドレン。父親は知らず、母親は男を作り消えた。
- ピーター(ピーター・ミラリ)
- 路上生活をしている盲目のギター弾き。
- ラウル(レイモンド・カマチョ)
- ストリートチルドレン。弟分のセバスチャンと一緒に盗みを働いている。
- セバスチャン(ジョマル・ビスヨ)
- ラウルの弟分。ラウルを兄のように慕っている。
映画『ブランカとギター弾き』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ブランカとギター弾き』のあらすじ【起】
ブランカはフィリピンのスラム街で暮らすストリートチルドレン。父親は知らず、母親はブランカを残し、姿を消した。生きるために道行く人にお金をねだり、時には路上でスリを働くこともある。
チームで盗みを行うこともあったが、リーダー的な存在のブランカは分け前を自分だけ多く取っており、他の子供たちからも嫌われていた。盗んだお金はいつかこの生活から抜け出すための大事な資金。誰にも見つからないように必死に貯めていた。
路上のテレビでは、女優が何人もの養子と暮らしているニュースが取り上げられていた。その子達も元は路上で生活していた子供だった。隣で見ていたおじさんは、鼻の下を長くして、お金があったらその女優を買いたいなどと言っている。ブランカがいくらあったら買えるかと聞くと3万ペソと返してきた。まだ幼いブランカは、そのお金があれば自分も母親が買えると思ってしまう。
その日、いつものように路上をぶらぶらしていたブランカは、ギターを弾いている盲目のおじさんを見つける。彼も路上生活者でギターを弾いて、道行く人にお金を恵んでもらっていた。
興味津々でおじさんを見つめるブランカ。彼の前に置かれた缶にお金を入れる人を見て、自分もポケットにあったお金を入れるのだった。
だが、翌日もう一度おじさんを見にきたブランカは、出来心でそっと缶に手を入れ、お金を盗もうとする。何も見えていないはずのおじさん。ところが、おじさんはブランカに「昨日はお金をくれたのに、今日は盗むのかい」と優しく尋ねるのだった。
おじさんは怒りもせず「まあいいさ」と言い、ブランカにそのお金をあげる。「朝食代だけ残しておいてくれ」と言われたブランカは、おじさんの優しさに少し罪悪感が湧いた。そして、目の見えないおじさんのため、周辺を行き交う人々の前に缶を差し出し、恵みをもらう手助けをするのだった。
その日からブランカとおじさんの交流は始まる。おじさんの名前はピーターと言った。
映画『ブランカとギター弾き』のあらすじ【承】
ブランカはダンボールや布で仕切りを作った小さな空間で寝泊まりしていた。ところが、その寝床が他の子供達によって壊される。寝る広さしかない狭い空間だったが、大事な場所がなくなり、ブランカは途方に暮れるのだった。
ピーターは路上でギターを弾く許可を得るために警官にお金を渡していた。ブランカはピーターが警官に「お金がないなら失せろ。サンフェルナンドなら稼げるぞ」と言われているのを耳にし、ピーターにサンフェルナンドに一緒に行こうと持ちかける。
ブランカは悩むピーターを強引に誘い、2、3日の約束で旅立つのだった。しかし、トラックの荷台に乗せてもらい到着したのは、サンフェルナンドとは別の街だった。二人は運転手に騙されたのだ。
仕方なくその見知らぬ街で様子をみるしかない二人。ピーターはそこでも同じようにギターを弾き、ブランカは缶を持って人々に恵みを求めた。
家族のいないブランカは、母親という存在に強く憧れを抱いていた。仲良く歩いている親子を見ては、その子供が羨ましくて仕方がなかった。どうにか母親を得るために、ブランカは「3万ペソで母親を買います」というチラシを作り、町中の壁に貼りまくる。
夜になって街をうろついていると、女装をした男娼たちが立っていた。そこに通りがかった男が一人。ブランカは咄嗟に、男のポケットから財布を抜き取ろうとする。しかし、突然現れたラウルという少年に手を捕まれ「俺のシマで何してる」と脅されるのだった。
男娼に助けられ、その場から逃げたブランカだが、ラウルはまだ小さな弟分にブランカを今後見張るよう命令する。
ピーターは、ブランカに歌を歌えばお金を稼げると提案する。ブランカは恐る恐るピーターのギターに合わせて歌い出すのだが、その声はとても美しく人々の心に訴えかけるものがあった。
その歌声を聞き、近くで店をやっている男がステージで歌わないかと二人をスカウトする。お金をもらい、食事と寝床まで約束してくれ、二人にはようやく光が見えたのだった。
映画『ブランカとギター弾き』のあらすじ【転】
ブランカの歌声は評判を呼び、店は栄え、オーナーは大喜びだった。二人は新しい服を買い、満足な食事やベッドで眠れる日々に感謝する。
しかし、オーナーの下で働く男は、自分の部屋を二人に取られ、オーナーに気に入られている二人を邪魔に思う。
そこで、ある時男は店のレジからお金を盗み、それをブランカの仕業のように見せかけた。ブランカが必死で反論しても信じてもらえず、オーナーは「せっかく良くしてやったのに」と怒り、二人を追い出すのだった。
仕事を呆気なく失った二人。ブランカが貯めていたお金も盗んだお金と勘違いされ、オーナーに取られてしまった。
二人は元の路上生活に戻った。そこへブランカが貼ったチラシを見た修道女がピーターに孤児院で入れた方がいいと心配し声をかける。チラシのことを知らなかったピーター。ブランカに「お金で買えるものと買えないものがあるんだよ」と教えようとするが、ブランカは反抗し、ピーターの元から離れてしまう。
ピーターと離れたブランカは、以前出会ったラウルとその弟分のセバスチャンと組み、路上でスリを繰り返すのだった。ブランカはもう盗みはしたくなかったが、ラウルに命じられ、仕方なく従う。
そのうちセバスチャンはブランカに懐き出す。本当の家族のいないセバスチャンにとって、ラウルは兄、ブランカは姉のような存在だった。しかし、そのことでラウルは気を悪くする。
ブランカは盗みが嫌でチームから離れた。ピーターを探し、一人で街をうろついていると、見知らぬ女に声をかけられた。その女もブランカのチラシを見ており、身寄りがない少女だということを知っていた。女はピーターの居場所を知っていると嘘をつき、怪しげな建物にブランカを引っ張って行く。
そこは若い少女ばかりを集めた売春宿だった。少女たちは着飾り、熱い化粧をしていた。女はブランカを連れてきた替わりに、店からお金を受け取っていた。ブランカは危険を察知し隙をついて逃げる。しかし、その様子をラウルが見ているのだった。
映画『ブランカとギター弾き』の結末・ラスト(ネタバレ)
ラウルは、ブランカを逃した女の所へ行き、ブランカを差し出す替わりに金銭を要求する。ブランカを売ることにしたのだ。ブランカはラウルたちとある建物の上にある鶏小屋の中にお金を隠していた。
お金を取りに戻ったブランカはラウルに見つかり、鶏小屋に閉じ込められるのだった。助けを求めるブランカを見て、セバスチャンは助けようとするが、ラウルに歯向かうこともできなかった。
そこでセバスチャンは、ブランカが共に行動していたピーターを探そうとする。街中を走り回り、ひたすらピーターを探した。一方、ピーターもブランカと離れて以来、彼女を探し続けていた。
女装の男娼の助けもあり、なんとかピーターと会えたセバスチャンは、ブランカがいる鶏小屋にピーターを案内する。ラウルが逃げようとする二人の邪魔をしようとするが、セバスチャンが自分を売っていいから、二人を逃がしてあげてと頼み込み、二人は窮地を逃れた。疲れ切ったブランカは、ピーターに孤児院に連れて行ってくれと頼むのだった。
ピーターに連れられ孤児院に入ったが、ブランカは他の子供達に馴染むこともできず、一人きりで過ごした。少女たちは今度女優が養子を取りに訪れるという話で盛り上がっている。しかし、ブランカは夜中に孤児院を抜け出すのだった。
ブランカはピーターに会うために、自力で街に戻った。まだ同じ場所にいるのか不安に感じていたブランカだったが、遠くにピーターの姿を見つけホッとする。血の繋がった家族を知らないブランカにとって、ピーターは初めて安心できた人だった。
ギターを弾くピーターの周りでは、セバスチャンが缶を持ち、行き交う人々にお金を恵んでもらっていた。ブランカはその光景を見て、微笑むのだった。
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