映画『墨攻』の概要:大国に攻められた小国は、守りを徹底して極めた墨家へと援軍を要請したが、やって来た墨者はたったの1人だった。墨者の主人公は類稀なる戦術で小国を守り、大軍を退ける。戦の中で繰り広げられる人間ドラマと、戦術にて軍を退ける戦略は見物。
映画『墨攻』の作品情報
上映時間:133分
ジャンル:アクション、時代劇、歴史
監督:ジェイコブ・チャン
キャスト:アンディ・ラウ、アン・ソンギ、ワン・チーウェン、ファン・ビンビン etc
映画『墨攻』の登場人物(キャスト)
- 革離(アンディ・ラウ)
- 非攻、兼愛を掲げる墨家の墨者。単独で梁城へ来る。愛情深く、正義を重んじる。賢く勇猛。
- 港淹中(アン・ソンギ)
- 趙の将軍。戦略家として名高い。生き残るよりも勝利する事が肝心であると、頑なに信じているが、部下への愛情は深い。
- 梁王(ワン・チーウェン)
- 梁の王。姑息で執念深く肝っ玉が小さい。
- 逸悦(ファン・ビンビン)
- 騎馬隊の女兵士。人を見る目を持ち、才覚ある女性。革離を慕う。
- 子団(ウー・チーロン)
- 弓隊の隊長。弓の名手だったが、謀反を問われ右手の腱を斬られてしまう。常識的。
- 梁適(チェ・シウォン)
- 梁の王子。次期梁王。血気盛んな若者だが、革離と接する内に真の平和を理解するようになる。革離を逃がす際、自軍の弓に射殺される。
映画『墨攻』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『墨攻』のあらすじ【起】
紀元前370年、中国の趙は10万の大軍で燕を攻撃。趙と燕の国境に位置する梁は、戦略的にも要衝地であるとして、真っ先に趙の攻撃対象となった。梁は絶望の中、正義を重んじる墨家に助けを求めたが、趙の攻撃が始まっても援軍の報せは無かった。
趙の総帥は戦略家の港淹中である。和睦と降伏が叫ばれ、梁王は騎馬隊を派遣し書状を送った。そこへ、西から1人の人影が現れる。男は墨者の革離と名乗った。彼が城内へ足を踏み入れる否や、趙軍の先遣隊が城を囲む。和議の意を知らせに行こうとするも、先遣隊は進軍を開始。
革離は城内で降伏した場合、どうなるかを高説後、王子梁適の言葉に行動を開始する。太陽の向きを確認し、仕掛けをして弓を構える。敵兵に警告を発し弓で将軍を威嚇。趙軍は撤退命令にて引いて行った。この報せはすぐさま梁王へと報告されたが、王は酒で泥酔中。謁見は叶わなかった。その夜、革離は厩の片隅で夜を明かす。
革離は墨家を招聘した証である、牙璋玉を持っていなかった。本人はうっかりして忘れたと言うが、本物かどうか怪しいと王は家臣から進言される。梁王は革離と謁見し、今後の作戦を聞く。趙は燕へと攻め込む途中である。革離は1カ月、城を守り切れば趙は撤退すると言った。王は戦わない方法を聞く。すると、彼は事もなげに自分を趙軍へ渡して、趙軍に謝罪へ向かえば良いと返答。梁王は革離を信じ、戦う決断をした。
革離はありとあらゆる可能性を考慮し、限られた中での作戦を立てる。様々な問題が立ち上がるが、彼は説得し合意を得て梁軍は早速、行動を開始した。
そんなある日、一兵卒の子団は不敬を問われ、梁適と弓矢対決を行う事に。子団は弓を構え、たった1本で屋根を破壊。力量を見せ不敬は恩赦された。
映画『墨攻』のあらすじ【承】
趙軍の港淹中が面会を求めて来た。革離は1人で赴き、敵将軍と盤上の勝負をする。革離が勝利したが、策略家と言われる敵将軍は、さすがと言わざるを得ない相手だった。
軍の作戦会議に参加した騎馬隊の逸悦。彼女は女だてらに騎馬隊を率いる者だった。国の為に貢献したいと助力を乞う逸悦に、革離は仕事を任せる。
深夜に関わらず叩き起こした民達を鼓舞する革離。戦はそもそも理不尽なものだ。自分自身の為に戦えと叫んだ。
いよいよ攻撃が開始。逸悦が深夜に行った作業で、火矢が飛んで来ても家屋は燃えない。
全軍進撃の命が出る。10万の兵は統率が取れており圧巻。民と兵は自国の為、革離の作戦通りに奮闘。
そんな中、梁城内に潜伏していた敵軍が行動開始。内部からの瓦解を企む。騎馬隊の逸悦らは掃討に乗り出た。
城の門が破壊されようとしている。民兵達も必死に戦っていた。敵は南門から侵入。次の門へ渡る跳ね橋を上げ、革離が罠を発動。着地に失敗した彼は、門外に取り残される。必死の攻防で逃げ切り、跳ね橋を上げた。
城壁で攻撃していた子団は将軍の姿を門前に見つける。彼は太陽を背にし、矢を放った。弓は見事に敵将を射抜く。趙軍は一旦、撤退して行った。
この日、4000の梁軍は10万の趙軍に勝利した。
戦後の片づけ中、革離を暗殺しようとした民が現れ、城内に間者が入り込んでいる事を察した彼は、間者探しをする。現れた間者はまだ幼い少女だったが、民はこぞって群がり殴りつけた。革離はその様子を痛ましげに見つめる。
深夜、敵兵の鎧を着た革離は、ついて来た逸悦と共に敵軍の偵察へ。しかし、見つかってしまい逃亡。崖から飛び込んで川を泳いで逃げ切った。
敵軍が地下道を掘り進めている事を知った革離。敵を場内に誘き寄せる作戦を敢行。敵兵を待ち構え一斉に囲い込む。穴を塞いで増兵を防ぎ、敵から戦意を削ぐ。その時、民衆内で子供を人質に取って逃げようとする騒ぎが勃発。犯人は兵士ではなく、穴掘りをした男だった。革離が対応している間に敵兵は掃討され、城の外で合図を待っていた趙軍は状況を察し、静かに退却して行った。
映画『墨攻』のあらすじ【転】
革離が穴掘りの男を山に逃がして城に戻ると、梁王から褒章が出ると将軍から告げられる。彼は将軍に屍の山が見えないかと反論。敵は敵でも同じ人間。戦中は善悪の判断がつかない。それは仕方のない事だとしても、それ以外に恨みで人を殺すのは論外である。
状況は常に変転している。冬を目前に斉国が20万の兵を趙国へ派兵。趙はこれに応戦する構えを見せている。この情報により梁王と家臣は、趙が撤退すると読み一安心する。そして、民衆から強い信望を寄せられる革離が、謀反を起こすのではないかと不信を募らせた。
港淹中は主軍を国へ帰し、自らは1000人足らずの兵と梁へ残った。将軍は革離との勝負に勝つ為、短期決戦にて勝負を挑もうとしていた。
趙軍が撤退して行き、梁には平和が訪れた。梁適は革離に今後の予定を聞く。革離は乞われる所へ向かうまでだと答えた。
その夜、革離は民を何人か引き連れて、かつては趙軍が布陣していた場所へ行っていた。様子を見る為に城へ戻ると突然、兵士に囲まれる。そして、王位簒奪の咎を並べられた。革離は平然として腕を組む。
そこへ、梁適が現れ彼と対決。自分を人質にしろと耳打ちしてくる。革離は言う通りに梁適を人質とし、城を出る事に成功した。
民が待つ場所まで来ると、梁適を開放しそのまま出て行く事を決意。梁適は彼について行こうとするが、革離は平和の意味を理解する者が王になるべきだと説く。数名の民が革離について行ったが、梁軍が攻撃を開始。矢の雨は戻る梁適を射殺、民と革離をも傷付けた。
梁の将軍は全ての責任を負う事とし、王から革離捕縛の期間を100日貰う。
その頃、革離は以前逃がした穴掘りの男の元へ身を寄せていた。墨者は見返りを貰わない。だが、梁は恩を仇で返した。男はなぜ、革離が梁へたった1人で来たのかを聞く。
墨家はそもそも、梁城への援軍を拒否していた。革離は独断で墨家を抜け、援軍へ向かったと言う。墨家の思想は非攻と兼愛。攻撃はしない。ひたすら守りに徹した術を磨き抜いた集団が、墨家なのである。
映画『墨攻』の結末・ラスト(ネタバレ)
梁では革離を信望する民達が審問を受けていた。その中には逸悦もいる。彼女は革離に思いを寄せていた。故に、彼が謀反を起こしたなどと端から信じておらず、王に向かって堂々と口答えする。憤慨した王は逸悦に馬引きの刑を言い渡した。
逸悦は喉を切り取られ、声が出ないように処置された上で地下牢へ。彼女は出ない声で叫び、泣きながら空を見上げた。
趙の港淹中は行軍を開始。その夜は逸悦の刑が執行される予定だった。しかし、趙軍の夜襲により、刑は中止され彼女は牢へ戻される事になる。
子団も謀反人として、右手の腱を斬る刑を甘んじて受けていたが、彼を慕う兵士に鼓舞されて、再び立ち上がった。
夜襲をかけられた梁城は成す術もなく、制圧されていく。子団率いる弓隊はこの機に乗じて、800人が北門を占拠した。
梁王を捕縛した港淹中は、梁城の民を人質に革離を呼び寄せようとしていた。弓隊と合流した革離は、犠牲者を少なくする方法を考え、城へ戻る事にする。
翌日、単騎にて梁城へ現れた革離。彼は港淹中に城楼にて差しの勝負を挑む。奴はその勝負に乗った。
革離は港と2人きりで会話し、相手に撤退を勧めるが、港は頑なだった。その時、革離の計画で地下から水が噴き出して来る。趙軍はたちまち追い込まれ、港将軍は趙軍を撤退させた。
将軍と別れた革離は逸悦を探す。溢れた水は地下牢へと流れ込み、水嵩は増すばかり。逸悦は声が出ない為、助けを呼ぶ事が出来なかった。
革離は耳を澄ませる。そして、ようやく彼女を発見するも、溺れた逸悦は息を吹き返さなかった。
その後、残っていた港将軍は梁王により射殺。結末を見守っていた子団は剣を捨てて去った。
梁王はそれから5年後、暴政が過ぎて自ら死を招く。主を失った梁は趙に制圧され、その趙すらも秦が滅ぼした。革離は孤児と共に諸国を巡り、平和を説いて歩いた。
映画『墨攻』の感想・評価・レビュー
謙虚なカクリが次々と策を成功させていくのが気持ち良い。
目の前の欲で頭が一杯の王様や、世間知らずの王子を上手にかわしながら、思い通りの展開に進めていくのが凄い。
武器や人員に限りがあっても、知識でここまで立ち向かえるのかと目が覚める思いだった。
この映画では、記憶の限り、女優が一人しか出てこない。
兼愛思想との間でカクリが懊悩した重要人物だが、その唯一の華が無残な死に方をしてしまったのが意外だった。(女性 30代)
古代中国を舞台にした日本の漫画原作を逆輸入で中国で映画化された作品。内容は弱小国家の民を哲人が救うという勧善懲悪なアクション映画。まず展開が早く、ほとんどが戦争の場面になるので観ていて飽きないところがよい。けして潤沢な予算では無さそうだが安っぽいシーンはなく目が行き届いた作品だと思う。何よりも中国が舞台とはいえ日本のマイナーな漫画を捜してこれるアンテナの高さ、こういう熱心さが中国の成長を支えてるんだろう。(男性 30代)
数的な力の差を戦術でひっくり返すお話は中華の十八番です。10万vs4千という絶望的な軍力差を軍師革離はどうするのか、熱い展開で非常にワクワクさせられます。日本は弥生時代ですから、そう考えると中国の歴史の厚さに驚かされます。
レッドクリフなどを見てしまうと、戦闘シーンがチープに感じられてしまいます。圧倒的な数を表現できていません。ラブストーリーとイラストの場面は省いてほしかったです。ラストは戦争の虚しさが残り、血圧を程よく下げられる展開で良かったです。(男性 20代)
みんなの感想・レビュー