映画『パズル(2014)』の概要:少女の代わりに復讐を始めた少年の狂気に囚われ、少女自らも狂気へと陥っていく様を、リアルに描いたR15指定作品。パズルのように点々とストーリーが流れて行く構成が面白く、少年の天才的な計画と異常さが際立つ。
映画『パズル』の作品情報
上映時間:86分
ジャンル:サスペンス
監督:内藤瑛亮
キャスト:夏帆、野村周平、高橋和也、八木さおり etc
映画『パズル』の登場人物(キャスト)
- 中村梓(夏帆)
- 大人しく控えめな女子高校生。両親は常に不在。高井理事長と同級生男子3人から、性的被害に遭い自殺を図るが、未遂に終わる。
- 湯浅茂央(野村周平)
- 根暗で無表情。何を考えているか分からない。天才的頭脳と狂気を内に秘めており、計画を実行。躊躇わずに人殺しをする。父親による家庭内暴力を受けて育った。
- 三留刑事(高橋和也)
- 梓をレイプした男子高校生の父親で刑事。事件の捜査をしているが、息子を殺され豹変する。
- 湯浅ママ(八木さおり)
- 夫のDVで何度も大怪我を負った過去があり、息子の言いなりで計画に加担している。
- 安田先生(佐々木心音)
- 妊娠中に事件の人質となり、流産させられる。恐らくは、高井理事長と不倫関係にあると思われ、被害に遭った梓を見て見ぬ振りをする。
- 高井理事長(大和田獏)
- 高校の理事長。娘には良き父を演じつつ、女子高生を蹂躙する趣味を持つ。
映画『パズル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『パズル』のあらすじ【起】
44日前、湯浅茂央は目の前で同級生の中村梓が、学校の屋上から投身自殺するのを見る。湯浅は転落後、血に塗れる彼女の姿を凝視した。
24日前、助かった梓の元へ見舞いに訪れた湯浅。彼女は無表情でぴくりとも動かない。湯浅はその姿をずっと見守っていた。
男性看護師の失敗により点滴管の中を血液が逆流してしまい、梓はそれを見て突然、恐慌状態に陥る。必死に彼女を落ちつけようとする看護師を、湯浅は思わず殴った。すると、梓はそれに驚き、落ち着きを取り戻す。
12日前、休日に4人の男子学生が学校へ。先頭に立つ1人が電話線を切り、廊下に展示してあった、ひまわりの面を他の3人に被せた。大荷物を持った3人が階段を昇り、リーダー的存在である1人が、悠々とその後を追う。
家庭科室では妊娠中で教師の安田が、授業準備をしている。ひまわりの面をした4人は、彼女を拘束した。
学校には他に理事長と教師3人がいた。会議中に突然、放送にて指示がある。テレビにはひまわりの面をつけた学生と、拘束された安田先生が映る。彼女を傷つけて脅し、教師達の携帯を回収。安田先生を助けたければ、ラジコンカーにつけられたパズルのピースを集めろと言う。教師達は学校中を駆け回った。制限時間は3時間。
爆弾カーやはずれがある中、這う這うの体でピースを集めた3人の教師。指示にて体育館でパズルを解いてみると、理事長高井の姿が現れる。しかし、最後のピースが1つ足りなかった。3人の教師が走り回っている間、理事長は抽斗の中にあるラジコンカーを発見。睡眠導入スプレーを噴射され失神。理事長は学生に連れ去られた。
事の主犯は湯浅と、その計画に加担する湯浅の母親だった。
犯人の姿が消えているのを見た他の教師。家庭科室へ何気なく入る。仕掛けが外れ、安田先生の腹に電子レンジが落下。彼女は流産した。
映画『パズル』のあらすじ【承】
事件の後、理事長と男子学生3人が失踪。その内の1人の父親は刑事だった。
三留刑事は事件の捜査から外されてしまうが、独自に捜査を開始。
同級生1人1人から聞き込みをし、最後に湯浅の家へ。少年は無表情で淡々と話した。
22日前、湯浅は三留少年を含める同級生3人に、彼らの蛮行を撮った動画を見せて脅迫。計画を手伝わせたのだった。
5日前、湯浅は梓の見舞いに来た。彼女は順調に回復し食欲も戻っていた。学校の事件がニュースで流れている。こんな町で楽しそうに生きている人間が、ウザいと湯浅は呟く。彼は梓にある物を置いて行った。
病院に理事長からひまわりのオブジェが進呈。行方不明の父の代わりに、娘が出席して演説した。娘にとって高井は良い父親らしい。しかし突如、オブジェが倒壊。そこにはQRコードがあった。
病院の浴室から物音がする。扉を開けると、行方不明の学生2名が拘束されていた。
12日前、事件後に同級生3人を自宅へ連れて来た湯浅は、彼らに飲み物を振る舞う。彼らは、疑いもなくそれを飲んだ。3人は意識を失う。湯浅の母親と息子は、彼らを運んだ。
QRコードで動画が流れる。町中の自転車にパズルのピースをつけた。2人を助けたければ、ピースを探せ。中にはやはり、爆発する物もあった。たちまち、騒然となる町。
至る所から爆発音が鳴り響く。あと1つ、ピースが足りない。
梓は湯浅から貰った袋を開けてみる。最後のピースが入っていたが、彼女はそれを燃やしてしまった。梓は2人の最後を見る。時間が来て、装置が発動し2人は死んだ。
映画『パズル』のあらすじ【転】
退院する梓を迎えに来た湯浅。笑みを見せ、彼女を連れて自宅へ向かった。
梓は促されるまま地下へ。そこには、三留少年と理事長が拘束されていた。湯浅はカッターで躊躇いもなく、2人を傷つける。彼女へもそれを促すが、梓は必死に拒否。1階へ戻ると、三留刑事が来ていた。梓を盾に取られる。
自分の息子の蛮行を知らないのか。警察のくせに。呟く湯浅。
そこへ、湯浅の母親が刑事を襲う。乱闘になり、地下へ落下。父親は拘束された息子を見つけるも、気絶してしまう。
梓は助けを乞う三留少年を目にし、記憶を遡る。
学費の件で理事長に詰め寄られた。理事長は学費の免除をする代わりに、彼女の体を求めた。嫌がる梓へ無体を働こうとした時、三留少年と2人の学生が現れる。理事長は不祥事を脅され、梓は4人の男達に乱暴されてしまう。心身共にボロボロの彼女へ、安田先生が声を掛けるが、先生は彼女の味方をしてはくれず、見て見ぬ振りをしたのだった。
嫌な記憶が巡る。あの時の自分も助けを乞うた。それなのに、奴らは笑って馬鹿にするだけ。梓は恐慌状態に陥り、カッターで2人を刺した。そうして、彼女は湯浅のいる世界へ、足を踏み入れたのだった。
1時間15分前、計画を開始。そこは、学校の音楽室。三留少年は首に紐を回されている。
時間までに自転車のベルを集めて扉を開けろと指示。警察は総出で自転車のベルを集めた。
映画『パズル』の結末・ラスト(ネタバレ)
地下室に置き去りにされた理事長は、両手の拘束が外れたのを良い事に、目の前に倒れている、面をつけた女子高生から鍵を奪取。抵抗する女子高生を黙らせて蹂躙した。
行為の後、面を外すと女子高生は自分の愛娘だった。
家の2階では拘束した三留刑事を、湯浅の母親が始末しようとしていた。三留刑事は自分の息子の蛮行を見せられる。母親に殺されそうになるが、三留刑事は彼女を殺害。湯浅の部屋で武器を入手し、学校へ向かう。
時間は経過し、三留少年は仕掛けにより死亡した。
その後、学校の屋上で仕掛けを施した梓と湯浅。2人は仕掛けの紐を楽しげに切って行く。屋上からひまわりのオブジェと共に落下したのは、三留少年の切り刻まれた死体だった。
父親は狂気へと貶められる。待ち構えていた湯浅と三留刑事は、屋上で激しい乱闘を繰り広げた。湯浅は三留刑事に右足の腱を切断され、更に右手の指5本を切断される。生まれて来て良かった。彼はそう叫び、梓を呼ぶ。
1分前、梓は昇降口屋上から降下。鉄パイプで三留刑事を殴りつける。湯浅が助けに入り、梓が折れた鉄パイプで突進。湯浅が武器を投げつけてくれる。彼女はそれを手にし、秒読み開始。5秒前、男を刺した。0秒、血潮を浴びる梓に見惚れる湯浅。
彼女は何度も何度も男を刺した。
湯浅はふらつきながらも、三留刑事を屋上の端へ押し出し、共に飛び降りる。
地面に落ちた彼は、虫の息で屋上の梓へ手を伸ばし、地上を見下ろした梓も湯浅へと手を伸ばした。
映画『パズル』の感想・評価・レビュー
作家・山田悠介の小説を原作に映画化されたスリラー。まさにパズルのピースのようにバラバラに描かれる演出が面白かった。
時系列をバラバラに描くことで、事情を把握するのに少々混乱してしまうが、ストーリーが進むにつれ恐ろしい事実が明らかになる。その流れが秀逸。少女のために主人公が復讐を誓い、かなり綿密に計画を立て心理を理解していなければ、成り立たない作戦だったと思う。しかも、息子の企みに母親が率先して加担しているという事実にも驚いた。かなりバイオレンスな内容ではあるが、ラストシーンの少女と少年が手を伸ばし合う様子になぜか切なさを覚えた。(女性 40代)
みんなの感想・レビュー
アンパンマンのように身を挺して少女を守る湯浅が、文字通り命と引き換えに悪党一味を滅ぼす清々しい映画でした。