映画『ぼんち』の概要:大阪船場で暖簾を誇る足袋問屋の五代目の半生を描いた山崎豊子の同名長編小説を市川崑監督が映画化。主人公を市川雷蔵、彼を取り巻く女たちを若尾文子、越路吹雪、山田五十鈴ら豪華女優陣が演じた。1960年公開。
映画『ぼんち』 作品情報
- 製作年:1960年
- 上映時間:105分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
- 監督:市川崑
- キャスト:市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、草笛光子 etc
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映画『ぼんち』 評価
- 点数:95点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ぼんち』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ぼんち』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ぼんち』 あらすじ【起・承】
大阪船場で四代続いて暖簾を守る老舗の足袋問屋「河内屋」に生まれた喜久治は、老舗の跡継ぎとして贅沢三昧に育てられた。
河内屋は初代からあとはずっと跡継ぎ娘に婿養子を取る母系家族で、喜久治の祖母きの(毛利菊枝)と母の勢以(山田五十鈴)は実の親子であり、婿養子の父喜兵衛(船越英二)と喜久治は女2人に頭が上がらなかった。
喜久治は2人に女遊びをたしなめられ、2人が決めた相手の弘子(中村玉緒)と結婚する。弘子の実家は大金持ちの砂糖問屋だったが暖簾がなく、勢以はそのことで何かと弘子をいびり、ついにはしきたりに背いて実家で男の子(久次郎)を出産した弘子を追い出してしまう。
昭和5年の夏、喜兵衛は肺を患い寝付いてしまう。喜久治は富乃屋の幾子(草笛光子)から父が密かに面倒を見てきた芸者がいると聞かされ、祖母と母に内緒でその芸者に父の世話をさせる。喜兵衛は喜久治に“立派なぼんちになりや”と言い残し息を引き取る。
河内屋の五代目となった喜久治は芸者のぽん太(若尾文子)と知り合い、その天真爛漫さに惹かれぽん太を妾にする。ぽん太は公認の妾となるが、きのから“子供だけは産むな”ときつく言われる。
喜久治は芸者になった幾子の面倒も見始める。幾子はぽん太と違い控え目な女で、喜久治によく尽くし幾子も公認の妾となる。
結局ぽん太は喜久治の子を産み、その男の子は“太郎”と名付けられたが、しきたり通り五万円の“男の子料”と引き換えに里子に出される。
映画『ぼんち』 結末・ラスト(ネタバレ)
満州事変が始まった頃、喜久治はミナミのカフェへ行き、そこで競馬好きの比佐子(越路吹雪)と知り合う。喜久治は比佐子に馬を買ってやり、比佐子の面倒も見始める。
その頃、幾子も喜久治の子を身ごもる。厄年に初産を迎えることを幾子はひどく気にしていた。
比佐子の家に泊まった日、喜久治は高熱を出し倒れてしまう。喜久治がしばらく寝込んでいる間に幾子は男の子を産む。しかしその直後亡くなってしまう。
しきたりで妾の葬式に出られない喜久治は「浜ゆう」のお福(京マチ子)に店の2階から葬列を見送らせてもらい、そのまま慰めてもらう。結局喜久治はお福の面倒も見る。
戦況が厳しくなり、河内屋には喜久治と疎開やもめの和助だけが残り店と家を守っていた。喜久治はそんな中でも3人の女の面倒をきちんと見てやり、里子に出したぽん太と幾子の子供のことも気にかけていた。
ついに大阪は空襲で焼け野原となり、河内屋も蔵一つを残して燃えてしまう。喜久治と和助は何とか生き延びたが、そこへぽん太がやってくる。さらに比佐子とお福も喜久治を頼ってきた。その夜には、疎開していたきのと勢以まで帰ってきてしまい、途方にくれた喜久治は大金を女3人に渡し、河内屋の菩提寺へ行くように言う。きのは喜久治の苦労も知らず、河内屋を燃やしてしまったと喜久治を責める。
翌日、きのは川へ落ち死んでしまう。自殺か事故かは誰にもわからなかった。
1年後、女たちを心配して菩提寺を訪ねた喜久治は風呂場ではしゃぐたくましい3人の様子を見てしまう。この女たちにもう自分は必要ないと感じた喜久治は3人には会わず、そのまま帰る。
数十年後、喜久治は一人前になった太郎の世話になり女たちの位牌を守って暮らしていた。
長年喜久治に仕えてきた女中のお時だけ、喜久治の優しさと根性を見抜き今も喜久治の側にいた。
映画『ぼんち』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ぼんち』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
喜久治と市川雷蔵
ぼんちとは“根性がすわり、地に足がついたスケールの大きなぼんぼんのことで、放蕩を重ねても、ピシリと帳尻の合った遊び方をする男”と、原作者の山崎豊子は書いている。
この映画の企画を市川崑監督に持ち込んだのは市川雷蔵本人で、雷蔵は撮影中も喜久治を嬉々として演じていたそうだ。市川監督も“彼にぴったりの適役だった”と言っているが、確かに市川雷蔵の雰囲気には飄々とした上品さを持つ喜久治の姿が重なる。
結局喜久治は性根が優しすぎて“ぼんち”になることは叶わなかったとラストで女中のお時は言うが、果たしてそうなのだろうか。しきたりにこだわり続けた祖母同様、喜久治には喜久治のこだわりがあり、ただのぼんぼんではない聡明さと忍耐強さを持って生きている。そういう意味で喜久治は立派な“ぼんち”だったと認めたい。
豪勢すぎるキャスティングの魅力
本作の見どころが喜久治を取り巻く女たちを演じた女優陣の豪勢な顔ぶれであることは間違いない。
まず喜久治の祖母きのと母の勢以。いつもべったり行動を共にするこの一卵性親娘をベテランの毛利菊枝と山田五十鈴が実に魅力的に演じている。この2人の発声や滑舌の良さに触れると、やはり今の女優とは鍛え方が違うなと感じる。気位の高い相当な曲者きのと、
未だにお嬢様気分の抜けない勢以のコンビは恐ろしくもあるがどこかコミカルで楽しい。
さらに華のある芸者ぽん太を演じた小悪魔的な若尾文子、腹の据わったお福を演じた艶っぽい京マチ子、この時代に洋服を着こなすギャンブル好きの比佐子に越路吹雪をキャスティングする辺りも心憎い演出だ。
市川崑監督は“キャスティングは演出の70%を占める”と言っており“この映画のキャスティングは上手くいった”と自画自賛している。その通りだと思う。
映画『ぼんち』 まとめ
この映画の魅力の一つは綺麗な関西弁で交わされる会話だ。きのと勢以が使う関西弁は独特で、現在耳にする大阪弁とは違う。さらに色街の女たちが使う芸者言葉も非常に美しく、役者陣のしっかりした実力で再現されるこれらの会話はとても心地よい。
市川雷蔵も女優陣も上等の着物を上品に着こなしており、その佇まいにはうっとりさせられる。映画の中で再現される堅苦しい船場のしきたりや作法にも凛とした美しさがある。
脇役にもさりげなく船越英二や中村鴈治郎、北林谷栄などのベテランが配されており、豪華なメインキャスト陣同様、昔の俳優たちの持つ格調高さと底力にはほとほと感心する。
60年前の日本映画界はなんて贅沢な環境にあったのだろうか。いや、環境が良かったのではなくて個々の人間がすごかったのだろう。何とも羨ましい時代だ。日本人ならぜひ本作を観て、日本映画の素晴らしさと日本文化の美しさに触れてみてほしい。
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