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映画『ぼっちゃん』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『ぼっちゃん』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ぼっちゃん』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『ぼっちゃん』の結末までのストーリー
  • 『ぼっちゃん』を見た感想・レビュー
  • 『ぼっちゃん』を見た人におすすめの映画5選

映画『ぼっちゃん』の作品情報

ぼっちゃん

製作年:2012年
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:大森立嗣
キャスト:水澤紳吾、宇野祥平、淵上泰史、田村愛 etc

映画『ぼっちゃん』の登場人物(キャスト)

梶知之(水澤紳吾)
人とのコミュニケーションが苦手で、恋人はもちろん友達もいない独身男性。コンプレックスの塊であり、人の不幸を求めている。8回目の転職で長野の工場に雇ってもらい唯一の友人ができる。
田中さとし(宇野祥平)
梶の唯一の友達。ずっと職場でいじめられていたが、同じ空気感の梶と出会い共鳴する。友情に厚く、どんなことがあっても裏切らない存在。
岡田コウジ / 黒岩シン(淵上泰史)
梶の同期である男性。独身寮でも隣同士だが、初対面の時から高圧的な態度で梶に接する。過去にある事件を起こしており、特殊な性癖を抱えている。

映画『ぼっちゃん』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『ぼっちゃん』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ぼっちゃん』のあらすじ【起】

梶が乗り慣れた秋葉原の駅から向かったのは長野県だった。田舎町の工場で採用が決まり、住み込みで仕事が始まるのだ。孤独のはけ口は掲示板サイトだけである。誰と話すこともなく、たとえ目の前で人が倒れてもなりふり構わず歩き続けるのだった。

派遣の面接は元国体選手の岡田と同時だった。8回目の転職である梶は「もちろん結婚してないよね?」と断定されたことに、内心卑屈になる。体力測定では岡田よりも握力があることに誇らしく思うが、面接が終わってから「握力があるとキツイ仕事をさせられる」と耳打ちされ再び卑屈な思考に追われるのだった。

独身寮に入った梶と岡田は隣同士の部屋に案内された。ようやく一人になった梶はカバンからモザイクのかかった女子高校生の写真を取り出しキスをしようとした。その時、岡田がノックもせずに自分のカバンを置きに来たのである。断り切れない梶は言われるがままファミレスへ一緒に向かった。「ブサイク」と梶を呼ぶ岡田は、偶然同じ店に入ってきた気弱そうな田中も巻き込み、食べ残しと会計を押し付けデリヘル嬢と姿を消すのだった。

岡田に「キチガイ」と呼ばれた二人は友達になった。偶然にも同じ職場である田中は独身寮も隣だった。「捨て駒」と呼ばれるキツイ部署で早々に目を付けられ落ち込んでいる梶を、「鍛えられてる」と田中は励ましてくれる。梶は見えないように無言で掲示板に田中の悪口を書き込んでいたが、無理やり野球に誘われ梶が怪我をした時に手当てしてくれたときは書き込みを削除し信頼をするようになるのだった。

ナルコレプシー(過眠症)を患う田中は興奮すると倒れてしまう。梶に面と向かってバカにされた田中は怒って卒倒しそうになったが、梶が支えてくれたことで怪我をせずに済んだ。二人は笑い合い仲を深めるのだった。その頃、岡田はデリヘル嬢を山奥に連れ込んでいた。首を絞めながら犯したことで、デリヘル嬢は命を落としてしまう。

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映画『ぼっちゃん』のあらすじ【承】

強い物言いの人の前になると自分ばかり守って、その場の歩調を合わせようとする梶の須姿に田中は激怒した。興奮状態になった田中はその場で気を失ってしまう。言い返す言葉のない梶は「僕は嘘つきだ」と小声で言いその場を去る。その頃岡田は、病院で幼馴染の妹・ユリと再会していた。犯人不明の殺人事件で命を落とした幼馴染の話題を切り出した岡田だが、何食わぬ顔でユリをデートに誘う。しかしユリは岡田の名前を「黒岩シン」と呼ぶのだった。

岡田に呼び出されデリヘル嬢の死体がある山奥に連れ出された梶。一人で穴を掘らされ、「人だと思わないようにしていた」物体を黙々と埋める梶は、岡田の言いなりである。帰宅してからプロレスのマスクを被り、「ブサイクを28年もやっていると心もブサイクになる」と自分を卑下した動画を撮影するのだった。

田中と距離を置くようになった梶は再び孤独になった。自分より幸せな人を殺せば幸せになれると呟く梶は、同僚に「負け組」と罵られ仕事を投げ出してしまう。心配した田中は何度も電話し、雨の中外で梶の帰りを待っていてくれた。その姿を見た梶は、思わず田中に抱きついてしまい「一人にしないでくれ」と大泣きするのだった。

梶の部屋に初めて入った田中は壁に貼られた写真に目を止める。恥ずかしがる梶はつい携帯を手に取り本音を打ち込んでしまうが、田中に指摘され素直に謝るのだった。二人は週末にドライブへ行く約束をして、同じ布団で眠りに就いた。

レンタカーを借りて田中が行きたがった昆虫のテーマパークに出向いた二人。偶然にも岡田がユリとデートに来ていた。「別の可愛い女性と居た」と岡田について話しながら、田中手作りのお弁当を食べる二人。その様子はまるでカップルのようである。友情を確かめ合いつつも、梶は「僕たちに足りないのは女の人だ」と夕日に向かって叫ぶのだった。

映画『ぼっちゃん』のあらすじ【転】

岡田はユリを山奥に連れ込み、手錠で車内に繋いだ。徐に荷台に積んでいた瀕死の女性を車の前に広げ、ユリに見えるように犯し始めるのだった。実は岡田コウジという名前はユリの兄のものだった。何とか逃げ出したユリは山の中を彷徨い、偶然にも梶と田中に遭遇する。岡田から逃げるためにかくまってほしいと申し出るユリに対して、困惑する梶と田中。梶は唐突にどちらの部屋に泊まるのかユリに選ばせるが、田中に負けてしまい不貞腐れながら自室に戻るのだった。しかし田中は、岡田が同じ寮にいることをユリに明かしてしまう。逃げようとしたユリを止めるために、田中は思わず告白をしてしまったがその勢いで眠り込んでしまった。その頃、梶の部屋には何事もなかったように岡田はバッグを置きに来たのだった。

翌日、田中は持病が会社にバレてしまいクビになってしまった。田中とユリは一線を越えただろうと思い込んでいた梶は、田中から辞職のことを聞き、自分を裏切ってユリと駆け落ちするのだと勝手に妄想を膨らませるのだった。田中が部屋に戻るとユリは亡くなった兄の話をしてくれた。おどおどと手を繋ごうとした田中の気持ちを察したユリは、優しく手を握り返すのだった。その頃、梶は「ブサイクなのに人を好きになったのは傲慢だ」と卑下し愚痴をこぼすのだった。

映画『ぼっちゃん』の結末・ラスト(ネタバレ)

社食で岡田に話しかけられた梶は思わず「黒岩さん」と呼んでしまった。どんなに暴力を振るわれても口を割らない梶だったが、ユリをかくまっていることを気付いた岡田は田中を追い回す。ユリの勤める病院に逃げ込んでいた田中とユリだが、すぐに岡田が追いついてしまう。岡田の後を追って来た血まみれの梶の姿を監視カメラで見つけた田中は、すぐに治療しながら「ユリと付き合っている」と告白をした。裏切りを許せない梶が大声を出してしまい、岡田に見つかってしまうのだった。

タクシーを使って逃げ切った田中とユリ。ユリのことは好きだが、梶を裏切れないと葛藤する田中。しかしユリはすでに田中のことを好きになってしまっていた。不器用な田中の姿に思わずキスをしてしまうのだった。

岡田に捕まった梶は再び穴を掘らされていた。3体目の死体を放置したとき、岡田は初めての殺人について語り出した。それはユリの兄の死についてである。「願い事一つ叶えてあげようか?」と言う岡田は梶のことをぼっちゃんと呼ぶようになるのだった。

翌日、同僚が淫行罪で逮捕された。人の不幸をもって一つ幸せを手に入れた梶だったが、不遇にも岡田と一緒にリストラにあってしまった。岡田の車に乗り込んだ梶は、田中の居場所を聞き出し「君のせいだ」と伝えた。ホテルに身を寄せていたユリと田中は、梶だと思い込みドアを開けてしまい岡田に襲われてしまう。岡田はユリを襲うように指示するが、梶はそっとスタンガンを当て、ナイフでお腹を指すのだった。部屋の隅で抱き合うユリと田中を横目に「愛だね」と呟きながら、動くことのできない岡田を助手席に乗せ車を走らせた。

梶は秋葉原を目指しているという。「車で突っ込んで、使えなくなったらナイフを使います」と岡田に話した梶は、満点の星空の下で一晩を過ごした。翌日、秋葉原の交差点に着いたとき、岡田はサイドブレーキを降ろして息絶えた。そっとブレーキを上げ直した梶は、何度も大声を上げ続けるのだった。

映画『ぼっちゃん』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

「秋葉原無差別殺傷事件」は実にセンセーショナルなものであった。当作を創作するにあたり、イメージ元となっているとのことだが残忍な殺人シーンなど見ることなく済んで少しホッとした。某ドラマで派遣社員という選択を取り上げているが、所属しない不安感は当作でも垣間見える。梶を最後の選択に追い込み駆り立てた要因は、同じ境遇でなければ理解してあげられないのかもしれない。大森立嗣監督の攻撃的な描き方にはいつも何か気づかされる。(MIHOシネマ編集部)


社会の片隅で生きる“ぼっちゃん”の無垢さと狂気が共存する姿が、観る者に深い不快感と同時に哀しみを与える異色の作品。無職で知的障害気味の青年が社会の闇に巻き込まれていくさまは、他人事とは思えませんでした。特に、ヤクザたちに利用され、最終的に暴力と血に染まっていく過程が胸に残りました。水澤紳吾さんの演技が強烈で、何とも言えない後味を残す作品でした。(20代 男性)


非常に観る人を選ぶ映画だと思いますが、私は強く惹かれました。ぼっちゃんのピュアすぎる視点が、暴力や犯罪と結びつくことで恐ろしいものへと変化していく過程が衝撃的。何が善で何が悪なのかを曖昧にして描くことで、社会そのものの曖昧さを突いています。特に、ぼっちゃんが最後に取る「処刑」のような行動には、人間の限界が見えたようで鳥肌が立ちました。(30代 女性)


この映画の魅力は“居心地の悪さ”だと思う。最初はぼっちゃんの純粋さにほっとするけど、それが周囲の悪意によって利用され、彼自身も狂気に染まっていく過程が恐ろしくてたまらなかった。弱者が弱者のままでいられない社会のリアルを感じました。水澤紳吾の演技がリアルすぎて、ぼっちゃんというキャラクターが実在しているかのような錯覚すら覚えました。(40代 男性)


知的に遅れのある主人公をあえて暴力と犯罪の世界にぶつけていく構成が、とても挑戦的でした。ヤクザの手先として行動するうちに、純粋さが歪んだ形で暴走するラストには、ショックと納得の両方がありました。あの無垢な笑顔のまま、平然と人を刺すぼっちゃんの姿が、逆に一番のホラー。優しさや正義が通じない社会の一面を見た気がします。(50代 女性)


大森立嗣監督らしい、人間の暗部に静かに切り込む作品。ぼっちゃんのような人間が、簡単に利用され、そして“処理”されていく社会の冷たさが刺さりました。ぼっちゃん本人には悪気がない分、その行動がより恐ろしく、どこかで誰も止められなかったことが悲劇を加速させています。終始どこか不穏な空気が漂い、緊張が持続する見応えのある映画でした。(30代 男性)


ぼっちゃんが抱える「無垢さ」は武器でもあり、同時に社会における最大の弱点になる。その二面性を突きつけてくる構成が絶妙でした。彼が暴力に手を染めても、それを単純な加害とは思えないところに、観る者の倫理観が揺さぶられます。被害者であり加害者でもあるぼっちゃんの存在は、私たちが社会的弱者に抱く幻想を崩してくるものでした。(20代 女性)


映画を観終わった後、何とも言えない無力感と後味の悪さが残った。これは決してマイナスではなく、意図的な“感情操作”として非常に成功している証拠。ぼっちゃんというキャラクターを通して、人間の残酷さと無知がどう交差するのかをリアルに描いていました。特に終盤の暴力描写には、恐怖だけでなく「彼には他に道がなかった」という絶望も込められていた気がします。(40代 女性)


この作品は、ぼっちゃんという無垢な存在が社会にとってどれほど都合のいい“使い捨て”かを描いていて、かなり痛烈です。彼がヤクザに使われ、犯罪に手を染め、最終的に破滅していく過程が、まるで現代社会の縮図に思えました。救いがない展開だけれど、それでもぼっちゃんの行動には“誠実さ”があったように思えてしまうのが、また切ないです。(60代 男性)


水澤紳吾さんの怪演がとにかく凄まじい。ぼっちゃんの笑顔、話し方、仕草、すべてが異質で、それがどこか人間の“原始的な部分”に訴えかけてくるような怖さがありました。人間社会のルールの中では、彼のような存在は理解も制御もできない。ラストの殺人シーンも、彼にとってはきっと“正しいこと”だったのだと思うと、言葉を失いました。(30代 女性)

映画『ぼっちゃん』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ぼっちゃん』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国

この映画を一言で表すと?

「社会の片隅に追いやられた若者たちの、叫びと暴走のロードムービー」

どんな話?

児童養護施設で育ったケンタとジュン、そして仲間のカヨが、過酷な現実から逃れるように旅に出る物語。現代社会の不条理や閉塞感の中で、若者たちが居場所を求めてさまよう姿を描いた骨太な青春ドラマです。

ここがおすすめ!

アウトローでありながら純粋な若者たちが抱える痛みや怒りがリアルに描かれ、『ぼっちゃん』と同じく“社会に適応できない者”の視点に寄り添っています。映像と演出も研ぎ澄まされており、強い余韻が残ります。

冷たい熱帯魚

この映画を一言で表すと?

「日常が静かに狂気へと変貌する、実話ベースの衝撃作」

どんな話?

熱帯魚店を営む気弱な男が、カリスマ的な別の店主に取り込まれ、やがて殺人と死体処理の共犯関係に巻き込まれていく。表面上の平和が崩れていく過程が、恐ろしいほど冷静に描かれています。

ここがおすすめ!

登場人物の狂気がリアリズムの中で増幅していく演出は圧巻で、暴力がどこか滑稽にすら見える独特の恐怖が漂います。『ぼっちゃん』同様、無垢さや従順さが加害に転化していく過程に戦慄するはずです。

その男、凶暴につき

この映画を一言で表すと?

「暴力と正義の境界をぶち壊す、北野武の衝撃的デビュー作」

どんな話?

暴力的な刑事がヤクザの抗争に巻き込まれ、非情な制裁を加えていくクライム・ノワール。警察も悪も変わらないという虚無的な視点で、社会秩序の根本を揺さぶる作品です。

ここがおすすめ!

暴力描写の生々しさや登場人物の無表情さは、『ぼっちゃん』のクライマックスと共鳴する要素があります。道徳や倫理を超えて“何かが壊れていく瞬間”を見たい方にぜひおすすめです。

息もできない

この映画を一言で表すと?

「暴力とトラウマの連鎖を断ち切ろうともがく者たちの魂の叫び」

どんな話?

韓国の裏社会で借金取りをしている男が、家庭に問題を抱えた女子高生と出会い、少しずつ心を開いていく。凶暴で不器用な男と、冷めた少女の交流が生む小さな光に涙するドラマ。

ここがおすすめ!

暴力が日常化した男が変わろうとする姿は、『ぼっちゃん』の暴走との対比にもなる良作です。登場人物の感情が生々しく伝わる演出とセリフのない表情のやり取りが、観る者の心を揺さぶります。

赤目四十八瀧心中未遂

この映画を一言で表すと?

「社会からはみ出した人々が、どこにも行けずに漂う痛烈な人間ドラマ」

どんな話?

職を失い流れ者となった男が、アウトローな人々と関わりながら生きる道を模索する。関西の下町を舞台に、生きることに必死な人々の姿を描いた重厚なヒューマン映画。

ここがおすすめ!

社会の外で生きる者たちのリアルな息遣いや、逃げ場のない現実をそのまま突きつけてきます。『ぼっちゃん』と同じく、登場人物の純粋さと危うさが共存しており、観る人の心に強く残る作品です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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