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映画『ぼっちゃん』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ぼっちゃん』の概要:掲示板サイトにしか本音をぶつけられない男。劣等感や孤独を抱えながら派遣社員として住み込みの仕事を始め、ようやく友人を見つけるが予期せぬ出来事から窮地まで追い込まれていく。

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映画『ぼっちゃん』の作品情報

ぼっちゃん

製作年:2012年
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:大森立嗣
キャスト:水澤紳吾、宇野祥平、淵上泰史、田村愛 etc

映画『ぼっちゃん』の登場人物(キャスト)

梶知之(水澤紳吾)
人とのコミュニケーションが苦手で、恋人はもちろん友達もいない独身男性。コンプレックスの塊であり、人の不幸を求めている。8回目の転職で長野の工場に雇ってもらい唯一の友人ができる。
田中さとし(宇野祥平)
梶の唯一の友達。ずっと職場でいじめられていたが、同じ空気感の梶と出会い共鳴する。友情に厚く、どんなことがあっても裏切らない存在。
岡田コウジ / 黒岩シン(淵上泰史)
梶の同期である男性。独身寮でも隣同士だが、初対面の時から高圧的な態度で梶に接する。過去にある事件を起こしており、特殊な性癖を抱えている。

映画『ぼっちゃん』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ぼっちゃん』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ぼっちゃん』のあらすじ【起】

梶が乗り慣れた秋葉原の駅から向かったのは長野県だった。田舎町の工場で採用が決まり、住み込みで仕事が始まるのだ。孤独のはけ口は掲示板サイトだけである。誰と話すこともなく、たとえ目の前で人が倒れてもなりふり構わず歩き続けるのだった。

派遣の面接は元国体選手の岡田と同時だった。8回目の転職である梶は「もちろん結婚してないよね?」と断定されたことに、内心卑屈になる。体力測定では岡田よりも握力があることに誇らしく思うが、面接が終わってから「握力があるとキツイ仕事をさせられる」と耳打ちされ再び卑屈な思考に追われるのだった。

独身寮に入った梶と岡田は隣同士の部屋に案内された。ようやく一人になった梶はカバンからモザイクのかかった女子高校生の写真を取り出しキスをしようとした。その時、岡田がノックもせずに自分のカバンを置きに来たのである。断り切れない梶は言われるがままファミレスへ一緒に向かった。「ブサイク」と梶を呼ぶ岡田は、偶然同じ店に入ってきた気弱そうな田中も巻き込み、食べ残しと会計を押し付けデリヘル嬢と姿を消すのだった。

岡田に「キチガイ」と呼ばれた二人は友達になった。偶然にも同じ職場である田中は独身寮も隣だった。「捨て駒」と呼ばれるキツイ部署で早々に目を付けられ落ち込んでいる梶を、「鍛えられてる」と田中は励ましてくれる。梶は見えないように無言で掲示板に田中の悪口を書き込んでいたが、無理やり野球に誘われ梶が怪我をした時に手当てしてくれたときは書き込みを削除し信頼をするようになるのだった。

ナルコレプシー(過眠症)を患う田中は興奮すると倒れてしまう。梶に面と向かってバカにされた田中は怒って卒倒しそうになったが、梶が支えてくれたことで怪我をせずに済んだ。二人は笑い合い仲を深めるのだった。その頃、岡田はデリヘル嬢を山奥に連れ込んでいた。首を絞めながら犯したことで、デリヘル嬢は命を落としてしまう。

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映画『ぼっちゃん』のあらすじ【承】

強い物言いの人の前になると自分ばかり守って、その場の歩調を合わせようとする梶の須姿に田中は激怒した。興奮状態になった田中はその場で気を失ってしまう。言い返す言葉のない梶は「僕は嘘つきだ」と小声で言いその場を去る。その頃岡田は、病院で幼馴染の妹・ユリと再会していた。犯人不明の殺人事件で命を落とした幼馴染の話題を切り出した岡田だが、何食わぬ顔でユリをデートに誘う。しかしユリは岡田の名前を「黒岩シン」と呼ぶのだった。

岡田に呼び出されデリヘル嬢の死体がある山奥に連れ出された梶。一人で穴を掘らされ、「人だと思わないようにしていた」物体を黙々と埋める梶は、岡田の言いなりである。帰宅してからプロレスのマスクを被り、「ブサイクを28年もやっていると心もブサイクになる」と自分を卑下した動画を撮影するのだった。

田中と距離を置くようになった梶は再び孤独になった。自分より幸せな人を殺せば幸せになれると呟く梶は、同僚に「負け組」と罵られ仕事を投げ出してしまう。心配した田中は何度も電話し、雨の中外で梶の帰りを待っていてくれた。その姿を見た梶は、思わず田中に抱きついてしまい「一人にしないでくれ」と大泣きするのだった。

梶の部屋に初めて入った田中は壁に貼られた写真に目を止める。恥ずかしがる梶はつい携帯を手に取り本音を打ち込んでしまうが、田中に指摘され素直に謝るのだった。二人は週末にドライブへ行く約束をして、同じ布団で眠りに就いた。

レンタカーを借りて田中が行きたがった昆虫のテーマパークに出向いた二人。偶然にも岡田がユリとデートに来ていた。「別の可愛い女性と居た」と岡田について話しながら、田中手作りのお弁当を食べる二人。その様子はまるでカップルのようである。友情を確かめ合いつつも、梶は「僕たちに足りないのは女の人だ」と夕日に向かって叫ぶのだった。

映画『ぼっちゃん』のあらすじ【転】

岡田はユリを山奥に連れ込み、手錠で車内に繋いだ。徐に荷台に積んでいた瀕死の女性を車の前に広げ、ユリに見えるように犯し始めるのだった。実は岡田コウジという名前はユリの兄のものだった。何とか逃げ出したユリは山の中を彷徨い、偶然にも梶と田中に遭遇する。岡田から逃げるためにかくまってほしいと申し出るユリに対して、困惑する梶と田中。梶は唐突にどちらの部屋に泊まるのかユリに選ばせるが、田中に負けてしまい不貞腐れながら自室に戻るのだった。しかし田中は、岡田が同じ寮にいることをユリに明かしてしまう。逃げようとしたユリを止めるために、田中は思わず告白をしてしまったがその勢いで眠り込んでしまった。その頃、梶の部屋には何事もなかったように岡田はバッグを置きに来たのだった。

翌日、田中は持病が会社にバレてしまいクビになってしまった。田中とユリは一線を越えただろうと思い込んでいた梶は、田中から辞職のことを聞き、自分を裏切ってユリと駆け落ちするのだと勝手に妄想を膨らませるのだった。田中が部屋に戻るとユリは亡くなった兄の話をしてくれた。おどおどと手を繋ごうとした田中の気持ちを察したユリは、優しく手を握り返すのだった。その頃、梶は「ブサイクなのに人を好きになったのは傲慢だ」と卑下し愚痴をこぼすのだった。

映画『ぼっちゃん』の結末・ラスト(ネタバレ)

社食で岡田に話しかけられた梶は思わず「黒岩さん」と呼んでしまった。どんなに暴力を振るわれても口を割らない梶だったが、ユリをかくまっていることを気付いた岡田は田中を追い回す。ユリの勤める病院に逃げ込んでいた田中とユリだが、すぐに岡田が追いついてしまう。岡田の後を追って来た血まみれの梶の姿を監視カメラで見つけた田中は、すぐに治療しながら「ユリと付き合っている」と告白をした。裏切りを許せない梶が大声を出してしまい、岡田に見つかってしまうのだった。

タクシーを使って逃げ切った田中とユリ。ユリのことは好きだが、梶を裏切れないと葛藤する田中。しかしユリはすでに田中のことを好きになってしまっていた。不器用な田中の姿に思わずキスをしてしまうのだった。

岡田に捕まった梶は再び穴を掘らされていた。3体目の死体を放置したとき、岡田は初めての殺人について語り出した。それはユリの兄の死についてである。「願い事一つ叶えてあげようか?」と言う岡田は梶のことをぼっちゃんと呼ぶようになるのだった。

翌日、同僚が淫行罪で逮捕された。人の不幸をもって一つ幸せを手に入れた梶だったが、不遇にも岡田と一緒にリストラにあってしまった。岡田の車に乗り込んだ梶は、田中の居場所を聞き出し「君のせいだ」と伝えた。ホテルに身を寄せていたユリと田中は、梶だと思い込みドアを開けてしまい岡田に襲われてしまう。岡田はユリを襲うように指示するが、梶はそっとスタンガンを当て、ナイフでお腹を指すのだった。部屋の隅で抱き合うユリと田中を横目に「愛だね」と呟きながら、動くことのできない岡田を助手席に乗せ車を走らせた。

梶は秋葉原を目指しているという。「車で突っ込んで、使えなくなったらナイフを使います」と岡田に話した梶は、満点の星空の下で一晩を過ごした。翌日、秋葉原の交差点に着いたとき、岡田はサイドブレーキを降ろして息絶えた。そっとブレーキを上げ直した梶は、何度も大声を上げ続けるのだった。

映画『ぼっちゃん』の感想・評価・レビュー

「秋葉原無差別殺傷事件」は実にセンセーショナルなものであった。当作を創作するにあたり、イメージ元となっているとのことだが残忍な殺人シーンなど見ることなく済んで少しホッとした。某ドラマで派遣社員という選択を取り上げているが、所属しない不安感は当作でも垣間見える。梶を最後の選択に追い込み駆り立てた要因は、同じ境遇でなければ理解してあげられないのかもしれない。大森立嗣監督の攻撃的な描き方にはいつも何か気づかされる。(MIHOシネマ編集部)

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