映画『武士の献立』の概要:料理の腕を見込まれ、加賀藩の御料理人、舟木家に嫁いだ春。やる気のない四つ年下の夫を助けつつ、幸せな日々が続いていくと思われたが、藩のお家騒動に舟木家も巻き込まれていく。徳川家をもてなす饗応料理のシーンは圧巻。2013年公開の日本映画。
映画『武士の献立』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ヒューマンドラマ、時代劇
監督:朝原雄三
キャスト:上戸彩、高良健吾、余貴美子、成海璃子 etc
映画『武士の献立』の登場人物(キャスト)
- 舟木春(上戸彩)
- 加賀藩主、前田吉徳の側室貞の女中。料理屋だった生家は火事でなくなり、家族もいない天外孤独の身。料理の腕を見込まれ、御料理人の舟木家に嫁ぐことになる。気が強くはっきりものを言うので、一度商家に嫁いだが離縁された経験あり。夫となった安信からは古狸と呼ばれている。
- 舟木安信(高良健吾)
- 長兄の急な死によって家を継がねばならなくなったが、本意ではないのでまるでやる気なし。剣の腕はかなりのもので、通っている道場の一人娘佐代を好きだったが、家督を継ぐために諦めた。
- 舟木伝内(西田敏行)
- 安信の父。料理研究に熱心で、後に数々の加賀料理のレシピ本を書いている。春の確かな味覚に感心し、武士でありながら土下座までして息子の嫁に来てくれと懇願した。
- 今井定之進(榎本佑)
- 安信の親友にして剣のライバル。佐代と結婚している。加賀藩のお家騒動に安信も巻き込もうとした。
映画『武士の献立』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『武士の献立』のあらすじ【起】
加賀藩江戸屋敷で側室お貞の方様の女中として働く春は、奉公前は浅草の料理屋の娘だった。生家は火事で焼け、その時に家族も失った。奉公して15年、お貞の方様を母のように慕い、ずっと仕えたいと願っている。そんな中屋敷で宴席があり、藩主吉徳は、御料理人舟木伝内の作った『つるもどき』の一椀の中身を当ててみよと皆に問いかけた。
誰も正解を答えられない中、春は見事に言い当てる。その様子を見て、伝内は大きく心を動かされた。
伝内から息子の嫁にと唐突に申し込まれた春だが、即座に断った。実は一度結婚に失敗している。気が強く生意気だと、嫁ぎ先の商家から一年で離縁されたのだ。諦めきれない伝内は、わざわざ屋敷まで訪れて春に懇願する。四つも年上の出戻りだと言ったが、それでも構わないと言われ、ついに春は嫁ぐ決意を固めた。
映画『武士の献立』のあらすじ【承】
長兄の死によって、嫌々家督を継ぐことになった安信は、嫁の春が来るといってもあまり嬉しそうではなかった。藩主の食事を作るという大切な職務であると分かってはいるが、武士としての身分は低く、包丁侍などと揶揄されている。剣の腕を上げ、その実力で藩に奉公したいと願っていたがもう無理だ。しかも父が選んだ春を娶らなければならない。そんな安信に冷たくされても春は、自ら台所に立って健気に若妻らしく振る舞う。
やる気がないせいなのか、安信の料理はあまり旨くない。縁者を集めての振る舞い料理の席で、春はつい安信の料理に手を加えてしまう。春の料理したものを褒められ、安信は怒った。謝りはしたが春は怯まず、あなたの熱意がないせいだと言い切り、料理の腕比べを提案した。春が負けたら離縁、勝ったら安信に料理指南をするという賭けだ。
結果、負けた安信は、素直に春の指南を受け入れ、日々腕を上げていく。
映画『武士の献立』のあらすじ【転】
幸せな日々が続くかと思ったが、ここで後に江戸時代の三大お家騒動と言われた、加賀騒動が持ち上がる。藩の改革を進めていた前田吉徳の死後、それまで寵愛されていた改革派の大槻が冷遇され、それに怒った安信の親友今井定之進は重臣の暗殺を企む。
いよいよ決行の夜、安信は刀の手入れをし、定之進の元に駆けつけようとしていた。それを知った春は、何としても安信を生かしておきたい一心で、刀を抱えて家を逃げ出す。
定之進は死んだが、春の機転で安信は生き延びた。武士の面目をつぶされたと、怒りのあまり春を手打ちにしそうな安信だったが、父伝内が病に倒れ、それどころではなくなる。
病の床で伝内は、藩が平和になるのは武力ではなく、和を保つことが何よりで、そのための宴席だと安信を諭す。そして能登の地に、饗応料理の食材を探しに行くよう安信と春に命じた。長くて辛い旅になった。けれど文句も言わずともに旅する春の姿に、安信は深く心を打たれる。
映画『武士の献立』の結末・ラスト(ネタバレ)
饗応料理では伝内が頭取、安信が頭取補佐だった。徳川家はじめ、他藩の賓客を迎えての宴席だ。加賀藩の面目を保つためにも失敗は許されない。
見事に料理を仕上げ、皆から称賛された安信は、喜んで春に報告しようとするが、帰った家に春の姿はなかった。定之進の妻だった佐代のお咎めが解かれ、この地に戻ったと春は義母から聞かされた。安信が今でも大切に、佐代の簪を隠し持っていることを知っている。武家の娘でもない自分より、佐代のほうが安信には相応しい。そう思って自ら別れたのだ。
その後、能登の海女小屋で春はひっそりと働いていた。そこに安信が現れる。
佐代を好きだったのは事実だが、今はおまえが一番大切だと、安信は火の中に簪を投げ入れる。春を連れてでないと、帰ってくるなと伝内に言われたそうだ。旅支度を調え、春は安信とともに家に向かう。もうわだかまりもなく、二人の姿は晴れやかだった。
映画『武士の献立』の感想・評価・レビュー
けして悪いドラマではないが映画にするような内容だとはとても思えない。山田洋次一門の朝倉監督らしい人情劇で演出力も確かで嫌味もなく観やすい。しかしながらこの界隈の映画ではこの世で一番大変なことは、嫁さんが出ていくことなのだろうか。確かに人生で起こりうる一番大変なことである可能性は高いが、それはそんなに何度も映画で観なきゃならないものだろうか。脚本家としてそれで納得しているのか不思議に思う。(男性 30代)
江戸時代、武士の料理人に嫁いだ主人公だが夫は料理が出来ず夫の料理の腕を上げるために頑張る物語です。武士の家計簿の続編みたいになっているので観たのですが、ストーリーがダラダラと続いていてテンポが足りなかったです。
一部の役者が棒読みみたいになっていたのも気になりましたが、メイン2人はさすがベテランでした。妻が上手く夫を手の平で転がす感じは夫がいる人には参考になります。(女性 30代)
台所役として刀ではなく包丁を握る安信は、料理の腕はいまいちでした。そんな中、思いがけず舟木家に嫁ぐことになった春は、その味覚の才能から夫の安信に料理の特訓を始めます。安信はお役目と本来の武士のあり方の葛藤を抱えながら、それを乗り越え、一人前に成長していくシーンは見どころです。
上戸彩の演じる春の、時に厳しく、また献身的に夫を支える姿に妻としての強さを感じました。支えてくれる人の存在が人生に大きな影響を与えることを実感し、大人向けの作品になっていると思います。(男性 20代)
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