映画『クラッシュ(2004)』の概要:冬のロサンゼルスを舞台に様々な立場にいる人々の1日半を描いた群像劇。登場人物たちが微妙に繋がっていく秀悦な構成で、監督・脚本・製作(合同)を勤めたポール・ハギスは第78回アカデミー賞作品賞と脚本賞を受賞した。
映画『クラッシュ』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ポール・ハギス
キャスト:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ジェニファー・エスポジート etc
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映画『クラッシュ』の登場人物(キャスト)
- グラハム(ドン・チードル)
- ロス市警の黒人刑事。貧困層の母親は荒んだ生活をしている。弟は前科3犯で現在行方不明。
- リア(ジェニファー・エスポジート)
- 公私ともにグラハムの相棒。父はプエルトリコ、母はエルサルバドル生まれ。
- ライアン(マット・ディロン)
- ロス市警の白人警官。勤続17年のベテラン。人種差別主義者。父の介護をしている。
- トム(ライアン・フィリップ)
- ライアンの相棒の白人警官。ライアンのひどい人種差別に怒りを感じて相棒をやめる。
- リック(ブレンダン・フレイザー)
- 検事。有権者の票集めを最優先に考えて動く。白人のエリート層。
- ジーン(サンドラ・ブロック)
- リックの妻。神経質でヒステリック。実は深い孤独を感じている。
- アンソニー(クリス・“リュダクリス”・ブリッジス)
- 黒人青年。銃を使って自動車強盗を繰り返し、それを闇ルートで売っている。過剰なほど差別の眼差しに敏感で、被害妄想気味。
- ピーター(ラレンズ・テイト)
- アンソニーの相棒。聖クリストファー像のミニチュアをお守りとして持っている。
- キャメロン(テレンス・ハワード)
- テレビ局の演出家。温厚なエリート層だが内心は黒人であることにコンプレックスを持っている。
- クリスティン(タンディ・ニュートン)
- キャメロンの妻の黒人女性。ライアンにセクハラまがいの不当検問を受けて深く傷つく。またそれに抗議しなかった夫の態度に怒りを感じる。
- ダニエル(マイケル・ペーニャ)
- 鍵の修理工。妻と5歳になる娘がいる。メキシコ系でタトゥーも入っているためギャングと勘違いされやすいが、家族思いの心優しい父親。
- ファハド(ショーン・トーブ)
- 雑貨店を営むペルシャ系移民。アラブ系と混合されやすく、神経過敏になって銃を購入する。英語が話せない。
- ドリ(バハー・スーメク)
- ファハドの娘。優秀で冷静沈着。両親を大切にしている。
映画『クラッシュ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『クラッシュ』のあらすじ【起】
クリスマス間近のロサンゼルス。ファハドと娘のドリは店で銃を購入する。しかし店主はファハドをアラブ系だと勘違いして差別的に扱い、ファハドを怒らせる。ドリは冷静に対応して「赤い箱の銃弾」を買う。
検事のリックは妻のジーンと街を歩いていた。ジーンは黒人青年のアンソニーとピーターを見てとっさに目をそらす。偏見の目に敏感なアンソニーはジーンに怒りを感じ、ピーターとともに2人に銃を突きつけ高級RV車を奪う。
ロス市警の刑事グラハムと相棒のリアは麻薬捜査官のコンクリンがハリウッド署の黒人刑事ルイスに発砲して死亡させた事件の捜査を担当する。
自宅へ帰ったリックは自分の立場ばかり気にしていた。ジーンは玄関の鍵を取り換えに来たダニエル悪党と決めつけ、翌朝もう一度全ての鍵を取り換えろとリックに怒鳴り散らす。
巡回中のライアンとトムはリックのRV車を探していた。しかしライアンはわざと黒人のキャメロンが運転するRV車を止める。キャメロンは温厚に対応するが、ライアンは武器の所持検査と称して妻のクリスティンにセクハラし、夫婦に露骨な嫌がらせをする。トムはそんなライアンに怒りを感じる。クリスティンはライアンに抗議しなかった夫を激しく罵る。
映画『クラッシュ』のあらすじ【承】
自宅へ戻ったダニエルは5歳になる娘が銃声に怯えてベッドの下に潜り込んでいるのを見つける。ダニエルは娘を安心させるために妖精からもらった何も通さない透明マントの話をする。その話を信じた娘に架空の透明マントを着せてやる。
アンソニーとピーターはRV車を売りに行く途中で中国人男性を轢いてしまう。2人は車に挟まった男性をひきずり出し、病院前に放置して逃走する。血のついた事故車は買い取ってもらえず、処分される。
ファハドが営む雑貨店は裏口のドアが壊れていた。鍵の修理で呼ばれたダニエルは“ドアを換えないとダメだ”と説明するが、ファハドには伝わらない。ファハドは“金は払わない”怒り出し、ダニエルも腹を立てて帰ってしまう。
ライアンは父の介護で睡眠不足が続いていた。保険会社へ主治医変更の相談に行くが、担当の黒人女性を侮辱して追い出される。ライアンは父のことで黒人に恨みを持っていた。
ファハドの店が何者かに荒らされてしまう。さらにこれはドアを交換しなかったファハドの過失とされ、保険金もおりない。ファハドは全てダニエルのせいだと逆恨みする。
母親に対して冷たすぎるとリアになじられ、グラハムは実家を訪ねる。荒んだ生活をする母親はできの悪い行方不明の弟のことばかり心配し、優秀なグラハムには冷たかった。
映画『クラッシュ』のあらすじ【転】
黒人のキャメロンは職場でも多くの我慢を強いられていた。クリスティンは仕事場まで行ってキャメロンに昨晩の自分の暴言を謝るが許してもらえない。その帰り、クリスティンは事故を起こし、反転した車内に閉じ込められる。
ライアンはトムに相棒を解消され、別の警官と事故現場へ急行する。しかしクリスティンは助けに来たライアンを強く拒絶する。ガソリンの漏れた現場は危険な状態で、彼女を一刻も早く車外へ救出する必要があった。ライアンは彼女を落ち着かせ、間一髪で救出に成功する。クリスティンは命がけで自分を助けてくれたライアンに感謝する。
コンクリンの事件には警察の内務捜査が入っていた。射殺されたルイスの車内からは大金が見つかり、彼がコカイン中毒者だったこともわかる。しかしコンクリンは過去に2度黒人に対する発砲事件を起こしており、リックは点数稼ぎのためにコンクリンを起訴したいと考えていた。グラハムも保身のためコンクリンを犯罪者にする片棒を担いでしまう。
キャメロンはアンソニーとピーターに銃で脅され、もみ合いとなる。そこへパトカーが来て、キャメロンはアンソニーを車に乗せたまま逃走する。キャメロンの怒りはついに爆発し、銃を構えた警官に反抗的な態度をとる。現場にいたトムはキャメロンを“友人だ”と言ってかばい、同僚を説得してキャメロンを逃がしてやる。
映画『クラッシュ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ファハドは帰宅したダニエルに銃口を向ける。それを見ていた娘は“パパはマントを着ていない”と言ってダニエルの前に飛び出して行く。その瞬間銃声が鳴り響く。しかし背中を撃たれたはずの娘には傷ひとつなかった。ファハドは“天使が私を守りに来てくれた”と感謝する。実はドリが買った「赤い箱の銃弾」は空砲だった。
ピーターはヒッチハイクをしてトムの車に乗せてもらう。トムが自分と同じお守りを飾っているのを見て、ピーターは笑い出す。不機嫌になったトムにピーターは自分のお守りを見せようとして、銃と勘違いされ射殺される。自分の間違いに気づいたトムはピーターの死体を草むらに放置し、車を燃やす。車が燃える空き地を偶然訪れたキャメロンは電話でクリスティンと仲直りする。
グラハムは若者の死体が発見された現場へ向かう。死体は弟のピーターだった。母親は嘆き悲しみ、グラハムをなじる。グラハムは母親の冷たい言葉に傷ついていた。現場に戻ったグラハムは弟のお守りを見つける。
自宅で怪我をしたジーンはセレブ仲間よりも、軽蔑していた貧困層の家政婦が優しく看病してくれたことに感動する。彼女は家政婦を抱きしめ“あなたは親友よ”と告げる。
アンソニーは自分が轢いた中国人の車の荷台にアジア系の不法移民が大勢乗せられているのを見つける。アンソニーは人身売買されるはずだった移民たちを街で解放してやる。
映画『クラッシュ』の感想・評価・レビュー
監督のポール・ハギスがこの映画を伝えたかったことが痛いほど伝わってきました。
誰もが誰かに傷つけられ、傷つけた誰かは誰かに手を差し伸べ、傷ついた誰かも誰かに癒やされる、複雑に交錯したたくさんの登場人物はやがてそれぞれその事に気付きます。
観終わった後、無性に人に優しくしたくなりました。
嫌いな人も腹が立つ人も、どこかで誰かにはやさしい人だと思えるようになるから。
心がささくれ立っている時にお勧めします。
映画の宣伝通り、温かい涙が流れるはずです。(女性 40代)
当時、アカデミー賞で話題になりました。
まさしく群像劇です。様々な視点から繰り広げられるヒューマンドラマで、派手な演出もなく、淡々と展開する様子は退屈に感じられる方も多いかもしれません。しかし、だからこそ感情移入が出来て、涙を流すことができるのでしょう。
人間の汚さと綺麗さの対比がわかりやすく描かれていております。
綺麗事のように聞こえるかも知れませんが、本当の意味で‘心が洗われる’とはこの事なんだと感じられました。(女性 20代)
監督が何を伝えたくて、どうしてこの作品を作ったのか。見終わった時に自分の考え方や価値観について物凄く考えさせられる作品でした。
「人種差別」って日本でも少なからず経験したことがあると思います。しかし、白人と黒人の差別の意識が根強いアメリカでの「人種差別」は日本人の私には到底理解できるものではなく、それに対して何か思ったり意見するには、何故その差別があるのかもっと学ぶ必要があると思っていました。
しかし、今作を見て感じたのは何かを学ぶことももちろん大切ですが、人は一人では生きていけないということです。自分自身が誰かに助けられながら、支え合いながら生きていることを忘れてはいけないなと感じました。(女性 30代)
アン・リーの「ブロークバック・マウンテン」を差し置いてアカデミー賞を勝ち取ったということで期待していた作品だった。グローバルな社会に溢れる人種に基づく偏見を分かりやすく炙り出したかと思ったら、「人種差別主義者はこうである」という自分が持っていたステレオタイプが見事に自分を罠にはめた。
もしかしたら偏見を持っているのは自分かもしれないと恐ろしくも自覚させてくれた本作の細やかなトリックが凄い。接点のない多様な人々を上手く繋げていって、見事に組み立てられたストーリーだと感心してしまう。(女性 20代)
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