映画『冷たい熱帯魚』の概要:2010年制作のサスペンス映画。監督は園子温。出演は吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、渡辺哲、諏訪太郎など。埼玉愛犬家殺人事件を元にした内容は残虐描写も多く、レイティングはR18指定になっている。
映画『冷たい熱帯魚』 作品情報
- 製作年:2010年
- 上映時間:146分
- ジャンル:サスペンス、ホラー
- 監督:園子温
- キャスト:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵 etc
映画『冷たい熱帯魚』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『冷たい熱帯魚』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『冷たい熱帯魚』のあらすじを紹介します。
2009年1月14日。小さな熱帯魚店を経営する社本信行(吹越満)とその妻の妙子(神楽坂恵)は、娘の美津子(梶原ひかり)がスーパーで万引きをしたという通報を受ける。美津子を引き取りに行った二人は、そこで村田幸雄(でんでん)という男と出会う。村田はスーパーの店長と知り合いであり、美津子の万引きの件を穏便に収めてくれたのだ。
これをきっかけとなり、社本一家は村田と交友を持つようになる。村田はアマゾンゴールドという巨大な熱帯魚やを経営しており、そこで美津子もバイトとして働くようになる。
しかし、実はこの村田という男は人を殺しては保険金を奪っていく恐ろしい人間なのであった。押しの強い強引な村田に引っ張られ、人の良い社本はいつの間にか村田の悪事に加担していくようになる。次々と邪魔者を殺害していく村田の姿に恐怖を覚えながらも、逃げ出す勇気を持てない社本。社本は村田の指導の元、死んだ死体の処理・始末までもやらされていく。感覚が麻痺し始めて来た社本は、もはや村田の手先に過ぎない存在になり果てていた。やがて村田の魔の手は、社本の家族にまで及ぶに至ると、さすがの社本も危機感を覚える。
果たして社本は村田の手から家族を守る事が出来るのか……。そして社本は生きて逃げ出す事が出来るのだろうか……。
映画『冷たい熱帯魚』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『冷たい熱帯魚』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
園子温監督、渾身の劇薬ムービー
衝撃的な作風で知られる園子温監督の、最も過激な作品と言えるのが今作の「冷たい熱帯魚」。埼玉愛犬家殺人事件を元にしたストーリーは衝撃的であるが、今作のえげつなさはその徹底的な残虐描写である。
前半はまったく普通なのだが、後半になるにつれてR18指定も納得の映像が羅列される。特に死体を処理する描写に関しては、一切省略せずに、そのままリアルに描いているという点は特筆すべきだろう。風呂場で死体を細切れにするシーンの残虐性のインパクトは凄まじく、人は死んだらただの肉なのだという事実をこれでもかと観客に叩きつけて来る。
しかもこれは実話を元にしているのだ。映画とはあくまで現実の模倣であり、実際の事件はもっと残虐な事をしているのだと考えると、人の恐ろしさを心底感じざるを得ないだろう。これらの事実から一切目を背けなかった演出力は評価に値すべきだ。
しかし、あまりの残虐性から見る人を選ぶ作品になっているのは否めないが。
しゃべりまくるハイテンションなシリアル・キラー像
今作のもう一つの魅力が、でんでん演じる村田という殺人鬼像だろう。過去、様々な映画でシリアルキラー像が描かれてきたが、これほどテンションが高くて下劣な男は見た事がない。こう言っては失礼だが、村田ははっきり言ってただのハゲで下品な中年男性に過ぎない。しかしその押しの強さと、洪水のように溢れ出て来る言葉の数々は催眠術のような効果を持っており、まるで押し売りをする悪質業者のような恐ろしさまで感じる。主人公の社本が言うがままに動いてしまうのも理解できるくらいであり、言葉というのも一種の暴力なのだと実感させられた。
結局社本は、村田に対抗するためには暴力に頼らざるを得なくなる。暴力には暴力でしか対抗出来ないのだという結論は、サム・ペキンパーの「わらの犬」のパターンでもあり、今作のパッケージ写真は同映画のダスティン・ホフマンへのオマージュにもなっているのも見逃せないだろう。
正直グロイシーンが多くあり、ずっと直視することはできなかった。これが実際の事件を元に制作されているというのが衝撃的である。キャストの演技が上手いからこそ、リアルさが加わって余計に恐怖を感じた。
村田幸雄役を務めたでんでんさんの演技が凄かった。優しいおじさんに見えたので、どんどん本性を現して暴力的になっていくのが怖かった。村田の元から逃げ出せなかった社本信行の気持ちは分からなくはないが、逃げ出して欲しかったなと思う。最後まで辛い物語だった。(女性 30代)
園子温監督作品の中でも比較的有名な作品。園子温監督といえば、グロテスクなシーン満載のサスペンスホラーといったイメージだが、この作品もまさにそのイメージそのもの。観るのには相応の覚悟が必要である。
おちゃらけたイメージのあるでんでんだが、邪魔者は殺してバラバラに解体、人間を容易く「透明にする」というなんとも恐ろしい役を上手くこなしている。彼への印象は間違いなく変わるだろう。そして、この作品の最も恐ろしい点は、これが実話であるという点である。興味本位で軽く観れる作品ではないが、忘れられない作品になるだろう。(女性 20代)
どこにでも居そうなごく普通のおじさんが、残虐な連続殺人犯だったというお話。しかも、実際に起きた事件を元にしているためこんな事が実際に…?という驚きと、近所に居そうなおじさんの衝撃的すぎる行動に今まで感じたことの無い恐怖を覚えました。
人の良さにつけこみ、恐怖心を与え、洗脳していく村田の姿はまるで悪魔です。逃げればいいのに、通報すればいいのにと簡単に言いますが本人が感じる恐怖や強迫観念は尋常ではないのでしょう。
人間の心の闇や怖さをひしひしと感じる作品でした。(女性 30代)
映画『冷たい熱帯魚』 まとめ
大人が楽しむ劇薬エンターテイメントムービー「冷たい熱帯魚」。その異様なハイテンションで最後まで観客の心を摑んで離さない。しかし残虐描写が半端ではないため、万人にオススメ出来る映画ではないが、それなりに耐性がある人なら是非鑑賞して欲しい一作である。本当に恐ろしい事態に向き合った時、人はなすすべもなく奴隷と化してしまうという過程を追体験できる稀有な映画でもある。是非ともゾッとした気分を味わって頂きたい。
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