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映画『CURE キュア』あらすじとネタバレ感想

映画『CURE キュア』の概要:世界的に高い評価を受ける黒沢清監督作品。サイコ・サスペンスでありながら、「癒やし」がテーマになっているという重厚な作りが特徴である。

映画『CURE キュア』 作品情報

CURE キュア

  • 製作年:1997年
  • 上映時間:111分
  • ジャンル:サスペンス
  • 監督:黒沢清
  • キャスト:役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈 etc

映画『CURE キュア』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『CURE キュア』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『CURE キュア』のあらすじを紹介します。

刑事の高部(役所広司)は、殺人事件が起きたホテルに向かっていた。被害者は女性。現場に高部が着くとすでに現場検証が始まっている。被害者はベッドに仰向けで、すでに亡くなっていた。容疑者はホテル内ですぐに見つかり逮捕された。手口は刃物を使った猟奇的なもので、被害者の首にはX字の大きな切り傷があった。奇妙なことに、これと同様の手口の事件がここ2ヶ月で3件起きていた。しかも、犯人はそれぞれの事件で別人で、それぞれに接点は見つかっていなかった。

高部の友人で精神科医の佐久間(うじきつよし)は、取調べ時の犯人を撮影されたビデオで見て、特に異常は無いと所見を述べる。佐久間によれば、犯行はただ魔が差しただけで、手口の一致は偶然では、と言うが、高部は納得できできないままでいた。

高部はもうひとつの悩みを家庭に抱えていた。妻の文江(中川安奈)が精神病を患っているということであった。彼女は、佐久間が紹介してくれた病院に通っていたが、病状はまだ改善していなかった。

そんな中、高部は事件の確信に迫っていくが、そこで触れた真実は思いもよらぬものだった。

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映画『CURE キュア』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『CURE キュア』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

「癒やし」とは

本作はホラー映画で知られる黒沢清監督のサイコ・サスペンスである。 サイコ・サスペンスという映画は世界中で数多く撮影されているテーマであるが、こと日本映画においてはサイコ・サスペンスというジャンル映画は数少ないのが実情である。本作はそんな数少ない日本映画におけるサイコ・サスペンス映画であるとともに類まれなる完成度を誇る名作でもある。

サイコ・サスペンスというジャンルにおいて得られる恐怖というものは、ホラー映画のそれとはまたちょっと違ったものである。それはある程度リアリティーラインが我々の生活のそれと近いからである。 例えば殺人事件と言う題材は日々テレビのニュースで語られるだけでなく、身の回りにいつ起こってもおかしくないものである。しかしながら、ホラー映画に出てくるような幽霊と言う存在は正直、現実離れしているというのが実際であろう。もちろん霊感があって、実際に霊が見えると言う人にとってみればリアリティーがあるのかもしれないが、そういう人はごく少数である。

本作によって描かれる恐怖というものは、人間誰しもが自分の中に持っている両面性をこれでもかとつきつけてくるところにある。それは映画のタイトルにも表れているのだ。凄惨な殺人事件という思いテーマを扱いながらも、映画のタイトルはCURE(癒し)なのだ。

崩壊する世界

黒沢清監督作として最も有名なのは「回路」であろう。それと同様今作においても最後に迎える結末はある種、破壊的、破滅的と言ってしまっても良いものである。すべてのものが崩壊に向かうと言うこと自体は恐怖なのかもしれないが、それで全てから解放されるという視点においてはそれは真の自由を獲得するということなのだ。破壊という行為が癒しにつながると言う意外性が本作の価値を高めている。


最初にあのセリフを入れたことで、見る人は「催眠術」にかかっていても「殺人」は犯さないという意識が植え付けられてしまうので、この作品で起こること全てに何故?誰が?と疑問を持ってしまうでしょう。
そして、その真実が明らかになった時に「催眠術」の謎が解け、そういう事だったのかと納得するはずです。最初のフリに惑わされなければ比較的簡単に想像出来てしまうので、最初のセリフはかなり重要でした。
結末という意味で謎は理解出来ましたが、それ以外にも分からない点や回収されていない伏線もあり、何度も見たくなる作品です。(女性 30代)


本作は、連続殺人事件の現場に残されたXの文字と記憶障害を患う謎の男とそれを追う刑事を描いた黒澤清監督による日本のサイコサスペンス作品。
長回しで終始不穏な雰囲気、観ているこちらも気が狂いそうな感覚に陥る。
記憶障害を患う間宮の謎めいた言動が高部を追い詰めていく様子に目が離せなかった。
上手く相手の深層心理に入り込んでいく間宮のような人間には出会いたくないと思った。
ハッキリと描かない哲学的で不気味な終わり方も好みだった。(女性 20代)

映画『CURE キュア』 まとめ

黒沢清監督の作品はいつもどこかに破壊的な香りが漂っている。こういったテイストはもちろん万人に受けいれられるようなものではない。しかも、その強烈な個性ゆえに初見時は抵抗を覚える人がいるのも間違いない。しかし、ある種哲学的とも言えるような映画作りの姿勢そのものに感銘を受けたが最後、黒沢監督の作品に引き込まれてしまうのは間違いないと言っていいだろう。さきのカンヌ国際映画祭「ある視点部門」において監督賞を受賞したことも記憶に新しい黒沢監督であるが、これからも新たな地平を切り開いてくれるのではないかと期待せずにはいられない。難解な映画こそ考察のしがいがあるのだし、思考停止せずに深く楽しんでもらいたい。

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