映画『誰も知らない(2004)』の概要:世界的に高い評価を受ける是枝裕和監督の作品。柳楽優弥が当時、最年少でカンヌ国際映画祭 最優秀主演男優賞を獲得したことでも話題を呼んだ。
映画『誰も知らない』 作品情報
- 製作年:2004年
- 上映時間:141分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:是枝裕和
- キャスト:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子 etc
映画『誰も知らない』 評価
- 点数:100点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『誰も知らない』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『誰も知らない(2004)』のあらすじを紹介します。
子供4人に母(YOU)ひとりの母子家庭。アパートに引っ越す際も人目に付かないようにひとりひとりがスーツケースに隠れてこっそりと新居のアパートにやってきた一家は、周囲の視線を気にして家族構成を秘密にし続けていた。というのも、子供たちはそれぞれ父親が違い、おまけに出生届すら出されておらず、学校にも通っていなかったからだ。
母は新たな恋人ができると、それを境にほとんど帰宅しなくなるという癖があった。たまに生活費を渡すだけで、あとは放置するのだった。三人の弟妹の面倒をみるのは長男の明(柳楽優弥)だった。彼は小学校に通っていたとしたら五年生。身よりもない明は母から渡された生活費だけを頼りにしていた。
やがて母は完全に姿を消してしまう。電気や水道が止められ、食料を買うこともできない環境の中で、子供たちは懸命に生き延びるため、生きるすべを見出していく。いつしか明はコンビニの店員と親しくなり、廃棄予定の弁当などを分けてもらうようになり、洗濯物や飲水は公園の水道で済ますようになった。
しかし、4人の運命は徐々に破滅の色合いを濃くしていくのだった。
映画『誰も知らない』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『誰も知らない(2004)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
映画を観て涙するということ
映画を観て涙することがパッケージ化されるようになって久しくなってしまった日本映画界。「泣ける映画」などという気味の悪い宣伝文句が並ぶようになってしまった。映画を観て泣くことを否定しているわけではない。「泣くこと」それ自体を目的にして、観客にそれを強制することに問題があると言っているのだ。何かの映画を観て、「あれ泣けたよね」などとお互いに確認しあっているうちはそれは真の感動ではない。よさ気な映画を見て泣いている自分というものをメタ的に捉え、それによっているに過ぎない偽善的行為である。
本作を観た人々の反応は様々である。涙をながす人も居れば、ずしりと心に残る重いものを抱える人も居る。涙を流すにしても、所謂「泣き所」のような無粋な演出は一切ない。徹底的に抑えられた演出の中で、子どもたちが自ら考え、息をしているようにしか見えないのである。加えて、本作がテーマにしている事件は実際の事件を下敷きにしたものであることが、より我々の心に爪痕を残している。
さらりと描く作風
先述のように、本作においては泣かせ演出と呼べるようなものはない。すべてが淡々と、そしてさらりと描かれている。なのに、観客の心には重いものが残るのだ。これはひとえに観客が無意識のうちに、登場人物たちの人生を想像し、そこにあるどうしようもないやるせなさや切なさにやられてしまうからである。
映画監督のクエンティン・タランティーノが絶賛しただけでなく、本作は世界中の人々に愛されている。本作は間違いなく、日本映画史上最高傑作のひとつであると断言する。そして、こういった作品が生まれる日本という風土を素直に誇りに思いたい。
柳楽優弥の出世作となったこの作品。彼の切れ長な目と、心を見透かされるような瞳がとても綺麗で、その純粋な瞳にまだ子供なんだという事実を思い知らされ、上手く言い表せない複雑な感情でこの作品を鑑賞しました。
こういう作品を見ると、普通は子供が可哀想だ、親が悪いという結論に至るのだと思いますが、私は親も誰かに頼りたかっただろうし苦しんでいたのだろうと同情してしまいました。
何かありそうな隣人とは関わりたくないのが本音だと思います。しかし、何かに気づいているのに見て見ぬふりをするのは、育児放棄をした母親と同罪なのかなと思ってしまいました。(女性 30代)
映画『誰も知らない』 まとめ
本作においても、是枝裕和は独特の演出を子どもたちに施している。それは事前に台本を渡さないということ。ドキュメンタリー出身の彼らしく、そこに作り物臭さは徹底的に排除されている。それゆえ、映画は強烈な説得性を持ってこちらに迫ってくる。
本作でカンヌ国際映画祭 最優秀主演男優賞を受賞するほかにも、「そして父になる」で審査員賞を獲得するなど、是枝裕和監督の評価は非常に高い。惜しくもカンヌでの受賞こそならなかったものの、最新作の「海街diary」も大傑作であった。良き日本映画のダイナミズムを受け継ぐ一人であることは言うまでもない。我々の価値観や実存を揺さぶりうるメディアのひとつ、それこそが映画なのだ。映画は恐ろしく、すばらしいのだ。
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