この記事では、映画『奪還者』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『奪還者』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『奪還者』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:アクション、サスペンス
監督:デヴィッド・ミショッド
キャスト:ガイ・ピアース、ロバート・パティンソン、スクート・マクネイリー、デヴィッド・フィールド etc
映画『奪還者』の登場人物(キャスト)
- エリック(ガイ・ピアース)
- 農民。本当かどうかは不明だが、妻と浮気相手を殺した過去を持つ。射撃が得意。寡黙。
- レイ(ロバート・パティンソン)
- 強盗団の一員。兄のヘンリーも強盗団の仲間。元々はヘンリーと共に鉱山で働こうとしていた。考えることが苦手。
映画『奪還者』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『奪還者』のあらすじ【起】
世界の経済破綻から10年後、オーストラリアの街は荒廃していた。エリックが寂れたバーでお酒を飲んでいると、自動車事故を起こした3人の男達が、自分の愛車を奪っていくのが見えた。エリックは男達が乗り捨てた車に乗り、後を追いかけた。ぶつかりそうなほど近くに寄るが、当てることはなかった。エリックは男達の車と並走して走り、姿を目に焼きつけた。銃で撃たれそうになるとスピードを落とし、後ろをついて走った。男達はエリックが何をしたいのか分からず戸惑った。男達は車を停車させると、銃を持ってエリックと相対した。エリックは銃を恐れることなく男達に向かって行き、車を返して欲しいと頼んだ。しかし、殴られ、気絶してしまう。
目を覚ましたエリックは、車を走らせながら愛車を探した。途中で寂れた小売店にも立ち寄って目撃情報を求めるが、店主から知らないと言われる。近くの民家にも立ち寄った。しかし、エリックが目撃情報を尋ねても、民家にいた老婦人は売春を勧めてくるだけだった。
エリックは銃を買うが金を持っていなかった。店主の男を射殺すると、先程の民家に戻った。そして、老婦人を銃で脅して目撃情報を尋ねた。だが、老婦人は車が立ち去ったところを見ただけだった。老婦人はなぜそこまで車に拘るのか尋ねた。エリックは言葉を詰まらせ、目に涙を浮かべた。

映画『奪還者』のあらすじ【承】
エリックが車に戻ると、ヘンリーの弟のレイがいた。ヘンリーの車があったため、エリックのことを待っていたのだ。エリックはレイに銃を突きつけてヘンリー達の居場所を探ろうとするが、レイは腹を怪我しており気絶してしまう。小売店に行って医師の居場所を聞こうとするが、商品を買えと店主に銃で脅される。エリックは仕方なく商品を買い、医師の居場所を教えてもらう。
エリックは医師のドロシーを頼り、レイの治療をしてもらった。金儲けしなくても幸せになれると言い、ドロシーはエリックから金を受け取ることはなかった。ドロシーは町人が食べないよう、動物達を檻の中に入れて保護していた。
エリックがレイを連れて立ち去ろうとしていると、2台の車がやって来た。エリックは怖い表情で、ドロシーに銃を持ってくるよう命令した。そして、その銃を使い、車の運転手達を射殺した。ドロシーは訳が分からないながらも、レイを守るためにエリックの前に立ちはだかった。しかし、エリックはドロシーを襲い、レイに立つよう命令した。レイはエリックの行いに恐怖した。
レイは空腹を訴えるが、エリックは何の反応も示さず車を走らせた。エリックはモーテルに入ると、目的地を話すようレイを脅した。レイはカールーンだと教えた、しかし、自分も一緒に連れて行って欲しかったため、詳しい場所を明かさなかった。エリックはなぜ砂漠に来て見捨てられたのか尋ねた。レイは兄と鉱山で働くつもりだったこと、急いでいたから兄は先に向かったことを話した。だが、なぜ急いでいるかは明かさなかった。レイは兄に見捨てられたと思っておらず、自分のことを待ってくれていると思っていた。エリックは辛辣な言葉を並べ立て、ヘンリーが見捨てた事実を伝えた。レイはショックを受け、その場を立ち去った。
映画『奪還者』のあらすじ【転】
レイが部屋にいると、警官が見回っているのが見えた。その時、誰かが部屋をノックした。レイはドアに向けて銃を発砲するが、外にいたのは少女だった。少女を射殺したことに激しく動揺していると、警官が部屋に向けて銃を乱射してきた。エリックは発砲音を聞き、急いで部屋に戻った。警官を射殺すると、動揺するレイを連れて逃げ出した。
レイは野宿をしながら、昔の思い出をエリックに話した。だが、エリックは何の興味も示さなかった。2人の間で気まずい空気が漂う中、レイは殺した少女を忘れられない苦しみを吐露した。すると、エリックから忘れるなと厳しい言葉をもらう。
エリックは兵士に捕まり連行されてしまう。レイはそれを物陰からこっそり見ていた。兵士が移送手続きを行っている間、エリックは射殺すればいいと凄んだ。しかし、兵士は挑発には乗らなかった。すると、エリックは10年前に妻と浮気相手を殺して庭に埋めたことを打ち明けた。兵士はエリックの話を信じなかった。すると、そこにレイが現れ、兵士を射殺した。エリックは突然のことに驚いた。外に出ると、兵士の死体が転がっていた。
映画『奪還者』の結末・ラスト(ネタバレ)
エリックとレイはヘンリー達のアジトを襲撃することにした。レイは自ら、兄を殺すことを決める。エリックはそんなレイの言葉を、複雑な思いで聞いていた。エリック達は朝方ヘンリー達のアジトに向かった。家の前にはエリックの車があった。エリックはその車に乗って逃げることもできたが、レイを見捨てることができなかった。
エリックはこっそりアジトの中に侵入すると、銃を突きつけながら、寝ている男達を一カ所に集めた。レイも緊張しながら、ヘンリーに銃を突きつけベッドから出るよう命令した。しかし、ヘンリーは指示に従わず、レイに銃を突きつけ、銃を下ろすよう命令した。ヘンリーは動揺しながらも、自分を見捨てた兄を責めた。その時、銃が暴発してしまう。ヘンリーは咄嗟に引き金を引いてしまい、レイを撃ってしまう。エリックは男達を射殺し、レイの元に向かった。ヘンリーは弟を変えたエリックを責めた。エリックはそんなヘンリーを射殺した。
エリックはレイ達の遺体を一カ所に集めて火を点けた。その後、車のトランクから犬の遺体を取り出した。そして、地面にスコップを刺して、穴を掘った。
映画『奪還者』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
荒廃した世界でエリックと強盗団の一員であるレイが出会い、交流を深めていく様子が描かれている不思議な物語。
エリックは車を奪われてしまい、執拗に強盗団をつけ狙う。なぜ、そこまで車に拘るかは物語の冒頭では描かれておらず、エリックの不気味さが際立つ。エリックは最後、強盗団を殺してまでも車を取り戻す。本来なら怖いと感じるはずが、犬を埋葬するために黙々と穴を掘る作業を行うエリックを見ていると、とても悲しい気持ちになった。見る人によって感じ方が違う作品だと思う。(女性 20代)
ガイ・ピアース演じるエリックがとにかくかっこよくて、ガイ・ピアースが好きなら見て損は無い作品でしょう。彼は天才科学者や、組織の幹部などどちらかと言うと自分手を汚さずに頂点で生きるような役どころを演じることが多く、彼の持つ少し神経質そうな雰囲気がまたその役とマッチしていてとても好きなのですが、今作で彼が演じたエリックは、怒りの感情が渦巻くような掴みどころのないキャラクターで、どんな行動をするか分からないのでドキドキしながら見ていました。
しかし、いつの間にか彼に感情移入してしまいラストのシーンは何だか切ない気持ちになってしまいました。(女性 30代)
廃墟のようなオーストラリアの荒野と、人間性を剥ぎ取られた世界観が見事でした。ガイ・ピアース演じる主人公の執念が狂気じみており、最後まで彼の目的が分からないまま引き込まれました。ロバート・パティンソンの演技も素晴らしく、彼がただの弟思いの青年で終わらなかったラストの衝撃には鳥肌が立ちました。人間の善悪が意味をなさない世界で、何を信じ、何を奪い返すのか――観る者に問いかけてきます。(20代 男性)
荒廃した世界観がリアルで、まるで自分もその地に立たされているような錯覚に陥りました。主人公の「車」に対する執着の理由が最後に明かされる瞬間、思わず涙がこぼれました。無機質で無慈悲な世界の中に宿る「想い」が、本作の本当の主題だったのではないでしょうか。ロバート・パティンソンの繊細な演技が、物語に深みを加えていました。(40代 女性)
最初は淡々と進む展開に戸惑いましたが、徐々に緊張感が高まり、最後には心が揺さぶられました。ガイ・ピアースの無表情の中に見える怒りと悲しみ、ロバート・パティンソンの不器用な優しさ。対照的な二人が旅する中で見せる小さな変化が、かえって大きな感動を与えてくれました。ラストは静かな余韻を残し、何度も思い返してしまう映画です。(30代 女性)
この映画はセリフよりも“間”が語る作品でした。無駄な音が一切ない静けさの中にある緊張が、とにかく心を締めつける。ラストで明かされる「なぜ車にこだわったのか」という真実には驚きと切なさが入り混じり、人間の感情の奥深さを感じました。これはただのバイオレンス映画ではなく、極限状態における人間の選択の物語です。(50代 男性)
アクション映画と思って観始めたのに、心理劇としての完成度に驚きました。ロバート・パティンソンが演じたレイは、無垢な存在に見えてどこか危うく、それが物語の緊張感を高めていました。ガイ・ピアース演じる男の静かなる怒りと悲しみが、最後に報われる形で描かれていて、とても印象深かったです。(20代 女性)
映像と音の使い方が素晴らしく、特に荒野の風景と無音の演出が世界の終わりを象徴していました。車という小さな希望に執着する主人公の姿は、何もかもを失った男の「人間らしさ」の最後の砦だったのでしょう。エンタメとしてよりも、詩的な寓話として心に残る作品です。(60代 男性)
ディストピア映画の中でも異彩を放つ一作。派手な演出がないからこそ、一つ一つの行動や表情が意味を持ちます。とくにラストシーン、土に埋めた愛犬の亡骸のために車を取り戻していたという事実が明かされた時、これが人間の“心”の物語だったことに気づかされました。(30代 男性)
どこまでも荒涼とした世界観に魅せられました。暴力的な描写もありますが、それ以上に人間関係の描写がリアルで、特に兄弟の絆とその崩壊が印象的でした。ラストで明かされる真実に、思わず「そうだったのか」と息を呑みました。無駄を削ぎ落とした演出が本作の魅力だと思います。(40代 男性)
映画『奪還者』を見た人におすすめの映画5選
ザ・ロード(The Road)
この映画を一言で表すと?
絶望の中にある微かな希望を描いた、父と子の終末ロードムービー。
どんな話?
文明が崩壊した世界で、父と幼い息子が生き延びるため南へ向かって旅をします。食糧も安全も保証されない荒廃した世界で、彼らが「善き者」であり続けようとする姿に心を打たれます。極限状態でも親子の愛が希望を照らします。
ここがおすすめ!
重く静かなトーンながら、親子の絆が観る者の心を深く揺さぶります。映像美と緊迫感のある展開、そして「希望とは何か」を問いかけるメッセージ性が『奪還者』の余韻と見事にリンクします。魂を削るような没入体験が味わえる一作です。
ノーカントリー(No Country for Old Men)
この映画を一言で表すと?
静かに忍び寄る狂気が、観る者の神経をじわじわと蝕むサスペンス。
どんな話?
麻薬取引に絡んだ大金を偶然手にした男と、それを追う殺し屋、そしてそれを見守る老保安官。3者の視点が交錯する中、暴力と運命が絡み合うアメリカ南部の物語が展開されます。善悪の境界が曖昧な世界観が特徴です。
ここがおすすめ!
会話より「沈黙」が物を語るコーエン兄弟の傑作。静かながら恐ろしい空気感、象徴的なキャラクターたちの存在感が『奪還者』の空気感と絶妙にマッチ。緊張と哲学が混在する、知的なスリラーを求める人にぴったりです。
マッドマックス 怒りのデス・ロード(Mad Max: Fury Road)
この映画を一言で表すと?
アドレナリン全開の終末世界版カーチェイスアート!
どんな話?
独裁者が支配する荒廃した世界で、マックスと女戦士フュリオサが自由を求めて反逆の逃走劇を繰り広げる。全編ほぼカーチェイスで展開される息つく暇のないアクションと、ビジュアルの美しさが高く評価されています。
ここがおすすめ!
『奪還者』とは異なるテイストながら、同じく終末世界を舞台に人間の本質に迫る作品です。圧倒的な映像表現とフェミニズム要素を内包したドラマ性が魅力。観る者の五感を刺激する映画体験を味わえます。
アニマル・キングダム(Animal Kingdom)
この映画を一言で表すと?
家族という名の犯罪組織に潜む緊張と裏切りのドラマ。
どんな話?
メルボルンを舞台に、犯罪一家に身を寄せた少年が、冷徹な祖母や叔父たちとの関係の中で翻弄されていく姿を描きます。実在の事件をベースにしたリアリティと、予測不能な展開が見どころです。
ここがおすすめ!
オーストラリア映画ならではの硬質な演出と、人間関係の緊張感が『奪還者』と共鳴します。日常のすぐ隣にある暴力や道徳の崩壊を描く本作は、重厚な人間ドラマを求める方に強くおすすめします。
ミッドナイト・スペシャル(Midnight Special)
この映画を一言で表すと?
謎と光に満ちたSFサスペンスにして、父と息子の逃避行。
どんな話?
超常的な力を持つ息子と、その力を利用しようとする組織から彼を守る父。逃避行の中で明かされていく真実と、父子の関係の変化が見どころ。静かな語り口ながら、強烈な感情を呼び起こす作品です。
ここがおすすめ!
本作も『奪還者』同様に派手さは控えめながら、強烈な情感が芯にあります。親子の絆と“信じること”が物語の中核を成しており、静かな中にも大きな感動を呼ぶ、忘れがたい一本です。
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