映画『鈍獣』の概要:浅野忠信主演の2009年の作品。この作品で監督デビューした細野ひで晃、脚本は宮藤官九郎で、戯曲用に書き下ろされたものを映画化した。行方不明の作家を探す記者が出会う、強烈な個性を持つ人々。
映画『鈍獣』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:106分
- ジャンル:コメディ、ミステリー
- 監督:細野ひで晃
- キャスト:浅野忠信、北村一輝、真木よう子、佐津川愛美 etc
映画『鈍獣』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『鈍獣』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『鈍獣』のあらすじを紹介します。
「鈍獣」という小説が賞を受賞したが行方不明になった作家、凸川隆二を探すために、とある田舎町を訪れた週刊大亜の記者の静。
凸川(でこがわ)の持っていた名刺を手がかりに、寂れたホストクラブを訪ねたものの、そこに居たのは個性的な面々。
ホストクラブの経営者、江田。江田の不倫相手、順子ママ。ホステスのノラ。そして、警察官の岡本。
かつて凸やんは2人いたと言う。
ひとりはあだ名が”凸やん”と言い、岡本と江田の幼馴染のとことん鈍い男で、もうひとりは25年前に不慮の事故で亡くなった凸川。
凸川と恋人だった静はなんとしても行方を知りたく、5人から話を聞く。
25年ぶりに地元に帰ってきた凸やんは、過去に起こったことを小説にしており、江田から怒りを買ってしまった。
自分の秘密が公になるのを恐れた江田は、順子を使ってバーの酒や料理に毒を仕込んで凸やん殺害を計画したが、凸やんには効果がない。
江田はノラを使って、使えない順子殺害を計画したが、凸やんが毒を食べてしまって失敗。
しかもまた凸やんには毒が効かなかった。
そして江田は岡本を使って凸やんを殺害しようとするが、それもまた失敗。
その後、江田は凸やんが不死身な理由に気が付く。
果たして凸川はどこに行ったのだろうか。
映画『鈍獣』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『鈍獣』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
派手な映像と濃過ぎるキャラクター
まるで小学生レベルの会話の内容、ツッコミどころが多すぎてくだらなさすぎるストーリーだが、引き込まれるような面白さとスピード感がある。
派手な色彩を多用しつつ、細かなアニメーションを使ったや映像技術と演出は、それだけで作品の世界観に引きずり込む要素があり、飽きさせない。
それぞれのキャラクター性が濃く、唯一まともに思える記者の静役の真木よう子すらも、間の抜けた台詞がどことなく目立つ。
凸やんに対して殺意を覚える、北村一輝演じる江田は額に「肉」という傷があり、徐々に毒が出てくる演技は素晴らしい。
ダメ警察官の岡本役のユースケ・サンタマリアは、宮藤官九郎の作品をはじめコメディ慣れしていることもあり、間の取り方が上手い。
南野陽子演じる順子ママは、東京の出版社にタレこみに向かっても目的を忘れるなど、はっちゃけた演技力が素晴らしい。
ノラ役の佐津川愛美の、ひとりだけおっとりした演技もいいのだが、テンポを狂わせる要因になってしまっている。
主演の浅野忠信が演じる凸やんの、自分に殺意が向いていることすら気が付かない鈍さは、浅野忠信の演技力の新しい部分が見える。
ツッコミどころが多すぎるキャラクターの印象が濃いのだが、ひとつの場面に6人以上の登場人物が出てこないので展開は安定している。
だが、舞台を相撲の町にした意味は無いだろう。
謎が謎のまま終わるストーリー
強烈でスピード感のあるストーリーなのだが、肝心の凸やんが不死身な理由、小説を書く暇が無いのにも関わらずなぜ連載が続いていたのかが、全く謎のままエンディングを迎えてしまっている。
江田の考えでは、25年前に電車に轢かれて亡くなった凸川が、凸やんのフリをして戻ってきたという理由だったが、凸やんにしか無い第三の乳首が存在したために否定されることになる。
中途半端な推理なので、そのシーンがあっても意味が無いというツッコミどころになっている。
時間が無いのに小説を書く事ができた理由、不死身な理由は全て謎のまま終わっているのは、納得がいかない。
最後まで生きて帰ってくる凸やんには、どことなく変な後味を感じる。
映画『鈍獣』 まとめ
歪んだ友情が多く見えてくるこの映画。
派手な色使いが多く使われている不安定さが、現実離れした印象を強く残しています。
そしてとことん鈍いはずの凸やんが、時々的を得た鋭い台詞を言ったり、なぜ不死身で小説を書いていることを否定し続け、最後に認めたのかが謎のまま終わっています。
ブラックジョークというよりは、どす黒いコメディ映画になっていて、何度見ても苦い後味が残る作品になっています。
細野ひで晃は、この作品が監督デビュー作といわれればわかりますが、わからなければ斬新な映像、演出の映画になっています。
宮藤官九郎の脚本はどの作品でも奇想天外ですが、舞台用に書かれたものが基になっているので、その舞台も1度見てみたいと感じる映画になっています。
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